生理中(生理痛)に吐き気が伴い、時には吐いてしまう女性は意外にも多く、腹痛や頭痛、体のだるさ、気分の低下など、生理中は非常に辛いものです。吐き気が伴うのは、主にプロスタグランジンと呼ばれる物質が強く影響していますが、ひどい吐き気に悩まされている方でも、“ある方法”により、ひどい吐き気だけでなく腹痛も緩和させることができます。

 

以下に生理中(生理痛)に伴う吐き気の原因と対処法について詳しくご説明しますので、吐き気に悩まされている方は最後までしっかりお読みいただき、生理時の辛い吐き気を乗り越こえてください。(関連:生理直前にお腹が痛い・張りがあるという場合の主な原因と病気

 

 

プロスタグランジンとは

 

生理時の吐き気は、プロスタグランジンの分泌が主な原因です。プロスタグランジンは、エストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(卵胞ホルモン)によって作られた子宮内膜(赤ちゃんのベッド)の組織や経血を体外に排出するための物質です。

 

プロスタグランジンは、通称“痛みのホルモン”とも呼ばれており、「炎症・痛み」「血圧・心機能・胃腸機能と消化酵素の分泌調整」「腫れの調整」「分娩誘発などの生殖機能の制御」「腎機能と流動調節血液凝固と血小板凝集」「各種ホルモンの産生」「神経伝達」などの作用があります。

 

生理時の腹部・腰部の痛みもプロスタグランジンが原因となっています。また、生理時にのみ起こる偏頭痛もプロスタグランジンの仕業です。(関連:毎回続く生理痛「月経困難症」の発生機序・診断・治療などについて

 

生理時の腹痛・頭痛などの痛みだけでなく、たとえば打撲など日常的な痛みに対しても、脳が損傷を検知→プロスタグランジンの産生・分泌→知覚神経の刺激、という流れを経て痛みを感じるのです。よって、多くの鎮痛剤には、プロスタグランジンの産生を阻害する成分、またはプロスタグランジンの分泌を抑制する成分が含まれています。

 

 

プロスタグランジンによる吐き気

 

生理時には、不要となった子宮内膜の組織や経血を体外に排出するために、多くのプロスタグランジンが産生・分泌され、「腹痛・腰痛」「頭痛」「胃酸・胃液の分泌」などの影響によって“吐き気”がもたらされるというメカニズムがあります。

 

●腹痛による吐き気

プロスタグランジンは子宮を収縮する働きを持っています。また、腸の収縮運動を促す作用も持っており、これが腹痛を引き起こします。腹痛を伴うと、体(特に腹部)に変な力が入るとともに気分が悪くなることで、吐き気の症状が現れます。

 

●頭痛による吐き気

生理特有の頭痛は「月経偏頭痛」と呼ばれており、プロスタグランジンの分泌に伴い、脳内の血管が拡張することで頭痛が起こります。また、生理1日目・2日目の頭痛は、エストロゲンとプロゲステロンが深く関係しています。2つのホルモンは、生理前に分泌量が増加し、生理が開始される頃に減少します。この分泌量の急激な変化により、血中のセロトニン濃度が過度に減少し、血管が拡張することで頭痛を引き起こします。

脳内の血管が拡張し、周囲にある三叉神経を刺激することで頭痛が起きますが、この時、吐き気をコントロールする嘔吐中枢にも刺激が伝わるため、吐き気や嘔吐などの症状が現れます。

 

●胃液・胃酸の影響による吐き気

プロスタグランジンには様々な種類があり、そのうちの1つ「プロスタグランジンI2」が胃粘液の分泌を促す作用を持っています。これにより、胃液(胃酸)の量が増加して、腹部の違和感や胸やけ、胃のムカムカなどの症状とともに吐き気の症状が現れます。

 

 

生理中の吐き気を抑える方法

 

上述の通り、生理中の吐き気の原因はプロスタグランジンの産生・分泌によるものであるため、プロスタグランジンを抑えることが根本の改善策となります。それゆえ、プロスタグランジンを抑える薬、いわゆる鎮痛薬を服用するのが最も効果的です。

 

しかし、プロスタグランジンは子宮内膜の組織や経血を体外に排出する働きを持っており、生理に欠かせないものであるため、それを抑制するのは体にとってあまり良くはありません。それゆえ、その他の方法を試しても効果が現れない場合にのみ、最終手段として鎮痛薬を服用するようにしてください。

