骨粗鬆症の初期においては、症状が乏しく発見が遅れ気味です。痛みが出て病院へ行った頃には骨密度が低下している骨粗鬆症と診断されるケースが後を絶ちません。背骨・腰・膝などの痛みがあったら不安があってもまず病院へ行って検査を受けることが重要です。

 

生き生きとした老後の為に、不備な思いをしない為にも身体を支え軸となる骨の健康は必要不可欠なものです。ここでは、骨粗鬆症の予防に関係する食品やそれぞれの成分について解説します。

 

 

骨量が低下する理由

 

体内のカルシウムの99%は骨や歯に含まれている貯蔵カルシウムです。残り1%は血液中に含まれますが、その血液中のカルシウム濃度が低くなると骨からカルシウムが溶け出し骨密度や骨量が低下していきます。その理由についていくつか述べてみます。

 

■女性ホルモンの減少

閉経が近づくと女性ホルモンの分泌が減少し次第にホルモンバランスが崩れて行きます。そうすると血液中のカルシウム濃度が低下していきます。人間の身体にはそのような非常事態に対して自然な生体防御機能(ホメオクタシス)があるため、骨に貯蔵しているカルシウムが溶け出し、血液中のカルシウム濃度を安定させようとします。そのため骨からカルシウムが溶け出すのです。

 

■老化(加齢)

男女関係なく老化すると、腸管でのカルシウム吸収が悪くなり、血液中のカルシウム濃度が低下します。それを補うため骨からカルシウムが溶け出しカルシウム濃度を安定させようとします。

 

■リンの過剰摂取

ファーストフード・清涼飲料水・インスタント食品には、添加物としてリンが含まれています。本来なら、リンはカルシウムと一緒に働き、骨の形成に一役かっています。しかし、過剰に摂取した場合、腸管でのカルシウム吸収を低下させます。つまり血液中のカルシウム濃度が低下するため、骨からカルシウムが溶け出すことにつながります。

 

■タンパク質の過剰摂取

肉、卵、牛乳はタンパク質が多く含まれています。リンと同様に過剰に摂取した場合、逆に骨からカルシウムを溶け出させることにつながります。

 

■ビタミンD不足

ビタミンDは腸管でのカルシウムやリンの吸収を促進させたり、副甲状腺に作用して、カルシウム再吸収に働く副甲状腺ホルモンの合成・分泌を抑制し、腎臓でのカルシウム再吸収を高めるなどの働きがあります。そのため、ビタミンDが不足するとカルシウムの吸収をしにくくなります。

 

■ビタミンK不足

血液中のビタミンK濃度が低下すると骨折を招きやすくなります。ビタミンKは骨の丈夫さと関係しています。

 

■運動不足

適度な運動は、骨への負荷(刺激)となり骨量を維持するのに大変いいことです。一方、運動不足や寝たきりになると、骨への負荷(刺激)がかからないため骨量が低下して行きます。高齢者に多い寝たきりの状態では、骨への負荷(刺激)が少なくなるため更に骨量が低下して行きます。

 

■無理なダイエット

無理なダイエット法、特に食べないダイエットを繰り返し行うと、栄養不足となり、カルシウムをはじめ、マグネシウム・リンなども不足してきます。無理なダイエットは、体内バランスを崩すばかりかホルモンバランスまで崩れて行き、骨の健康を大きく損なう危険性があるのです。

 

■喫煙

喫煙を続けていると閉経を迎える年齢が早くなるばかりか、エストロゲン濃度が低くなると言われています。また、喫煙は腸管でのカルシウムの吸収を低下させるため、骨の骨量が増えないために、骨粗鬆症を早く迎える羽目になります。

 

骨量が低下する理由には様々な要因があります。骨粗鬆症という骨がスカスカになる病気は、その様々な要因を続けた結果なのです。要因を知り、早めの対策が老後の健康を大きく左右するのです。

 

 

カルシウムを多く含む食品

 

カルシウム(ミネラル)はビタミン同様、体内で作り出すことの出来ない微量栄養素の為、食品から摂取する事が大切です。国民栄養調査では、日本人の平均カルシウム摂取量は1日500mgで国が目安としている所要量600mgを大きく下回っています。1日の摂取上限は2500mgとされていることからもっと多くカルシウムを取る必要があります。

 

名称摂取量カルシウム含有量
ひじき100g1400mg
ゴマこさじ1杯25mg
サクラエビ20g220mg
ワカメ100g100mg
ヨーグルト100g100mg
牛乳100cc100mg
チーズ100g630mg
煮干10g220mg
いわし丸ごと2匹350mg
うなぎの骨微粉末1g259mg
サツマイモ100g32mg
昆布100g760mg
もずく100g100mg
しじみ100g320mg
とうふ100g120mg

 

