心身に強いストレスを感じると、自律神経に影響が出て発症します。 ほとんどの場合、内科的治療で治りますが、再発に注意が必要です。

 

また、現在、患っている方は、合併症に気をつけなければいけません。合併症が進行すると、すぐに手術が必要になることもあるため、胃・十二指腸を労わる生活を心がける必要があります。

 

 

胃・十二指腸潰瘍潰瘍とは

 

胃潰瘍と十二指腸潰瘍を総称して、消化性潰瘍といいます。本来、食べ物を消化する働きをもつ 胃酸(塩酸)やペプシン(酵素の一種)が、自分自身の胃壁や十二指腸を消化してしまい、 粘膜組織を傷つけてしまうことから起こります。

 

胃潰瘍は中高年に多く、十二指腸潰瘍は20〜30代の人に比較的多いのが特徴です。 消化性潰瘍全体では、男性が女性の約2倍の発症率となっています。

 

消化性潰は、胃酸の分泌と深い関係にありますが、胃酸の分泌を強力に抑制するH2ブロッカー、 (市販薬では、ガスター10など)、プロトンポンプ阻害剤といった効果のある薬が開発されていますが、 この病気にかかる人は増え続けています。

 

胃潰瘍と十二指腸潰瘍を比較すると、胃潰瘍になる人の方が多く、十二指腸潰瘍の約倍です。 ただし、最近は都市部を中心に十二指腸潰瘍にかかる人が増えてきました。これは食生活の 欧米化が原因だと考えられています。

 

肉類をたくさんたべること、ご飯などの糖質をたくさん食べた時に比べて胃酸の分泌が高まります。 胃酸過多の状態が続くと、胃酸が十二指腸の入り口あたる十二指腸球部にたまり粘膜を傷つけるため、 十二指腸潰瘍になりやすのです。

 

 

胃・十二指腸潰瘍の原因

 

胃潰瘍

胃の粘膜に潰瘍が出来るのは、粘膜を保護する「防御因子」と粘膜を傷つける「攻撃因子」の バランスが崩れるためではないかと考えられています。粘膜を覆う粘液、粘膜自体の抵抗力、 粘膜内の血液循環などは、粘膜を保護する防御因子です。胃酸やペプシンなどの消化液、喫煙、 アルコール、ヘリコバター・ピロリ菌などは、粘膜を傷つける攻撃因子です。

 

防御因子と攻撃因子のバランスを調節しているのが、自律神経です。自律神経の中枢は脳の視床下部にあり、 胃液の分泌をはじめとするさまざまな指令をだしています。健康な人は自律神経がうまく働いて バランスをとるため、潰瘍はできません。

 

ところが心身に強いストレスを感じると、自律神経も影響を受け、 胃の調節機能に支障が出ます。すると、防御因子の働きが弱くなり、結果的に攻撃因子の 力が強まって、胃の粘膜が傷つき、潰瘍ができます。

 

こうした胃潰瘍ができるメカニズムは、防御因子と攻撃因子を重りにした天秤によくたとえられます。 ストレスを受けると、天秤を支えている支点の位置がズレて、結果的に攻撃因子が重くなると 考える事ができます。

 

十二指腸潰瘍

胃潰瘍の場合、防御因子の働きが弱まって、相対的に攻撃因子の力が増すことから 潰瘍を引き起こすのに対し、十二指腸潰瘍は、攻撃因子である胃酸の分泌が高まった結果、 起こるものです。

 

十二指腸潰瘍のほとんどが、十二指腸の入り口である十二指腸球部にできます。 この部分は胃酸にさらされやすいため、粘膜に傷つきやすいのです。

 

心身に強いストレスを感じると胃酸の分泌が多くなり、十二指腸球部の粘膜がただれて”びらん”と よばれる状態になります。びらんはしばらくすると自然に治りますが、繰り返しびらんになると、 十二指腸球部の粘膜が、胃の粘膜に似た”胃上皮化生”という組織に変性します。

 

ここが、胃粘膜内のヘリコバター・ピロリ菌に感染すると、粘膜の防御機能を低下させ、 びらんではおさまらず、潰瘍ができてしまいます。

 

 

