①言葉が遅れる、②人と視線を合わすことができない、③人見知りで知らない人に抱かれるのを嫌がる、④意味なく横目でみる、⑤意味なく指の間からのぞき見る、⑥家具の配置をこだわる、などの特徴があれば、自閉症かもしれません。

 

自閉症は、認知能力に問題があるため、対人関係がうまくいかない障害です。成長に伴い、社会に適応できる行動を身につける治療教育を受けさせます。(関連:年齢別・段階別にみる発達障害の特徴と家族の課題、対策について

 

 

自閉症とは

 

自閉症という名称から、昔この障害の子ども達は殻に閉じこもっているという誤解もありました。物事は理解していても、極端に用心深く感情を表さないと思われたり、親の育て方に問題があるといわれてきました。内面の心理的な原因をとり除き、閉ざしている心を開けば治ると考えられた時期もありました。

 

周囲の出来事を見聞きして意味を知る働きを認知といいますが、現在では自閉症は、見る、聞く、触る、嗅ぐといった知覚の認知に障害があると考えられています。さまざまな情報をうまくとり入れられないため、発達に遅れや偏りが起きてくるという考え方です。

 

自閉症の治療は、子どもに的確な情報が入る方法を工夫して、社会生活のなかで人と交わっていくための言葉や行動、生活技術を身につける指導が中心になります。多少の影響は残っても、早期に発見し、治療をすることで習得は可能です。

 

自閉症児の親の多くは、まず言葉の遅れに気づき、他人への関心を示さないことなどを心配して、3歳前後には病院を訪れます。しかし、より早く治療を開始するには、1歳半健診の段階で小児科医や言語指導の専門家による発達のチェックを受けておくのが望ましいようです。1,000人に1人の割合で発症し、男女比は約4:1で、男子に多くなっています。

 

 

自閉症の原因

 

脳は神経細胞から神経細胞への刺激の伝達によって機能しています。刺激の伝達は神経細胞の末端から分泌されるドーパミン、アセチルコリン、セロトニン、ノルアドレナリンなど十数種類の神経細胞によって行われます。

 

この神経細胞の一部の代謝異常が、自閉症の原因ではないかと考えられています。何が大切で、何を優先するかという選択に必要な注意力や刺激に対してどれだけの注意を向けるかという集中の度合いと持続を指向性注意といいます。脳の奥の指向性注意のシステムにある神経細胞の障害が、特に自閉症の基礎になっていると考えられています。

 

ただし、脳内の伝達システムにはいくつもの経路があり、通常使われている回路に問題があっても、ほかの回路を使って機能を補うことができます。自閉症の子どもも治療を続けていけば、年月がたつうちに少しずつ機能を発達させていくことができます。

 

 

自閉症の症状と診断

 

1970年代半ばまでは、自閉症は診断者の印象で判断されることが多く、診断基準の統一がされていませんでした。その後、国際診断基準が確立され、WHO(世界保健機関)が出しているICD-10や、米国精神医学会のDSM-IVに基づく診断基準などが一般に用いられるようになりました。

 

ICD-10によると、小児自閉症は下記の表のような項目で診断されます。小児自閉症にみられる、いくつかの特徴があります。乳幼児期から人に対して興味を示すことがなく、人と結びつきをつくれません。

 

コミュニケーションのために言葉を用いることができず、おうむ返しやひとり言が多いため、人との会話が成立しません。自分にしかわからない言い回しをしたり、話のリズムや請う抑揚がおかしい場合もあります。

 

いつも同じ道を通らないと気がすまないとか、家具や室内の装飾品などの位置が少しでも変わると必死に元に戻したりパニックを起こすなど、変化を極端に嫌います。さらに症状として、低年齢では多動や感覚の異常、極端な偏食、睡眠に障害がみられることがあり、思春期になると強いこだわりや強迫症状、自傷行為が増えるなどの問題もでてきます。

 

 

小児自閉症の診断基準

 

<A>3歳以前から、次のうち少なくとも1項の発達障害がみられる

  1. 社会生活のためのコミュニケーションに利用する受容性言語や表出性言語がない。
  2. 相手への愛着行為や相互的な社会関係行動の発達がない。
  3. ままごとや何かのつもりになる遊びなど、機能的な遊びや象徴的な遊びをしない。

