ある日突然に襲ってくる死の恐怖……それが過労死です。過労死は突然死と同様に、それまでふつうに働いていた人が突然に亡くなってしまいます。

 

一見、何の前触れもなく、突然起こったようにみえますが、実は素地に何らかの障害があり、そこに過労という誘因が重なったところで死に至るもので、それまでにも、身体は何回も危険信号を出しています。

 

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体が出しているシグナルをキャッチ

 

私たちの身体は、健康の危機に陥ると、それを知らせるシグナルを発するような仕組みになっています。例えば、残業が続けば、疲れたな、と感じます。これが最初のシグナル。このときにゆっくり休めば、体調は回復します。

 

しかし、これを無視して仕事を続けると疲労感は一層増し、身体がだるい、食欲不振、よく眠れないなど、1ランク上のシグナルに変化します。

 

この段階でもシグナルにしたがって仕事を休むなどをすれば、身体は疲労を回復させることができます。

 

ところが、ここでもがまんし、あるいは無視して仕事を続けると、今度は発熱やひどい頭痛など、より強いシグナルが身体から送られてきます。

 

このときには、無視できないほど強いシグナルが多く、寝込んだり、入院を余儀なくされたりもします。でも、そうなった場合にはかえって幸い。ここで、否応なく休むことになります。問題になるのは、この強いシグナルですらもがまんできてしまうケースです。

 

 

人間の体はシグナルを我慢してしまう

 

人間の身体はどんなにひどい症状でも、一時的に軽くなったり、治ったように感じることがあります。

 

これは「失体感症」といわれ、重い病気でもまるで治ったかのように症状が軽減したり、悪化していることに気づくことがなくなってしまう状態です。

 

強いシグナルをがまんし続けてていると、いつの間にか、そのシグナル自身がなくなったように、苦痛を感じなくなってしまいます。しかし、実際には身体のなかで消耗や不調が着実に進んでいます。

 

これが、あるとき突然、過労死という結果になって現れます。つまり、過労死とは、突然に訪れはしても、それまで本当に健康だった人が突然死ぬわけではなく、「突然死は急にはこない」のです。

 

たとえその死が過労死・突然死と診断されたとしても、もしその人が生き返って話すことができたとしたら、「そういえば……」というシグナルをキャッチしていたに違いありません。

 

 

過労に伴う様々な疾病

 

大阪府監察学事務所が行った突然死剖検例のデータによると、突然死のなかで心臓疾患が全体の66%、脳血管系が16%を占め、この2つで全体の80%以上を占めます。

 

心臓疾患のなかでは、狭心症と心筋梗塞が多く、次いで心筋症が続きます。脳血管系の病気では、クモ膜下出血、脳内出血の2つがほとんどです。

 

身体からの危険シグナルとしての症状に焦点を当ててみると、左の肩がこる、または左の腋高部から上腕の小指側にシビレ感や痛みがある場合には、

 

狭心症や心筋梗塞を疑う必要があります。前胸部の中心またはやや左前胸部が痛む場合もあります。しめつけられるように3~15分程度痛むときには狭心症、激しく15分~数時間痛むときには心筋梗塞の疑いがあります。

 

また、一時的に意識を失ったり、呆然としたりし、片手がしびれ、箸を落とすような場合は、脳梗塞などの脳血管障害が考えられます。

 

頭が痛む場合、後頭部をバットで殴られたような痛みならクモ膜下出血、頭の深いところがずっと痛むようなら脳腫瘍の疑いがあります。

 

そのほかにも、耳鳴りがする、目の痛みや目がかすむ、みぞおちが痛む、背中が激しく痛む、手足がしびれる、動悸がする、すぐに喉が乾く、太り過ぎ・やせ過ぎ、何をしても集中できないなどの症状は危険シグナルです。

 

検診の結果、胸部X線写真で心肥大の疑いあり、尿酸値が高い、赤血球が多いといったことがわかった場合、あらためて病院で検査を受けてみる必要があるでしょう。

 