胃・十二指腸潰瘍の症状

 

上腹部の痛みと吐血・下血に注意  みずおちを中心とした上腹部に、痛みが起こります。痛みの程度は人のよって違い、 強くさしこむような痛みを感じる人のいれば、おなかが張ったような痛み(膨満感)の場合のあります。

 

痛みは食事と関係があり、胃潰瘍の場合は、空腹時か食後30分ほどしてから、 十二指腸潰瘍の場合は、空腹時か食後2〜3時間後、あるいは夜間に痛みが出ます。 特に十二指腸潰瘍では、空腹時や夜間に痛む場合が多いです。

 

こうした痛みは、食事をするといったんおさまります。これは食べ物によって粘膜を傷つけている 胃液が中和されるためです。また、こうした症状が数日続くと、痛みが軽くなります。 これは潰瘍の表面に白苔(はくたい)とよばれる薄い膜ができるためで、生体の防御反応の一種です。

 

消化性潰瘍では、胸やけやげっぷといった症状も多くみられます。胸やけは立ったり座ったりした状態よりも、 横になると感じることが多く、特に左側を下にして横になると、強く感じます。 胃液が食道下部に逆流して、食道の粘膜を刺激するためです。

 

吐血、下血といった出血も消化性潰瘍でみられる症状です。潰瘍が深いところまで達した場合、 筋層の中を走っている血管がえぐられて、出血が起こります。 胃潰瘍の場合は吐血、十二指腸潰瘍の場合は下血することが多いです。

 

吐血の場合は、はじめにむかつきがあり、その後、コーヒーのような色をした大量の液を吐きます。 これは胃の中に流れ出した血が、胃液と混ざって化学変化したものです。 コップ数杯分の血を吐くこともありますが、出血量はそれほどでもなく、大半は胃液と考えられています。一方、下血は便とともに血液が排出されるもので、黒っぽい便(タール便)が出ます。

 

 

注意すべき合併症

 

胃・十二指腸潰瘍の場合、合併症が進行すると、すぐに手術が必要になることもあるため注意が必要です。

 

胃・十二指腸潰瘍の合併症による死亡例も毎年のように報告されているため、胃・十二指腸に負担をかけない食事療法を積極的に取り入れることが非常に重要です。

 

■穿孔

胃潰瘍でも十二指腸潰瘍でも、潰瘍が深くなると、胃壁や腸壁を突き破り(穿孔せんこう)、 穴が開いてしまいます。こうなると、食べ物が胃や腸の外(腹腔)に流れ出て、急性腹膜炎を起こします。 腹部全体に痛みが広がり、筋肉が緊張しておなかを外からさわると、板のように硬くなります。

急性腹膜炎になると、ショック症状を起こすこともあります。顔面蒼白になり、冷や汗が流れ、 血圧が低下し、呼吸困難や意識障害に陥ります。 数時間以内に手術して穴をふさがないと、生命にかかわります。

 

■大出血

大量に出血した場合、やはりショック症状を起こすことがあります。この場合も、すみやかに 手当てを受けないといけません。内視鏡を使って潰瘍部分の周囲にアルコールなどを注入すると、 出血を止めることができます。

 

■幽門狭窄(ゆうもんきょうさく)

胃の出口付近のことを幽門といいます。この部分に何度も潰瘍を起こすと、 食べ物の通り道が狭くなって(狭窄)、吐き気、嘔吐、もたれ、上腹部の膨満感などの症状が出ます。 食べ物がうまく通過できなくなるため、胃に食べ物がたまって、胃拡張になることもあります。 子どもが十二指腸潰瘍になると、幽門狭窄を起こしやすいので注意が必要です。

 

 

胃・十二指腸潰瘍の治療

 

消化性潰瘍の治療は、内科的療法と潰瘍の部分を切除する外科的療法があります。 穿孔、大出血、幽門狭窄などの合併症がない場合は、薬物療法を主とした内科的治療で十分です。内科的療法で治るまでの期間は、潰瘍の程度にもより個人差もありますが、 だいたい胃潰瘍で3ヶ月、十二指腸潰瘍で2ヶ月くらいが目安です。

 