 

<B>相互的社会関係の質的障害として、次のうち少なくとも3項に当てはまる

  1. 視線、表情、姿勢、身振りなどを、社会的関わりのなかで適切に用いることができない。
  2. 機会はあっても精神年齢に相応した友人関係を、興味・活動・情報を分かち合いながら十分に発展させることができない。
  3. ストレスや苦悩に直面しても他人からの慰めを求めることがほとんどなく、他人の苦悩や不幸を慰めたりしない。
  4. 他人と喜びを分かち合うことができず、自己の喜びも他人との関わりの中で表せない。
  5. 社会的・情緒的な相互関係が欠如していて、他人への情動への反応が異常となったり、社会的状況に見合った行動ができない。

 

<C>コミュニケーションにおける質的障害として、次のうち少なくとも2項に当てはまる

  1. 喃語(なんご)で意思の伝達ができなかったことが多く、話し言葉の発達遅延、あるいは全体的欠如があり、代わりに身振りやジェスチャーで補おうとする試みを伴わない。
  2. 言語能力はさまざまな程度に認められるが、他人とのコミュニケーションにおける相互の反応として会話のやりとりができない。
  3. 常同的で反復的な言葉の使用や、単語や文節の特有な言いまわしがある。
  4. 言葉のピッチ・強さ・速度・リズム・抑揚に異常が認められる。
  5. さまざまな「ごっこ遊び」や、社会的な模倣遊びが乏しい。

 

<D>行動や興味および活動のパターンが制限され反復的・常同的であり次のうち少なくとも2項に当てはまる

  1. 常同的かつ制限的である興味のパターンに没頭する。
  2. 普通でないような対象へ特異な愛着を示す。
  3. 特定の手順や儀式に、明らかに強迫的な執着を示す。
  4. 手や指をはばたかせたり、からませたり、からだ全体を使って複雑な動作をするなど常同的・反復的で奇異な行動をする。
  5. 道具の一部や、機能とはかかわりのないにおい・感触・雑音・振動などの要素にこだわる。
  6. 現実には大した事の無い環境のささいな変化に苦痛を感じる。

参照元:「ICD-10の研究用診断基準」(医学書院)
 

自閉症の治療

 

自閉症の治療は、言葉や集団行動、社会生活のルールを身につけていく治療教育が基本です。

 

課題や言葉がわかるような工夫を

知覚の認知がうまくできない自閉症の子どもに対して最も大切なことは、適切な情報を伝え、社会に適応する行動ができるように指導していくことです。教える側の工夫が鍵を握っているといえます。

 

■視覚から情報を伝える

自閉症の子どもの指導でまず大切なのは、何からとりくんだらよいかわからせる工夫です。指示は絵や文字にして、目で見てわかるような形にすると伝わりやすいようです。

 

■注意をひくために声をかける

課題に注意をむけさせにくいのも自閉症の特徴です。大きな声で名前を呼び、わずかでも注意を向けたら具体的な課題を示し、反応があったら大きな声でほめます。反応を評価してあげることで、注意を向ける行動を定着させていくようにします。

 

■できる課題を選ぶ

自閉症の子どもが与えられた課題に取り組まないのは、したくないからではありません。まずは、出来そうな課題を与えて「これならできる」「できた」と達成感を持たせることが大切です。

簡単なパズルや遊具で未完成の課題を与え、仕上げは子どもがするなどの方法がとられます。丸や三角などの単純な図形を描いて塗らせると、自分で完成した喜びを感じることができます。やさしいレベルから徐々に始めていきます。

 

■環境を整える

自閉症の子どもは隣の席の子の食事を食べてしまうようなことをします。自分の場所という意識や、所有の概念を理解していないのが原因といわれます。色違いのランチョンマットを敷いたり、色テープで境界をつくって視覚的に区別したり、つい立てで仕切るなど、所有や領域の概念を指導します。認知能力を高めていくためには、環境を整えて子どもの欠陥を補うことも必要です。

 