食品からカルシウムを摂取する時の留意点

加工食品、ファーストフードの食品添加物にはリンと言うミネラルが多く含まれています。リンはカルシウムと一緒に骨の形成に大切な役割をしていますが、過剰に摂取した場合、逆にカルシウムを排出してしまう事が分かっています。現代人には不足していませんので、意識してリンを摂取してはいけません。

 

ファーストフード(加工食品)=リンの過剰摂取=カルシウムを排泄させる

 

牛乳にはカルシウム・タンパク質・脂肪分がバランスよく含まれ吸収の良い飲み物です。幼少の頃から成長期の間は、健康な身体作りにも牛乳は良いと思います。しかし、最近の研究では、40歳以降に過剰に摂取した場合、その高タンパクが原因となり、逆にカルシウムを排出させてしまうということがわかっています。

 

2000年3月に厚生労働省が「健康日本21」で発表しているのは、壮年期以上の1日あたりの牛乳の摂取目安は、130mlが望ましいとしています。これは過剰なタンパク質がカルシウムを排出させていることが指摘されているからです。骨粗鬆症と診断され、牛乳をガブ飲みするのは返って危険です。壮年期以降は他の食品でカルシウムの摂取を考えたほうが良いでしょう。

 

日本人は慢性的なカルシウム不足と言われていますが、世界中で牛乳摂取量が最も多いヨーロッパのノルウエーの骨折率は日本の5倍にも達し、老人の骨折率が牛乳摂取群で最も高い統計もあります。日本やノルウエーでも幼少の頃から牛乳やチーズ、バターの消費が多く高齢になっても身体に言いと思い込み、摂取を続けた結果、過剰なタンパクが原因で骨折や骨粗鬆症を引き起こしているようです。

 

 

ビタミンD-カルシウムの吸収を助ける

 

吸収されにくいカルシウムを腸管で吸収させやすくするために必要なのが活性型ビタミンDです。活性型ビタミンDはカルシウムの吸収を促進させると共に、血液中のカルシウムが不足すると骨からカルシウムを溶かし血液中に放出する働きがあります。つまり活性型ビタミンDはカルシウムの吸収だけでなく血液中や体液に含まれるカルシウムバランスを保つ働きもあるのです。

 

ビタミンDは日光の紫外線を浴びる事によって体内でも産生される成分でコレステロールの一種、ビタミンD3の前駆体で7デヒドロコレステロールが日光の紫外線によって肝臓と腎臓を経由してビタミンD3に変化するのです。体内でも作られる成分なので特別な心配はありません。

 

≪ビタミンDの1日摂取目安 100IU

ビタミンDを多く含む食材

生卵などかつお、さけ、まぐろ、いわし、さば、
豚ロース
キノコ類しめじ、干ししいたけ、えのきたけ、マッシュルーム、
その他生卵

 

≪ビタミンDを適度に摂れば(100~200IU)≫

  • 腸管でのカルシウムの吸収を促進させ骨まで届ける
  • 血中カルシウムが不足すると骨からカルシウムを溶かし血液中に放出し体内のカルシウムバランスを保つ働きがある
  • 筋肉の収縮に作用し痙攣などを予防する

 

≪ビタミンDを過剰に摂れば(1日2000IU以上)≫

  • 血液中のカルシウム濃度を上げ、内蔵や血管壁にカルシウムを沈着させるため尿毒症や高カルシウム血症のリスクを高める
  • 腎臓障害のリスクを高める

※一般的な食生活でのビタミンDの過剰摂取の心配はありません。

 

≪ビタミンDが欠乏すれば≫

  • くる病、ひどい虫歯、骨軟化症、老人性骨粗鬆症

 

 

ビタミンC-カルシウムの吸収を助ける

 

あまり知られてないことですが、ビタミンCを多く含む果物、野菜などにもカルシウムの腸管での吸収を助ける働きがあります。この作用をキレート作用と言い、ビタミンCがカルシウムなどのミネラル分を包み込んで吸収させる働きがあります。

 

またビタミンCは骨のタンパク質成分の一つであるコラーゲンの生成にも深く関与しており、骨の形成には欠かせない成分でもあります。ビタミンCは水溶性で熱、水、光、酸素、タバコなどでも壊れるデリケートな成分の為、摂取しても分解・排出されやすい性質を持っています。

 

例えばタバコ1本吸えば体内のビタミンCが25mg減少していきます。ダイエットやストレスでもビタミンCは減少します。ビタミンCは不足するとカルシウムの吸収以外にも風邪をひきやすくなったり、免疫力が低下したりしますので積極的に摂りたい成分の一つです。

 

≪ビタミンCの1日摂取目安 100mg≫

ビタミンCを多く含む食材
果物いちご、キウイ、みかん、レモン、アセロラ
豚ロース
野菜ブロッコリー、ゴーヤ、ピーマン、小松菜、ほうれん草、キャベツ、トマト、大根

 

≪ビタミンCを適度に摂れば(100~200mg)≫

  • キレート作用により腸管でのカルシウムの吸収を促進させる
  • 骨のタンパク質成分の一つであるコラーゲンの生成にも関与しており、骨の形成には欠かせない成分

 

