妊娠中の女性は、通常より約20%程度のエネルギーを余分にとる必要があります。しかしながら、赤ちゃんのためにしっかり食べようと思って、過量の栄養を摂ってはいけません。というのも、妊娠中は、放っておいても食欲が増加するからです。

 

もちろん、ビタミンやミネラルといった栄養素は十分に摂る必要があります。ただ、エネルギーは350kcal程度しか増やしてはならず、それ以上のカロリーを継続的に摂りつづけていると、難産になる危険性があります。ゆえに、妊娠中にはしっかりとした食事管理が大切です。

 

 

妊娠中に必要となる栄養素

 

妊娠中に、特に不足になりやすい栄養素は、「カルシウム」「鉄」「ビタミンD」「ビタミンB6」「葉酸」「亜鉛」の6つです。胎児はママから栄養をもらって大きくなっていくため、これらの栄養素をしっかり摂れるよう、バランスのとれた食生活を送ることがとても重要なのです。

 

①カルシウム

日本人は日ごろから不足しがちなのがカルシウム。妊娠してない時期でも常に10%程度不足していると言われています。ママのカルシウム摂取量が不足すると、胎児の為に身を削って補給することになります。つまり、ママの骨からカルシウムを取り出してしまうのです。結果として母子ともに骨が弱い状態になることもありますので、積極的に摂取するようにしてください。

≪カルシウムを多く含む食品≫

■牛乳・乳製品

牛乳なら200cc飲めば約200mg(0.2g)摂取可能。毎日たくさん牛乳やヨーグルトを摂られるときは、カロリーに注意。低脂肪のものを。チーズ、ヨーグルトなど。

■小魚・海藻

いわし、桜えび、ししゃも、ひじきなど

■緑黄色野菜

小松菜、ちんげん菜などのの葉もの、ごま、菜の花、大根の葉など

■豆類

大豆製品として豆腐、油あげ、がんもどき、厚揚げなど。揚げ物はカロリーに注意

 

②鉄

カルシウムと同様に日本人に不足しがちな栄養素。月経の時に経血の量が多い人も鉄不足になりがちです。赤ちゃんは自分の血液をつくるための鉄分を、胎盤を通してママの血液から取っていくため、妊娠中は通常よりも約1.7倍もの鉄分が必要となり、不足すれば疲れやすくなったり、頭痛、めまいなど、ひどくなると鉄欠乏性貧血になります。

≪鉄分を多く含む食品≫

■魚や海藻類

ひじき、はまぐり・あさり・しじみなどの貝、煮干し、干しあみ、焼き海苔

■肉類

赤身の肉には鉄分が豊富。カロリーの取り過ぎを心配する人はバラ肉でなく、低脂肪の赤身(もも肉)を。鶏・豚・牛などのレバーが吸収率も抜群。

■穀類、豆類

ごま、大豆、きな粉

 

③ビタミンD

ビタミンDは妊娠中のカルシウムや骨の代謝に関係するビタミンで、カルシウムを骨や歯に定着させます。ただでさえ、吸収が悪いカルシウムなので、ビタミンDといっしょに摂取し、しっかり吸収することが大切です。必要摂取量は、通常時の3倍を目標にしましょう。また、ビタミンDは日に当たることで紫外線により体内で合成されるので、妊娠中も散歩などして日に当たる事も大切です。

≪ビタミンDを多く含む食品≫

肝油、バター、卵黄、シャケなど魚類、牛レバー、しいたけなど

 

④ビタミンB6

通常の食生活を送っていればほとんど欠乏することはない栄養素なのですが、妊娠中毒症の患者さんを診察するとビタミンB6の欠乏がみられることがあります。ビタミンB6やB12、ビタミンB群の仲間である葉酸の不足は、生活習慣病と深く関わっていることが欧米の研究でわかってきています。

≪ビタミンB6を多く含む食品≫

大豆、玄米、そば粉、レバー、豚肉、魚類など

 

⑤葉酸

葉酸は、ビタミンB群の水溶性ビタミンで、細胞の分化に不可欠です。このため、細胞の分化の盛んな胎児では、特に葉酸が重要です。また、受胎前後に十分量の葉酸を摂ることで、神経管閉鎖障害(しんけいかんへいさしょうがい)のリスクが低減できることが、多くの研究から明らかになってきた事で、非常に注目されている栄養素でもあります。

厚生労働省では、妊娠を希望するすべての女性に、1日400マイクログラムの葉酸を摂ることを勧めています。普段から葉酸をはじめとするビタミンを多く含む、栄養のバランスがとれた食事を心がけ、妊娠した時に胎児が問題無く成長できるようにしてあげたいですね。

≪葉酸を多く含む食品≫

ほうれん草などの葉物の野菜、果物、大豆、レバーなど

 

⑥亜鉛

細胞の増殖に必要な必須栄養素のひとつ。 細胞分裂を促すので、胎児の正常な発育と先天奇形の予防のためには、非妊娠時の1.3倍量必要であるとされています。母乳に多く含まれていますが、人工栄養で幼児を育てる場合は欠乏に注意する必要があります。

≪亜鉛を多く含む食品≫

魚類、貝類、肉類に多く、野菜や果物は少ない。

 

