パニック障害の治療では薬物療法が最も効果的であり、今ではさまざまな薬が開発されています。種類によって効能が違ったり、向き不向きがあったりするため、即効性を求めるなら自分に合った薬を探すのが良いでしょう。

 

また、薬物療法以外にも効果が認められている療法がさまざまありますので、薬物療法で効果がみられない場合や副作用が強くでるという方はその他の療法で積極的に改善に取り組んでいきましょう。

 

 

薬物療法で使われる薬

 

大きく分けて「三環系抗うつ薬」「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」「セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)」「モノアミン酸化酵素阻害薬」の4種類がありますが、モノアミン酸化酵素阻害薬は日本では使用されていません。患者さんの症例や進展の時期に合わせて、使い分ける必要があります。

 

このうちベンゾジアゼピン系抗不安薬は、飲んでから20〜30分で効果が現れる即効性がありますが、長期の服用で依存性が出たり、服用中止のときに新たな症状が出る「離脱現象」がみられることもあります。三環系抗うつ薬は十分な効果の発現には10日から2週間かかりますが、抗パニック効果はベンゾジアゼピン系抗不安薬よりも優れています。しかし口渇や便秘、低血圧などの副作用で十分量を服用できない患者さんもいます。

 

SSRIは、服用初期にみられることもあるイライラ症候群や吐き気、頭痛などの副作用を乗り越えれば、三環系抗うつ薬やベンゾジアゼピン系抗不安薬よりも高い治療効果が得られます。十分な効果発現までには2週間ほどかかりますが、重篤な心毒性がなく、体重増加をもたらすことが少ない点で長期治療に適しています。欧米では、パニック障害の第一選択薬ともなってきています。

 

これらの特徴を生かし、即効性のあるベンゾジアゼピン系抗不安薬でまず治療を開始し、発作がコントロールできたら、三環系抗うつ薬かSSRIに切り換えていくのが実際的です。なお、ベンゾジアゼピン系抗不安薬のうちで、もっとも広く使われている「アルプラゾラム」は効果の持続が4時間ほどしかありません。

 

このため1日3回毎食後に服用するので、夕食前の午後5〜7時ごろに発作がよく起きています。この時間帯の発作を予防するには1日4回の服用にするなど、個別の薬の特徴もよく理解して使用することが大切です。

 

 

薬の服用期間

 

パニック障害は基本的には慢性の疾患なので、有効だった薬でも早期に中止すると、治療前の症状が再燃してくるのが普通です。治療期間についての十分なデータはまだありませんが、少なくとも1年から1年半の服用が勧められます。

 

薬による急性的な治療では優れた効果がみられますが、長期(6〜10年)の治療では、健康となるのは約30%、症状が少し残るものの改善するが40〜50%、改善がみられないのは20〜30%です。やはり、発症してから早期に治療を開始した人ほど、結果は良好です。

 

 

認知療法

 

 

パニック発作を起こしやすい人は、自分の身体症状に過度の関心をもっています。些細な身体的な変化を破局的な疾患の兆候と思い込み、さらに不安が増強するといった悪循環に陥ります。

 

認知療法はその悪循環を断ち切るもので、身体的に無理をしないよう生活指導し、身体の変化に気づいたときに気持ちを他に向けさせる思考転導法、リラクゼーションや腹式呼吸を用いたリラックス法などを活用します。

 

例えば、発作に耐えられるようにするため、「大したことではないのですよ」と指導します。そのために、発作のときに自分の脈拍を数えさせます。120から140になることがあっても、「そんなことでは死にません。怖がる必要はないのですよ」と教えるのです。

 

 

エキスポ―ジャー療法

 

エキスポージャーとは、ある状況にさらしたり、体験させたりする意味で、これまで避けてきた状況に患者さんを繰り返し接近させ、恐怖感が消失するまでその状況にとどまらせる行動療法です。たとえば、スーパーマーケットのレジの行列が怖くて買物に行けない主婦に対して指導されるのは、

 

●店の前まで行ってみる

●駐車場に車を止めてみる

●3つの品物を買ってみる

●品数を増やす

●計画を立てず、好きなものを買う

 

という段階的な練習方法です。

 

発作が起こらなくなったのに「どうしても第1歩が踏み出せない」という恐怖症の壁を破るには、単に励ますだけでは難しいものがあります。恐怖の程度を考えて、1歩ずつ実行可能なものから挑戦していくよう指導することが大切なのです。

 

 

日常生活での注意点

 

普段通り、臆病にならずに生活することです。しかし、薬で発作がうまくコントロールできるようになったからといって、いきなり以前の生活に戻してはいけません。

 

20歳の患者さんが、発作が1週間ぐらい止まり、「もう治った」といって車で遠出したところ、そこで再び発作を起こしたことがあります。初めは短い距離を運転するなど、徐々に元の生活を再開していくことです。また身の回りには、パニック発作を引き起こすいろいろな誘因物質もあります。

 

古くからの研究でよく知られているのは乳酸です。乳酸は筋肉中にもたまるので、激しい運動や労働、空腹時の労作などが発作の誘因となることもあります。さらに、コーヒーや栄養ドリンク剤、一部の清涼飲料水などに含まれているカフェイン。二酸化炭素も誘因となるので、空気の悪い場所にいることや、喫煙などは避けるべきです。

 

実例として、徹夜仕事に疲れ、元気をつけようと栄養ドリンク剤を飲んで発作を起こした人や、朝食もとらずに空腹のまま、たばこの煙が充満したパチンコ店で遊んでいて発作を起こした人もいます。アルコールについても、飲んでいるときよりも、酔いざめや二日酔いのときに発作を起こしやすく、かぜを引いたときにも発作が多くなるので要注意です。