胃を手術した患者さんの多くは、やせるので、「もっと太りたい」と願望しますが、無理に体重を増加させるのは危険です。

 

ここでは、体重減少のほか、貧血、ダンピング症候群など、起こりやすい後遺症を取り上げ、その対処法、予防法を紹介していますので、胃の手術後に安全に体重を増加したいという方や、健康を維持したいという方は、ぜひ最後までお読みください。

 

 

■胃の切除と体の変化

 

胃には、食物を消化したり、食べたものを一時的にためておく働きがあります。食道と胃の間には「噴門」が、胃と十二指腸の間には「幽門」があり、食べたものが食道に逆流したり、腸に一度に流れ込んだりしないようになっています。

 

ところが、手術で胃を切除すると、食べたものが十分に消化されないうちに、急速に腸へ送られるため、腸の対応が追いつかなくなります。

 

また、幽門や噴門を切除した場合は、胃や腸の内容物が逆流しやすくなります。さらに、リンパ節を切除した場合は、神経も切るので、胃だけでなく、腸の動きや働きまでもが悪くなります。

 

こうした体の変化の結果、胃の手術後にはさまざまな後遺症が起こってきます。

 

 

●術後における後遺症

 

術後は、「体重減少」「貧血」「ダンピング症候群」「胸やけ」など、さまざまな後遺症が存在します。それぞれに、どのような特徴があるか知っておきましょう。

 

■体重減少

胃の切除後には、少しでも食べ過ぎたり、急いで食べたりすると、気持が悪くなる、腹部の膨満感、食べたものがつかえる、もどす、下痢をする」などの症状が起こります。そのため、十分に食事をとることができなくなり、体重が減少します。

 

体重減少には、「食事療法」で対処します。また、1回に食べられる量が少なくなるので、1日3食に、3回の間食を加え、少しずつ食べるようにします。

 

食べるときはよくかみ、退院後1か月くらいは、食後30分ほど横になるとよいでしょう。食物繊維や脂肪の多い食品、柿などは、食べ過ぎないようにしてください。

 

■貧血

胃を切除すると、鉄やビタミンB12の吸収力が落ちて、貧血が起こりやすくなります。「鉄欠乏性貧血」の場合は、鉄剤が処方されます。

 

「内因子欠乏性貧血」は、手術後3~5年して起こるので、この場合は、注射でビタミンB12を補給します。貧血予防には、鉄を多く含む食品をとると効果的です。

 

■ダンピング症候群

食べたものが急激に腸に落下することで、不快な症状が起こるもので、胃を手術した患者さんの約30%にみられます。

 

「早期ダンピング症候群」「晩期ダンピング症候群」がありますが、どちらもたいていの場合、1年ほどすると治まります。どうしてもつらい場合は、医師に相談してください。

 

■つかえる、胸やけ

手術後に食べ物を送る蠕動運動がスムーズに行われなくなるために起こります。胃を手術した患者さんの約90%に起こりますが、手術後、半年から1年もすると軽くなってきます。

 

胸やけは、胃や腸の内容物が逆流して起こる症状で、症状が激しい場合は、「逆流性食道炎」を起こしていることも考えられます。逆流性食道炎は、胃を手術した患者さんの約20%に起こります。

 

●術後における体力回復の食事方法

胃の手術後には、どんなものをどう食べればよいのでしょうか。消化がよいものをとる、十分な栄養をとるなど、食生活を工夫して、体力の回復を図りましょう。

 

■食事のポイント

食事には個人差があるので、試行錯誤しながら判断します。栄養価が高く、消化のよい食品を選びましょう。そして、で徐々に食べられる量や食品を増やして、手術前の食生活に近づけていきましょう。

 

また、胃の手術後は、細菌による下痢を起こすこともあります。衛生面にも気をつけましょう。

 

■食品別の摂取のポイント

・穀類

主食には、軟らかめに炊いたご飯、パン、うどんなどを食べます。硬いご飯、玄米、赤飯、中華そば、スパゲティなどは、ある程度体が回復してからにしましょう。

 

・牛乳、卵

卵は、半熟卵や卵豆腐、茶碗蒸しなど消化のよい料理から始めましょう。

 

・魚介類

白身の魚を中心に、焼くより、煮たり蒸したりするほうが消化がよくなります。刺身も、新鮮なものを少量食べるならかまいません。干物、かきを除く貝類は、なるべく避けてください。

 

・肉

ひな鶏のささ身、手羽肉などから始め、その後、豚、牛の軟らかい部位の肉を試してみます。ベーコン、ハム、コンビーフなどは、なるべく避けましょう。

 

・豆類

豆腐やゆばは消化がよいのですが、大豆そのままや、厚揚げ、がんもどきなどは、避けましょう。

 

・野菜、芋類

初めは、軟らかくゆでたり、煮たりしたものを食べましょう。食物繊維の多いものは、食べ過ぎないように注意してください。

 

・油脂

手術後しばらくは、揚げ物や脂身の多い肉類は控えるようにします。比較的消化・吸収のよいバター、マーガリン、マヨネーズなどを適度にとりましょう。

 

・嗜好品

カフェインの多い飲み物や炭酸飲料などは、なるべく避けてください。アルコールは、医師の許可が出てから少しずつ飲むようにします。たばこはやめます。

 

 

■食欲増進の工夫

 

手術後は、食べられる量が少なくなったり、栄養面に気をとられすぎて、食生活が単調になりがちですが、できるだけ季節の材料を上手に調理し、バラエティに富んだ献立で、食事を楽しむようにしましょう。