■はっきりとほめ、はっきりとしかる

自閉症の子どもは罰の意味を理解しにくいようです。いたずらをしたからおやつをあげないという罰を与えるようなやり方では、あまり効果がありません。いたずらしたことと、おやつをもらえないこととの因果関係がわからないからです。

うまくできたことや好ましい行動は、はっきりと言葉に出してほめ、その行動を定着させるように、しかり方とほめ方の工夫をします。しかるとくは、その場ですぐに1回だけ強くしかることがポイントです。原因となった行動はやめたのに、いつまでも説教していると、何が悪いのかわからなくなり、逆に混乱を招きます。

 

■対人関係を身につけさせる

自閉症の子どもも成長とともに、子どもの集団に加わろうという様子をみせるようになります。ただし、人の気持ちを察しにくいため、対人関係をうまく成立させることが難しいといわれています。

ほかの子ども達と同じ行動がとれなくても、集団のなかで自分のできることを少しずつ増やしていくことが大切です。時間内は座っていられることや先制の指示に従えるなど、集団のなかでの行動や技能を身につけていくと、少しずつではあっても人間関係がスムーズになっていきます。

 

家庭でも社会的行動の訓練を

自閉症は長く続く障害ですから、できるだけ早くから治療教育を受けさせることが望ましく、家庭での対応が治療の助けになるように努めましょう。例えば、名前を呼ぶのは用があるときだけにします。名前を呼ぶということを意味のあるものにするためで、用がないときに名前を呼ぶのは避けましょう。

 

話しかけるときは短い言葉でゆっくり、言葉がすべて耳に入るように気をつけます。また、テレビ番組の体操などを親も一緒にします。簡単なお手伝いも積極的にさせるとよいでしょう。トイレの訓練では、下着を脱ぐことから後始末まで、実地に教えます。

 

成長するにつれて、道路を歩くときの安全について、電車に乗るマナーについて、買い物についてなど、日常のあらゆることを具体的に教えていきます。社会的な行動は繰り返し指導すれば、一人でできるようになり、親の手を離れることも可能です。

 

学校を選ぶときは

幼児期に障害児保育を受けていても、学童期に達すると自閉の程度や知能のレベルによって、普通学級に進む場合もあります。症状によっては、個々の子どもに適した情緒障害学級や養護学校などの教育施設を選ぶことになります。

 

特に気をつけたいのは、文字が書け、計算ができるなど知能レベルがある程度高い子どもの場合です。普通学級に進ませても、文字と計算はよいのですが、ほかのことがうまくいかないため、子どもが無力感をもつことがあります。集団生活や社会生活のルールをきちんと身につけていないと、他の子ども達と一緒の行動がとりにくいからです。

 

子どもの知能レベルだけをみるのではなく、自閉の本質を理解し、教育していくことが大切です。発達に遅れがあるからといって、いつまでも子ども扱いせず、成長を促すようにしましょう。成人してからのことも考慮して、どんな学校教育が必要なのかを、専門家に意見を求めながら親が判断し、選択していくことになります。

 

 

自閉症の経過と予後

 

自閉症の子どもたちには発達の遅れはありますが、成長するにつれ、社会的行動や技能を身につけていきます。思春期になれば、からだの成長がみられ、一般の子どもと同じように反抗期を迎えたり、思春期特有の心理がうかがえます。

 

年齢とともに新しい問題が起きてくる場合もあります。思春期に目立つようになるのは強迫行動です。幼児期にみられるような同じ事を繰り返す常同行動や、物事を同じ状態にしておくことに執着するだけでなく、止めたり無理強いしたりすると、激しい勢いで攻撃的になる傾向が強まります。

 

不潔恐怖症や何でも確認しなければ気がすまなくなる確認強迫などもみられることがあります。さらに学校生活ではあまり問題なく適応してきたのに、卒業して社会にでてから戸惑ってしまい、トラブルを起こすこともあります。

 

一人ひとりに合った教育と生き方を

自閉症はその自閉の程度や知的能力に合わせた生活を送ることが大切で、自立にはまわりの理解が必要です。社会的に適応していくためには、治療教育により、的確な行動を身につけ、対人関係をつくっていけるようにすることが重要です。