体内リズム(生体リズム)が狂っていると、眠たいのに寝れない、日中に眠たくなるなど、日常生活に支障がでてきます。人間jは一日の活動時間のうち3分の1を睡眠に費やす必要があるため、毎日元気でいるためには良質な睡眠が不可欠です。

 

体内リズムが整うと、気分が晴れたり、体調がよくなったりと良いこと尽くしですので、率先して体内リズムの改善に努めていきましょう。

 

 

問題は「意思」より「リズム」の乱れ

 

「夏休みは早寝・早起き、きちんとした規則正しい生活を送りましょう」と、小・中学校の先生たちの注意を受けたものです。ところが夏休み中に昼夜の生活が逆転し、そのうち学校が始まっても、元に戻せなくて不登校になってしまった生徒がいます。

 

大人でも、朝起きられずになかなか出勤できない人、ようやく出勤しても体調がおかしくなり仕事に支障が出てしまっている人などが増えてきたといいます。

 

こうした人たちは、以前なら「意思薄弱」「自堕落」などと精神面の弱さを指摘されましたが、最近の研究で約1日を周期とした生体リズム「概日リズム」の乱れが原因であることが分かってきました。

 

地球の公転による「季節リズム」

生体リズムというのは、地球の公転や自転に合わせた人体の生理的なリズムのことです。人間だけでなく地球上の生物ならばみんなもっているといわれるリズムで、公転(1年周期)に関係した「季節リズム」としては、鳥の渡りやクマの冬眠などがあります。

これに関連して、ヒトの病気には、毎年の秋から冬にかけて気分が落ち込み、うつ状態となって過食や過睡眠の症状がみられる「冬期うつ病」が知られています。

 

地球の自転による「概日リズム」

自転に伴う昼夜(明暗)の繰り返しを基本につくられているのが、約24時間周期の「概日リズム」(サーカディアン・リズム)で、特に医学的に重要視されています。

人における概日リズムの例としては、体温があります。体温は午後4?7時に最も高くなり、夜になるに従って低下して早朝の4?7時に最低となり、その後再び上昇に転じます。 こうしたヒトの体温リズムは、昼夜の明暗サイクルに一致して変化することが分かっています。

また、人のホルモンの分泌にもリズムがあります。副腎皮質ホルモンは、睡眠中の後半に分泌されます。人の成長を促す成長ホルモンは深い睡眠中に分泌されます。まさに「寝る子は育つ」という諺の通りですね。さらに自律神経のうち交感神経は昼間に、副交感神経は夜間に働きが活発になるといったリズムもあります。

 

リズムを刻む体内時計

季節リズムや概日リズムなどの生体リズムをつくっているのが、私たち生物がもっている「体内時計」です。哺乳類の場合、体内時計は脳の視床下部の「視交叉上核」にあることが実験によって明らかにされています。視交叉上核というのは、左右の目の視神経の束が交叉する地点の上にある一対の神経核です。

 

朝の光で時報合わせ

「時計」という限り、リズムを刻む起点となる時刻合わせが常に必要となります。生体において、テレビやラジオの時報の代わりになっているのが実は、朝に目から入る光なのです。

人間を含む地球上の生物は、だんだん昼間の時間が長くなる、あるいは短くなるといった日長時間の変化を感じて季節リズムをつくります。毎日の概日リズムにも、朝の光の影響が強く作用しているのです。

 

 

概日リズムの周期は1日25時間!?

 

早起きすると早寝する

朝の光と密接に関係しているのが睡眠です。朝起きて目から太陽光が入ると、体内時計はその14~15時間後に眠り入るように準備をします。夜のその時間に、睡眠を促すメラトニンというホルモンを、脳の松果体から分泌し始めるようにセットするのです。

逆に、夜の時間帯に人工的に強い光を浴びせると、概日リズムの周期は延長し、入眠のタイミングも遅くなると言われています。

 

朝の光を浴びないと・・・・

では、朝の光をまったく浴びないと、人間の体はどのようなことになるのでしょうか。これに関する実験は世界各国で頻繁に行われていますので、その一例をご紹介しましょう。

23歳男性が室内に入り、20日目までは外界と同じ昼夜のリズムで生活していました。それまでは、きちんとした24時間周期で睡眠と覚醒のリズムが得られていました。

ところが21日目からは外界から遮断し、一定の明かりだけで、時間の感覚をなくしたまま生活してもらいました。その結果、その日から睡眠時間帯(入眠から覚 醒までの時間帯)は約1時間ずつ後ろにずれ、睡眠・覚醒の周期が約25時間となりました。そして外界との遮断から約2週間後には、この男性の昼夜が、通常 の生活とはまったく逆転してしまったのです。

 

社会生活による24時間周期

上の実験例のように、人を含む昼光性動物の概日リズムは正確に24時間周期ではなく、それよりもやや長めとなっています(夜行性動物はやや短め)。人の生体の周期は実際には約25時間ですが、朝に浴びる光や食事を取るタイミング、出勤・登校時間などの社会的因子によって、うまく24時間周期で生活しているわけです。

ところが、夜型の生活や夜勤を長く続けていると、体内時計を調整することができず、社会生活に適応できなくなってしまいます。 この状態は「概日リズム睡眠障害」と呼ばれ、睡眠相後退症候群、非24時間睡眠・覚醒症候群、睡眠相前進症候群──などがあります。

 

 

乱れたリズムの治療例

 

では、どのようにして乱れたリズムを整えていけばよいのでしょうか。やはり最も有効な手段となるのが、早寝早起きを習慣化して、毎朝太陽の光を浴びるということです。しかし、忙しいなどの理由で簡単にはできない人もいるでしょう。そのような人は、さまざまな「療法」を活用して改善を図っていく必要があります。

