そもそも「パニック障害」という病気は、米国精神医学会によって80年に不安障害の1つとして位置付けられ、92年には世界保健機関(WHO)の国際的な疾病分類にも含まれてから、世界的にも知られるようになってきました。

 

それ以前は、パニック障害は「不安神経症」の「不安発作」に相当するものとされていました。残念ながら日本の疾病分類(ICD‐9)では依然として不安神経症の扱いですが、専門の精神科医の間ではよく知られている病気です。

 

しかし、他の診療科ではパニック障害はあまり知られておらず、「過呼吸症候群」や「自律神経失調症」「不安神経症」「心臓神経症」などとして対処されているケースもあります。

 

 

世界的にも多く見られる病気

 

パニック障害の患者さんは、海外でも多くみられます。世界各地での疫学調査によると、一生のうちにパニック発作を経験する率は7〜9%、パニック障害にかかる率(生涯有病率)は1・5〜3・5%で、1年有病率は1〜2%です。年間100人あたり1人か2人がかかっている訳ですから、非常に多い病気と言えます。

 

患者さんは小児から高齢者まで、あらゆる年齢層にみられますが、特に青年期後期(20歳代前半)から30歳代半ばの働き盛りに発症することが多く、性別では、女性が男性の2倍以上と高率です。また、家に閉じこもっている不登校児(生)にも、パニック障害による広場恐怖が原因とみられる場合があります。

 

性格については、病気の影響の出ている患者さんが相手の調査となるので一概には言えませんが、傾向として「何とか自分で解決しようと頑張る人、そうしないと気がすまない人」、その半面、「自分の考えを主張できない」「神経過敏」「内向的」といった人に多い傾向があります。

 

しかしパニック障害は、その人の「性格」や「気のせい」、あるいは不安感から引き起こされるものではありません。

 

 

中枢神経系のバランスの乱れが主な原因

 

関連ページ:パニック障害の発生条件と診断基準

 

中枢神経系のバランスの乱れが、中心的な原因です。私たちの脳では、ノルアドレナリンやセロトニンといった神経伝達物質が働いて、神経細胞から神経細胞へと情報を伝え、正常な肉体的、精神的な活動を支えています。

 

こうした神経伝達物質の分泌バランスが崩れることで、パニック発作やパニック障害が起こると考えられています。

 

例えば、発作の症状としてよくみられる「動悸亢進」。心臓は自律神経の交感神経と副交感神経でコントロールされていますが、この自律神経のバランスが乱れて、動悸が起こりやすくなったもので、あくまでも心筋梗塞や狭心症のように、心臓そのものに問題がある訳ではないのです。

 

パニック障害の他の要因としては、発作が発症する前の半年以内に、何らかのストレス的な状況が続いて起きたケースも多くあります。

 

これは、例えば近親者との死別や転勤、昇進、引越しなど、日常生活上の出来事(ライフイベント)に関するもので、患者さんにとっては、健康な人以上に、悪影響が強く、不快なものと感じられているようです。

 

さらに遺伝的な要因もあります。一卵性、二卵性双生児の比較研究や家族調査から示唆されているもので、パニック障害患者の半数以上に同じ障害の家族がいるとの報告もあります。

 

これは遺伝子の異常による遺伝子病とは異なり、似たような体質の遺伝によるものと考えられます。

 

 

パニック障害の治療法

 

関連ページ:パニック障害は辛いもの!焦らずゆっくりがポイントです。

 

患者さんのパニック障害の進展過程に応じて、適切な治療を行う必要があります。治療の基本は患者さんへの教育と、パニック発作のコントロールです。

 

例えば、繰り返し襲ってくるパニック発作の正体がわからずに「何か重大な病気が隠れているに違いない」とおびえ、しきりに検査を求めてくる「心気症」の患者さんには、パニック障害の本態や原因、治療法、予後などについて正確に理解してもらうことが治療の第一歩です。

 

パニック発作のコントロールには薬物療法と、生活態度や考え方、リラックス法などを指導する認知・行動療法が有効です。初期の段階でパニック発作をなくすことができれば、障害のそれ以降の進展が防げます。

 

また、予期不安が強く、恐怖症性回避の行動が高度な場合は、まず薬でパニック発作を止め、発作が起こらないことを実感してもらった上で、それまで回避していたものに徐々に挑戦してもらう「エキスポージャー療法」を行います。

 

続発性うつ病の患者さんの場合は、意気消沈と自尊心の低下、持続的な緊張状態などが特徴ですので、精神療法も必要となります。