生理前に「むくみ」によって顔や足が太ってしまい、体重が1kg以上増加する女性もいます。「むくみ」の正体は“水分”ですが、この水分が体内に滞留することで、時には痛みが生じることもあります。

 

なぜ生理前になると「むくみ」が生じるのか、その原因と「むくみ」にならないための事前対策、「むくみ」がある時の解消法について詳しくご説明します。生理前に必ずと言っていいほど、「むくみ」に悩まされている方は、最後までしっかりお読みください。

 

 

生理前に起こる「むくみ」の正体

 

生理前に起こる「むくみ」の正体は“水分”であると冒頭で述べましたが、その水分が体内に溜まるのは女性ホルモンの1つである“エストロゲン(卵胞ホルモン)”“プロゲステロン(黄体ホルモン)”が深く関係しています。

 

少し小難しくなりますが、エストロゲンには、「第二次性微の発現」「月経周期の成立の媒介」「子宮内膜の増殖」「乳腺管の増殖分泌の促進」などの作用があり、いわば女性の生理に欠かせないホルモンなのです。また、プロゲステロンには、「卵子の子宮着床の準備」「発情の停止」「妊娠の持続」「乳房の発達」などの作用があります。

 

エストロゲンとプロゲステロンは女性の生理に必要不可欠なホルモンであり、正常時にはそれぞれの分泌量が一定でバランスがとれています。また、下図(出典:日本中医薬研究会)のように月経における2つのホルモンの分泌量は変動しています。

 

エストロゲン過剰分泌

 

しかし、“何かしらの原因”によってバランスが崩れ、エストロゲンの分泌量が過剰になる、またはプロゲステロンの分泌量が減少する時に、体外への水分の排出機能が低下して、「むくみ」が生じるのです。

 

 

ホルモンによって水分が排出されない理由

 

では、なぜエストロゲンの過剰分泌、プロゲステロンの分泌量の減少によって、水分が体外へ上手く排出されなくなるのでしょうか。まずエストロゲンには、上述の作用以外にも「ナトリウムと塩素の保持」という作用も持っており、いわゆる水分を体内に保持する作用があるのです。

 

人体の60%が水分であることから、エストロゲンの持つこの作用は非常に重要なものですが、“何かしらの原因”によってエストロゲンが過剰に分泌されることで、必要量以上の水分が体内に保持され、それが「むくみ」となって現れるわけです。

 

次にプロゲステロンに関してですが、プロゲステロンは上述の作用以外にも「体温の上昇」など、体の機能を正常に保つ作用を持っています。それゆえ、プロゲステロンの分泌量が減少すると、体の機能が正常に働かなくなり、水分を体外に排出する機能が低下することで「むくみ」が生じるのです。

 

 

ホルモン分泌量の過剰・不足の原因

 

エストロゲンの過剰分泌、プロゲステロンの分泌量の減少により、体内に水分が貯留することで「むくみ」が生じますが、これらホルモンバランスが崩れる原因は多岐に渡ります。

 

エストロゲン過剰

●精神的・物理的ストレス

ストレスは、ホルモンバランスを崩す最も大きな原因です。バランス自体が崩れてしまうため、時にはエストロゲンが過剰分泌され、時にはエストロゲンが不足するというように、時期や心身の状態によって変動しますが、基本的には過剰分泌されるようになります。

 

●環境要因

環境ホルモンは化学物質の1つであり、「内分泌かく乱物質」とも呼ばれています。環境ホルモンには、ポリ塩化ビフェニール類、有機塩素化合物(殺虫剤等)、トリブチルスズ、ビスフェノールA(樹脂の原料)、フタル酸塩(プラスティックの可塑剤)などがあり、これらは私たちの身の回りの物品に使われています。これら環境ホルモンに晒され続けることにより、体内のホルモンバランスに悪影響が及び、エストロゲンが過剰に分泌されるようになります。

 

●メラトニン不足

メラトニンとは、「睡眠ホルモン」の一種で、睡眠の誘発や体内時計の調整などの作用を持っています。また、メラトニンはエストロゲンの過剰分泌を抑える働きも持っているため、メラトニンが不足するとエストロゲンが過剰に分泌されるようになります。

 

●飲食物の摂取

肉類、牛乳、乳製品には、女性ホルモンが含まれていることがあります。特に牛乳はメス牛の血液であるため、多くのエストロゲン(メス牛の)が含まれています。それゆえ、摂取するとエストロゲンの量が増え、過剰に分泌されるようになります。また、過度なアルコール摂取や大豆イソフラボン(豆腐・豆乳など)もエストロゲンの生産量増加を促します。

