暑いときに汗をかいたり、運動したときに汗をかくのは当たり前。それは体温を調節するために必要なことです。ところが、暑くもないのに、あるいはじっとしていても、手のひらや足のうらなど特定の部位だけに異常に汗をかいてしまい、勉強や仕事にも支障をきたす人がいます。

 

 

多汗症の実情

 

近年、このような手のひら多汗症の人が増加しています。その理由は、社会生活で他人とのつきあい方が欧米化し、あいさつするときに握手を求められる機会が増えたことや、パソコンなどの普及によって体全体より指先を頻繁に使用する機会が増えたことがあげられます。

 

発汗には、次の2 種類があります。

 

温熱性発汗:からだが高温になり、体温調節のため全身から汗が出ること
精神性発汗:ストレスや緊張などの精神的な刺激がきっかけで汗が出ること

 

多汗症とは、必要な量を超えて汗が出る状態のことをいいます。病気かどうかの線引きは難しいのですが、日常生活に不自由がある場合には、治療の対象となります。

 

 

多汗症の種類と予防法

 

多汗症には2つの種類があります。

 

全身性多汗症:

全身性に病的な発汗亢進を認める状態(温熱性発汗が多い)で、甲状腺機能亢進症、糖尿病等の全身性疾患、肥満、味覚刺激(辛いもの)などが原因となるもの。

 

局所性多汗症:

じつは多汗症のほとんどは、この局所性多汗症。手のひら、足の底、腋窩、顔面などの限られた場所で、局所的に病的な発汗亢進を認める状態(精神性発汗)のことをいいます。自律神経のバランスが乱れ、特に交感神経の反応が強すぎることが一因となり、詳しい原因は不明。

 

局所性多汗症の程度は、通常、手のひらの発汗程度で判断します。

 

軽度:汗で湿るが肉眼では水滴が見えない。スムーズに日常生活を送る例が多い
中度:見た目で濡れていて水滴があるのがわかる
重度:水滴がびっしょりで汗がしたたり落ちる

 

 

多汗症の予防法

 

多汗症の予防法として、まず全身性多汗症の場合には、基礎疾患の予防、肥満の予防があげられます。

 

症例数の多い局所性多汗症については、交感神経の反応が強すぎることが病気の原因のひとつなのですが、詳しい原因が不明のため、今のところ特別な予防法はありません。

 

多くの場合、小学校にあがる頃には症状に気づき、思春期から大学受験、社会人1年目などにかけて、もっとも強く症状があらわれます。

 

これは汗を出す汗腺がこの時期に発達するためで、男女差はありません。神経質な人やストレスをためやすい人に症状の出やすい傾向があるので、この時期(小学生?思春期)の精神的安静が予防には重要ともいえるでしょう。

 

 

多汗症の様々な治療法

 

多汗症の治療にはいくつかの方法があります。まず、全身性多汗症の場合には、基礎疾患の治療を行います。局所性多汗症では、以下の方法があります。

 

薬物療法

経口薬/精神安定剤、自律神経調節薬などを使って自律神経の働きを調節。経口薬は軽症例のみの適応となり、副作用が現れることも。

 

制汗剤使用

外用制汗剤/汗腺の働きを抑える外用剤を1日2回塗布する。軽症例以外は効果の得られないことが多い。

 

電気療法

イオントフォレーシス療法/電気を流して汗腺の出口をふさぐ治療法。水を張ったトレイに手や足を入れ、専用の装置で弱い電流を20分間流す。週2回のペースで数カ月間治療を続ける必要がある。

 

精神安定

自律訓練法や音楽療法/強い不安やストレスが原因の時に有効。

 

切除手術

交感神経切除術/とくに手掌や腋窩の多汗症については、胸腔鏡下胸部交感神経切除術が最近広く普及しつつある。手術の後はほとんど目立たなくなり、手掌多汗症ではほぼ100%の人が完治。足底部の多汗症には、腰部交感神経切除術が行われることがある。

 

このように、多汗症と一口にいっても、その程度や種類により治療法はさまざまです。ひとりで悩まずに、一度専門医に相談してみるとよいでしょう。もし病院に行くのが嫌な場合にはまず制汗剤を使用してみるのも1つの手です。品質の良い制汗剤は効果が表れる場合が多くあります。