生涯一度も腰痛を経験しないという人は少ないのではないでしょうか。人間がまっすぐ立った時、腰から上を支えているのは主に腰椎。腰椎を取り巻く筋肉などの仕組みからみて、腰の骨には負担がかかりやすくなっているのです。

 

「二本足で歩くようになった人類の宿命」とも言える腰痛。日常生活の中にある「腰痛の原因」を見直すとともに、腰痛を遠ざける環境づくりを考えてみましょう。

 

 

腰の痛みを伴う病気

 

腰痛の原因はさまざまです。婦人科、泌尿器科、精神科、内科・外科領域など、整形外科領域以外で、約20の疾患が挙げられます。

 

腰痛が起きたらまず、他の病気との鑑別診断のために整形外科を受診するのが良いでしょう。整形外科領域では16の疾患で腰痛が起こりますが、その約半数は原因がはっきりしない「いわゆる“腰痛症”」であると言われています。

 

 

負荷の蓄積が椎間板を傷つける

 

ヒトの背骨は、首から腰までレンガを積み重ねたようにおよそ30個の小さな骨が連結してできています。下の方の5個が腰椎です。

 

一つ一つの椎体の間には、背骨にかかる衝撃を吸収し、分散させるクッション役の「椎間板」という軟骨があります。

 

椎間板は、水分を多く含むゼラチン状の髄核を、コラーゲン線維の層である線維輪が取り囲むような構造になっています。髄核は、加齢に伴って水分が減少し、流動性を失います。

 

腰痛の多くは、こうした椎間板と椎間関節の老化現象をベースとして発生します。ここに、限界を超える負荷がかかると、椎間板の線維輪が裂け、ヘルニアなどの症状が誘発されるのです。

 

「限界を超える負荷」と言っても、一度に急激な負荷が加わるケースは少なく、その多くは、日常の何気ない動作が負荷となって線維輪に小さな裂け目が生じ、その蓄積によって徐々に症状が進行するといったケースです。

 

たとえば「ぎっくり腰」。低い場所にある物を拾おうとしたときや、洗顔しようと前かがみになったときなどによく起こります。腰椎の前湾が不自然に弱められたり強められたりすると、椎間板の前後いずれかに圧力が集中します。

 

ぎっくり腰はこの時、線維輪に裂け目ができたり、椎間関節が捻挫を起こした痛みなのです。ぎっくり腰を経験したことのある場合には、ヘルニアなどへの警戒が必要です。

 

 

コルセット役、腹筋・背筋を鍛えよう

 

背骨の下の方で上半身を支える腰椎の周りは、意外にひ弱な構造です。お腹から腰にかけて、しっかりした物は腰椎のほかには腹筋、背筋だけ。その筋肉が弱ってくると、どうしても腰椎に負担がかかってしまうのです。

 

予防には、腰周りの「コルセット役」である腹筋、背筋を日ごろから鍛えておくこと、腰椎の前湾が不自然に弱められたり強められたりすることを避けることが重要です。

 

 

日常の注意事項として、

 

(1)敷きぶとんは硬めのものを。横向きで丸くなって寝るか、ひざの下にふとんを入れて腰への負担を減らす

(2)立って仕事をする時は、片足を約15センチの台に乗せて、腰の前かがみをなくす

(3)座った時は、深く腰かけ、足を組む

(4)物を持ち上げる時は、しゃがんで物を体につけて立ち上がる

(5)ハイヒールの高さは3センチ以下

 

——などが挙げられます。