慢性腎不全は、簡単に言うと腎臓が十分に機能していない状態のことです。さまざまな腎臓病やその他の疾患の合併症などにより、腎機能が少しずつ低下していき、腎機能はひとたび低下すると回復困難な場合が多いのが実情です。

 

当ページでは、慢性腎不全の症状や原因、検査・診断、治療法、予防・注意点などについて、詳細かつ分かりやすく解説しますので、慢性腎不全の疑いのある方や有病者は、最後までしっかりとお読みください。

 

 

慢性腎不全とは

 

慢性腎不全は、何らかの腎臓障害が原因となって、一つの腎臓に約100万個あるネフロンという組織が破壊され、腎臓全体の機能が著しく低下した状態です。腎臓は体液をろ過し、からだにとって必要な成分だけを体内に戻し、老廃物を尿として体外に排出するという重要な働きをしています。

 

また、体液の成分の割合や血圧を調節したり、ホルモンを分泌するなど、からだの内部環境を一定の状態に保つ働きもしています。腎臓の機能が低下すると、血液中の老廃物がうまく排出されずに体内にたまるなど、からだの内部環境を維持することが難しくなってきます。

 

腎不全は、急性腎不全と慢性腎不全に分けられます。急性腎不全が数時間から数日の間に急激に腎臓の働きが低下するのに対し、慢性腎不全は、数年から十数年以上という長い期間をかけて少しずつ腎機能が失われていくのが特徴です。

 

また、急性腎不全は、すぐに適切な治療を行えば機能の大部分を回復することができますが、慢性腎不全では、一度失った機能を元に戻すことはできません。慢性腎不全は、初期のうちは自覚症状が現れにくく、多くの場合気づかないうちに症状が進行してしまいます。

 

腎機能の低下が進むにつれて、食欲不振や全身の倦怠感などの症状が現れ始め、やがて、吐き気、嘔吐、不眠、頭痛、息切れ、呼吸困難、むくみなどがみられるようになり、日常生活にも支障をきたすようになってきます。腎不全の末期では、腎臓がほとんど機能しなくなるため、最終的には腎臓に代わって血液を浄化する透析療法が必要になります。

 

 

慢性腎不全の原因と症状

 

慢性腎不全は、腎臓の病気が原因で起きる原発性のものと、腎臓以外の病気の合併症として腎臓障害が発症し、その腎臓障害が原因となる続発性のものがあります。現在、最も多くみられる原因疾患は慢性腎炎で、透析療法を受けている人の約55%が慢性糸球体腎炎から慢性腎不全に陥ったケースです。

 

しかし、最近は続発性の慢性腎不全の割合が増える傾向にあります。なかでも、糖尿病の合併症の一つである糖尿病性腎症や、高血圧が続くことによって腎臓組織が萎縮する腎硬化症が増加しています。社会の高齢化に伴って、糖尿病や高血圧の人が増えていることが主な要因と考えられます。

 

このほか、痛風の人に起こる痛風腎、全身性エリテマトーデスなどの膠原病に起因するループス腎炎、慢性腎盂腎炎などの感染症、多発性のう胞腎などの遺伝性疾患も慢性腎不全の原因となることがあります。

ヘルスチェック・・こんな症状に注意!

・急性腎炎や慢性腎炎など腎臓病の既往がありますか?

・尿たんぱくや尿潜血が陽性といわれたことがありますか?

・就寝してから何度もトイレに起きることがありますか?

・全身の倦怠感がありますか?

・食欲が減退していますか?

・動悸がしますか?

・糖尿病ですか?

 

病期の進行に伴い症状も悪化する

慢性腎不全は、初期のうちはほとんど自覚症状がありませんが、進行するに従ってさまざまな症状が現れるようになってきます。慢性腎不全の進行は、腎機能の状態からいくつかの病期に分けられています。

 

■第1期

第1期は腎臓の予備能力の低下期で、腎臓のろ過機能をつかさどる糸球体の半分近くに障害があるものの、体液の量や成分の恒常性は維持されているため、これといった症状はありません。ただし、腎臓の働きに予備能力がなくなってきている状態です。

 

■第2期

第2期は腎臓機能低下期で、腎臓の機能は正常なときの30〜50%に落ちています。そのため、血液中の老廃物をろ過しきれなくなって、夜間多尿や貧血が現れるようになります。腎臓の機能はさらに予備能力をなくし、過労や栄養不足などによって病状が急に悪化することもあります。

 

