乳首(乳頭)から急に汁のような分泌液ができることがあり、これは多くの女性が人生で一度は経験するものです。分泌液の色調には、「透明」「白色」「黄色」「赤色」「茶褐色」「黒色」「緑色」などさまざまで、多くはホルモンに伴う生理的な液漏れですが、場合によっては病気の可能性もあります。

 

特に血性の「赤色・茶褐色・黒色」や「緑色」の分泌液がでる場合には、病気の可能性が高いと言え、早急に原因となる病気の治療が必要になります。分泌量もさまざまですが、量はさほど問題ではなく、色調が重要な指標となりますので、色調ごとにどの病気が該当するのか把握しておいてください。

 

ただし、自己判断は危険です。生理的な液漏れと思っていても病気の可能性はありますし、最終的には検査しなければ分かりませんので、長く続く場合には婦人科または乳腺科へ受診してください。

 

 

時期別にみる液漏れの概要

 

まず、乳首(乳頭)から出る分泌液は、10代前半~50代前半頃まで出現する傾向があり、頻発する時期を大きく分けると「思春期」「成年期」「育児期」「更年期」となります。

 

■思春期

思春期は10代前半~後半のことを指し、この時期の分泌液の多くは“成長に伴うもの”で、病気が起因していることが少ないのが実情です。特に10代前半の女性のほとんどは、病気が関係していない単なる生理的な液漏れです。

 

■成年期

成年期は20~39歳までのことを指し、この時期に分泌液がでる場合には、さまざまな原因が考えられます。高プロラクチン血症や乳腺症、乳管内乳頭腫、乳腺炎・乳管炎、乳がんなどの病気もあれば、生理的な液漏れの場合もあります。

 

■育児期

育児期も同様に、さまざまな病気が絡んでいることが多く、特に授乳している方は、乳頭が通常よりも開いていることで、乳腺・乳管の損傷・感染が他の時期よりも多い傾向にあります。

 

■更年期

更年期は一般的に、40代以降のことを指し、成年期と同様に、さまざまな病気の発症の可能性があります。特に乳がんは、更年期の女性の発症率が高いため、乳がんの特徴である“しこり”がみられれば、早期発見・早期治療のためにも、できるだけ早く検査を行う必要があります。

 

 

考えられる主な病気

 

乳首(乳頭)から分泌液がでる主な病気には、「高プロラクチン血症」「乳腺症」「乳管内乳頭腫」「乳腺炎・乳管炎」「乳がん」などがあります。そのほか、ホルモンの活性化などによって、生理的に分泌液がでることがあり、これは特に10代の若い女性にみられます。

 

厳密に言うと、「生理的な液漏れ」は病気ではありませんので、心配する必要はありませんが、生理的な液漏れと思っていても、他の病気の可能性もありますので、自己判断は禁物です。

 

■生理的な液漏れ

女性の体はとても繊細で、男性とは異なり子供を産む・育てるという機能が備わっています。このことが影響して、時にホルモンが活性化することで、妊娠中や育児期でないにも関わらず、生理的に乳首(乳頭)から分泌液がでることがあります。

多くの場合、分泌液の色は透明・白色・黄色のいずれかで、片方だけではなく両側の乳頭から出来ることがほとんどです。特に気持ちが高ぶった時や、乳頭を強くつまんだ時に、透明・白色・黄色のいずれかの乳汁がでる場合には、生理的な液漏れの可能性が高いと言えます。

生理的な液漏れは基本的に短期的なものであり、たいていは自然に出なくなります。また、多くは10代や20代の若い女性にみられます。30代以降の女性の場合は、子供をみて母性が生まれた時に出やすい傾向にあります。(⇒乳房(おっぱい)がかゆく、変な汁(液体)が出てきたという人

 

■高プロラクチン血症

プロラクチンとは、乳汁の分泌を促すホルモンのことで、これが過剰にあることで妊娠中や育児期でないにも関わらず、乳汁が出ることがあります。高プロラクチン血症の原因となるのは、①腫瘍がある、②甲状腺機能の低下、③下垂体の障害、④慢性的な乳腺への刺激(性行為などによる)、⑤避妊薬の服用に伴うホルモンバランスの乱れ、などさまざまです。

