子どもの成長過程は個性的で、子どもによって身長や発育は大きく異なり、背がゆっくり伸びる子もいれば早く伸びる子もいます。そんな中、成長曲線の平均を明らかに下回る子もいます。このような場合を「低身長」と診断します。

 

多くの場合、個性的な成長過程によるものですが、中には何かしらの病気が影響して発育に障害を与えている可能性もありますので、早めに小児科の医師に相談することをお勧めします。

 

 

低身長の主な病気

 

低身長には病気が関係している場合もあります。低身長の原因となる病気には、「①成長ホルモンや甲状腺ホルモンの病気」「②染色体の病気」「③子宮内発育不全」などがあり、病気が関係している場合には、成長ホルモン治療などによって改善を図ります。

 

①成長ホルモンや甲状腺ホルモンの病気

脳の下垂体に障害があると、成長ホルモンが十分に分泌されなくなります。出産時に仮死状態であったり、事故などによって脳の外傷を受けたり、脳腫瘍がある場合には、脳の下垂体に障害を受けている可能性があります。成長ホルモンが十分に分泌されないことで、必然的に身長の伸びが悪くなります。また甲状腺ホルモンの分泌が不足した場合には、身長の伸びが悪くなることがあります。成長ホルモンや甲状腺ホルモンが関係する病気では、分泌量の不足分を補うために、成長ホルモン剤や甲状腺ホルモン剤を用いて治療を行っていきます。

 

②染色体の病気

染色体が関係する低身長の病気には、ターナー症候群やプラダー・ウィリー症候群などがあります。ターナー症候群は、およそ2000人に1人の割合でみられる病気で、通常、女の子にあるはずの2本のX染色体が1本しかない、または一部が欠けています。プラダー・ウィリー症候群は、およそ10000人に1人の割合でみられる病気で、15番染色体の変異によるものです。

ターナー症候群の場合には成長ホルモン剤や女性ホルモン剤、プラダー・ウィリー症候群の場合には成長ホルモン剤を用いて治療を行っていきます。なお、いずれも合併症が引き起こされている可能性がありますので、その場合には各種ホルモン剤に加え、合併症のに応じた治療も並行して行っていきます。

 

③子宮内発育不全

妊娠満期で生まれても身長・体重が低い場合、早産によって身長・体重が低い場合には、子宮内で十分に発育できなかった可能性があります。これを「子宮内発育不全」と言い、多くは3歳頃までに身長が伸びますが、平均身長を大きく下回ることもあります。このような場合には、成長ホルモン剤によって成長促進を図ります。

 

 

低身長の診断

 

実際に専門医をたずねた場合、専門医は問診や成長曲線の作成によって、子どもの低身長の程度を正しく診断します。 その結果、①検査はまだ全く必要ないものか、②すぐに検査の必要はないけれど、フォローしたほうがよいものか、③すぐに検査が必要なものかを親に告げます。そして、検査が必要なものはまず外来で簡単な検査を行います。

 

今は外来検査が必要ないという場合でも、成長曲線を作る、問診、体のバランスをみるの3項目を行う場合がほとんどですので、専門医をたずねるときには母子手帳や幼稚園、学校での成長記録を持参することは欠かせません。小学校や中学の本人の記録は、現在通っている学校で手に入れることができます。(関連:男女の平均身長(成長パターン)と低身長の評価(SD値)について

 

 

外来での検査

 

低身長は、主に外来で検査を行いますが、検査項目には「必ず検査する項目」と「状況に応じて検査する項目」の2つがあります。「状況に応じて検査する項目」においては、病気の可能性を考慮する場合に行います。

 

必ず検査する項目

わが子の身長をデータと比べることである程度の評価はできますが、さらに正しく評価するには、「縦断的成長曲線・成長率曲線」に計測したわが子の身長データを記録していくことがいちばんです。 縦断的成長曲線・成長率曲線というのは特別な表ですが、病院などでもらえる場合もありますし、「低身長の最先端医療ガイドブック」や「低身長の治療とケア」などの本にも添付されています。

 

母子手帳にある表でもある程度の評価はできますので、計測したらきちんと表の中に点を打ち、点と点を結んで曲線を書いてみましょう。母子手帳の場合は10~90%の帯の中にあればまず正常ですが、帯から極端に外れたり、帯の中でも曲線が下方に落ちていっている場合はきちんと検査を受けたほうがよいでしょう。

 

①成長曲線をつくる

わが子の身長をデータと比べることである程度の評価はできますが、さらに正しく評価するには、「縦断的成長曲線・成長率曲線」に計測したわが子の身長データを記録していくことがいちばんです。 縦断的成長曲線・成長率曲線というのは特別な表ですが、病院などでもらえる場合もありますし、「低身長の最先端医療ガイドブック」や「低身長の治療とケア」などの本にも添付されています。

母子手帳にある表でもある程度の評価はできますので、計測したらきちんと表の中に点を打ち、点と点を結んで曲線を書いてみましょう。母子手帳の場合は10~90パーセンタイルの帯の中にあればまず正常ですが、帯から極端に外れたり、帯の中でも曲線が下方に落ちていっている場合はきちんと検査を受けたほうがよいでしょう。

