潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に、びらん(ただれ)や潰瘍を形成する原因不明の慢性炎症性腸疾患で、粘血便、下痢、腹痛、発熱などの症状が反復または連続して見られ、下痢は一日に十数回に及ぶこともあります。 発症は30歳以下の成人に多くみられ、緩解と再発(病状が和らいだり、再び発症したり)を繰り返します。

 

下痢や腹痛などの症状が伴い、軽度であれば短期間で治る病気ですが、重度となると長期的な治療が必要となることもありますので注意が必要です。下痢や腹痛はよくある症状ですが、長く続く場合には当該疾患または他の胃腸疾患の可能性がありますので、早めに病院へ受診するようにしてください。(関連:一週間以上止まらない下痢は様々な原因が考えられる

 

 

潰瘍性大腸炎とは

 

腸に炎症を起こす病気を総称して炎症性腸疾患(IBD)と呼んでいます。IBDには、原因がはっきりしているものと、まだ、はっきりしていないものがあります。原因がわかっているものには、O-157などによる腸感染症や、薬の副作用による炎症などがあります。

 

潰瘍性大腸炎は原因のはっきりしない特発性の炎症性腸疾患の代表的な病気です。大腸の粘膜に慢性の炎症が起こり、ただれや潰瘍ができるもので、治療は非常に困難になります。そのため、厚生労働省の特定疾患治療研究対象疾患、いわゆる難病に指定されています。

 

潰瘍性大腸炎は、大腸の一番末端部の直腸から始まり、S状結腸、下行結腸、横行結腸、上行結腸へと病変が広がっていくのが特徴です。ほかの大腸疾患と同様、下痢が主な症状ですが、食べ過ぎや冷えなどから起こる一般的な下痢とは違い、血便や、粘液と血液が混じった粘血便を伴います。しかも、なかなか治まらず、いったんよくなってもまたぶり返す寛解と再発を繰り返します。

 

男女共20代前半に発病する確率が最も高く、最近では10代半ばから後半にかけての発病率も目にみえて増加してきました。60歳以上の高齢になってから、発病するケースもありますが、総じて若い人に多い病気といえるでしょう。患者総数は45、000人前後です。

 

 

潰瘍性大腸炎の原因

 

潰瘍性大腸炎の原因については、細菌説やアレルギー説をはじめ、腸内酵素の異常説、自律神経障害説といったさまざまな仮説が唱えられてきました。しかし、いまだにはっきりとは解明されていません。現時点で最も有力視されているのは、自己免疫説です。

 

私たちのからだには、細菌などの有害なものが侵入してきたとき、それを排除するための防御システムがあります。腸にもこのシステムが備わり、栄養分のようにからだに必要なものだけを腸の粘膜から吸収し、不要なものは吸収せずに腸を通過させ、便として排出しています。

 

ところが、このシステムに異変が生じると、本来は大腸の内側を保護するために必要な粘膜をも有害なものと判断して、排除しようとします。その結果、大腸の粘膜に炎症が起きてしまうのです。

 

食生活やストレスが大きな要因

大腸粘膜でこのような免疫異常が起きてしまう要因の一つとして、遺伝的体質の関与が考えられます。潰瘍性大腸炎で、重症化した人の遺伝子を調べてみると、多くが特定の白血球型をもっているという研究結果があります。

 

また、一家族のなかで二人以上がこの病気にかかった例をみると、夫婦よりも血縁者同士での発生率が高いことがわかっています。潰瘍性大腸炎は遺伝性疾患ではありませんが、家庭内発症が2%みられます。しかし、特定の遺伝子をもっている人が全員発病するというわけではありません。潰瘍性大腸炎になりやすい体質であっても、実際に発病に至るには、さらにいくつかの因子がかかわると考えられています。

 

潰瘍性大腸炎は、もともとヨーロッパやアメリカなどの欧米先進国に多い病気で、戦前の日本では殆どみられませんでした。日本でこの病気が急増したのは、1980年代になってからです。発症年齢が20代前半の若い世代に多く、最近さらに平均年齢がさがっていることからみても、肉類や乳製品中心の欧米型の食生活が密接にかかわっています。