高プロラクチン血症の場合も、生理的な液漏れと同様に、透明・白色・黄色のいずれかの分泌液が漏出し、多くは無月経または生理不順が同時に起こるため、透明・白色・黄色のいずれかの分泌液に加え、無月経・生理不順の場合には、高プロラクチン血症の可能性が高いと言えます。

 

■乳腺症

乳腺は、母乳を生成や分泌を促す働きをする臓器の名称で、その乳腺が炎症を起こしている状態を乳腺症と言います。乳腺症では、乳房に大小さまざまな硬いしこりが数多くでき、しこりの境界がはっきりしていないのが特徴です。

しこりが発生するために、多くの方が乳がんと勘違いしますが、乳腺症と乳がんは全く別ものであり、乳腺症が進行して乳がんになることもありません。多くの場合、しこりは生理前に大きくなり生理が終わると小さくなる傾向にあります。痛みを伴うことが多く、押す(圧迫)することで痛みはさらに強くなります。そのほか、乳房が張る場合もあります。

乳頭からの分泌液の色調は、主に透明・白色・薄赤色のいずれかであるため、これら分泌液に加えて、①大小さまざまなしこりがある、②しこりが生理前に大きくなり生理後に小さくなる、という症状が同時に発現すれば、乳腺症の可能性が高いと言えます。(⇒乳房(おっぱい)が硬く張って痛みが伴う「乳腺症」について

 

■乳管内乳頭腫

乳管内乳頭腫は、おもに乳頭の真下にある比較的太い乳管内に発生する良性の腫瘍のことを言います。ただし、末梢(先)の細い乳管内で発生することもあり、この場合には悪性化する可能性があるため、注意が必要です。

多くは中年女性にみられ、乳頭から粘り気の少ない透明の分泌液や、血の混じった薄赤色・濃赤色・茶褐色・黒色の分泌液が漏出します。分泌液の量はさまざまで、下着に少し付着する程度のものから、大量に出る場合もあり、個人差が非常に大きいのが特徴。また、乳房内(あまり突起しない)にしこりが発生することが多く、乳房が肥大化したり痛みが発生するケースもあります。

 

■乳腺炎・乳管炎

外傷や授乳などにより、乳腺・乳管が損傷することで白色や黄色をした乳汁が出る場合があります。また、それら損傷に伴い細菌感染が起こると、緑色や血の混じった薄赤色・茶褐色などの分泌液が漏出し、多くの場合、乳房が赤く腫れ熱を持つ、体全体に熱を持つ、乳房の一部または全体が強く痛む、などの症状が現れます。

乳首の損傷は、授乳期に赤ちゃんに母乳をあげる際に、赤ちゃんの頻回な吸入や乳歯により起こることが多いため、乳腺・乳房の細菌感染は主に授乳期の女性にみられる病気です。

しかしながら、性交による乳首の継続的な刺激が原因となって発症することもあります。また、スポーツなどで乳首が衣類に擦れることが原因となって発症することもあるため、年齢を問わず、すべての女性に発症しうる病気と言えます。

 

■乳がん(悪性腫瘍)

乳がんの症状は主にしこりであり、指で触った時にハッキリと分かるものや、境界がないものまでさまざまです。乳房にしこりができる病気は、他にも乳腺症や乳管内乳頭腫などがあり、しこりがある場合のほとんどが乳腺症や乳管内乳頭腫など、他の病気が原因となっていますが、しこりのみで病気の鑑別を行うのは非常に難しいため、しこりがある場合には早急に病院へ受診するのが得策です。

また、乳がんは血の混じった薄赤色・濃赤色・茶褐色・黒色などの分泌液がでることが多く、ほとんどは片方の乳頭(乳がんが片側の場合)から漏出します。そのほか、乳房がへこんでいる、乳房がひきつっているという症状も乳がんの特徴です。

 

 

分泌液の色調からみる病気の分類

 

上記を踏まえて、分泌液の色調ごとにどの病気が該当するのか以下に記します。一般的には、「透明・白色・黄色」は問題ない(軽度)、「赤色・茶褐色・黒色・緑色」は問題あり(中程度~重度)と認識してください。

 

乳首(乳頭)の分泌液に起因する病気の種類

 

■透明・白色・黄色

生理的な液漏れ、高プロラクチン血症、乳腺症、乳管内乳頭腫

 

■赤色・茶褐色・黒色

乳腺症、乳管内乳頭腫、乳腺炎・乳管炎、乳がん

 

