高齢社会を控え老人介護の問題がクローズアップされています。なかでも寝たきり老人の介護の問題は深刻になってきています。しかし、老人介護の課題として重要なことは、「寝たきり老人をつくらない」ことです。

 

わが国では高齢者の「寝かせきり」が「寝たきり老人を増やしている」という現実があります。これをふまえて厚生省では「寝たきりは寝かせきりから作られる、過度の安静 逆効果」という「寝たきりゼロへの10ヶ条」を策定し、寝たきり老人をゼロにという戦略を立てています。

 

そういう意味では老人介護に対する公的な施策も積極的にすすめられるようになってきています。

 

しかしながら、寝たきりや寝たきりに準ずるお年寄りを取りまく現実の状況には厳しいものがあり、お年寄りの世話をされている人の負担は大きくはかり知れないものがあります。

 

そこでお年寄りの介護が少しでも軽くなるためには、介護の知識やちょっとした工夫が必要です。一方お年寄り自身が、老いとの戦いや病気との戦いを通して、できるだけ寝たきりにならないよう積極的に努力をしているように介護をすすめていくことが重要です。

 

ここに老人介護の基礎的な方法をまとめてみました。老人の介護をされている方々に広く活用いただければ幸いです。

 

 

寝たきりをつくらないこと

 

老人介護の基本は言うまでもなく「寝たきりをつくらない」ことです。まず寝たきりはどうしてつくられるのかを考えて、寝たきりの原因を取り除いていくことが必要です。

 

寝たきりの要因は病気や老化だけでなく、老年期の心理的・社会環境的要因が複雑に関わっていることを知りましょう。

 

寝たきりの要因

1)身体的要因

 

①脳卒中、心臓病、関節リュウマチ、骨折その他による器質的な身体の機能の障害。

 

②老化による機能の低下。

 

2)心理的要因

 

①活動意欲の減退

動きたくない、年寄りだからもういいだろう、病気で動けなくなった身体はどうせもとに戻らないとあきらめてしまう。

 

②依存症の増大

何でもやってもらいたい、やってもらうのがあたりまえ。

 

3)社会環境的要因

 

①人的環境

家族の介護のあり方・お年寄りへの接し方、友人・知人の有無、仕事・役割の有無など。

 

②物理的環境

家屋の構造・住居の構造など。

 

ぼけの要因を知りましょう。

ぼけの要因は寝たきりの要因と密接な関係にある事を知り、両者を関連づけてお年寄りがかかえている問題を理解しましょう。

 

1)一次要因

老化・病気に伴う脳萎縮性変化・脳血管性変化など。

 

2)二次要因

①身体的要因

寝たきり、栄養不良、貧血、視力・聴力の低下、発熱など。

 

②心理・精神的要因

精神的動揺・混乱、不安、抑うつ、心理的防衛反応、適応性低下、廃用・性格など。

 

③社会環境的要因

環境の急変、退職、家族との別離・死別、介護者の気持ち・姿勢。人間関係、住居の状況、経済状態など。

 

 

寝たきりを防ぎましょう。

 

寝たきりをつくらないという方針のもとに厚生省は「寝たきりゼロへの10ヵ条」を出しています。この内容はそのまま老人介護の基本であると言えます。

 

また、お年寄りは介護者の気持ち、姿勢、態度に大きく影響をうけます。そこで介護者自身の考え方・心構えが介護の基本として大切になってくるでしょう。同時に介護者自身が健康でなければお年寄りにゆとりのある介護はできません。

 

「寝たきりゼロへの10ヵ条」

①脳卒中と骨折予防 寝たきりゼロへの第一歩
②寝たきりは 寝かせきりから作られる 過度の安静 逆効果
③リハビリは 早期開始が効果的 始めよう ベッドの上から訓練を
④くらしの中でのリハビリは 食事と排泄、着替えから
⑤朝おきて 先ずは着がえて身だしなみ 寝・食分けて生活にメリとハリ
⑥「手は出しすぎず 目は離さず」が介護の基本 自立の気持ちを大切に
⑦ベッド から 移ろう移そう車椅子 行動広げる機器の活用
⑧手すりつけ 段差をなくし住みやすく アイデア生かした住まいの改善
⑨家庭でも社会でも よろこび見つけ みんなで防ごう閉じ込もり
⑩進んで利用 機能訓練 デイ・サービス 寝たきりなくす人の和 地域の和

 

 

●介護のポイント●

①病気を予防しまた今よりも悪化しないように日常生活 への細かな目くばり、手くばり、心くばりをしよう。

 

