パニック障害を簡単にいうならば、突然の激しい動悸や息詰まりなどの身体症状とともに強い不安感、恐怖感に襲われる「パニック発作」を繰り返し、日常生活に深刻なさまざまな障害をきたしている状態のことです。パニック発作が起きたからといって、即パニック障害という訳ではありません。

 

患者さんがパニック発作を繰り返し、さらに「再びパニック発作に襲われるのでないか」という恐れ(予期不安)を抱いて生活しているのがパニック障害なのです。

 

さらに同じ「パニック発作」でも、パニック障害とは別のものがあります。例えば、高所恐怖症の人が高いビルの上から下を見ると怖くなり、めまいを感じたり、動悸が速くなったりしたときにもパニック発作に襲われますが、そのような発作は特別な状況以外のときには起こりませんので、パニック障害とは言いません。

 

パニック障害でのパニック発作とは、「いつ起こるか予測できない」のが特徴です。特に初回の場合は何の前触れもなく、思いがけないときに起こります。発作の頻度も「1日に何回も」という人や「週に1回」「年に1回」という人もいて、千差万別です。

 

 

パニック発作の診断基準

 

1、動悸、心悸亢進、または心拍数の増加

2、発汗

3、身震い、または震え

4、息切れ感、または息苦しさ

5、窒息感

6、胸痛、または胸部不快感

7、吐き気、または腹部の不快感

8、めまい感、ふらつく感じ、頭が軽くなる感じ、または気が遠くなる感じ

9、現実感消失(現実でない感じ)、または離人症状(自分自身から離れている)

10、コントロールを失う(または、気が狂う)ことに対する恐怖

11、死ぬことに対する恐怖

12、異常感覚(感覚まひ、またはうずき感)

13、冷感、または熱感

 

13の症状のうち4つ以上もつ場合がパニック発作と定義され、3つ以下の場合は「症状限定発作」とされます。このうち日本人に多いのは、心悸亢進と呼吸困難、めまい感です。パニック発作は突然に起きて、10分以内にピークに達しますが、持続は短く、多くは1時間以内に減弱します。

 

このため、救急車を呼んで病院に行っても、心電図に異常が現れず、精密検査でも原因はわからなかったというケースが多々あります。また同じ人でも、発作の度に出現する症状が違うこともあります。

 

 

3つの発生条件

 

パニック発作は、発生状況によって(1)予期しない発作、(2)状況依存性発作、(3)状況準備性発作の3タイプに分類されます。

 

(1)「予期しない発作」は、発作の始まりが誘発因子と関係がなく、思いがけないときに突然に起こる発作です。

 

(2)「状況依存性発作」は、発作に何らかのきっかけがあり、そうした状況や誘発因子にさらされた直後、あるいは、それを予期したときに起きます。これは、さまざまな精神科疾患でみられる発作です。

 

例えば、結婚式や会議などの人前でのスピーチや、レストランでの食事など社会的状況での行為を恐れる「社会恐怖」、イヌや高所などを異常に恐れる「特定の恐怖」を感じたときに生じます。

 

また、汚染に対して強迫観念のある「強迫性障害」の人がゴミに触れたときや、「心的外傷後ストレス障害」では、原因となるような出来事を思い出させるような刺激に対して発作が起き、「分離不安障害」では、家を離れたり、身近な家族から離れた時に発作が発生します。

 

(3)「状況準備性発作」は、ある状況や誘発因子にさらされたときに多くは起こりますが、必ずしもそれらとの関連性は弱く、そうした状況や誘発因子で必ず発作が起こる訳でもありません。

 

それは例えば、運転中に発作が起こりやすい人でも、かなりの時間運転を続けた後で発作が起こることもあれば、運転してもまったく発作が起こらないこともあります。

 

このうち、パニック障害に特徴的なものは、(1)の「予期しない発作」が本来のパニック障害の発作で、それが繰り返される(最低2回以上起こる)ことがパニック障害の診断の必須条件です。

 

(3)の「状況準備性発作」は(1)の変形と考えられ、パニック障害の経過が長引くに従ってしばしばみられるようになり、(2)の「状況依存性発作」も出てきます。

 

例えば、たまたま電車に乗っているときに「予期しない発作」に襲われた人はその後、電車に乗ることに対して「予期不安」をもつようになります。

 

どうしても電車を使わざるを得ない場合には、強い不安、緊張感をもちつつ電車に乗ることになり、そのため乗り込んだとたんにパニック発作(状況準備性発作)が起きることも少なくありません。このような経験が反復されると、電車に乗ると常に「状況依存性のパニック発作」がみられるようになります。