日常生活を快適に送る上で、生理を避けたい場合が時には生じてきます。たとえば旅行や海水浴、結婚式、入学試験などの行われる時期と予定生理が一致してしまう時に、これを避けるために、月経周期の移動(予定生理日の変更)を希望する場合があります。また、臨床的にも手術日と生理日が一致する場合には、医学的に必要性があれば月経周期の移動調節が行われる場合もあります。

 

月経周期の移動には、月経を早める方法(月経周期短縮法)と、月経を遅らせる方法(月経周期延長法)の二つがあり、いずれも卵胞ホルモンと黄体ホルモンの合剤を使用しますが、排卵前かあるいは後かで対応が異なります。予定生理と生理を避けたい時期が一致する可能性が高い場合には、なるべく早く専門医を受診したほうが月経周期の移動には効果的です。

 

 

月経周期短縮法(生理を早める)

 

月経周期短縮法とは月経周期を短縮することによって予定生理を予定よりも早く起こす方法です。排卵を抑制し、月経周期を短縮する方法であるために、排卵の抑制ができない場合には不成功に終わる場合もあります。具体的には月経周期の3日目から5日目頃(遅くても7日目頃)から卵胞ホルモンと黄体ホルモンの合剤を7日間から14日間(1日1錠)服用すると排卵が抑制されます。

 

投与を中止することにより消退出血(次回生理に相当)を起こさせることが可能になり、月経周期を短縮する方法です。通常、投与中止後数日間で消退出血が開始します。しかし、月経周期において投与開始が遅れると投与中であっても、排卵が起こってしまい(排卵抑制に失敗)、月経の短縮が起こらない場合もあるので注意が必要です。

 

この方法の利点としては生理を避けたい時期、たとえば旅行中などにホルモン剤の服用が必要ないということです。ただ、ホルモン剤の投与期間が7日間未満であると効果が不確実になることがあります。

 

生理を早める月経周期短縮法

月経周期短縮法の具体例

たとえば以下の設定条件の場合に生理を早める方法を示します。

 

設定条件①

本日の日付:8月26日

最終生理:8月26日より開始、生理持続期間:約7日間

次回の予定生理開始日:9月24日

生理を避けたい時期:9月24日より温泉旅行

 

この場合には月経周期の3日目から5日目頃からホルモン剤の服用が可能です。つまり、8月28日から2週間(9月10日まで)ホルモン剤を1日1錠服用し続けると、服用終了より約2日後より消退出血が始まります。

 

これが予定生理より早まった生理であり、9月13日頃に生理が開始します。この生理が7日間持続しますので、9月19日頃には生理が終了します。この方法では月経周期の7日目以内、つまり9月1日以内に来院した場合には予定生理を早める事が十分可能です。ホルモン剤の服用は14日間より短くすることも可能ですが、長い方が効果は確実です。

 

設定条件②

本日の日付:9月5日(生理開始日より11日目)

最終生理:8月26日より開始、生理持続期間:約7日間

次回の予定生理開始日:9月24日

生理を避けたい時期:9月24日より温泉旅行

 

本日が9月5日で生理開始日より11日目にあたるために、ホルモン剤を本日より服用しても必ずしも排卵を抑制することはできず、予定生理を早めることは必ずしも可能ではありません。したがって、後述するように生理を早めることは危険であり、生理を遅らせる方法を選択すべきです。このように生理開始直後に変更の申し立てがない場合には、生理を早めることは不可能であり、生理を遅らせる方法を選択せざるをえません。

 

設定条件③

本日の日付:8月26日

最終生理:8月26日より開始、生理持続期間:約7日間

次回の予定生理開始日:9月24日

次次回の予定生理開始日:10月22日

生理を避けたい時期:10月20日より7日間の温泉旅行

 

次次回の生理が温泉旅行と重なる可能性があるために非常に早期に来院したケースです。このように早期に時間的に余裕をもって来院した方が確実に月経周期を変更できます。この場合には、次回の生理を変更することによって、結果的に次次回の生理を変更させることになります。次回生理は設定条件①と同じ方法で変更します。あるいは次回生理を延長させることによって次次回の生理日を変更させてもよいことになります。

 

 

月経周期延長法

 

月経周期延長法とは予定生理を遅らせる方法です。予定生理の5日前から7日前、つまり黄体期後半から延長を希望する日まで、卵胞ホルモンと黄体ホルモンの合剤を1日1錠服用し続けることによって予定生理を遅らせる方法です。

 

1日1錠の服用で出血がきてしまう場合には、1日2錠と服用量を増量しなければなりませんが、通常1錠の服用で十分です。通常、投与中止後数日間で消退出血(延長した生理に相当)が開始します。

 

この方法の利点はきちんと服用すれば効果は確実であり、確実に生理を延長させることができます。しかし、欠点としては生理を避けたい時期たとえば旅行中などにホルモン剤の服用を続けなければならない点です。旅行中などのために服用忘れを起こしやすく、また吐き気などの副作用があっても我慢しなければならない点が問題です。

 

生理を遅らせる月経周期延長法

月経周期延長法の具体例

たとえば以下の設定条件の場合に生理を遅らせる方法を示します。

 

設定条件

本日の日付:9月5日(生理開始日より11日目)

最終生理:8月26日より開始、月経周期:28日型、生理持続期間:約7日間

次回の予定生理開始日:9月24日

生理を避けたい時期:9月24日より9月30日までの温泉旅行

 

本日が9月5日で生理開始日より11日目にあたるために、ホルモン剤を本日より服用しても必ずしも排卵を抑制することはできず、予定生理を早めることは必ずしも可能ではありません。したがって、後述するように生理を早めることは危険であり、生理を遅らせる方法を選択すべきです。このように生理開始直後に変更の申し立てがない場合には、生理を早めることは不可能であり、生理を遅らせる方法を選択せざるをえません。

 

次回の予定生理開始日が9月24日であるので、この5日前の9月19日からホルモン剤を1日1錠服用開始し、旅行の最終日である9月30日まで服用を続けます。服用を中止するとその数日後には延長された生理が開始します。

 

 

月経周期の移動に利用されるホルモン剤

 

生理を早める・遅らせるために使用するホルモン剤

 

服用時の注意事項

服用開始の数日間は悪心、嘔吐、頭痛、乳房痛などの副作用があることがあります。このような副作用が強く、服用を継続できない例もありますが、服用に慣れると副作用も減少することもあります。

 

服用を忘れると効果が不確実になり消退出血が起こるので、連日ほぼ一定の時刻に服用しなければなりません。服用忘れに気づいた場合にはその時点で直ちに忘れた分を服用し、その日の服用分は変更することなく定時に服用します。

 

 

月経周期の移動後の次回の月経

 

ホルモン剤の服用によって人為的に移動された月経であっても、ホルモン剤を服用しないで自然に発来した月経であっても月経に違いはありません。したがって、変更された月経から約1ヶ月後に新たな月経が発来し、従来の周期に戻ります。

 

過度の服用は注意が必要

生理を早めたり遅らせるためには、薬剤の服用時期・時間を正確に守る必要があります。また、単に生理をなくしたいという方も最近増えており、過度に薬剤を服用する方もいらっしゃいます。

 

薬剤による生理の移動後には、通常の月経周期に戻りますが、生理というのは子供を産むために欠かせないものであり、また女性の健康においても欠かせないものです。つまり、過度に服用し、毎生理を止めてしまうため、何一つよいことはないのです。そのため、生理を早めたい、遅らせたいという場合は“重要なイベント”だけに止め、薬剤の乱用は避けてください。また、副作用があるということも、肝に銘じておきましょう。