ウイルス感染の大半を占めるのが「風邪」であり、重度な風邪である「インフルエンザ」も高頻度に感染します。免疫力が高い大人であれば、早くて1日(風邪の場合)でほぼ完治することもありますが、子供の場合、特に乳児や幼児など、赤ちゃんが感染すると治るのに時間がかかるばかりか、重い症状が発現したり、容易に二次感染(合併症)を発症してしまいます。

 

そのため、子供の風邪・インフルエンザは軽視するべきではなく、しっかりと状態を観察した上で、なにか異常が見受けられた際には、早急に病院へ受診しなければいけません。

 

 

風邪とは

 

風邪は、日ごろ健康な人でも1年に平均5〜6回はかかるといわれるほど身近な病気です。それにもかかわらず、風邪という病気は意外と理解されていないようです。あまりにもありふれた病気のためか、簡単な病気であり、放っておいても治るといった認識があるのかもしれません。しかし、実際には必ずしも軽い経過をたどるわけではなく、ときには重い合併症を起こしたり、1918年に世界中で大流行し、2,400万人が死亡したスペイン風邪の例もあるので、決して軽視してはいけません。

 

風邪はある単一の原因によるひとつの独立した病気ではありません。正式には「風邪症候群」あるいは「風邪疾患群」といいます。鼻から咽頭、喉頭、気管支につながる上・下気道の粘膜が一時的に炎症を起こす病気をまとめてこうよんでいます。つまりインフルエンザのように激しい全身症状を伴うものから、軽い鼻水やくしゃみ程度のものまで、広く「風邪」といえるのです。

 

 

風邪を引き起こす原因

 

風邪は、寒さやアレルギーなど非感染の因子によっても起こりますが、こうした因子による風邪は実際には少なく、ほとんどは何らかの病原性微生物の呼吸器への感染が原因です。病原性微生物には、ウイルス、マイコプラズマ、クラミジア、各種の細菌などがありますが、なかでもウイルスによるものが9割近いと考えられています。

 

風邪を引き起こすウイルスは200種類もあるといわれており、そのひとつがインフルエンザウイルスです。このウイルスにはA型、B型、C型の3つのタイプがあり、このうちA型とB型はほとんど毎年冬になると流行を起こし、ことにA型は大きな流行になることが多く、重要視されています。C型は大きな流行になることはありませんが、10歳ころまでにはほとんどの人が一度は感染しているといわれています。

 

そのほか、アデノウイルスやコクサックキーウイルス、エコーウイルス、ライノウイルスなどが知られていますが、それぞれに何十種類もの型があります。これらが1年を通じて、次々に流行するので、何回も風邪にかかることがあります。

 

 

風邪の症状

 

風邪の原因となるウイルスが鼻から侵入して鼻の粘膜に感染し、そこで増殖し、細胞に変化をもたらすと、鼻粘膜に炎症が起こります。その結果、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの症状が現れます。ウイルスが咽頭の粘膜に感染すれば、そこが充血して赤く腫れ、のどが痛くなります。咽頭からさらに進んで喉頭に炎症が起こると声がかれ、気管、気管支にまで及ぶと咳や痰が出るようになります。

 

<代表的な風邪の病型>

病型特徴症状主な病気
インフルエンザ急激に熱が出て上昇し、1〜3日目には40℃位まで達する。頭痛、腰痛、筋肉痛、全身倦怠感、鼻汁、のどの痛み、咳などインフルエザウイルス
普通感冒発病は除々で、鼻咽頭粘膜の異常あるいは乾燥感で始まる。頭痛、全身倦怠などはあまりない。くしゃみ、鼻汁、鼻づまり。のどの痛みや咳などの症状も現れるが、その程度は弱い。ライノウイルス、コロナウイルス、連鎖球菌、パラインフルエンザウイルスなど
咽頭炎喉頭が強くおかされる。口の中に数個〜数十個の粘膜疹ができるヘルパンギーナや急性リンパ結節咽頭炎などの型もある。発熱、頭痛、咽頭の後壁や扁桃に灰白色の吹き出物ができることもある。アデノウイルス、連鎖球菌、パラインフルエンザウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルスなど
咽頭結膜熱発熱、咽頭炎、結膜炎が3大特徴。夏季にプールを介して流行をおこすことがあり、別名「プール熱」と呼ばれている。悪寒、熱、頭痛、鼻汁、鼻づまり、のどの痛み、咳、眼痛、目が熱い感じ、涙や目やにが出るなど。アデノウイルス
気管支炎種々の風邪症状で発病し、しだいに咳が出てくる。ときには気道が閉塞し、死亡する場合もある。鼻汁、のどの痛み、咳、痰、ぜんそく、呼吸困難など。マイコプラズマ、RSウイルス、インフルエンザウイルス、連鎖球菌など
肺炎肺の末梢(奥)に炎症が起こる。インフルエンザウイルスによるものは重症化しやすい。熱、咳、頭痛、のどの痛み、胸の痛み、チアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫になること)などRSウイルス、インフルエンザウイルス連鎖球菌、アデノウイルスなど