■緑色

乳腺炎・乳管炎

 

乳腺症や乳管内乳頭腫は、分泌液の色調が透明~血性色とさまざまですが、多くの場合、病気の進行とともに色調が変化していきます。赤色・茶褐色・黒色といった血性色の分泌液がでる場合には、病気が進行しているため、継続的に発症している状態であれば、一度病院へ受診することを強くおすすめします。

 

 

症状からみる病気の分類

 

次に、各症状・病気の主な特徴を紹介します。分泌液の色調が同じでも、その他の特徴によって大まかに病気を特定することができますので、それぞれの病気の特徴を知っておきましょう。ただし、「自己判断は危険」ということは肝に銘じておいてください。

 

乳首(乳頭)から分泌液がでる病気の他症状

 

■生理的な液漏れ

透明・白色・黄色の分泌液、②分泌液が両方の乳首から漏出、③短期的で気持ちが高ぶった時のみ漏出

 

■高プロラクチン血症

透明・白色・黄色の分泌液(多くは白色)、②無月経または生理不順、③睡眠薬、精神安定剤、胃薬など服用後に分泌液が漏出

 

■乳腺症

赤色・茶褐色・黒色の分泌液、②大小さまざまな硬いしこりがある、③しこりは生理前に小さく、生理後に大きくなる(傾向)、④乳房またはしこりを押すと痛みが生じる、⑤乳房全体が張る

 

■乳管内乳頭腫

赤色・茶褐色・黒色の分泌液、②しこりがある、③乳房が張る(腫れる)、④痛みが伴う

 

■乳腺炎・乳管炎

赤色・茶褐色・黒色・緑色の分泌液、②膿状の分泌液、③乳房が張れて強い痛みがある、④乳房の熱感、体全体の発熱

 

■乳がん(悪性腫瘍)

赤色・茶褐色・黒色の分泌液、②しこりがある、③乳房がへこんでいる、④乳房がひきつる

 

これらはあくまで一般的な症状で、個人差があるため、すべてが該当するとは限りません。症状の程度によって異なりますが、簡単に把握するために、上の病気ほど軽く、下にいくにつれて重くなると考えてください。

 

つまり、「生理的な液漏れ」や「高プロラクチン血症」「乳腺症」は軽い病気で、基本的には経過観察または薬物治療のみで改善されます。反対に、「乳管内乳頭腫」や「乳腺炎・乳管炎」「乳がん(悪性腫瘍)」は中程度・重度の病気で、早期に治療すべき病気です。特に「乳がん」は早期治療が非常に重要な病気ですので、該当する症状が現れている場合には、早急に病院へ受診してください。

 

 

各病気の治療法

 

このように、乳首(乳頭)から分泌液がでる病気にはさまざまなものがあり、経過観察(生活の改善)だけで良いものや、薬で改善を図るもの、外科的手術が必要なものなど、病気の種類や症状・進行具合などによって治療法が異なります。

 

■生理的な液漏れ

生理的な液漏れの場合、治療の必要はありません。ホルモンが影響した一過性の症状ですので、基本的に症状はすぐになくなります。乳房が張ったり、痛みが生じる場合には、乳腺症や乳管内乳頭腫の可能性がありますので、その時は一度病院へ受診することをおすすめします。

 

■高プロラクチン血症

高プロラクチン血症の原因には、大きく分けて、ストレスなどによるホルモンバランスが原因となる「機能性高プロラクチン血症」、睡眠薬や精神安定剤などの薬物に含まれるドーパミン抑制作用が原因となる「薬剤性高プロラクチン血症」、脳内でホルモンの働きをコントロールする下垂体に腫瘍ができることで発症する「腫瘍性高プロラクチン血症」があります。

「機能性高プロラクチン血症」の場合は薬物治療が主体となり、「薬剤性高プロラクチン血症」の場合は原因となる薬の内服制限、または機能性と同様にプロラクチンを低下させる薬を内服することで治療を図ります。いずれも簡単に短期的に治ります。「腫瘍性高プロラクチン血症」の場合は、下垂体に腫瘍ができているため、外科的手術や放射線療法などにより、腫瘍を取り除く必要があります。

 