 

食生活のポイント

 

妊娠すると、周りから「ひとりの体ではない。ふたり分食べなくてはいけない」と言われる事がよくありますが、それは昔の話です。食生活が豊かな今はそんな事はありません。

 

確かに、ビタミンやミネラルなどの必要な栄養素は十分に摂取しなければいけませんが、カロリーを摂り過ぎるのは禁物です。現代の食生活はカロリーが高く、少し油断すると、高カロリー食になってしまいます。 日に3食(朝・昼・晩)きっちり偏りなく食べていれば、必要な栄養素はほとんど摂ることができます。

 

バランスのとれた食事を

貧血や妊娠中毒症は栄養の偏りも原因となっています。好き嫌いをなくして栄養のバランスのとれた食事をしましょう。妊娠中は、全般的に良質なたんぱく質やビタミン・ミネラルが特に必要になってきます。貧血になりやすいので、動物性たんぱく質や鉄分を多く含む食品をとり、牛乳、乳製品、小魚などカルシウムを多く含む食品も十分にとって骨を丈夫にしましょう。

妊娠初期・つわりの時期には赤ちゃんの分の栄養もそれほど必要ありません。吐いてしまったりして、赤ちゃんに大丈夫か心配になることも多いかと思いますが、焦らず食べられるものを食べて食欲が出るのをまてばよいのです。

妊娠後期には、大きくなった子宮が胃を圧迫するので、一度にたくさん食べられません。一日4食とか5食とかに分けて食べましょう。仕事をしていたりすると、朝食ぬき、または簡単な食事の人がいますが、朝・昼・晩 ともたんぱく質・ビタミン類がきちん取れる食事をとるよう心がけましょう。

 

肥満に注意

妊娠中に体重を大きく増やしてしまう人がいます。もともと痩せている人であれば、通常になるだけですので問題はありませんが、もともとが通常以上の人は、体重増加に伴う難産の危険性がつきまといますので、カロリーの取り過ぎを避け、肥満にならないように注意してください。

太りすぎることで難産のほかにも、妊娠中毒症を引き起こす危険性があります。1週間に500g以上増加しないよう、ウエイトコントロールをしっかり行いましょう。体重の増加は、妊娠全期間を通して7kg〜10kgにとどめるのが理想的。7kg~10kgというのは、胎児の体重も含まれていますので、自身の体重はそれ以下ということになります。(詳しくは「妊娠と肥満|太ることでの母児への影響と体重管理のポイント」をお読みください)

 

外食・加工食品等に注意

加工食品や菓子類はできるだけ避けましょう。妊娠を機に、色んな料理にチャレンジしてみるのも良いですね。電子レンジを活用することで油をカットできたりします。妊娠中もお仕事を続けていたりすると、外食の多い人も居るかもしれません。どうしても外食が多いとビタミン不足になりがちですので、サラダを追加するなどしてビタミンの摂取を心がけてください。

 

塩分のとり過ぎに注意

塩分の摂りすぎは、むくみの原因になります。酷い場合は妊娠中毒症に発展してしまいます。予防のため、日頃から薄味に慣れましょう。塩分は慣れるまでは面倒でも計算して食べると良いですよ。

 

タバコ・コーヒー等について

タバコの害は言わずとも普段からニコチンの害などの話を耳にされていると思います。妊娠が判った時点で必ずやめてください。緑茶・コーヒー・紅茶に関しては、カフェインが含まれているので飲まないほうが良いという意見もありますが、1日に1〜2杯であれば問題ありません。ただ、飲みすぎないように注意してください。

 

便秘や下痢を避けよう

普段お通じの良い人でも、妊娠中は便秘になりやすくなります。便秘にならないように水分はもちろん、野菜、くだもの、海草類を十分に摂るようにしましょう。下痢をしないように、食品の種類、量、調理法、衛生面に注意しましょう。生もの(刺身など)は鮮度に注意し、豚肉は特に火をよく通して食べましょう。

 

減脂・減糖のポイント

≪減脂のためのポイント≫

  1. 外食する時は和食を選ぶ
  2. 揚げ物にはラードは厳禁
  3. 肉は種類で選ぶ(牛・豚肉より鶏肉を。「ささみ」がベスト)
  4. 炒め物で油を引いたら、余分な油は一度捨てる
  5. 脂身は控える

 

≪減糖のためのポイント≫

  1. ソース・ドレッシング類は減糖タイプを使う
  2. フルーツは無糖ヨーグルトと一緒に食べる
  3. 砂糖を三温糖や黒砂糖などに変える
  4. 脂肪の多い食品と一緒に砂糖をとらない
  5. 空腹時は甘いお菓子を避けよう

 

 

さいごに

 

妊娠中は、胎児が栄養を吸収するため、通常よりも20%程度のエネルギーが必要となります。多くの女性が妊娠中に、体重が大きく増加しますが、これは十分な栄養素を摂れているということを意味してるのではなく、暴飲暴食によるカロリー過多となっているだけです。

 

栄養素を十分に摂取するためには、日頃の食生活に気をつける必要があり、バランス良く摂ることが大切ですので、摂取できていないと感じる栄養素は特に、積極的に摂取していくようにしましょう。