 

こうした症状によって、風邪は別の名前で呼ばれることがあります。一番患者の多い「普通感冒」は、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどの痛みといった呼吸器系の症状が主に現れるのが特徴です。特に最初水のような感じの鼻汁が大量に出て、1、2日たつうちにべっとりとしたものに移っていき、やがて鼻がつまっていくというような鼻炎症状が強いので、鼻風邪ともよばれます。

 

さまざまな呼吸器症状のなかでも、特に咽頭粘膜に赤い発疹ができたり、腫れたりといった咽頭の炎症がみられるときは、「咽頭炎」と診断されます。咽頭痛が激しく、熱や頭痛といった全身症状も伴います。一般的な咽頭炎の症状に加えて、40℃にも達する高熱が出て、さらにのどが赤くなり、口蓋垂(のどちんこ)の上あたりに、直径2〜5mmの小さな水ぶくれが数個から数十個みられる場合は、ヘルパンギーナが疑われます。

 

咽頭の症状だけでなく、目の結膜炎、悪寒、発熱を伴うものを「咽頭結膜炎」といいます。プールの水から感染することが多いので、プール熱ともよばれます。結膜炎は両方の目がかかる場合と、片方の目だけの場合がありますが、いずれも角膜が侵されることはありません。そのほかにも咽頭の炎症のために、犬吠えのような咳や呼吸困難を起こすクループや、咳が激しく出る「気管支炎」などもあります。

 

インフルエンザウイルスが原因の「インフルエンザ」は、ほかのタイプと比べて全身症状が激しいという特徴があります。急激に発熱、頭痛、筋肉や関節の痛みなどが起こるので、からだに重い負担がかかり、重症化しやすく、肺炎などの合併症をもたらすことがあります。熱は発病後、急激に上昇して1、2日目には40℃近くにまで達します。しかも感染力が強く、ウイルスを吸い込んでから20分もすれば細胞に浸透するとさえいわれています。

 

また、短期間に多くの患者が発生するため、流行型感冒としてほかの風邪と区別されています。だいたい1週間ほどで回復しますが、空咳や倦怠感がしばらく続くこともしばしばあります。(高熱・咳などが1週間続く「インフルエンザ」の治療・予防について)

 

 

子どもの風邪の特徴

 

「風邪は万病のもと」といわれる理由のひとつに。合併症を起こしやすいということがあげられます。もともとからだには、侵入してきたウイルスに抵抗し、防御する能力が備わっていますが、その能力が低下しているとウイルスを排除できず、気道があらされて細菌が取り付いたり、ウイルスが全身に運ばれてさまざまな症状を起こすことがあります。

 

子どもは気管支が広く短いので、風邪の病原菌が侵入しやすく、病原体に対する免疫力も未完成です。そのため風邪をひきやすく、ひくと重症化しやすいものです。半面、病気を克服すると子どもはおどろくほどの回復力を発揮します。こうした子どもの特徴をよく知って、正しく対処することが大切です。

 

乳児の風邪

どのタイプの風邪にも大人、子どもを問わずかかるのですが、特に1歳以下の乳児では、のどがゼイゼイとなる気管支炎や、喉頭の炎症で「キーン」という犬吠えのような咳がでるクループ症状が多くみられます。これは気道の発育が不十分なためで、呼吸困難に陥ることもめずらしくありません。ときには痰がびっしりとつまって、気管切開が必要になったり死亡することもあるので、必ず医師の診察を受けましょう。