 

また、精神的・肉体的ストレスも大きなリスクファクターとなります。もともと腸は、刺激に対して敏感に反応する臓器であるため、家庭や職場でのトラブルや肉親の死といったストレスが病気の引き金となります。この様に、潰瘍性大腸炎は生まれ持った体質に、偏った食習慣やストレスという日常生活のマイナス条件が重なることによって、引き起こされると推察されています。

 

 

潰瘍性大腸炎の症状

 

潰瘍性大腸炎は、血便や粘血便の混じった下痢で始まります。一般に下痢をすると腹痛を伴うものですが、潰瘍性大腸炎の場合、症状の軽い初期のうちは、ほとんど痛みがないのが特徴です。しかし、症状が進むににつれて下腹部痛がみられるようになり、重症になると発熱、頻脈などの全身症状も現れてきます。

 

下痢がひどい場合は1日に数十回もトイレにかけこむことになり、腸から水分や栄養を吸収できなくなって脱水症状や貧血、栄養失調をきたします。さらに症状が進めばさまざまな合併症を招きます。

 

主な合併症には、口内炎、大腸性関節炎、皮膚病、虹彩炎といった眼病、肝臓障害などがありますが、注意が必要なのが、中毒性巨大結腸症です。この合併症は、潰瘍がひどくなって大腸の粘膜、筋層が広範囲に破壊され、風船のように拡張していきます。全身性の中毒症状を起こす病気で、処置が遅れると生命にもかかわります。

 

潰瘍性大腸炎で最も問題となるのが、いったん症状が消えてから、予防のため薬物療法を続けていても、1〜3年で再発することが多いという点です。潰瘍性大腸炎が治療が困難な病気とされるゆえんです。なかには二度と再発しない人もいますが、ほとんどの人は、症状が現れる活動期と一時的に治まる寛解期を繰り返します。また、最初からきわめて重い症状がみられ、治療をしても改善しないケースもあります。

 

さらに、大腸の粘膜に何度も炎症を起こすため、大腸がんになりやすく、特に発病から10年以上経過すると発生率が高くなるといわれています。

 

 

潰瘍性大腸炎の検査と診断

 

潰瘍性大腸炎の診断では、大腸内視鏡検査と、病変部組織の一部を採取して細胞を顕微鏡で調べる病理組織検査を行います。特に、内視鏡による病変部の観察は不可欠です。直腸を内視鏡で見ると、小さなびらんや潰瘍が一面にあるのがわかります。このような病変が、点を打ったように連続的に広がっているのが潰瘍性大腸炎の特徴です。

 

また、注腸造影検査で大腸のどの部分まで病気が進んでいるかを調べます。この検査は、肛門から造影剤と空気を注入し、からだの向きを変えながらX線撮影をするものです。

 

病変の広がり具合によって、直腸炎型、左側結腸炎型、全結腸炎型の3種類に分類されます。

 

直腸炎型軽度炎症の範囲が直腸からS状結腸の一部までにとどまっている状態
左側結腸炎型中等度直腸から横行結腸の左半分までが侵された状態
全結腸炎型重度直腸から横行結腸の右側部分、または上行結腸まで進行したもの

 

白血球数、CRP(C反応性たんぱく)、血沈などの検査結果もふまえて、病態を判別します。

 

 

潰瘍性大腸炎の治療

 

潰瘍性大腸炎の治療では薬物療法が基本となります潰瘍性大腸炎は原因がはっきりしないため、今のところ特効的な治療法は確率されていません。基本的には薬による内科的治療が中心になります。

 

潰瘍性大腸炎の主症状である腸の炎症を抑えるためには抗炎症剤を用い、必要に応じて、免疫抑制剤を併用します。抗炎症剤としては、サルファ剤とサリチル酸の合成剤である、サラゾスルファピリジン、5−アミノサリチル酸であるメサラジン、ステロイド剤がよく使われています。ステロイド剤は、炎症を抑えるのに非常に有効な半面、皮膚の感染症にかかりやすくなったり、骨に障害が出てくるなどの強い副作用があります。そのため、からだ全体に吸収されやすい内服薬は出来るだけ避けて、局所に直接作用する坐薬や注腸薬を使います。