 

●腹部を温める

湯たんぽやカイロなどにより、腹部を温めることで吐き気が緩和されます。腹部(腸)が温まると精神が安定し、吐き気だけでなく頭痛・腹痛・腰痛など生理に伴う全ての痛みが緩和されます。腹部とともに、腰部も一緒に温めることでさらに高い効果を得ることができます。

 

●飲食物により緩和を図る

「生姜」「ミント」「ハーブ」などは、吐き気を抑える効能を持っています。生姜は体を温めたり胃腸の機能を高める作用、ミントは神経系の麻痺・爽快感・胃液の分泌抑制、ハーブ(カモミール・ナツシロギクなど)はリラックス効果・消化促進により、吐き気を和らげます。

生姜であれば生姜湯、ミントであればミントティー、ハーブであればハーブティーと、気軽に摂取できるため、一度試してみてください。冷水ではなくお湯で飲むことで、お湯による温暖効果・リラックス効果を得られますので、生姜湯・ミントティー・ハーブティーはお湯で飲むようにしましょう。

 

●胃液・胃酸を抑える薬

もともと胃が弱いという方は、プロスタグランジンの分泌による胃液・胃酸が吐き気をもたらしていることが多いのが実情です。胃液・胃酸による吐き気の場合には、胃液・胃酸を抑えるのが最も効果的。
市販薬であれば胃腸薬、漢方であれば安中散(あんちゅうさん) 甘草瀉心湯(かんぞうしゃしんとうかげん) 柴胡桂枝湯(さいこけいしとうかげん) 黄連湯(おうれんとう)などを服用しましょう。

 

●ピル・鎮痛剤の服用

上記の方法で効果がみられない場合には、低用量ピルや鎮痛剤の服用を検討しましょう。ピルや鎮痛剤はプロスタグランジンの産生・分泌を抑える効果があり、即効性のある生理痛や生理痛に伴う吐き気を和らげてくれます。

プロスタグランジンの産生・分泌量が多すぎる場合(目安として生理痛がひどい場合)には第一選択となります。しかしながら、副作用がでる可能性もありますので、注意して服用する必要があります。

 

 

吐き気を増悪させてしまう行動

 

また、以下のような行動によって吐き気が増悪してしまいますので、吐き気がある時は特に注意してください。

 

●体を冷やす

体が冷えることでプロスタグランジンの分泌量が増えてしまいます。腹部のみを温めるという方が多いのですが、手足の先や肩を主として冷えていきますので、腹部だけでなく体全体を温めるようにしてください。また、体を締め付けるような服も冷えの原因になります。少しゆったりとした服を着るようにしましょう。

冷え性や低体温の方は、生活習慣に問題がある場合がありますので、適度に運動する、規則的に食事を摂る、喫煙・飲酒を控えるなど、生活習慣の改善に取り組んでください。

 

●胃に負担をかける

プロスタグランジンとは直接的に関係しませんが、胃が荒れたりするとムカムカ感などによって吐き気が増悪してしまいます。生理の時は脂っこい物や甘い物、辛い物を食べたくなりがちですが、甘い物や脂っこい物、辛い物は胃に負担をかけますので、控えるようにしましょう。

また、吐き気があるからといって、空腹で居続けるのはおすすめしません。空腹時も胃酸や胃液が分泌され続けて胃が荒れ、胸焼けなどの症状によって吐き気がひどくなります。吐き気がある時は食べたくない気持ちになりますが、消化の良いものを少量食べるようにしましょう(後述)。

 

●ストレスを受ける

ストレスは、冷え性や自律神経の乱れ、胃酸過多による胃への負担など、体にさまざまな悪影響を与えます。その結果、吐き気が増悪してしまう可能性がありますので、リフレッシュなどをしてストレス発散に取り組みましょう。ストレス発散法として、アロマやハーブも効果的です。

 

●仰向けで寝る

特に痩せている方は、仰向けになることで腹部が圧迫される場合があり、腹部の圧迫によって吐き気が悪化することがあります。また、仰向けの寝ている時に吐いてしまった場合には、嘔吐物が食道に詰まって窒息する恐れがありますので、吐き気のある時は横を向いて寝ることをおすすめします。

 

 

吐き気のある時の食事

 

