不妊といえば、生理不順や排卵障害、子宮内膜症など、女性側の原因が多いものの、男性側が原因となる場合も多々あります。女性であれば、生活上において自身がわかることが多いのですが、男性の場合には、精液や精巣の状態などを詳しく検査する必要があります。

 

そのため、長年妊娠が確立しない場合には、女性側だけでなく、男性側も検査を行い、積極的に治療に取り組まなければなりません。

 

 

男性の不妊症とは

 

WHO(世界保健機関)の基準では、1回の射精量が2ml以上、精液1mlあたりの精子の数が2000万以上、運動率50%以上、奇形率15%以下を正常としています。したがって、精液検査を受けてこの基準に達しない場合を不妊症と診断しています。

 

男性不妊は大きく分類すると、精液中の精子の状態に問題がある【造精機能障害】、精子の輸送経路に問題があって精液に精子が混じらない【精路通過障害】、性交時に勃起や射精が不完全な【性行為障害】があります。

 

造精機能障害

無精子症

精液中に1匹も精子がいない状態。より詳しい検査をして、精巣や精巣上体に精子がいれば顕微授精を行うことができます。

 

乏精子症

精子の数が少ない状態。治療の目安として、基準をやや下回る程度であれば、タイミング法で様子を見ます。2000~3000万以下なら人工授精、300万以下では体外受精、100万以下なら顕微授精の対象となります。

 

精子無力症

精子の運動率が悪い状態。経過や状態により人工授精や体外受精、顕微授精を行います。

 

精子奇形症

奇形の精子が多い状態。正常な精子を選別して体外受精や顕微授精をします。

 

精管通過障害

閉塞性無精子症

精管の一部が欠けていたり、狭くなっているために精子が通過できずに無精子症になっている場合をいいます。先天性の場合もありますが、小児期の鼡径ヘルニア術後、外傷や炎症の後遺症でなることがあります。軽度であれば手術で精管をつなげます。重度でも精巣や精巣上体から精子を採取して顕微授精することができます。

 

精巣上体炎

結核や性行為感染症などによって精巣上体炎(副こう丸炎)を起こし、精管をふさぐことがあります。炎症が治っても精管がふさがったままの場合には、精巣や精巣上体から精子を採取して顕微授精します。

 

逆行性射精

精液がペニスの方に流れず、膀胱へ射精されてしまう状態。先天性以外に、前立腺の手術や糖尿病が原因になることもあります。逆行性射精の治療は困難ですが、膀胱から精子を採取して人工授精や体外受精を行うことができます。

 

性行為障害

ED

いわゆる勃起不全のことを言います。勃起しないために、射精の段階に移ることができず、物理的に受精に至りません。

 

射精障害

性器の異常などで器質的に不可能であったり、心因性で治療に時間がかかりそうな場合には、精巣や精巣上体から精子を採取して顕微授精することができます。腟内では射精できないがマスターベーションでなら射精できるというのなら、マスターベーションで採取した精子で人工授精することも可能です。

 

 

ご夫婦で協力を

 

妊娠は夫婦の共同事業です。不妊治療にはご主人の協力が欠かせません。最近ではかなり協力的な男性も増えてきたように思いますが、やはり中には検査や治療に消極的な男性もおられます。不妊治療では女性のからだのサイクルに合わせて行われることも多く、ご主人の協力が必要な時期にその検査ができなければ、最低1カ月の時間が無駄になることもあります。

 

さらに、心身にかかる負担も女性の方が男性よりはるかに大きいのです。どうか、ご主人は奥様をいたわり励まして、ご夫婦で気持ちを揃えて取り組んでください。

 

たとえ無精子症と言われてもあきらめないで

不妊の原因は男性・女性に半々と言われています。でも男性は特に自分に原因があると認めたがりません。だから検査に消極的になるわけですね。いまや男性不妊は劇的に解決されつつあります。たとえ性交不能や無精子症といった重度の障害があったとしても、精巣上体や精巣から元気な精子が1匹でも採取できれば、技術的には妊娠は可能なのです。

 

多くの医院では、無精子症と診断された方の精巣精子を凍結保存し、その凍結精子を解凍して用いた顕微授精により40%の妊娠率を得ており、ほとんどの方が児を得ておられます。結果をおそれず、積極的に検査を受けてください。

 

 

男性が受ける検査

 

男性不妊の検査には、「精液検査」「ヒューナーテスト」「精巣検査」「精巣生検検査」「精巣精のう造影検査」などがあり、必要に応じて尿検査や精液培養検査などを行います。

 

精液検査

精液の濃度(精子の数)、運動率、運動性、奇形などを検査します。この検査は、女性の基礎体温が高温相の時期または月経時から排卵期の前までの時期に行います。体調に影響されやすいので、結果によっては後日再検査を行うことがあります。

 

ヒューナーテスト

排卵日頃に夫婦生活をもっていただき、精子が子宮内に上がっていってるかを検査します。

 

精巣検査

精液検査の結果が悪かった方に受けていただきます。触診や超音波検査で形態異常や停留こう丸の有無、精索静脈瘤の有無などを調べます。

 

精巣生検検査

無精子症や乏精子症の場合、精巣の造精機能を調べる検査です。精巣の組織を少し採取し、顕微鏡で造精機能や精子がいるかどうかを調べます。この際に採取した精子を凍結保存しておくと、治療(凍結精子による顕微授精)に役立てることができます。

 

精巣精のう造影検査

無精子症や乏精子症の場合、精子の輸送経路に問題がないかを調べる検査です。精管に造影剤を注入してX線撮影し、精管を造影剤が通る様子を調べます。

 

その他

必要に応じて染色体異常やホルモンの検査を行います。精液中に白血球が多い場合は炎症や感染症(クラミジアなど)の可能性があるので、尿検査や精液の培養検査を行います。(関連:クラミジア|感染者数と、感染経路・潜伏期間など病態生理について