幼児期・児童期は、自分の心や身体に起こっている不調をはっきり意識したり、その症状を言葉で十分に表現したりすることはできません。また、心身の発達の仕方は大きな個人差があり、精神科的な診断をするには、難しい面があります。

 

幼児期に保護者が心配になるのは、言葉や知能の遅れや、「チック障害」であったり、就学に伴い「多動性障害」や「学習障害」や不登校などが問題になります。また、保護者の傍から片時も離れない「分離不安障害」などは、この時期に特有の障害です。

 

「統合失調症(精神分裂病)」や「気分障害(うつ病、両極性感情障害)」は早い例では小学生のときから症状が表れることもあります。加えて、心の葛藤が身体の症状となって現れる「身体表現性障害」や「強迫性障害」なども、幼児期に比較的良く見られる障害です。

 

 

精神遅滞

 

精神(知能)の発達が停止してしまうか、不十分な状態にあり、理解力や言語力、運動能力などに障害が生じ、社会的な適応が損なわれるものです。

 

原因としては、先天的な代謝異常や染色体異常、妊娠時の脳損傷、妊娠中毒症、栄湯不良、劣悪な社会環境などがあげられます。2〜3歳になっても言葉が増えない、小学校では全体的に動作が遅い、自分を表現する能力に欠ける、先生の指示に従えないなどの点から、障害が見出されることがあります。

 

治療としては、障害の程度に応じて、発達を促すような環境を整え続けることが大切です。周囲の協力により通常の小学校教育を受けることができるケース、職業訓練などを経て社会人として自立できるケースなど数多くあります。

 

 

心理的発達の障害

 

言葉の遅れや学習障害、運動機能の障害は、「心理的発達の障害」として考えられています。自閉症はさまざまな程度の発達障害を伴うため、この障害に分類されています。

 

心理的発達の障害は何らかの脳機能の発達障害や遅れによるものとされていますが、原因は不明で、成長するに従い、次第に障害が軽くなっていくのが特徴です。

 

会話及び言語の特異的発達障害

「言葉が遅い」という事実がことさら問題になるケースは、実際には殆どありません。大人が特別なことをしなくても、たいていは自然に話せるようになります。問題があるとすれば、話し言葉の遅れが読み書きの遅れにつながったり、他人との関わり方や感情・行動面などに何らかの障害をもたらす可能性があることです。

2歳になっても「だめ」などの簡単な言葉に反応できない、3歳になっても二語文(「わんわん、来て」など)が言えない、6〜7歳になっても発音ができない音があるなどの障害がみられるときは、異常であるとされています。

 

学習障害

読む、書く、計算するといった基本的な習得機能が損なわれているもので、学習の機会が与えられているにも関わらず、ひらがなが読めない(読み方が遅い)、漢字が書けない(小学校入学後も左右が逆になる鏡文字を書き続けるなど)、数の概念が理解できず、足し算・引き算ができないなどの障害がみられます。時間をかけた丁寧な個別指導が必要となります。

 

自閉症

社会的な関わり合いが持ちにくい障害で、他者の表情、身振り、言葉などを使った働きかけに反応せず、また、その場の状況を読み取って行動することができません。他者の感情に共感できず、自らも感情を表現するために言葉の調子を変えたり、身振りを交えたりということがありません。

一定の仕草を繰り返したり、特定の匂いや肌触りのものに執着したりするのも、自閉症の特徴です。幼児期には視線を合わせにくい、甘えない、呼びかけに反応しない、他人の存在に関心を持たないなどの特徴が認められます。言葉や行動、感情などが統合されるような訓練や教育を必要とします。

 

 

多動性障害(注意欠陥障害)

 

しきりに動き回り、注意散漫で、物事を成し遂げることが難しいことを特徴とする障害です。向こう見ずで衝動的、危険な行動や、社会的なルールを無視する行動が目立つこともあります。

 

体質的な異常が障害の背景にあると考えられていますが、はっきりしたことはわかっていません。薬物を使った治療と、多動と不注意、衝動的な行動を改善するための精神療法が行われます。

 

 

行為障害

 

極めて反社会的、攻撃的、あるいは反抗的な行動が繰り返されることを特徴とする障害です。激しい喧嘩やいじめ、小動物や他の子供への虐待行為、破壊行為、放火、盗み、度重なる嘘、ずる休みや家出、たびたびかんしゃくを起こす、反抗的な態度をとり続けるなどの問題行動がみられます。

 

家族関係や学校生活でのトラブルなど、心理・社会的環境でのマイナス要因の関わりが指摘されています。

 

障害は一過性で終わる場合もあれば、人格障害へと発展することもあります。社会に適応するための精神療法や薬物療法、家族へのカウンセリングなどが必要となります。

 

 

情緒障害

 

小児精神医学では、この時期に特徴的な情緒の障害をいくつか特定しています。両親・家族など愛情の対象から離されることを恐れる(分離不安障害)、見知らぬ人を恐れ避ける(社会性不安障害)、弟や妹ができたことで対抗意識や嫉妬心を持つ(同胞葛藤性「抗争」障害)などです。

 

このような不安や葛藤は一般的によく見られるものであり、正常範囲を大きく逸脱した場合にのみ問題とされます。

 

 

選択性緘黙(せんたくせいかんもく)

 

ある状況(家庭内)では話すが、他の状況(学校や嫌いな人の前など)では口をきかないという状態が続くものです。

 

激しくしかられた経験や、虐待などがきっかけで起こることが多く、軽ければ自然に回復することがありますが、精神的な治療が必要となることもあります。

 

 

チック障害

 

「チック」とは、走しようと思わないのに、無目的で急速な反復運動あるいは発声がなされるもので、症状は突然に始まります。例えば、「まばたきする」「首をねじる」「肩をすくめる」「しかめ面をする」「咳払いをする」「鼻を鳴らす」「吠えるような声を出す」などです。

 

遺伝的な要因や、中枢神経に作用する物質の異常などが関わっていると推測されていますが、原因はまだ解明されていません。

 

一過性のチックは比較的よく見られるもので、日常生活や同年代の子供との交友に問題がなければ、小児科医に相談することで済みます。重症例では薬物療法や精神療法、親のカウンセリングなどが必要になります。

 

 

気分障害、統合失調症(精神分裂病)

 

学校を怖がって行きたがらず、親にまとわりついてばかりいるときは、うつ病が原因であることがあり、場合により、無理に学校に行きながら自殺を考えているようなケースも稀にあります。

 

この時期に統合失調症が発症することは極めて稀とされていますが、幻聴や妄想を口にし、異常が発見される例もあります。いずれの場合でも、十分な休養や治療、精神的なサポートなどが必要です。