 

投与法は、病変の部位や進行度によって異なります。一般的に、症状が軽い直腸炎症型の場合は、サラゾスルファピリジンやの内服薬を単独で服用するか、ステロイド剤の坐薬を併用します。

 

左側結腸炎型の中等症では、サラゾスルファピリジンとステロイド剤の注腸薬が用いられ、場合によってはステロイド剤の大量経口投与を行います。さらに、かなりの重症の場合は、ステロイド剤を静脈から大量に注入する5日間強力ステロイド静注療法が行われるケースがあります。

 

薬物療法は原則的に通院で行います。しかし、重症で下痢や出血がひどくて食事がとれないような場合には、入院して点滴で栄養補給をすることが必要になります。

 

なお、潰瘍性大腸炎は治療によって症状が治まった後も、再発を防ぐためにサラゾスルファピリジンやメサラジンの服用を続けます。服用量は治療時の約半分ですが、さまざまな副作用に注意しなければいけません。維持療法は、通常1年以上は継続する必要があります。

 

薬物療法で症状の改善がみられない場合や、治療のため入退院を繰り返して社会復帰が難しいときには、外科的治療が選択されるケースもあります。手術の基本は全結腸切除です。小腸をJの字の形にして袋をつくり、そこを肛門とつなぎ、大腸のかわりに水分を吸収できるようにする回腸肛門吻合術が行われます。

 

 

予防と日常生活の注意点

 

食生活の改善を心がける

潰瘍性大腸炎の発生率の増加に、食事の欧米化が大きく影響しています。肉類中心の食生活は、動物性たんぱく質や脂肪のとりすぎになる一方、食物繊維の不足などを招きます。その結果、便通を悪くしたり、腸に負担をかけることになります。潰瘍性大腸炎に限らず、ほかの腸疾患の予防のためにも、できるだけ魚や野菜中心の食生活を心がけ、牛乳や乳製品、刺激物などは控えましょう。

ほかの病気と同様、潰瘍性大腸炎も早期に適切な治療を開始すれば、十分にコントロールできる病気です。血便はもちろん、便秘や下痢を繰り返すといった自覚症状があるときは、早めに医療機関で内視鏡検査を受けるようにしましょう。

 

肉体的・精神的ストレスを緩和させる

肉体的・精神的ストレスは、潰瘍性大腸炎の大敵です。治療の結果、せっかく病状が落ち着いても、過労やかぜで体調を崩すと、再発することがあります。日ごろから睡眠を十分にとって、疲れを残さないようにすることが大切です。

過度なストレスは体内のメカニズムを失調させて、さまざまな病気の誘因となります。特に胃や腸の疾患は、精神的なストレスと深く関わっています。例えば、緊張したときなどに胃が痛むのは、ストレス反応で胃酸が多量に分泌され、胃の運動が活発になるためです。また、腸は食物などの内容物を運ぶために収縮を繰り返す蠕動運動を行っていますが、ストレスがかかると蠕動運動に異変が生じ、下痢や便秘を繰り返すようになります。

 

この様に胃や腸がストレスの影響を受けやすいのは、その働きが自律神経によって支配・調節されているためです。自律神経は、交感神経と副交感神経からなりたっています。ふだんはこの二つのバランスがよく働くことによって、からだの機能が正常に保たれています。

しかし、強いストレスが続くとバランスが崩れ、それに伴って自律神経に支配されている胃や腸の働きにも支障をきたします。潰瘍性大腸炎は、ストレス反応が引き金になって起こる胃腸病の一つですが、ほかにも、代表的な病気として胃・十二指腸潰瘍や過敏性腸症候群などがあります。

 

現代社会は、ストレス社会といっても過言ではありません。誰もが大なり小なり自律神経のバランスを崩すストレス要因を抱えているといってもよいでしょう。肉体的、精神的にリラックスできる時間を作り、ストレスをため込まないように、趣味やスポーツで気分転換を図るなど、上手にストレスをコントロールしましょう。