≪ビタミンCを過剰に摂れば≫

  • 特別な過剰症の問題はないが一過性の下痢、嘔吐が稀にある

※過剰になることはそうそうありません。一般的な食生活からビタミンCは積極的に摂取する必要があります。

 

≪ビタミンCが欠乏すれば≫

  • キレート作用がなくなりカルシウムの吸収力が弱まる
  • コラーゲンの生成が弱まる(骨梁はコラーゲン繊維)
  • 免疫力が低下し風邪をひきやすくなる
  • 壊血病(身体の各部位から出血、疲労感、関節痛など)

 

 

ビタミンK-カルシウムの吸収を助ける成分

 

吸収されたカルシウムが骨として接着される時に必要なタンパク質オステオカルシンの合成に関わるのがビタミンKです。ビタミンKの働きとしては骨からのカルシウムの溶解を防ぐ働きがあり、カルシウムが骨として接着し石灰化するときも大切な役割をします。

 

ビタミンKは腸内細菌からも作り出されていますが体内の産生量が少ないため食事から充分摂取する事が大切です。閉経による女性ホルモンの減少から骨粗鬆症を誘発されている方はビタミンKを摂取する事により骨からのカルシウムの溶解を防ぐ事が分っています。

 

≪ビタミンKの1日摂取目安・・・65μg≫

ビタミンKを多く含む食材
野菜納豆、ブロッコリー、ほうれん草、キャベツ、緑茶、キユウリ、枝豆
海藻昆布、もずく、わかめ

※ビタミンK1(フィノキノン)・(緑色の野菜に多く含まれている)

※ビタミンK2(メナキノン)・(納豆に多く含まれている)

※ビタミンK1、ビタミンK2の作用は同じ

 

≪ビタミンKを適度に摂れば≫

  • 骨からのカルシウムの溶解を止める働きがある(ビタミンDの抑制作用)
  • カルシウムの接着を促進させ骨の石灰化に重要な働きをする
  • 血管内では血栓の予防、出血に関しては血液凝固作用がある

 

≪ビタミンKを過剰に摂れば≫

  • 貧血・血圧低下

※過剰になることはそうそうありません。一般的な食生活からビタミンKは積極的に摂取する必要があります。

 

≪ビタミンKが欠乏すれば≫

  • 骨からのカルシウムの溶解を止める働きが弱まる
  • 血液の凝固に時間がかかる

 

ビタミンD・ビタミンC・ビタミンK等は吸収の悪いカルシウムを腸管から吸収しやすくしてくれます。そしてカルシウム、マグネシウム、リン、コラーゲン、グルコサミンなど各成分の相互作用で、はじめて骨密度の高い、ガッチリとした、柔軟性のある骨が出来るのです。

 

 

健康な骨はカルシウム以外の成分との黄金率で決まる

 

健康な骨の形成にはカルシウムが必要です。しかし、カルシウムだけが多くても健康な骨の形成には大した影響がありません。それはカルシウムが骨として接着されるためには、カルシウム以外の成分とのバランス「黄金率」が重要になるからです。例えば、カルシウムは腸管での吸収が悪いため、吸収剤として働くビタミンDや接着剤として働くリン、マグネシウム、コラーゲン、グルコサミンなどの吸収が十分でないと相互作用が発揮されず、弾力のある、しなやかな骨になりません。

 

カルシウムを多く取り、硬い骨は一見よさそうに思えますが、返ってもろくて折れやすい骨になってしまいます。金属で例えるとセラミックスのようで、硬いだけで、もろくなり骨折・入院の原因にもなりかねません。骨には弾力性が必要なのです。骨の健康を考えた時に、「カルシウムなら何でもいい」、「カルシウムさえ摂ればどうにかなる」と言う考え方は危険です。それは、カルシウムは、骨以外にも結石の原因になることもあるからです。

 

バランス「黄金率」の良いカルシウムは、血中のカルシウム濃度を安定させ、結石を作らず骨量を増やし、弾力のある骨を形成します。その為にもバランスのいいカルシウム剤を選択する必要があります。

 

 

骨粗鬆症の治療薬

 

骨粗鬆症治療薬には、カルシウムを溶け出すのを防ぐもの、女性ホルモンを補充するもの、カルシウムの吸収をよくするものなど色々です。また複合して使うことにより効果を高める処方もあります。

 

薬名用途・作用
カルシウム製剤食事からカルシウム補給が出来ない時に使用
エストロゲン製剤閉経により低下した女性ホルモンの補充をする
イソフラボン製剤骨を増やす作用がある
活性型ビタミンD製剤ビタミンDの摂取量が低下している場合に使用
ビタミンK製剤骨形成に関与すビタミン、骨の石灰化に必要な場合に使用
カルシトニン製剤血液中のカルシウム濃度を安定させ、痛みを緩和させる
ビスフォスフォネート製剤破骨細胞の働きを抑える