 

また発熱と咳と呼吸困難の症状が数日間続いたりぐったりしていたら、肺炎の可能性があります。病院で病原体を特定し、適切な薬(抗生物質など)を処方してもらいます。肺炎は胸膜炎(肋膜炎)、中耳炎、腹膜炎、関節炎、骨髄炎、髄膜炎などの余病を引き起こしやすいので、必ず受診するようにします。口呼吸が苦手な乳児には軽い鼻風邪でも鼻づまりを起こすと、呼吸困難になったり、母乳を飲めなくなります。症状を訴えることができないのですから、軽いと思われる場合でも目を離さず、経過をよく観察するようにしましょう。

 

幼児・学童の風邪

乳児期や学童期になると、幼稚園や学校に通うため人との接触の機会が増え、風邪にかかる頻度も高くなります。風邪のタイプも多彩になり、マイコプラズマ肺炎や、インフルエンザなどの流行性の風邪が目立ってきます。インフルエンザは、3歳未満の患者は少ないのに学童になると一気に増えるので、幼稚園や学校で流行している時期は注意が必要です。

 

「夏風邪」とよばれ、高湿度の夏に流行するタイプは、子どもの患者が多いのが特徴です。手足口病、溶連菌感染症は6歳以下に多く、ヘルパンギーナは4歳以下、特に1〜2歳に多発しています。夏のプールの水を媒介にして集団発生するプール熱は、プールに入る機会の多い4歳から10歳くらいの幼稚園児や小学生に多くみられます。

 

 

風邪の治療

 

治療の基本は安静にし、病原体に対する抵抗力とからだの回復力を高めることです。空気が乾燥してくると気道の粘膜も乾燥し、抵抗力が弱まるので、加湿器などを使って湿度を60〜70%に保つようにしましょう。室温は18〜20℃にし、ときどき換気をします。熱が38℃以上に上がったときは、水枕が氷枕を当てたほうがよいでしょう。

 

十分な睡眠のほかに、栄養をとることも回復を早めます。食欲がないのは当然のことなので、無理をせず少しずつ食べやすいものを口に入れさせましょう。薄めのスープ、ゼリー、ヨーグルトなどは水分も多く消化もよいので、胃腸に負担をかけません。また、子どもは水分代謝が著しく、水分が失われやすいものです。そのうえ食欲不振や、下痢、嘔吐を起こしやすい傾向があります。食べられないときでも水分をできるだけとって、脱水状態になるのを防ぎます。スポーツドリンクなどを、意識的に与えるようにしましょう。

 

<かかったときに抑えておくべきポイント>

  • 安静を保ち、からだを休める。
  • 自分の症状に合った、薬を服用する。
  • 室温は20℃前後に保つ。
  • 加湿器などを使い、室内の湿度を70%前後に保つ。
  • 食欲不振のときは無理に食べない。
  • 水分補給は十分にする。
  • 症状が治まるまで、外出は避ける。
  • 熱があるうちは入浴を避ける。
  • 持病のある人、小児、妊産婦は薬の服用に特に注意を払う。
  • 二次感染の症状が出たらすぐに医師の診察を受ける。

 

軽い風邪なら、こうした一般療法だけで回復しますが、症状を強く訴える場合は、薬も合わせて用いるとよいでしょう。といっても、風邪の原因であるウイルスには、これといった特効薬はありません。従って薬は鼻づまり、頭痛、咳、のどの痛みといった症状を抑えるための対症療法となります。子どもの場合、大人用の風邪薬を飲ませてもかまいませんが、必ず説明書をよく読み、分量には気をつけましょう。たとえ子供用の風邪薬でも、生後3カ月未満の乳児には飲ませないようにしてください。

 

また、症状に合わせた薬を使うと、より効果があります。熱や痛みが強いときはアセトアミノフェンやエテンザミドなどを配合したもの、咳が激しいときにはリン酸ジヒドロコデインやノスカピンなどの鎮咳薬、痰の症状が強いときは生薬のセネガを配合したものなどを選ぶとよいでしょう。なお、病院へ連れて行くときは、子どもの状態を一番よくわかっている人が付き添ったほうがよいでしょう。

 

 

風邪の予防

 

