内科的立場から漠然とした身体的愁訴に対して、それに見合うだけの器質的疾患の裏付けが認められない症状に対して名づけられた一連の症状を不定愁訴症候群といいます。

 

もともとの出発点は、脚気のような症状に端を発しており、脚気様症候群といわれ、その後、自律神経のアンバランスに起因していることから自律神経失調症候群を経て、不定愁訴症候群となっています。

 

一方、婦人科の領域にあっても、同様な症状があり、同じ名前で呼ばれていました。これは更年期障害症候群に端を発し、女性の自律神経症、自律神経症候群を経て、同様に不定愁訴症候群と呼ばれています。

 

したがって、まったく同じ名称のまま、内科的な症状ととらえられたり、婦人科としての症状としてとらえられたりします。

 

また、うつ病、神経症などの精神的疾患にあっても初期症状では不定愁訴の症状を示すことがあり、症状としては同じであっても、アプローチや治療においては、受診科によって違ってしまいます。

 

いずれのタイプであっても、主観的な訴えが強く、しかもその症状は多彩。検査や診察など客観的、他覚的所見に比較して、自覚症状が不相応に強く、日によって症状が違ったり強さが変わったりします。

 

 

総じて自律神経失調症と定義される

 

頭痛や肩こり、めまい、しびれ、のどの詰まり、あるいは下痢や便秘などなど、手を変え品を変えて襲ってくる症状……そんなときに受診するのは、たいていの場合、内科です。

 

こうした患者の症状の訴えに対し、いかに検査をしても何ひとつの原因もみつからないと、内科的立場からは自律神経失調症という病名でくくってしまい、安易に自律神経調整剤や安定剤が処方されることになります。

 

たまたま更年期にあり、月経不順などを伴っている場合には、婦人科に受診するかもしれません。婦人科で治療をするとなると、ホルモンのアンバランスからホルモン補充療法が行われるかもしれません。

 

しかし、どんな治療法を行っても、目を見張るような効果がないのが不定愁訴の特徴でもあるのです。

 

なぜ、そうした特徴を現すのか、ということになれば、どのタイプに属しているにせよ、自律神経との関わりが否定できず、その人の社会的側面、個人的側面を総合的にアプローチしない限り、解決することがむずかしいからです。

 

そのため、一般的には不定愁訴症候群全般をさして自律神経失調症といわれているのです。

 

 

不定愁訴を症状とする3つのタイプ

 

不定愁訴が自律神経失調症のひとつの症状だとしても、そこにはいくつかのタイプがあります。不定愁訴を訴える人をメコリール試験という試験で調べると、次の3つのタイプに分けられます。

 

自律神経中枢に失調がないタイプ

神経症型の人では、自律神経中枢に失調がないのが特徴です。しかし、心理的要因で自律神経系に影響があらわれ、多様な不定愁訴を訴えます。

 

身体的問題というより、心理的問題に端を発しているため、ほかの人の場合にはあまり気にとめない小さな身体症状も、病気の兆候と考え、気に病むあまりに身体症状を拡大してしまうと考えられます。このパターンの人は身体症状とともに精神症状を伴い、イライラ、不眠、不安感を訴えます。

 

厳密にいえば、自律神経失調症というより自律神経症であり、神経症のなかでも心気症に属します。この場合、性格と環境が不定愁訴をもたらす原因となっていることが多いため、治療方法としては精神療法を中心に、薬物療法を補助的に行っていきます。

 

心因性自律神経失調症タイプ

心身症ともよばれる心因性自律神経失調症は、自律神経中枢の失調と精神的心因が重なって不定愁訴を訴えます。日常生活のストレスが大きな要因です。ストレスが長期間続く、もしくは短期間でも強いストレスを抱え込むと自律神経の働きが乱れます。

 

自律神経失調症のなかでもこの型がいちばん多く、約50%に及びます。治療は薬物療法で精神の安定をはかるのと同時に患者自身が症状を引き起こした原因をよく納得し、病気への不安をなくすことも不可欠です。

 

本態性自律神経失調症

本態性自律神経失調症は心理的なストレスとは無関係に発症します。自律神経失調症の1/4 を占め、男性に多いのが特徴といえます。

 

精神的症状はあまり多くはなく、大半は身体症状を訴えます。原因はまだ解明されきっていません。治療は薬物療法が中心になります。このタイプが本来の自律神経失調症ということができます。

 

 

規則正しい生活が解決の早道

 

いったん自律神経を乱し、不定愁訴が現れると、長くつらい戦いの日々が始まります。体験した人なら、誰もが口を揃えてもう二度とかかりたくない、どんな病よりもつらい……というに違いありません。

 

ですから、まずは陥らないようにすることが何よりです。そのためのいくつかの方策を紹介しましょう。

 

自律神経は、一定のリズムに従って機能しているので、生活リズムが乱れると自律神経の働きを乱すことにもなります。したがって規則正しい生活を送る、ということは、自律神経失調症を防ぐ非常に有効な手だてです。

 

もし、自律神経失調症かもしれない、と思えるようなことがあったら、規則正しい生活をしてみてください。夜は12時前に寝て、しっかり睡眠時間をとり、朝、きちんと起きることです。当然、食事も規則正しくし、運動もしてみましょう。軽いうちなら、それだけでも解決してしまうかもしれません。

 

また、自分の性格とストレスの状態を十分に認識し、正せるところは正すようにしましょう。また、悩みや相談事をひとりで抱え込まないようにし、家族や友人によく話をすることも大切です。

 

治療には、病気の発生、原因を、生活環境を含めた上でキチンと説明してくれる人が不可欠です。生活上の助言を受ける上でも専門医に診てもらい、きちんとアドバイスを受けたほうが解決の早道です。

 

 

最後に

 

原因の分からない頭痛やめまいなどの各症状は不定愁訴症候群と呼ばれ、多くは自律神経失調症と診断されます。

 

薬に頼りすぎると薬の効果が効きにくくなるばかりか、薬物依存症に陥ってしまうことがありますので、まずは規則正しい生活を送るということをテーマとして取り組むようにしてください。

 

時には完治までに長い期間を要しますが、規則正しい生活を送ることで、頭痛やめまいなどの各症状が軽減するだけでなく、体調もよくなっていきます。楽しく精力的に過ごせる毎日を手に入れるためにも、ご自身の生活を一度見直しましょう。