スポーツをしていると急に膝に強い痛みが生じることがあります。特に高齢になればなるほど、痛みの発生率は上がり、時には歩けないほどの痛みに襲われることもあるでしょう。

 

人間の関節には筋肉がないため、激しいスポーツ時に摩擦により痛みが生じますが、場合によってはスポーツを一生涯中止しなければいけない事態に陥ることもあるため、生涯においてスポーツを楽しみたいという方は、膝の状態を考慮しながら健康的に取り組まなければいけません。

 

 

運動は健康にも重要なファクター。

 

若い人から高齢者まで、運動に親しんでいる人は少なくありません。しかし、運動のし過ぎはその周辺の筋肉や骨、関節の負担を増し、疲労によって通常の生活にも支障が出るほどにトラブルをおこすことがあります。

 

骨は30歳代でピークに達し、徐々に弱体化し、関節の加齢的変化も加わってきます。長い期間、関節に無理な力が加わると、関節軟骨の磨耗が加速し、弾力性が失われます。この骨と軟骨の変化が互いに干渉しあいながら、膝の痛みを主症状にさまざまな障害がおこります。

 

 

スポーツによる負担が大きな原因

 

体重を支えながら、歩くための足を動かしている関節には、股関節や膝関節、足首の関節がありますが、もっとも負担がかかりやすいのは膝関節。

 

当然、若い人に比べ、長く歩いている分、高齢者のほうが負担を負う時間が長くなりますから、膝関節に加齢による変性(成分や構造が劣化すること)がおこりやすくなります。

 

しかし、若い人にはまったくおこらないということでもありません。若い人の場合には、多くはスポーツ障害という形で現れることが多いようです。

 

ちなみにスポーツ障害とは、一定のスポーツを長く続けることにより、体のある部分を酷使することにより、周辺の筋肉や骨、関節などが疲労をおこし、本来の役割をまっとうすることができなくなってしまう、いわゆる障害をさしていいます。

 

これに対してスポーツ外傷とは、スポーツをすることによっておこったケガのことをいいます。

 

いったん障害がおきると、回復までにかなりの時間がかかり、その間、スポーツを中断するばかりか、リハビリテーションを行うなど、面倒なことになりますから、若い人でもお年寄りでも、酷使は危険。

 

いかにスポーツの秋とはいえ、自分の体の状態をよく知り、限界を見極めて運動を楽しむこと大切です。

 

膝関節を傷めるスポーツ障害には、ジョギング膝があります。走る速さが早くなるほど、そしてランナーの体重が重くなるほど着地時の衝撃は大きくなり、走る距離や時間が長くなるほど負担が大きくなります。

 

とくに日常的に走っている人の場合には、膝を休めるひまがないので、障害が慢性化する傾向にあり、いったん症状を現すと長い戦いになりやすいようです。

 

そのほか、バスケットやバレーボールのジャンパーにみられるジャンパー膝も、着地時のショックが吸収できずに障害をおこします。

 

人気の高いサッカーも、その性格上、下肢、とりわけ足首に障害をおこすことが多く、代表的なものには、フットボールアンクルといわれる一種の変形性関節症があります。

 

 

治療法は多岐に渡る

 

原因が何であれ、膝の痛みを訴える患者さんには、最初に行うのが保存的療法です。保存的療法は4つの方法に分類されます。

 

●薬物療法
痛み止めの塗り薬・湿布、内服薬、注射などにより、対症的に痛みをとってきます。

 

●物理療法
温めたり冷やしたりします。通常、表面的に熱をもっていたり、腫れがある場合には冷やします。慢性化した場合には温めることが多いようですが、患者さんの体感によって、気持ちのよいほうを選択してかまいません。

 

●運動療法
体重の負担がかからない運動を行い、膝関節を支える筋力の増強を目指します。いすに座って足首に0.5〜1.0キロの重り(ウエイト)をつけ、足を水平になるまでもち上げて10秒保持。これを10回3セット行います。

 

●装具療法
O脚、X脚の場合には、体重が軟骨の一側にかかるため、それを改善し、平均にかかるように脚の土踏まずのところにくさび型の足底板を貼り付けるなど、装具によって荷重の不均衡を改善していきます。

 

こうした保存療法のほかに、関節内に直接注射をする方法もあります。

 

以前はステロイドや局所麻酔薬が使われていましたが、その副作用などの弊害が問題になり、現在はヒアルロン酸という軟骨や関節液の一成分である物質を、直接関節に注入する治療法が一般的になってきました。

 

ヒアルロン酸は潤滑剤の役割をし、関節の衝撃を吸収。また関節液の補充効果もあり、表面を保護することにより、痛みを取り除いたり、和らげたりする効果があります。

 

とくに中・軽症にはかなりの効果が期待でき、足を引きずって診察室に入った患者さんが、注射1本打つことによって、出てくるときにはふつうに歩ける例も少なくありません。

 

持続効果には個人差がありますが、2週間から1カ月おきに5回程度注射をくり返すことにより、数カ月から2〜3年痛みが抑えられた例もあります。

 

保存療法やヒアルロン酸の注射などによっても痛みがとれず、レントゲン検査では、比較的軽度、あるいは中程度の変形である場合には、内視鏡により関節内の掃除をします。専門的には「関節デブリードマン」といいます。

 

さらに、それでも治らない場合には、外科手術が行われます。手術は「骨切り術」「人工関節置換術」。骨きり術は、膝から下の脛の骨(脛骨)をくさび型に切り、主に内側寄りにかかっている体重を外側にかかるようにする手術です。

 

人工関節に置換する人工関節置換術は、昔から行われていましたが、材料が格段に進歩しています。

 

コバルトクロム合金、チタン合金、高密度ポリエチレン(UHDP)などが使われることにより、磨耗が少なく、構造的にも膝の可動域をより大きくすることができるようになっています。

 

 

未来治療の展望

 

手術にいたると、体にとってかなり大きな負担がかかりますから、そうならないように予防することがなによりです。

 

膝のもっとも大きなリスクファクターは体重。肥満の人が膝のトラブルを抱えた場合には、減量するだけでも治ってしまうことがあります。歩行によって膝にかかる負荷は体重の3倍、階段の昇降では5倍、走ると8倍といわれています。

 

したがって体重が10キロ増えれば、80キロの荷物を背負って走っていることと同じです。その重量を両膝で支えているのですから、痛くなって当然。何よりもまず、体重を減らしましょう。また、最新の医学的な観点では軟骨修復医療に今後の期待が高まっています。

 

磨耗や老化によって減少してくる軟骨を、もし途中で補充することができれば、たとえ体重が多かろうと、老化しようと、弱体化した膝関節の修復ができるはず……

 

その期待は、いま、軟骨細胞移植という方法として、実際に行われています。

 

現段階での適応は、40歳以下の人がなんらかのけがによって軟骨を損傷したときに適応になる手術で、自分の軟骨細胞を培養して損傷部分に移植する方法です。

 

そのあたりの予防法、治療法がさらに進めば、人工関節手術まで進行させずにすむようになる時代がくるかもしれません。

 

また、あと5年もたてば、バイオ技術により、自分の細胞で必要な形の軟骨をつくってしまう再生医療が登場してくる可能性はおおいに期待できます。