子どもは風邪をひくことで免疫を獲得していきます。その際、病原体の侵入に抵抗する体力があれば、軽くすみますし、回数もすくなくなります。ふだんから食べ物の好き嫌いをなくし、十分な睡眠をとらせましょう。むやみに厚着をさせず、外で元気に遊ばせることは、皮膚や粘膜の抵抗力をつけるのに役立ちます。また、外出からもどったら、手を洗い、うがいを習慣づけます。風邪が流行している時期には不要な外出は避けましょう。

 

インフルエンザに対しては、ワクチンの注射で予防しておきましょう。ワクチンは人間のからだの中でつくられるウイルスに対する抵抗をつけようとするものです。ワクチン注射を受ける時期としては、インフルエンザの流行がピークに達する1〜2月の2ヶ月前が目安なので、11月から12月初旬に受けておきます。保健所でも相談できますし、一般の医院(内科・小児科・呼吸器科など)でも受け付けています。

 

なお、子どもの風邪は、よくなった後も2〜3日は注意が必要です。急に激しい運動をしたりすると、まだ体力が確実に戻っていないので、ぶり返すことがあります。

 

<風邪予防の10のポイント>

  1. 薄着の習慣をつけましょう。
  2. 栄養のバランスをとりましょう。
  3. 睡眠を十分にとりましょう。
  4. 手洗いを励行しましょう。
  5. 外から帰ったら、必ずうがいをしましょう。
  6. 冷水摩擦や乾布摩擦、日光浴などで皮膚を鍛えましょう。
  7. 冬でも外で運動しましょう。
  8. 入浴後は水を身体にかけましょう。(これにより、皮膚の寒さに対する感受性が低下し、皮膚が強化されます。)
  9. 下着を着ないで、寝巻き1枚で寝ましょう。(寝汗は皮膚を弱め、体温も奪われるので、厚布団は避けます。)
  10. 冷暖房はほどほどにしましょう。

 

 

インフルエンザの学校での扱いについて

 

インフルエンザは伝染病予防法で届け出伝染病に位置づけられています。また、学校保健法でも、学校において予防すべき伝染病のひとつに含まれています。学校でインフルエンザが流行した場合は、校長が学校医の助言に基づき、インフルエンザにかかった児童・生徒に対して、出席停止の処置をとることができます。

 

出席停止の期間は、解熱した後2日を経過するまでが基準ですが、医師の判断が優先されます。また、インフルエンザによる欠席者が急増し、クラスの人員の2割前後に達した場合、学級閉鎖となる場合があります。さらに、インフルエンザにかかる児童・生徒が多い場合、学校閉鎖となることもあります。こうした流行を防ぐため、インフルエンザのワクチンが開発されています。

 

ワクチンによる予防効果

かかってしまうと直接的治療法のないインフルエンザの対策として考えられるのは、ワクチンによる予防です。インフルエンザにかかる年齢層は5〜17歳くらいまでが非常に高くなっています。この学校年齢の子どもたちにワクチンを接種して、インフルエンザの流行を抑えようと、集団予防接種が始まりました。

 

ところが、毎年流行するA型インフルエンザウイルスは、その年ごとに微妙に形を変えるので、ワクチンは、流行しそうなウイルスの型を予想してつくることになります。この予想が的中すると、インフルエンザのワクチンはかなり効果的ですが、予想がはずれるとほとんど効果がありません。また、ワクチンを接種してから2週間たたなければ免疫はできないので、インフルエンザの流行が始まってからでは間に合わないという難点もあります。

 

このため、ワクチンに対する効果には疑問の声があり、副作用を心配する親の声もあって、94年の予防接種法改正により、学校での集団接種は廃止され、ワクチン接種の判断は各家庭にまかされるようになりました。今後の方向としては、インフルエンザによる死亡率が高い高齢者や慢性疾患を持つ人など、いわゆる高リスク群への接種、さらにインフルエンザによる入院率が高い7歳以下の低年齢層への接種を考慮すべきではないかと考えられています。

 

インフルエンザ予防の決定打となるべきワクチンが効果を発揮するのに必要なのは、そのシーズンに流行するウイルスの型の予測です。世界保健機構(WHO)では、インフルエンザ流行の予測のために、全世界的に状況の把握と伝達を行っています。