 

●避妊ピルの使用

ビルにはもともとエストロゲンが含まれているため、牛乳などと同様に、服用することで体内のエストロゲン量が増加します。

 

●肝機能の低下

肝臓はエストロゲンの代謝能を維持する働きを持っているため、肝機能が低下するとエストロゲンの代謝能が低下し、それに伴いエストロゲンの量が増加します。

 

プロゲステロン不足

●精神的・物的ストレス

エストロゲン過剰と同様、ストレスの影響でホルモンバランスが崩れることで、プロゲステロン不足に陥ります。

 

●エストロゲンの過剰

エストロゲン過剰になると、均等を保とうとプロゲステロンを減少させるよう体が働きます。それに伴い、プロゲステロンの分泌量が減少し、不足状態に陥ります。

 

●更年期

年齢を重ねるごとにプロゲステロンの分泌量は減少していきます。これは生理的なもので、多くの女性が経験する“更年期障害”の原因が、このプロゲステロン不足によるものです。なお、更年期にはエストロゲンの分泌量も減少します。

 

●月経不順(無排卵)

プロゲステロンは黄体ホルモンとして、排卵時に多く分泌されますが、月経不順などで正常に排卵されない無排卵の状態では、プロゲステロンは分泌されず、その分泌量はゼロに等しくなります。

 

基本的には、エストロゲンが過剰分泌されることで、プロゲステロンの分泌量が減少し、いわゆる「エストロゲン優位性」という状態になり、その結果、水分が体内に貯留し「むくみ」となって現れます。

 

 

ホルモン分泌量の過剰・不足による弊害

 

エストロゲンの過剰分泌、プロゲステロンの分泌量の減少によって、「むくみ」以外にもさまざまな症状が現れ、この状態が継続することで時には“病気”に発展することもあります。どのような症状・病気を引き起こすのか、この機会にしっかり知っておきましょう。

 

■エストロゲン過剰

乳房のしこり、不安、うつ、不眠症、疲労、イライラ、朦朧とした思考、記憶力低下、老化促進、アレルギー、偏頭痛、血栓の増加、脂肪増加(腹部・臀部・太 股)、低血糖症、不妊症、性欲減退、流産、抜け毛、子宮癌、子宮筋腫、子宮内膜症、生理前症候群(PMS)、乳癌、繊維嚢胞性乳腺症、骨密度低下、骨粗鬆 症、甲状腺機能障害、脳卒中、胆嚢の病気など

 

■プロゲステロン不足

慢性疲労、不安、うつ、不眠症、集中力の低下、肌・髪質の変化、黄体機能不全(不妊症・月経不順・不正出血)など

 

 

生理前の「むくみ」を予防する方法

 

「むくみ」の原因はエストロゲンの過剰、それに伴うプロゲステロンの不足であるため、エストロゲンを減少させることが「むくみ」にならないための予防法になります。おさらいすると、エストロゲンの過剰分泌の原因は、①精神的・物理的ストレス、②環境要因、③メラトニン不足、④飲食物の摂取、⑤避妊ピルの使用、⑥肝機能の低下です。

 

それゆえ、まずはストレスをなくす、生活リズムを整える(睡眠時間の確保)、肉類・牛乳・乳製品・大豆類の摂取量を減らす、暴飲暴食(アルコール摂取含む)をやめるなど、エストロゲン過剰分泌を防ぐことが何より大切です。

 

●ストレスをなくす

ストレスをなくすのは簡単なことではありませんが、誰かと喋ったり、外に出るだけでもストレスは減るものです。また、アロマを利用したり、運動したり、好きな音楽を聴いたりと、なんでも構いませんので、気分の晴れることを積極的に行ってください。

 

●メラトニンの減少を抑える

夜型になっている場合、夜中に分泌されるべきメラトニンの量が減少します。また、特に若い女性はIphoneを使う時間が非常に長く、画面から放たれるブルーライトの刺激がメラトニンの分泌を抑制します。規則正しい睡眠に加え、Iphoneやテレビなどを観る時間を減らしてください。

 

●健康的な食生活を送る

食生活が乱れていると、また栄養素の高い食事を摂っていないと、まず均等に保たれているホルモンバランスが崩れ、エストロゲンの分泌量が増加します。その後、体の機能が低下することで、過剰に生産されたエストロゲンを抑えることができず、結果として過剰な状態が維持されます。それゆえ、栄養の高い食事を1日3回しっかり摂りましょう。