■乳腺症

原則として、乳腺症は治療の必要がなく、明らかな膿腫(膿のたまり)がない場合は経過観察(生活の改善:ストレスの除去、十分な睡眠、バランスのよい食生活など)、痛みが強い場合には乳腺に作用するホルモンをブロックする薬剤を用いて痛みを和らげます。

 

■乳管内乳頭腫

乳管内乳頭腫の治療実施の可否は、しこりの大きさや数で決定されます。乳管内乳頭腫は乳がんのリスクがあるため、しこりが大きい場合や数が多い場合には、外科的手術で除去する必要があります。ただし、外科的手術といっても通院で簡単に済む手術ですので、心配する必要はありません。なお、しこりが小さく数が少ない場合には、治療の必要はありません。大きくなってから手術で除去します。

 

■乳腺炎・乳管炎

乳腺炎・乳管炎は、細菌感染が原因となっているため、抗生物質を用いて治療を図ります。強い痛みや高熱がある場合には症状が進行している可能性があり、この場合には皮膚を切開して膿を外に出す必要がありますが、基本的には抗生物質のみで対応します。授乳中の方は授乳をやめ、乳汁がたまっている時にはマッサージや吸引などによって、人工的に乳汁を出してください。

 

■乳がん(悪性腫瘍)

乳がんの場合は、切除手術による治療が一般的です。初期のがんであれば乳腺の一部だけを切除し、化学療法・放射線治療を併用する「乳房温存療法」、乳腺だけを除去し皮膚や乳頭を残す「乳頭温存術」、乳房のみを切除し胸筋を残す「胸筋温存術」を行い、進行したがんであれば広範囲に切除する「ハルステッド術」など、外科的手術により治療を図ります。

また、症状や程度によって抗がん剤や抗ホルモン剤などを使用する「化学療法」や、再発防止や転移防止を主な目的として放射線を照射することで治療を行う「放射線治療」もあり、基本的には外科的手術で腫瘍を切除した後に、化学療法・放射線治療を行っていきます。

 

 

こんな場合は婦人科・乳腺科へ受診を

 

乳首(乳頭)からの分泌液は、女性の多くが人生のうち一度は経験するもので、初めての時は驚き、重大な病気なのかと心配になるはずです。原因の多くが生理的な液漏れですので、乳房の腫れや痛みがなく、分泌液の色調が透明・白色・黄色の場合には、ひとまず経過観察で構いません。乳房にかゆみがある場合には、分泌液が皮膚に刺激を与えることで生じることがほとんどですので、同様に経過観察で構いません。

 

分泌液の色調が赤色・茶褐色・黒色・緑色の場合は、「乳腺症」「乳管内乳頭腫」「乳腺炎・乳管炎」「乳がん」などが関与している可能性が高く、特に「乳腺炎・乳管炎」と「乳がん」は早急な治療が不可欠な病気ですので、赤色・茶褐色・黒色・緑色の分泌液は“異常”と捉え、少しでも早く婦人科または乳腺科へ受診してください。

 

また、しこりがある場合、乳房が張れている場合、乳房または体全体が発熱している場合も同様に、“異常”と捉え、婦人科または乳腺科へ受診してください。治療の開始が遅れると、その分だけ治療に時間がかかり、また外科的手術が必要になりますので、安易に考えないようにしてください。

 

しこりがある場合には「乳がん」が疑われます。ある程度、ご自身で検査することもできますので、自己検査した後、少しでも”おかしい”と感じた場合は、すぐに病院へ受診してください。乳がんの自己検査については、「自分で調べる乳がん検査|しこり・皮膚変化・分泌液で判断を」をお読みください。

 

 

さいごに

 

乳首(乳頭)から分泌液がでるのは、10代の若い女性から50代以降の女性までと、年齢に関係はありませんが、若い女性ほど病気の可能性は低く、高齢になるほど病気の可能性は高くなります。

 

もちろん、若い女性でも病気の可能性はありますので、①分泌液の色調が血性(赤色・茶褐色・黒色)または緑色、②乳房にしこりがある、③乳房が熱を帯びている・体が発熱している、④強い痛みがある、などの場合は一度、病院へ受診してください。

 

大丈夫だろうと軽視したり、自己判断するのは危険です。乳腺炎・乳管炎や乳がんなどの場合は特に、早期発見・早期治療が非常に重要ですので、検査という意味でも、症状発現時には病院への受診を強くおすすめします。