■薬物療法  

一般に攻撃因子を抑制する薬と、防御因子を強化する薬を組み合わせて服用する方法をとります。 攻撃因子を抑制する薬には、酸分泌抑制剤、制酸剤などがあります。一方、防御因子を強化する薬は、粘膜保護剤、粘液生産分泌促進剤、プロスタグランジン製剤などです。

これらの薬の中でも、消化性潰瘍の特効薬といわれているのが、酸分泌抑制剤のH2ブロッカーです。 この薬が使われるようになって、消化性潰瘍の治療は大きく向上しました。消化性潰瘍は再発するケースが多いため、薬を一定期間のみ続ける維持療法をする場合もあります。 H2ブロッカーは、潰瘍が治ってきたら、少しずつ服用量を減らしていきます。

 

■手術療法  

内科的治療でなかなか治らないケースや、治っても再発し、日常生活や仕事に 重大な支障をきたすケースなどでは、手術を行うこともあります。以前は胃潰瘍・十二指腸潰瘍とも、胃の下部約70%を切除する手術がよく行われていました。

しかし、最近は20〜30%程度を切除する方法がとられています。 胃を切除すると同時に、胃の壁細胞に分布し、胃酸の分泌を支配している迷走神経を切り離す 迷走神経切離術を行うこともあります。十二指腸潰瘍の手術では、胃切除を行わず、迷走神経切離術だけを行うケースもあります。

 

 

食事療法と生活の注意

 

消化性潰瘍の場合は、肉体的・精神的ストレスが深く関係しているため、肉体的にも精神的にもゆったりした状態で過ごすことが大切です。夜遅くまで働いたり、出張に飛び回ったりするようなハードな仕事は控えて、十分睡眠をとり、ゆったりと過ごしましょう。職場や家族に治療の必要性伝え、理解を求めなければなりません。

 

また、食事時間を規則的にして、ゆっくりと噛んで食べるようにしてください。 よく噛むことによって、唾液の分泌をうながし、胃の負担を軽くすることができます。 油っこいものや硬いものなど消化の悪いもの、熱すぎたり冷たすぎたりするもの、香辛料をたっぷり使った刺激の強い料理などは避けましょう。

 

食べ過ぎると、胃液の分泌が高まるので、食事の量にも注意が必要です。 ただし、食事の量を減らす必要はありません。粘膜を修復するためには、良質のタンパク質が必要ですし、 全身の調子を整えるためにも、栄養のバランスを欠くのはよくありません。

 

空腹時に痛みを感じる人は、少しずつ何回にも分けて食べるようにします。また、牛乳は粘膜を保護する 働きがあるので、1日何回かに分けて、少し温めて飲むと効果的です。タバコは攻撃因子の一つですから、やめる必要があります。

 

タバコを吸う人は吸わない人に比べて、 潰瘍の発生率が約倍で、治癒率も悪いという調査結果が出ています。 タバコに含まれる成分が、粘膜の血流を低下させるためです。アルコール類もなるべく控えめにします。また、甘味の強い菓子類、コーヒー、濃い紅茶・緑茶、 炭酸飲料なども控えめの方がよいでしょう。

 

 

再発防止のために

 

消化性潰瘍は再発しやすい病気です。自覚症状がなくなったからといって途中で服用を中止したり 不規則な生活をしたりしてはいけません。

 

昔から「消化性潰瘍は”脳”の病気」といわれています。おなかが痛いのに脳の病気というのは、 不思議な気もしますが、消化性潰瘍の原因がストレスで自律神経のバランスが崩れて起こる ことを示しているわけです。

 

精神的・肉体的ストレスをためず、十分に睡眠・休養をとること、うまく気分転換を図ることなど、 生活の工夫で再発・予防を心がけましょう。 また、暴飲暴食を繰り返しているようでは再発を呼びよせているようなものです。

 

さらに、タバコ、コーヒー、アルコール、香辛料、濃い味付けの食品、熱すぎる冷たすぎる食品といった、 胃に刺激を与えるようなものは、出来るだけ控えるようにしましょう。 胃の中に長時間残っているような、消化の悪いものもよくありません。 こうした、生活上の注意は治ったあとも引き続き守るようにして下さい。