出産していないのに乳頭から白い汁のような分泌液が出る場合、不妊の可能性があります。汁の量が多くないからといって軽視するのではなく、少しでも異変があれば一度病院で診察されることをお勧めします。(関連:乳房(おっぱい)がかゆく、変な汁が出てきたという人

 

 

月経異常や排卵障害に関わることが多い

 

産褥期(さんじょくき)以外に乳汁の分泌を認める場合を乳汁漏出症(にゅうじゅうろうしゅつしょう)といいます。乳汁漏出がみられるときは、まず、総合病院の産婦人科を受診してください。その後、検査結果などにより必要に応じて、一般外科(乳腺外科)、脳神経外科などに、受診してもらうことも考えます。

 

乳汁漏出を訴える女性の約4分の3は無月経を伴い、無月経を認めないまでも、月経異常や排卵障害と結びついているものが多くあり、不妊症の原因となりやすいものです。

 

乳汁の産生には、脳の下垂体のホルモンの一つであるプロラクチン(乳汁分泌ホルモン)が必要です。このため、乳汁漏出を訴える患者には、高プロラクチン血症(血中ホルモン15ng/ml以上)を示す人が多数います。プロラクチンは脳の下垂体でつくられ、間脳からのホルモン(プロラクチン抑制因子)によって調節されているため、間脳や下垂体に異常がおきると、高プロラクチン血症になります。

 

たとえば、頭部外傷、間脳腫瘍、胃や十二指腸潰瘍の薬・制吐剤、うつ病の薬・向精神薬などの服用中、下垂体のプロラクチン産生腫瘍(プロラタチノーマ)や甲状腺の機能が低下している場合、などがありますが、もっとも多いのは、間脳・下垂体のプロラクチン分泌調節機構の機能障害です。

 

この機能障害のうち、流早産や分娩後の授乳期間をすぎてからも、引きつづき乳汁漏出と無月経を認めるものが乳汁漏出症の約40%を占めます。無月経ではなく、すでに小さいお子さんをお持ちの場合は、産褥の授乳期間から引きつづいた乳汁漏出症の可能性が高いと言えます。また、とくに妊娠と関係なく、原因不明で乳汁漏出と無月経を認めるものが約30%を占めますが、どちらも、後述する薬物治療の適応となります。

 

このほか、成長ホルモン産生腫瘍(巨人症、末端肥大症)、乳房腫瘍(乳腺症、乳管内乳頭腫、乳がんなど)、多嚢胞性卵巣症候群、胸壁の手術瘢痕、やけど、帯状疱疹、髄膜炎などの乳頭から間脳に至る神経の連絡路の刺激状態で、乳汁漏出を認めることもあります。(⇒乳首・乳頭から分泌液(透明・白色や血液)がでる原因と病気の種類

 

 

検査結果によっては精密検査を要することも

 

問診で、妊娠との関係、月経異常の有無、服用薬剤などについて確認します。乳房、胸壁の視診と触診をし、乳房腫瘤の有無、胸壁の状態、乳汁漏出の程度、乳汁の性状(血性かどうかなど)を調べ、乳汁の細胞診を行います。乳房腫瘤や異常が疑われる細胞がみつかれば、患者に乳腺外科を紹介して受診してもらい、さらにくわしく調べることになります。

 

そのほか血中プロラクチン値、甲状腺ホルモン及び甲状腺刺激ホルモンの測定を行い、甲状腺機能の低下があれば、甲状腺の精密検査を行うか、甲状腺の専門医にくわしく調べてもらうことをすすめます。

 

プロラクチンが高値(とくに50ng/ml以上)を示す場合には、プロラクチノーマの有無を調べるため、頭部CTスキャン(コンピューター断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像)などの検査を行います。頭部に腫瘍が発見されれば、視野異常などを伴うこともあるので、眼科で視野検査を行うとともに、脳神経外科と今後の治療方針を相談します。

 

 

原因特定後は治療に専念すること

 

原因となる病気が明らかな場合はその治療を行います。すなわち、乳房腫瘍がある場合は、精密検査し、乳がんであれば外科的な治療を行います。また、高プロラクチン血症を認める場合、薬剤性であれば服用を中止するか他の薬剤に変更し、原発性甲状腺機能低下症であれば甲状腺剤を投与します。

 

プロラクチノーマで、視力や視野異常などの神経異常があれば、腫瘍の摘出術を行いますが、多くは口腔の奥から、侵襲の少ない手術ができます。これらの治療で、血中プロラクチン値が低下すれば、2〜3ヵ月以内に乳汁分泌は停止もしくは減少します。また、原因不明のものやプロラクチノーマのほとんどのもの、すなわち、プロラクチノーマでも小さいものや神経症状のないものは、薬剤で治療します。

 

薬剤としてはブロモクリプシンやテルグリドなどを1日1〜2錠、連日服用し、2週間ごとに乳汁分泌状態をチェックします。乳汁分泌が絞っても認められなくなっても、その時点からさらに2〜3週間つづけて服薬します。通常、最低でも1〜2ヵ月間は薬を必要とします。

 

妊娠を希望する患者の場合でも、基本的に治療方法は変わりません。先にも述べたように、種々の月経異常や無月経を伴うことが多いため、基礎体温を記録してもらい、治療によって、基礎体温がきれいな2相性を示すようになるか否かを観察します。また、血中プロラクチン値が正常範囲に低下しても、排卵障害が治癒しない場合は、排卵誘発剤などの治療を併用します。妊娠した場合は、通常、胎児心拍が確認できるまで薬物を継続してから中止します。

 

薬物療法は、医師の指示に従い継続して行うことが大切です。とくに高プロラクチン血症の治療薬はからだが慣れるまで、倦怠感、吐き気や嘔吐などの症状をひきおこしやすい特徴があります。低量から始めたり、夕食後に服用しはじめるなど、のみ方の工夫が必要ですので、症状が強ければ医師によく相談してください。

 

なお、乳首から分泌液(白い汁)が出る病気は実にさまざまあるため、「乳房(おっぱい)がかゆく、変な汁が出る場合の原因と病気」を一読ください。