 

準備段階から死までを”過労”がお膳立て

 

ストレスの蓄積はあまたの病気の要因となり、過剰なストレスは過労死ともまた、密接な関係があります。ストレス過剰状態とは、体が非常事態に準備している状態です。

 

いつどんな敵がきても大丈夫なだけの戦闘体勢がつくられます。戦闘体勢とは一種の危機反応ですから、何が何でも生命の中枢となる脳や心臓、肺など臓器を守ろうとします。

 

そこでこれらの臓器の活動を活発にするため、多量の血液を送り込みます。そのために自律神経系の交感神経系によって心臓を強化し、消化器系や手足などの末梢の血管を収縮させ、多くの血液を脳に送ります。

 

もうひとつは、副腎皮質ホルモンによってたんぱく質や脂質を分解し、脳で使えるエネルギー源である糖質を確保しようという働きが起こります。

 

こうした非常体勢が、一時的なもので終われば、副交感神経が働いて、もとの状態に修復が可能です。しかし、その非常体勢が長く続けば、修復に長い時間がかかったり、修復不可能になってしまいます。

 

そうなると、身体は常に戦闘状態。血液中には溶け出そうとする脂肪や糖分が多量に含まれたままになってしまいますから、高脂血症になったり、糖尿病になったりしてしまうことになります。

 

そのため、動脈硬化を起こし、血管系障害を促進させます。結果、虚血性心疾患、脳血管障害陥ることになります。

 

 

悪循環(サイクル)が死をもたらす

 

これらの病気は、過労死や突然死どころか、日本人の死亡原因の3分の2を占めるものです。さらに副腎皮質ホルモンによってリンパ組織やリンパ球の働きが低下すれば、免疫防御機構の働きも低下。

 

簡単に感染症にかかってしまうことになります。健康体であっても常時つくられているがん細胞を破壊する力も弱まってしまいます。

 

非常体勢が残した副産物である脳血管障害や虚血性心疾患、糖尿病、高脂血症などの生活習慣病を抱えながら、その治療を受ける時間もなく、改善の努力をするひまもなく、

 

それどころか、不眠不休の仕事を強いられ、不規則な食事や睡眠不足が加算されということになれば、いつ突然死につながっても不思議はありません。

 

働き過ぎ、およびそれに伴う不規則な生活が過剰なストレスとなり、それが生活習慣病を引き起し、多忙ゆえにその生活習慣病の治療や改善の余裕もないまま、

 

最後の最後まで突っ走って身体が限界にきたところに過労死があり、準備段階から死までの間、ずっと“過労”というキーワードに追いかけ回される、でも本人はそれほど自覚していない……

 

そこに過労死の最大の問題があるといえるでしょう。なかには、本当に強いストレスによって急性の心停止を起こすこともまれではあってもあり得ます。

 

たとえば、極度の精神的緊張などにより、交感神経が過度に緊張した結果、交感神経刺激ホルモンであるアドレナリンが急激に多量に分泌され、

 

結果、心臓に大きな負担がかかり心室性の不整脈が起こって突然、心臓が停止してしまう場合です。

 

ただし、こうした突然死でも基本的には自分の身体の状態を無視して過労を続けていることが原因で血管が弱っていることがベースにあります。

 

 

自分の身体の状態を把握することがカギ

 

したがって、まずは自分の身体の状態を正確に把握することから、予防の第一歩が始まります。

 

それには、機会あるごとにデータの厳しい健康診断を受けましょう。検診や人間ドックで自分の身体を見直すチャンスを、多忙を理由に断る人に限って過労死が多くなります。

 

過労による突然死を避けたいならば、とにかく定期的に検診を受け、自分の弱い部分がどこかを知って、それをどうすれば強くできるか、医師と相談したほうがよいでしょう。それによってよりよいコンロトールができるものです。