低肺機能とは、一般的に「慢性呼吸器不全」「呼吸器機能障害」のことを指し、酸素を取り込む量が少なくなることで、生活に影響がでてくることが多々あります。もちろん、上手に付き合っていくことで、支障なく生活を送っている方も多いのが実情です。

 

ここでは、肺結核後遺症を含めた低肺機能における疑問の解決や、生活上の注意点などについて、よくある質問を参考にしながら詳しく解説していきます。低肺機能でお悩みの方は参考にしてください。

 

 

どんどん痩せていく人と太っていく人の違いとは

 

一般的には、慢性呼吸不全があると、栄養状態も悪化して痩せてくるのが普通ですが、中には呼吸不全があるにもかかわらず、肥満で困っている患者さんもいます。実は慢性閉塞性呼吸器疾患(肺気腫、慢性気管支炎等)にも、痩せるタイプと太るタイプの患者さんがあって、有名な呼吸器学の英語教科書でも、ピンクパッファー、ブルーブローターと分類されるくらいです。

 

難しい分類がどうであれ、極端な痩せも肥満も望ましくはありません。痩せている患者さんで、しばしば呼吸不全が急に悪くなる人は、その度に食欲が落ちて栄養状態も悪化し、それでも日常生活のために動かなければならないので、さらに痩せてしまう、そんな悪循環の繰り返しです。一般的に、糖尿病や高脂血症を合併していない限り、バランス良く十分な栄養をとってもらいたいものです。

 

慢性呼吸不全の入院時の治療は呼吸リハビリテーションと栄養療法であると古くからいわれています。息切れがするのについ無理をして運動してしまうことはありませんか。そんなとき、運動して疲れたにもかかわらず、今一歩食欲がわかないことがあるでしょう。

 

一般的に極端な低酸素状態では、体の諸臓器も十分に機能することができず、日常生活をするうえで各臓器がうまく歯車が噛み合わないような状態になってしまいます。普通はこんな状態では、食欲がわかず、たとえ無理に食べても消化管も十分に機能していないので、消化・吸収・代謝ができず、食べたものが栄養にならないのです。

 

適度な運動は重要なことですが、過度な運動は避けるべきであり、息切れを感じたら休憩すべきです。いつも息切れを感じるようなら、薬(のみ薬と吸入薬)や在宅酸素療法が必要でしょう。

 

一方、痩せようと思っても、息切れがあるわりに食欲が旺盛で、肥満状態の患者さんもあります。基本的には、肥満は栄養摂取量と運動量のアンバランスから起こるわけですが、人各々の体質、生活環境により程度は異なります。

 

体質と言ってしまえばそれまでですが、このように肥満となる患者さんの生活を細かに観察すると、栄養状態はよいが、息切れするためにあまり運動しない→運動しないから太る→太るから少し動くだけで息切れがでて、余計に運動しない→さらに肥満になる、といった悪循環が繰り返されているようです。多分、息切れに対する感受性が高く、低酸素血症に対し、敏感に息切れを感じるのでしょう。

 

こういった患者さんは、特に肺気腫の患者さんによくみられる傾向があります。今は肥満の薬もありますが、よほどの肥満でない限り薬を使うべきでなく、適度な運動で肥満を治すべきです。歩いたり、体操をしただけで息切れが現われるようなら、座ったままで手足の屈伸運動をするとか、読書、書き物、編み物などをしてください。

 

息切れがあるからといって一日中ぼーっとしていると余計に肥満になります。一日中脳を使っているだけでかなりのエネルギーが消費されるものです。また、食事は炭水化物を控え、蛋白もバランス良く摂取し、できれば腹八分目にとどめておくのが良いでしょう。

 

 

肺結核後遺症で高所での呼吸困難、早足歩行や坂道での息切れについて

 

地球上では、標高が高くなるほど、大気は薄くなり、それにあわせて空気中の酸素の量も低下します。健康人でも、3000m以上の登山をするときは、訓練が必要ですし、訓練した者であっても、急に高地に行くと、高地性肺水腫といって呼吸困難に陥ります。

 

人間の体のしくみからいえば、2000m以上登れば呼吸困難が出現するのは当たり前のことなのです。また、早足や坂道で息切れが出現するのも、結核で肺が破壊されていれば、肺の予備力が低下しているので当然のことと考えられます。一旦破壊された肺が元どおりになることはないので、自分自身の肺と上手につきあっていくことが必要なのです。

 

息切れを悩むのではなく、息切れしない程度に、休み休み運動してください。登山をするときも、健康な人よりもじっくり時間をかけて、休み休み登ってください。休んでも呼吸困難が出現するときは、それが限界ですので、無理をしないでください。

 

 

肺結核後遺症での風邪を引いた時の生活の仕方について

 