②「できることは自分でする」を合言葉に、ほめて励まし、そっと手を添えよう。

 

③お年寄りが生きてきた過去などをその人の語るままに 聞き、その気持ちをうけとめよう。

 

④お年寄りに生き甲斐を、仕事や役割を奪わないで「年寄りだから何もしなくてもいいよ」という間違った「思いやり」はやめよう

 

 

日常の健康管理に注意しましょう

お年寄りの病気の現れ方には3つの特徴があります

 

①症状がはっきりせず、現れ方が遅い

②病気が重なり合い複雑なものが多い

③病気が長引き、なかなか治らない

 

以上の特徴から、お年寄りはどこまでが健康で、どこまでが病気なのか区別をつけにくい場合が多いのです。お年寄り自身も年のせいだと思っている事柄が実は病気の症状であって手遅れになったり、逆に自覚症状を訴えて病気と決めこんでいると、心配ないと医師から言われたりすることがあります。

 

従って、きめのこまかい観察をして異常を早く見つけ、早く処置する必要があります。様子が普段と違っていないか、機嫌はどうか、訴えは聞き流さないようによく観察し、観察したことを記録して受診のときに役立てましょう。

 

またかかりつけの医師をきめ、軽い異常でも相談する習慣をつくておくことが大切です。

 

 

異常がなくても定期的に健康診断を受けましょう。

 

老人健康法に基ずく健康診査が市町村長の責任で行なわれています。年一回のチャンスです。在宅で寝たきりの状態にある人またはこれに準ずる状態にある人に対して、訪問健康診査も行なわれています。積極的に受けましょう。

 

日常の健康観察

表情・・・苦痛、不快、不安、ぼんやり、 無気力、やつれ、悲しそう

食欲・・・食べる量の変化、嗜好の変化

大便・・・量、色、混入物、固さ、便秘、下痢、回数、臭い

小便・・・量、色、回数、混入物、臭い

眼・・・眼の輝き、充血、涙、めやに、まぶしい、まぶたのむくみ

口・・・口びるの色、舌の状態、口臭、ただれ、 歯の痛み、歯の抜け具合

のど・・・痛み、飲み込み具合、発赤、声のかれ、咳、痰の具合

皮膚・・・色、はれ、むくみ、傷、乾燥、発赤、よごれ

痛み・・・何時、どこが、どの程度、どのように痛むか

訴え・・・おしゃべりの具合、恐れ、甘え、物忘れの程度、苦痛

その他・・・嘔気、嘔吐、寝汗、耳鳴り、体重の増減、聴力、鼻水、薬の使用服薬状況

 

 

 

排泄は可能な限り自分でできるよう配慮しましょう。

 

誰でも排泄だけは人の世話になりたくない、自分の手でと願うものです。たとえからだが不自由でも、便所にだけは行こうとする努力が心に張りを持たせることになります。

 

少し時間がかかっても、あるいは手間がかかっても、面倒くさがらないで便所に行って用たしできるように、可能な限り最大限のお世話をしましょう。

 

便所にどうしても行けない場合は市販のポータブルトイレがあります。起き上がれない場合には、気兼ねなく、気持ちよく、楽に排泄が出来るように手際のよい介護をお年寄りは望んでいます。

 

しかし、どうしても出るのがわからなくておむつを使わなければならないという状態になったお年寄りの哀しみは、はかり知れないものがあります。おむつを当てるとそのショックで急に呆けてしまうこともあります。

 

おむつを使うようになっても、それが最後と思い込まないで、なんとかおむつを使わないように出来ないものかと、工夫をしなければなりません。

 

おむつをする時は、気兼ねをさせない優しさと励ましが大切です。また、おむつを使うようになると、床ずれもできやすくなるため、清潔に充分気を付けなければなりません。

 

排泄の世話は、お年寄りの人間としての尊厳に最も深く関わる場面であることを、しっかり肝に銘じましょう。

 

 

ポータブルトイレの使用方法

①起立しやすく、姿勢が安定し安楽なものを選びましょう。

 

②ベッドから降りやすいように、移動用バーなどをつけて工夫しましょう。

 

③トイレの下に滑り止めのゴムシートなどを敷き安定をはかりましょう。

 

④便器の下にちり紙を敷いておき、飛沫が飛んでこないようにしましょう。

 

⑤脱臭剤を室内噴射し、室内の臭気を防ぎましょう。

 

⑥排泄時のプライバシーを守るため、カーテンまたはスクリーンをして安心してもらいましょう。