■第3期

第3期は腎不全期とされ、腎機能の低下はさらに進み、正常なときの10〜30%にまで落ちてしまいます。この時期になると、からだのpH(水素イオン濃度)が酸性に傾く代謝性アシドーシス、血液中のリンが増加する高リン血症、カルシウムが減少する低カルシウム血症などを招きます。

 

■第4期

第4期の尿毒症では、腎機能は5〜10%になり、体内環境の維持がほとんどできなくなります。体内にたまった老廃物により、食欲不振、嘔吐や下痢などの消化器症状、心臓肥大や心不全、心膜炎などの心臓症状、肺うっ血や呼吸困難などの肺症状、抹消神経障害、意識障害、貧血、出血傾向などの血液障害といった、全身に及ぶ異常が現れます。

 

■第5期

そして、第5期の代替期になると透析療法など腎臓機能の代替治療に頼らないと、生命を維持することができなくなります。

 

病期の進行には個人差がありますが、高血圧や、心不全、感染症、脱水症状、薬物の副作用、出血、手術、妊娠などの増悪因子が加わると、急激に進行速度を速めてしまうことになります。

慢性腎不全の病期

第1期・・・「腎臓の予備能力の低下期」

ろ過機能の50%近くが支障をきたしている

第2期・・・「腎機能低下期 」

血液中の老廃物のろ過が困難になった状態

第3期・・・「腎不全期」

腎機能の低下が顕著で血液成分のバランスが崩れた状態

第4期・・・「尿毒症期」

腎臓によって体内の環境を維持することがほとんどできなくなった状態

第5期・・・「代替期」

透析療法を行わないと生命の維持が困難な状態

 

腎機能が低下してきても、自覚症状はなかなか現れません。定期的に尿検査、血液検査を受けることが大切です。

 

 

慢性腎不全の検査と診断

 

腎臓病の診断にあたって基本となるのは尿検査です。尿中に排泄されるたんぱくの量を調べる尿たんぱく、血尿の有無を確認する尿潜血反応、尿を遠心分離機にかけて沈殿物を顕微鏡で観察する尿沈渣などが行われます。

 

慢性腎不全の多くは、何らかの腎臓障害が悪化したすえに起こるものですから、以前にこうした尿検査で異常を指摘されていることが少なくありません。

 

過去に尿検査で異常が現れた経験や、腎臓病の既往歴があれば、腎機能障害が始まった時期や原因疾患などを知る手がかりになります。そこで、「異常がみつかったのはいつごろか」「病院でどのような病気と診断されたか」「治療を行ったか」といった点を詳しく医師に伝えるようにしましょう。

 

クレアチニン検査が確定診断の基本

慢性腎不全の確定診断のためには、血液中のクレアチニン濃度を調べる血清クレアチニン検査が基本となります。クレアチニンは、体内の代謝活動によって生産される物質の一つで、腎臓のろ過機能が低下すると尿中に排出できなくなるため、血液中に出てきます。したがって、血清クレアチニン値が高いほど、血液をろ過する腎臓の能力が低下していることになります。

 

一般に血清クレアチニン値が2mg/dl以上になると、腎機能が正常のときの50%以下にまで落ちた状態とされ、慢性腎不全と診断されます。ただし、血清クレアチニンは、腎臓の機能が正常なときの半分程度に低下しても、正常値の範囲を示す場合があります。そこで、腎機能の働き具合をより詳しく調べるために、さらにクレアチニン・クリアランスを行います。

 

クレアチニン・クリアランスは、クレアチニンを尿中に排出する効率を調べる検査で、血清クレアチニンよりも腎機能の低下を早い時期に知ることができます。クレアチニン・クリアランス値が、1分間当たり50ml以下で慢性腎不全と診断されます。このほか、腎臓が尿を濃縮する機能を調べる尿濃縮力試験も、慢性腎不全の診断に役立ちます。

 

クレアチニン・クリアランスで、腎機能の低下がかなり進んでいると診断された場合には、血液中のナトリウムやカリウム、カルシウム、リン、クロール(塩素)などの電解質の濃度を調べたり、腎不全に伴う障害のチェックなども行います。さらに慢性腎不全の原因疾患が何であるかも詳しく調べます。

 

 

慢性腎不全と腎移植

 

現在、慢性腎不全で腎機能が失われた場合、ほとんどは透析療法に頼っていますが、腎臓の働きを100%代替することはできません。しかし、腎移植を行って適応すれば、健康な人とほとんど変わらない腎機能を再び得ることができます。

 

