肝臓は他の臓器と比べると強く、たくましい存在です。それゆえ、肝臓による疾患は気づきにくく、発病してしますと治すのも困難。肝臓病の予防は非常に大切となり、発病した人も、優しく労わってあげる必要があります。

 

 

健康に必要不可欠な肝臓の働き

 

体重の約50分の1を占めている肝臓は、体のなかではもっとも大きい臓器。まさに肝心要の働きをしています。ところが“沈黙の臓器”といわれるように、多少の障害が起こっていても、自覚症状が現れにくく、検査によって初めて病気に気づくという場合が多いのです。そのために、症状を自覚したときにはすでに手遅れということもまれではありません。

 

別名”体内の化学工場

 

肝臓は、実にさまざまな働きをもつ臓器であることから、“体内の化学工場”といわれています。なかでも重要な働きのひとつが、体外から取り入れた物質の「代謝」。

 

「代謝」とは、ある物質を別の物質に変える働きをいいます。消化管で吸収された栄養をたっぷりと含んだ血液が肝臓に流れ込むと、肝細胞はその栄養をとり込み、体の要求するかたちにつくりかえたり、いったん貯蔵し、必要に応じて血液中に送り出したりしています。

 

こうした肝臓の働きがあるからこそ、たんぱく質、糖質、脂質、ビタミン、ミネラルなどの栄養素を体にとり込むことができるのです。

 

 

肝臓の解毒作用

 

もうひとつ大事な働きが「解毒」。体のなかの有害物質を分解・排除する解毒作業も、肝臓のもつ大切な機能です。「解毒」とは、有害物質を酸化や還元、抱合(他の物質で包み込む)などによって、水に溶けやすい形にかえ、尿や胆汁のなかに排泄する働きのことです。

 

たとえば、体内で発生するアンモニアは、そのままの状態で血液に入って脳に運ばれると、意識障害を引き起こしますが、肝臓はこれを尿素などの無害な物質に変えて、尿として体外に排出しています。また、アルコールや薬物も同様に肝臓で解毒作業が行われ、体に悪影響を及ぼさないようなかたちに変える働きをしています。

 

もうひとつの肝臓の働きには、消化液のひとつである胆汁の分泌や、止血に必要な血液凝固物質の生成などもあります。胆汁は脂肪の消化を助ける役目のほかに、肝臓の解毒の働きとあいまって、老廃物を体外に排泄する役目をしています。

 

 

肝疾患で圧倒的にウイルス性肝炎

 

こうした多様な働きをする肝臓にトラブルを起こす犯人は、解毒に関わるアルコールが主犯と考えられがちですが、実はアルコールが原因になっている障害はごくわずか。日本でもっとも患者数の多い肝臓病は肝炎、なかでもウイルスが原因となっておこるウイルス肝炎です。

 

ウイルスによる急性肝炎の症状は、基本的にはかぜの症状によく似ています。重症度によっても違いますが、体のだるさや食欲不振、吐き気、腹痛、下痢、微熱、頭痛、関節の痛みといったものが主な初期症状で、さらに進行すると黄疸の出る場合もあります。

 

また、急性肝炎が急激に悪化すると劇症肝炎となります。これは、先にあげた症状が強く現れるとともに、出血しやすい、異常行動をとる、けいれんをおこす、ついには昏睡状態に陥るケースもあります。

 

 

肝疾患によるウイルス性肝炎のタイプ

 

肝疾患の約80%を占める肝炎のウイルスには、A型、B型、C型のほかにD型、E型、G型の6種類が確認されていますが、ウイルスが原因とみられる輸血後感染はあとを絶たず、世界中で新しい肝炎ウイルスに対する研究が続けられています。

 

A型肝炎は、汚染された水や食べ物を媒介に発生するため、ときとして流行性となりますが、1~3カ月でほとんどが治り、慢性化することはありません。

 

B型はキャリア(保菌者)の血液や体液が主な感染経路となっており、とくに多いのは母親から乳幼児の子どもに感染するケースで、院内感染や夫婦間での感染もあります。母子感染により幼児期に感染するとキャリア(持続感染)になり、20歳前後で肝炎を起こすケースがあります。無症状のことも多いので、定期的な検査が必要です。成人になってから感染した場合には、慢性化しません。

 

C型肝炎は、輸血による感染が多いのですが、まれには院内感染や性行為による感染の可能性もあります。キャリアもありますが、成人になって感染した場合には、慢性化の傾向が強く、自然治癒は望めません。かなり高い確率で慢性肝炎に移行することが多いため、注意が必要です。C型をはじめとした輸血後感染は検査方法の開発で激減していますが、まったくなくなったわけではありせん。

 

またA型とE型は、飲料水や食物など、口から入るものから感染する、いわゆる経口感染が特徴です。海外旅行者が旅行先で感染するケースが多いといえますが、慢性化するおそれはまずありません。

 

A・B・C型は日本人に多く、ときに急激で広範な肝細胞破壊の結果、肝不全状態の劇症肝炎を起こすことがあります。D型はほとんどみられません。