風邪をひいたときの生活を心配する前に、まず風邪にならないように気をつけてください。風邪はウイルスによって感染するので、細菌のように抗生物質で治すことはできません。現在風邪のウイルスを殺す薬は市販されていないのです(インフルエンザウイルスに対する薬は現在開発中であと数年で市販されるでしょう)。

 

不幸にして風邪になってしまったら、①暖かくして良く睡眠をとり、②規則正しく栄養をとり、③うがいをし、④外出を控え、⑤呼吸器科医に対症薬(発熱、のどの痛みには消炎鎮痛剤、咳には鎮咳剤、痰には去痰剤といった具合に、普段からかかりつけの呼吸器科医に相談するのが望ましい)を処方してもらう、といったことでしょう。

 

しかし、大切なことは予防です。普段から季節のかわりめや、冬には風邪になりやすいことを認識し、規則正しい生活、バランスよい食事、十分な生活、外出時の防寒など、気をつけるとともに、家族などが風邪をひいたときはマスクで予防し、近くで会話しないなどの注意が必要です。

 

 

診察をうけた医院によって診断や見立てがバラバラ

 

日進月歩の現代医学において、個人の医師がすべてを完全に網羅するのは不可能な状態になっています。このような状況のなかで、医院を開業する医師は、家庭医として広く浅く診療したり、内科の中でも、循環器科とか消化器科とか神経内科といったようにある特定の領域を得意として、地域の中で役割分担しています。

 

現代医療ではCTやMR、多項目呼吸機能検査、血液ガス分析、心臓カテーテル検査などから総合して診断しています。少なくとも以上の検査は医院では実施が不可能な検査であるし、また高度の技術と高価な設備を要し、公立の総合病院でないと実施不可能でしょう。

 

呼吸困難(息切れ)は心臓病でも、呼吸器病でも、神経疾患でも出現します。極端な場合、肥満のみで息切れが出現する場合もあります。正確な診断を希望されるならそれにみあった精密検査を受ける必要があります。

 

専門医の立場からいえば、個人の医院には、待ち時間が少ない、検査が少ない、自宅から近い等それぞれの利点があり、総合病院にも長所・短所がありますが、個人の医院を「ハシゴ」するのではなく、疑問があればかかりつけの家庭医から地域の総合病院の専門医に紹介してもらうべきです。最近は個人の医院も患者さんに対するサービスに心がけており、頼めば地域の専門医を紹介してもらえるはずです。

 

 

在宅酸素療法での酸素不足による身体機能の障害について

 

一番よく知られているのは、低酸素状態が長く続くと「肺性心」といって、心臓に負担がかかってきます。症状としては、顔や足がむくんだり、不整脈がでたりします。重症の肺性心は心電図でもわかりますが、一般的には入院の上、心臓カテーテル検査を受けると詳しく調べることができます。

 

肺性心は心臓でも主に右心系(右の心臓:右心室・右心房のこと)の障害ですが、進行すると左心系(左心室・左心房)にも障害があらわれます。この頃には、血圧低下、心拡大、動悸も現われてきます。また、消化管の運動・消化・吸収も障害されるので、便秘になったり、痩せたりします。肺性心により肝臓も腫れるので、肝障害が出現することもあります。

 

多少の低酸素では脳神経が障害されることは少ないようです。慢性呼吸不全があるからといって、極端な記憶障害がないのは、人間の体が、低酸素になっても脳に酸素を送ることが最優先されるからです。しかし、極端な低酸素が長く続くと、神経質になったり、性格がかわったり、物忘れがひどくなったりします。さらに低酸素が進むと、意識低下が出現します。

 

在宅酸素療法は、これらいくつかの臓器の障害を少なくして、より人間らしい生活を送れるように取り入れられたものであり、在宅酸素を受けたからといって、もともとの肺の病気が良くなるわけではありません。しかし、低酸素による様々な障害を或る程度防ぐことはできるでしょう。一般的に安静時の動脈血酸素分圧が40torr以下になると、様々な臓器障害が出現しますが、理想的には在宅酸素療法によって、動脈血酸素分圧が60torr以上に保ちたいものです。

 

 

呼吸方法について

 

呼吸機能障害に応じて呼吸訓練をおこなうことを、呼吸リハビリテーションといいます。呼吸リハビリテーションは、基礎疾患に応じて、リラクセーション、口すぼめ呼吸、腹式呼吸、運動訓練等から構成されます。呼吸リハビリテーションご最も効果があるのは、慢性閉塞性肺疾患(COPD:肺気腫、慢性気管支炎等)です。

 

呼吸リハビリテーションを一朝一夕で身に付けるのは不可能で、一般的には入院の上、約1ヶ月から2ヶ月かけて、毎日理学療法士の訓練を受けながら、段階をおって身に付けます。最近は呼吸理学療法士の数も少しづつ増え、地域の中核総合病院なら呼吸リハビリテーションを受けることが可能になりつつあります。さらに、呼吸器科を標榜する医院では、通院で呼吸リハビリテーションを試みるところもあります。