睡眠は、私たちが生命を維持するうえで欠かせないものです。睡眠不足の状態が続くと、注意力が散漫になったり、事故を起こしやすくなります。また、うつ病などの病気との関連も指摘されています。

 

不眠の状態になると自力での睡眠が難しくなるため、薬に頼ることになりますが、薬は悪ではなく良好な睡眠のために、また体内リズムの正常化のために非常に有効なものです。ただし、使用に際して気をつけなければいけないことが多々ありますので、注意点をしっかりと把握しておきましょう。

 

 

睡眠とは

 

睡眠は、私たちが生命を維持するために必要不可欠なものです。具体的には、「体を休める」「けがの修復・成長」「ストレスの発散」「記憶の固定」などの役割があります。

 

■睡眠のメカニズム

私たちが毎日眠くなるのは、「疲れると眠くなる」「夜になると眠くなる」の2つの仕組みがあるためです。疲れると眠くなるというのは、脳や体の疲労に伴って蓄積される物質に、睡眠を促す作用があるためです。このような睡眠に関する物質を「睡眠物質」と呼んでいます。また、夜になると眠くなるのには、脳の視交叉上核が担っている「体内時計」の仕組みがかかわっています。この体内時計によって、「昼間は活動し、夜は眠る」という生活リズムがつくられているのです。

 

■体内時計は25時間周期

洞窟の中のような昼夜のわからない場所で生活をすると、大体1時間ずつ、就寝の時間が遅くなります。これは脳にある体内時計が、本来25時間周期で働いているからです。しかし、朝、太陽の光を浴びると、体内時計が24時間周期に調整されます。

 

■太陽の光と深い関係がある

視交叉上核が生活リズムをつくるうえで、 重要な役割を果たしているのが、「太陽の光」です。太陽の光が、体内時計の仕組みを担う視交叉上核に届くと、体内リズムは24時間周期に調整されます。それとともに、体温や睡眠物質の1つであるメラトニンの分泌量もコントロールされます。

 

 

寝不足が続くと・・・

 

睡眠不足が続くと、注意力や集中力が低下してきます。そのため、作業能力が落ちたり、事故の危険性が高くなります。以前アメリカで起こったスペースシャトルの爆発事故も、スタッフの極度の睡眠不足が原因の1つだったといわれています。また、体内時計のリズムに乱れが生じると、「倦怠感、頭痛、胃腸の不快感、食欲不振」など、様々な症状が起こります。深い眠りのときに分泌される成長ホルモンが少なくなるため、「肌荒れ」も起こってきます。

 

病気との関係も指摘されている

まだはっきりとはわかっていませんが、不眠とうつ病や高血圧、糖尿病などの病気は、何らかの関係があるのではないかと指摘されています。

 

 

不眠のタイプ

 

不眠には大きく分けて、「入眠障害」「中途覚醒」「早朝覚醒」「熟眠障害」の4つのタイプがあり、それぞれ原因や対策が異なります。まず、自分がどのタイプに当てはまるかをチェックしてみましょう。不眠で医療機関を受診する人では、入眠障害を訴える人が多いのですが、ほとんどの場合、いくつかのタイプが重なって現れます。

不眠の背景には、過労やストレスだけでなく、「睡眠時無呼吸症候群」「むずむず脚症候群」などの病気が隠れていることもあります。不眠が続き、本人がつらいと感じている場合は、精神科や心療内科を受診するようにしてください。また、「不眠外来」を設けている医療機関もあります。

 

 

薬の正しい使い方

 

「睡眠薬は怖い」というイメージを持つ人は、少なくないようです。しかし、現在用いられている睡眠薬は、適切に使えば安全性の高いものです。睡眠薬の正しい知識を身につけましょう。

 

睡眠薬とは

不眠の治療では、まず睡眠についての正しい知識を身に付けて、原因に合わせた対策を行います。それでも1週間に3日以上、1ヶ月を越えて不眠が続く場合には、睡眠薬を使い始めます。現在我が国では約20人に1人が、週3日以上睡眠薬を服用しているといわれていますが、一方で使用者の約80%が睡眠薬を危険なものと考えているという調査結果もあります。

以前使われていた睡眠薬には強い副作用を持つものもありましたが、現在主に使われている「ベンゾジアゼピン系睡眠薬」は安全性が高く、適切に使用すれば、まず心配はいりません。この薬は、光や音などの刺激が大脳に伝わる経路だけに作用し、その刺激を抑え、暗くて静かな部屋で自然と眠気が訪れるような状態をつくるものです。

 

睡眠薬の種類

睡眠薬には、血中半減期によって、4つのタイプがあります。血中半減期が7時間以内の「超短時間作用型」、7〜12時間程度の「短時間作用型」は、寝入りばなに効果があり、翌日まで作用を持ち越しません。主に寝つきの悪い入眠障害の人に効果的です。血中半減期が12〜24時間程度の「中間作用型」や24時間以上の「長時間作用型」は、翌日にも作用が残ってしまう場合があります。これらは主に、途中で起きてしまう人や熟睡できない人に向いています。

 

使用上のポイント

■副作用を知る

ベンゾジアゼピン系の睡眠薬には次のような副作用があります。

持ち越し効果効果が翌日まで続き、日中に眠気やふらつきなどが起こることがあります。
記憶障害服用してから寝つくまでの間や、翌朝の記憶が障害されることがあります。
筋肉の弛緩筋肉の緊張をほぐす作用があるため、ふらつきや転倒することがあります。

 

■服用したらすぐに床につく

服用後、いつまでも起きていると、持ち越し効果や記憶障害、転倒などが起こりやすくなります。服用後は、すぐに床に付くようにしましょう。

 

■アルコールとは併用しない

アルコールを飲んだ後に睡眠薬を服用すると、記憶障害などが起こりやすくなります。

 

■自己判断で量を増減したり、やめたりしない

自己判断で量を増減したり、服用をやめたりすると、副作用が現れたり、逆に不眠が強くなったりします。医師の指示どおりに服用してください。睡眠薬を飲むのを忘れても眠れるようになったら、薬のやめ方について医師に相談しましょう。

 

■市販の睡眠薬は一時的な使用に

市販の睡眠薬の眠気作用はかぜ薬にも含まれている「抗ヒスタミン薬」によるものです。かぜ薬をのむと眠くなるのと同じ仕組みです。長期間使用すると副作用が出ることもあるため、一時的な使用に限るべきです。慢性的に不眠が続くときは医療機関を受診するようにしましょう。