腎移植には、生きている人の腎臓の一方を提供してもらう生体腎移植と、死亡した人の腎臓の提供を受ける死体腎移植の二つの方法があります。生体腎移植の場合、腎臓の提供者も移植を受けた人も、正常な腎臓を一つしかもたないことになります。腎臓は一つでも十分に機能を果たすことができます。

 

しかし、腎臓提供者には、手術による負担がかかります。その意味では、死体腎移植のほうが無理のない方法といえますが、現状では腎臓提供者が少ないこともあって、近親者から提供してもらう生体腎移植が4分の3を占めています。

 

腎移植で最も大きな問題となるのは、拒絶反応です。拒絶反応を防ぐには、移植を受ける人と提供者の血液型や白血球型が適合することが必要です。近親者の腎臓であっても、死体腎であっても、適合性が高いほど予後がよいということは当然です。腎移植にあたっては組織適合試験を行い、適合性を判定することが必須条件となります。

 

 

慢性腎不全の治療

 

慢性腎不全になると、一度失った機能を元に戻すことはできません。病状の進行をできるだけ抑え、残っている機能を温存させることが、治療の最大の目的です。原因疾患によって多少の違いはありますが、保存療法は、基本的には食事療法を中心に行います。進行の度合いによっては、仕事量の制限が加わることもあります。

 

食事療法では、老廃物ができやすくなる、たんぱく質の摂取制限、腎臓に負担のかかる塩分の制限、日常の活動源として十分なエネルギー量を摂取することなどがポイントになります。また、病態によっては、リンやカリウムの摂取を控え、カルシウムを十分にとるようにします。

 

食事療法で特に重要なのは、たんぱく質の摂取量を減らすことです。腎臓はたんぱく質の成分である窒素を含んだ物質を処理します。腎機能が低下した状態で過剰にたんぱく質をとり続けると、ネフロンの処理機能に大きな負担がかかるため、腎臓の障害が強まり、残された腎機能をますます低下させることになります。逆に、腎機能の状態に見合った量のたんぱく質を摂取している場合は、病状の進行を遅らせることができます。

 

ただし、たんぱく質を制限してエネルギー不足に陥ると、窒素を含む物質が血液中に増加し、たんぱく質を摂取したときと同じ状態になってしまいます。そこで、エネルギーを十分にとることが必要になります。たんぱく質や塩分をどの程度制限するかは、原因疾患や腎機能の程度によって異なるため、主治医の指示を守って、厳密に栄養管理をすることが大切です。

 

薬物療法も併用する

慢性腎不全の治療の中心は食事療法ですが、必要に応じて薬物療法を併用することがあります。例えば高血圧は、慢性腎不全の原因疾患になるばかりでなく、たんぱく質の過剰摂取と並んで病状を悪化させる大きな要因になります。そこで、血圧降下薬(降圧剤)を使用して、若い人で120/70mmHg程度、高齢者でも130/85mmHg以下にコントロールすることが必要となります。

 

病状に応じて、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)やカルシウム拮抗薬などが用いられます。また、高血圧とむくみの要因となっているナトリウムの尿中排出を促進するために、利尿剤を併用することもあります。

 

このほかにも、血液中の尿酸の増加を抑制する尿酸生成阻害薬、体内に余分なリンが蓄積される高リン血症に対するリン結合薬などが処方される場合もあります。さらに、体内の尿毒症や老廃物を吸着して腎不全の進行を遅らせる吸着薬、貧血改善のためのエリスロポエチン製剤などを使用することもあります。

 

尿毒症期には透析療法が必要

慢性腎不全がまだ軽い段階では、残された腎機能を維持する保存療法が中心になりますが、病状が進行して腎機能が正常の10%以下にまで低下すると、透析療法が必要になります。透析療法は、働かなくなった腎臓に代わって血液中に含まれる有害な物質や不要な成分を体内から除去し、必要な物質を補う治療法です。

 

血液中の老廃物や体内の余分な水分を除去するとともに、電解質の濃度を調整し、血液のpHを是正します。特に、体内に蓄積した老廃物や余分な水分を排出してさまざまな合併症などの発生を防いだり、心臓への負担を軽くすることが、透析療法の大きな目的となります。

 

透析療法には、血液透析と腹膜透析(CAPD)の二つの方法があります。どちらの方法も基本的には透析膜を介して、血液と透析液とよばれる特殊な液体との間で、それぞれ含まれる物質が交換される仕組みになっています。本来排出されるべき物質が透析液側に出て、透析液中に含まれるからだに必要な物質が血液の中に入る仕組みになっているのです。

 