 

治療法

入眠時刻を徐々に遅らせることで睡眠相(睡眠時間帯)を整える「時間療法」や、朝日の代わりに照度2500~5000ルクスの人工光を2時間程度当てる「高照度光療法」、ビタミンB12やメラトニン、睡眠薬などを用いる「薬物療法」があり、これらを複合する場合もあります。

 

睡眠相後退症候群の症例

これは、睡眠相が遅れた状態のまま、慢性的に固定された状態です。 睡眠は十分に取れているのですが、定刻に出勤・登校できないでいる場合です。 思春期から青年期に発症することが多く、夏休みなどの長い休暇中の昼夜逆転生活、受験勉強などが誘因となります。

〈症例=17歳・男性〉

高校2年の1学期から時折、午前3時まで入眠できないことがあった。夏休みになると午前6時に入眠し、午後3時ごろに起きるという昼夜逆転の生活となってしまった。9月になり、学校も始まったので昼型の通常生活に戻そうと努力したが、戻せないために来診した。

早く入眠するのは困難なので、時間療法によって入眠時刻を徐々に遅らせ、メラトニン投与の薬物療法と併合して、午後10時ごろに入眠できるようになった。

 

非24時間睡眠・覚醒症候群の症例

睡眠相が約25時間の周期で、毎日約1時間ずつ後退している場合です。睡眠相が定まらないだけに、患者さんの社会的不適応も特に深刻です。

〈症例=43歳・男性〉

仕事熱心で夜遅くまで働くことが多かった。41歳ごろから約1カ月周期で夜間不眠や日中の眠気、全身倦怠、筋肉痛、めまい、集中力低下などの症状が約10日間ずつ出現するようになり来診した。

内科的には慢性疲労症候群も疑われたが、自由に寝起きさせたところ、入眠時刻が毎日1時間ずつ遅れることが判明した。直腸温をモニターしながら、夕方に高照度光療法を行って睡眠相を夜間にリセットし、その後さらに朝の高照度光療法で固定した。

 

睡眠相前進症候群の症例

睡眠相が極端に前進した状態で、高齢者に多くみられます。「年寄りは早寝・早起き」と言われる通り、概日リズムの周期が24時間よりも短くなったのが原因と考えられます。

〈症例=56歳・男性〉

若いころから生活は規則正しい方だった。40代後半から午後11時に就寝し、午前5時半に起床していた。50歳を過ぎたころから、夜に眠くなる時刻が早まり、午後8時には起きていられないほどになった。その代わり、午前3時半には目覚めてしまうようになった。

早 朝の植木の世話や車での通勤、さらに会社の植物の手入れなどと、午前8時の始業以前に太陽光を2、3時間も浴びていることが分かった。このため午前8時ま ではサングラスを使用するように指導。次第に夜遅くまで起きていられるようになり、約1カ月後には午後11時から午前5時までの睡眠が取れるまでになっ た。

 
 

日常からの予防法

 

朝早い時間(午前6~7時ごろ)に、日光浴をすることが大事です。(夜中にコンビニなどの強烈な照明を浴びることは、入眠・覚醒時間や生体リズムを乱すので好ましくありません)

 

そのために、ベッドはなるべく窓際に置き、ブラインドやカーテンを開けておきましょう。また、起きてすぐラジオやテレビをつけてください。そうすることで、脳が”起きる”ということを勝手に習慣化してくれます。

 

昼間にどうしても眠たければ、寝ても問題ありません。ただし、昼寝をすることで夜寝れないという状況が続く場合には、頑張って起きておくか、仮眠程度にしておきましょう。眠たい時には外に出て光を浴びる、風に当たるなどして、気分転換をしましょう。

 

また、夜にどうしても寝れない場合には、寝る前に適度な運動をしたり、30分程度の入浴がおすすめです。体が温まることで眠気が起き、時間がかかることなく入眠できます。

 

間違っても、夜のうちに人工的な光を浴び続けないようにしてください。今では寝る直前までスマホで遊ぶ人が非常に多いのですが、スマホからはブルーライトという光が放たれているため、この光を浴び続けることで脳が睡眠の準備ができません。

 

体内リズムは1習慣程度で整いますので、改善に向かって取り組んでいる間は、できる限り寝る前に人工的な光を浴びないようにしましょう。代替えとして、読書などがよいのではないでしょうか。

 

 

時差ぼけの克服法

 

時差の大きい地域間を、ジェット機で高速移動すると起きるのが「時差ぼけ」です。これも概日リズム睡眠障害です。出発地の時刻(明暗周期)に同調していた体内時計が、到着地の明暗周期と大きくずれることで発生します。

 

症状としては、到着地の時刻に合わせて生活しようにも、夜になかなか入眠できず、昼に過度の眠気が襲います。おまけに作業能力は低下し、消化器症状も出るなど心身は絶不調という状態です。こうした時差ぼけ強さや持続は、一般に、西方向よりも東方向に飛行した時の方が著しいといいます。

 

例えば、日本から西方向のヨーロッパ主要都市(時差約8時間)に飛行した場合。現地の夜間に睡眠を取ろうとすると、日本の時刻では約8時間遅く床に入ることになります。これは夜更かしと同じなので、入眠しやすく睡眠も十分取れます。

 

ところが日本から東方の米国西海岸に行った場合、夜間の睡眠は時差の関係で日本よりも約7時間早く取ることになります。これではすぐに寝つかれず、体内時計を早めて同調させることも困難です。

 

この東方向への旅行で有効なのは、高照度光を利用して生体リズムを到着地の時刻に同調させる方法です。到着地の昼間に屋外で太陽光を浴びてリズムの前進を促し、さらに運動などによる疲れで、眠りにつきやすくするのが効果的です。