吐き気がある時は、食べたくない気持ちになりますが、食事を摂らないと体温が下がってしまいますし、空腹が続くことで胃酸や胃液によって胃が荒れて吐き気が増悪してしまう可能性がありますので、少量でも食べるようにしてください。以下にて、吐き気がある時の食事のポイントと食品についてご紹介します。

 

食事のポイント

●消化の良い物を食べる

脂っこい物や固い物など、消化の悪い物を食べると胃に負担がかかってしまいますので、消化の良い物を選んで食べるようにしてください。また、熱い物も胃への負担が大きくなるので、冷たい物を食べるか熱い物は少し冷ましてから食べるようにしましょう。

 

分類食品
穀類お粥、うどん(煮込み)
液状物野菜スープ、味噌汁、ゼリー
果物りんご、バナナ、桃、ぶどう、メロンなど
野菜大根、キャベツ、ほうれん草、かぼちゃ、じゃがいも、里芋など

 

●体が温まる物を食べる

体が冷えるとプロスタグランジンの分泌量が増えてしまいます。ネギと生姜は、体を温める効果がありますので、積極的に摂取するようにしましょう。煮込みうどんに薬味として加えるのがおすすめです。

 

●口当たりの良い物を食べる

食欲がない場合には、雑炊やそうめん、冷やっこ(豆腐)、ゼリー、スープなどの口当たりの良い食べ物を試してみましょう。

 

●小分けにして食べる

吐き気がある時に無理にたくさん食べると、かえって吐き気が強くなってしまいます。規則的な食事は非常に大切ですが、吐き気がある時には無理をせず、食べられる分だけで構いません。

 

生理痛・吐き気を抑える栄養素・食品

また、マグネシウムやビタミンB6、ビタミンE、DHA、EPAなどの栄養素を取り入れることで、生理痛が緩和され、生理痛が緩和されることで吐き気も収まるケースがありますので、生理の時は積極的に摂取するようにしましょう。

 

●マグネシウム・ビタミンB6

マグネシウムやビタミンB6には、子宮の収縮を抑える働きがあります。プロスタグランジンによる腹部痛やそれに伴う吐き気は、子宮が収縮することで発生しますので、吐き気がある時はもちろん、生理中はマグネシウムとビタミンB6を積極的に摂ることをおすすめします。

 

栄養素多く含む食品
マグネシウムアーモンド、海藻類、豆腐・豆類、魚介類(マグロ・サンマなど)
ビタミンB6肉類・レバー、魚類(マグロ・カツオなど)、バナナ

 

●ビタミンE・DHA・EPA

ビタミンEやDHA、EPAには、血行を促進する作用があります。ビタミンEはかぼちゃや卵、DHA・EPAは青魚などに多く含まれていますので、特に冷え性や低体温の方は、積極的に摂取しましょう。

 

栄養素多く含む食品
ビタミンE種実類(アーモンド・ヘーゼルナッツなど)、魚類(アユ・イクラ・ウナギなど)、野菜類(かぼちゃ・モロヘイヤ・かぶ・ほうれん草など)、卵
DHA・EPAマグロ、マイワシ、サバ、ハマチ、ブリ、サンマ、ウナギなど

 

マグネシウムやビタミンB6、ビタミンE、DHA、EPAなど、生理痛を和らげる栄養素を摂取することで吐き気の緩和にも繋がります。これらの栄養素は、サプリメントからでも摂ることができますので、激しい腹部痛があるという方はマグネシウムとビタミンB6、冷え性や低体温の方はビタミンEとDHA・EPAのサプリメントを常備しておくのも良いでしょう。

 

 

まとめ

 

生理中の吐き気の90%以上はプロスタグランジンが影響しています。特に、生理痛(腹痛・腰痛・頭痛)がひどい方は吐き気もひどく、時には吐いてしまうこともあるでしょう。痛みが強い上に吐き気をもよおすのは非常に辛いものですが、上述の方法の中にアナタに効果が現れるものがあるはずです。

 

痛みによる吐き気、胃液・胃酸による吐き気など、人によって吐き気が起こる原因は異なりますので、まずは「腹部・腰部を温める」を試し、効果がなければ「生姜・ミント・ハーブを摂取する」「胃液・胃酸を抑える薬を服用する」を試し、それでも効果がなければ最終手段として「ピル・鎮痛剤の服用」を検討してください。