 

●飲食物を制限する

エストロゲンが含まれる肉類・牛乳・乳製品、エストロゲンの生産を促す大豆イソフラボンの摂取を控えてください。また、肝機能を低下させるアルコールや油分の多い食べ物の摂取も控えてください。

 

●特定の飲食物を摂取する

エストロゲンを減らす食べ物は、緑茶、緑色の野菜(ブロッコリー・キャベツ・カリフラワー・チンゲン菜・セロリなど)、きのこ類(しいたけ、まいたけ、しめじなど)、柑橘類(みかん・オレンジ・レモン・グレープフルーツ)などがあります。特に緑茶や緑色の野菜はエストロゲンの減少に効果的で、栄養素が高いため、積極的に摂取していきましょう。

 

●体重を見直す

適正体重より重い場合には、エストロゲンが多く分泌される傾向にあります。反対に、適正体重または適正体重より軽い場合にはエストロゲンの分泌量が減少します。適正体重より重い方は、運動などを取り入れ、適正体重に近づけるよう努めてください。

 

 

生理前の「むくみ」を解消する方法

 

上述のように、「むくみ」にならないためにまず予防することが大切ですが、「むくみ」になってしまった場合の、即効性のある解消法もいくつか存在します。これらはエストロゲンの過剰分泌を抑えるものではなく、そもそもの「むくみ」を取り除く方法です。

 

それゆえ、生理前だけでなく、いつ行っても効果的です。なお、「むくみ」は水分の貯留が原因であるため、貯留した水分を体外に排出するよう促す、または体全体に流すことが解消法となります。

 

●リンパを通したマッサージ

顔に溜まった水分を体の下部に流すために、頬→首→鎖骨の順にマッサージをしながら水分を誘導します。これをゆっくり1~3分ほど行うことで、顔の「むくみ」はかなり取れます。オイルなどを用いて滑りやすくするとより効果的です。

 

●温冷による足湯

手足の「むくみ」に非常に効果的なのが足湯です。まず40℃程度のお湯に足を2~3分くらい浸けて温め、次に冷たい水に30秒程度浸けます。これを2~3回続けることで、足の「むくみ」を取り除くことができます。また、これを足ではなく、「手湯」にすることで手の「むくみ」を取り除くことができます。

 

●水分を多めに摂る

「むくみ」の原因は体内に貯留した水分であるため、水分を摂らない方がいい!とお考えの方もいるでしょうが、実はそれは逆効果です。脱水症状を防ぐために体は、細胞内にある水分を外に出そうと働くため、結果的に「むくみ」の原因となる水分の量が増えてしまいます。

また、水分を多く摂取することで、発汗など体外に水分を排出するための機能が働くため、水分を多く摂取すれば、「むくみ」の原因となっている水分もより多く体外に排出されるようになります。ただし、水分摂取には糖分の多い炭酸飲料やカフェインが含まれているコーヒーなどは避け、普通の水を摂取してください。

 

●「むくみ」部分を上に挙げる

顔の「むくみ」は立つ、手の「むくみ」は挙手、足の「むくみ」は足を体より高く保つ(寝る姿勢で)ことで、貯留した水分が別の部分にまんべんなく移動します。各部位を高く保った状態で、マッサージでゆっくりと水分を流してあげるとより効果的に「むくみ」を解消することができます。

 

●鍼灸(針)による水分の排出促進

「むくみ」がひどい場合には鍼灸治療を行うのも一つの手です。部分部分に針を刺すことにより、水分の排出を促し、溜まりにくい状態になります。即効性があるだけでなく、ある程度効果は続くため、「むくみ」がひどく痛みが生じる場合には鍼灸治療も検討してみましょう。

 

 

まとめ

 

生理前にはエストロゲンの過剰分泌、それに伴うプロゲステロンの分泌量減少が「むくみ」の主な原因であり、これらホルモンバランスの乱れは生理前だけでなく生理中や生理後、生理がきていない時にも起こり得ます。

 

「むくみ」は時として痛みが生じ、部分部分でだるさが現れるため、当ページでご説明した予防法と解消法をぜひ実施し、「むくみ」の改善に取り組んでください。ただし、エストロゲンは女性の体に非常に大切なホルモンですので、エストロゲンの過剰分泌を予防する方法は、過度に実施しないよう注意してください。