 

②問診

まず出産時の様子。仮死がなかったか、黄疸はきつくなかったかなどです。また、その後の発育、発達、かかった大きな病気はなかったか、長期に使用した薬はなかったか、頭痛もちではないか、便秘やおねしょはないか、食欲はどうか、好き嫌いはないか、など低身長の原因を探るのに必要なことを聞かれます。 できれば、これらのことを前もって思い出してメモを持参するとよいでしょう。

 

③診察

低身長をもたらす先天的な病気であるターナー症候群や軟骨無形成症などは体のバランスを見ることである程度推測できるので、専門医は診察に訪れた子どものバランスを最初に注意深く見ます。

 

状況に応じて検査する項目

④左手のレントゲン検査

骨の成熟度をというのですが、手のレントゲンをとることでこの骨年齢がわかります。そしてこの骨年齢と実際の年齢との差によってホルモンに異常があるのか、また今後の身長の伸びを予測することができるので、これは重要な検査のひとつです。

 

⑤尿検査

採尿して尿の中のタンパク、糖、白血球、赤血球、尿潜血などを調べますが、これは糖尿病や、腎臓病のチェックのための検査です。

 

⑥血液検査

採血して血液の中の白血球、赤血球、血小板、ヘモグロビン、コレステロール、中性脂肪、電解質、肝機能、甲状腺ホルモン、インシュリン様成長因子などを調べます。これらによって低身長の原因をおおまかにさぐることができます。 採血量は5~10mlなので、小さいお子さんでも問題はありません。

 

検査結果について

検査結果はおよそ1か月後。検査結果に異常がない場合は「いまのところ治療が必要ない」と伝えられるのですが、検査内容から何らかの病気が疑われる場合は、その後、日を決めて入院検査となります。なお、検査結果で病気が疑われるのは、以下の場合などです。

  1. 極端に低身長である
  2. 段々に又は、急激に成長率が落ちている
  3. 骨の年齢が暦年齢に比べて極端に低い
  4. IGF-I/IGF-BP-3が低い
  5. 甲状腺ホルモン数値が異常値である
  6. その他の検査で異常値がある

 

入院での検査

入院は1週間前後ですが、入院での検査の主なものは、①成長ホルモン分泌刺激テスト、②その他のホルモン検査、③脳のMRI検査、の3つです。入院でなく、外来のみで検査をする病院もありますが、多くは入院検査という形をとっています。なぜ入院が必要かというと、「成長ホルモンの分泌量を正しくは判定するため」です。成長ホルモンはコンスタントに出ていず、1日の中でも変動するため1回の採血では正しい答が出にくいからです。日を変えて何回か検査を繰り返します。

 

①成長ホルモン分泌刺激テスト

成長ホルモン刺激テストとは、成長ホルモンの分泌量をより正確に出すために成長ホルモンが盛んに出る薬で成長ホルモンを刺激して数値をみるテストのことです。何らかで刺激して行うテストを負荷テストというのですが、このときよく使われる薬は血糖を下げる働きのあるインシュリンと血圧を下げるクロニジンです。点滴で投与するアルギニンを使うこともあります。

成長ホルモン検査の負荷テストは2種類以上の薬で行いますが、2種類ともに成長ホルモンの分泌が悪いという結果が出た場合には成長ホルモン不足を疑います。 なぜ2種類かというと、ときに刺激に反応しない場合があるからです。しかし、2種類を続けてテストすることはできませんので、日を改めます。このためにも入院検査が必要なのです。

 

②その他のホルモン検査

成長ホルモンの分泌不全があると、脳下垂体から出ている副腎皮質刺激ホルモン、性腺刺激ホルモン、甲状腺刺激ホルモンの分泌も悪いことがあるので、これらのホルモンの検査も入院時に行います。

 

③脳のMRI検査

頭蓋内の腫瘍が成長ホルモンの分泌不足の原因になっていることもあるので、低身長の場合は、脳の検査も入院時に行うこともあります。一般の病院でできないこともありませんが、インシュリン負荷テストで低血糖を起こしたり、クロニジン負荷テストで低血圧を起こしたり、けいれんなどを起こしたりすることもあるので、経験豊かな専門医で検査を受けたほうが安心でしょう。なお、専門医であれば、外来検査でもきちんとケアできるので心配はありませんが、何回もの通院にはなります。

 

入院検査の結果について

入院検査の結果は1か月後。ここで(1)すぐに治療が必要なものと、(2)すぐに治療の必要はないが、経過をみていくものに分かれます。経過をみていくものは、その後6か月から1年に1回くらい継続的にみてもらう必要があります。すぐに治療となるのは、まず成長ホルモン分泌不全性低身長症の人です。不足している成長ホルモンを補充する治療が行われます。

その他、成長ホルモンである程度身長を伸ばす効果があるターナー症候群、軟骨無形成症・軟骨低形成症、慢性腎不全性低身長症の3つも成長ホルモン治療が認められています。 甲状腺機能低下症には甲状腺ホルモンの投与、また慢性的な病気が見つかったときは、その病気の治療を行います。