■腹膜透析

腹膜透析は、患者自身の体内にある腹膜を使って血液を浄化する方法で、操作に慣れれば自宅でも行うことができます。腹膜透析のメリットは、自宅や職場で持続的に透析療法ができて、通院も月に1〜2回ですむため、日常生活への影響が少ないという点です。

しかし、腹腔内に直接透析液を入れるために細菌感染を起こしやすく、衛生管理には十分に注意しなくてはいけません。血液透析は現在最も多く行われている方法で、透析装置(人工腎臓)を用いて老廃物などを除去し、きれいになった血液を再び体内に戻します。一般的に週3回通院し、1回4〜8時間の透析を受けます。

 

■血液透析

血液透析は、尿素やクレアチニンなどを効率よく除去できること、医師や看護婦、技術者などの管理のもとに行われるために安全というメリットがあります。ただし、心臓に負担がかかるため、高齢者や心臓病のある人には適しません。また、血液透析を受けると血圧が急激に下がることがあり、低血圧など循環器系に疾患がみられる場合は適応できないケースがあります。

 

血液透析にも腹膜透析にも一長一短があります。どちらの方法を選択するかは、日常生活や仕事の状況などを十分に考慮し、医師と相談のうえで慎重に決めることが大切です。また、透析療法は長期にわたって続けていると感染症を起こしやすくなったり、骨がもろくなるなどさまざまな合併症を招くことがあります。

 

また、透析療法では患者の自己管理の状態が、治療の経過や効果を大きく左右します。透析療法を十分に理解し、自分のからだの状態を把握したうえで、食事の管理もきちんと続けていくことが大切です。

 

末期の慢性腎不全に対する治療としては、透析療法のほかに腎移植があります。日本では、腎臓提供者が少ないという現実もあります。しかし、成功率も向上していることから、今後の腎移植の普及が期待されます。

 

 

慢性腎不全の予防と日常生活の注意点

 

慢性腎不全を予防し、病状を悪化させないためには、日常生活の過ごし方が大きく影響します。慢性腎不全に限ったことではありませんが、睡眠時間を十分にとって、規則正しい生活を送ることが予防と治療の両面での基本となります。会社勤めをしている人は、残業や付き合いなどで、とにかく生活のリズムが崩れがちなので、十分に注意しましょう。

 

また、腎臓は水分が不足すると負担が大きくなるので、水分を十分に摂取することも重要です。毎日、尿量の1.2〜1.4倍程度の水分をとるように心がけたいものです。また、排尿を我慢しないことも大切です。

 

過労を避ける

医師から安静を指示されているときはもちろんのこと、腎臓にとって過労は大敵です。慢性腎不全の初期で、あまり症状が出ないときは、ついオーバーワークになりがちです。過労のため急激に腎機能を悪化させるケースも少なくありません。

忙しいときは昼休みに仮眠をとるなど工夫して、十分にからだを休めましょう。また、安静にしなくてはならない急性期を除けば、適度にからだを動かすことも重要です。どの程度の運動量にするかは、病状によって違いますから、主治医に確認のうえで行いましょう。

 

冷えや感染症に注意

寒さや冷えは、腎臓への血流量を減少させるため、腎機能の低下を招きます。冬に具合が悪くなるケースも多いので、冷えやすいトイレや、風呂場、廊下などは、暖房に気を配ることが大切。冬場の外出の際は、防寒してかぜに注意しましょう。

かぜをはじめとする感染症も病状を悪化させる要因になります。慢性腎不全では、からだの免疫力が低下していて、いろいろな感染症にかかりやすくなっています。感染症の予防のために、季節を問わずうがいを励行し、毎日入浴をしてからだを常に清潔に保つようにしましょう。

 

このほか、喫煙は全身の血管を収縮させ、一時的に血圧を上げる作用があります。喫煙の習慣が腎臓に悪影響を与えることは明らかなので、禁煙は必要不可欠です。

 

 

まとめ

 

慢性腎不全では、失われた腎機能を回復するための根本的な手段は、現在のところ腎移植以外にはありません。しかし、透析技術をはじめ、新しい薬剤が開発されたり、腎臓病の患者向けの減塩食品が増えるなど、治療の方法も環境も着実に進歩し、健康な人とほとんど変わらない生活を送ることも可能です。

 

ただし、慢性腎不全は、医療機関での治療や薬だけでコントロールできる病気ではありません。自分自身できちんと生活管理を行う努力こそが、治療効果を高めるためのキーポイントです。

 

病状を悪化させないためには、治療を徹底させることはもちろんですが、自分自身のからだの状態をよく把握しておきましょう。そのうえで、からだを冷やしたり、疲れやストレスをためないような生活を心がけることが大切です。