カビというと、じめじめして不潔というイメージがあります。とくに発がん性があるなどと伝え聞くと、拒絶反応を示してしまいますが、実は有史以前から人間の生活に役立っているカビもあります。

 

その一方で、吐き気や嘔吐、下痢などの食中毒症状を起こすカビもあり、最悪では死に至ることさえあります。カビの生えやすい梅雨期。食べ物のカビには十分に注意しましょう。

 

 

こんなに役立っているカビの存在

 

切り口が緑色の縞模様になっているブルーチーズや表面に白いカビの膜が形成されたカマンベールチーズ……日本ではおつまみ程度の考えられているチーズは、ヨーロッパでは食生活になくてはならない存在です。スペインや北欧では、悪臭といえるほどの強い香りのチーズが珍重されています。このチーズはすべてカビの作用を上手に利用した食品です。

 

日本ではみそやしょうゆ、カツオブシ、焼酎、日本酒などにカビが生かされています。みそは蒸米にコウジカビを植え、蒸した大豆と食塩を加えて発酵させます。発酵中に空気中や周辺から数多くのカビや細菌が入り込み、結果、よりおいしい製品ができあがります。

 

しょうゆは蒸煮した大豆、焙煎した小麦にコウジカビを加え、食塩水を加えて発酵させたもの。しょうゆに肉や魚を漬けると、病原菌が死滅し、食中毒の防止になるといわれてもいます。

 

カツオブシは日本人ならではのコクとウマミの元。カツオの身を煮てから皮や骨を取り除き、乾燥させてからカビをつけ、温度と湿度を整えてカビを自然発生させ、いったん取り除いてから、再度カビをつけ、また取り除く、という作業をくり返して作り上げます。

 

よい種類のカビを選んでカビつけをすると、独特な香りをもつよいカツオブシが出来上がります。日本酒、焼酎などもコウジカビを用いてつくります。このように、カビは長い歴史のなかでくり返し使われ、世界各国、その地域になくてはならない食品を生み出しています。

 

 

知っておきたいカビの種類

 

青カビ、赤カビ、黒カビ……など、見た目の色によって呼称されているカビ。それぞれに学名があり、引き起こす症状にも違いがあります。カビを発見したら、そのカビがいったいどんな種類のカビなのか、危険度はどの程度なのかを知っておきましょう。

 

赤いカビ……フザリウム

Fusarium
※①

 

パンや古くなったごはんなどに生えるピンク色した派手な赤いカビです。このカビは、マイコトキシンというカビ毒を生産し、嘔吐や下痢などの食中毒症状を起こします。このカビの種類はきわめて多く、代表的な土壌菌。

 

住宅の内装材の表面でも非常に旺盛に繁殖します。そのカビがクーラーに吸い込まれ、冷気とともに室内の放出されると、アレルギー性疾患などの健康被害を出します。

 

白、黄、黄緑、黒などのカビ……アスペルギルス

Aspergillus
※②

 

しょうゆやみそ、みりんなどの調味料や医薬品などに使われる有用なカビであるコウジカビもこの種類に属しています。空中をただよっており、仲間は160種ほど。

 

日本人の生活にもっとも密着しているカビの種類ですが、その仲間のアスペルギルスフラバスというカビは、アフラトキシンという強いカビ毒をつくります。とうもろこしなどの穀類やナッツ(とくにピーナツ)で汚染例が多く、その毒素に発がん性があるといわれ、それを食べた人間や動物は肝臓病などで死に至ることもあります。

 

白、クリーム色、グリーンのカビ……トリコデルマ

tricho
※③

 

ツチアオカビともいわれ、いたるところに存在。低温でも繁殖し、食品にも着きやすく、変質を起こす汚染菌のひとつです。エアコンや加湿器にも住み着き、アレルギー疾患の原因物質になります。

 

青カビ……ペニシリウム

Penicillium
※④

 

ペニシリンやブルーチーズでおなじみのカビで、空中や土のなかなど自然界のいたるところに生息しています。パンやお餅の青いカビもこれ。昭和20年代に問題となった黄変米の犯人もこのカビです。

 

灰緑色のカビ……アルテルナリア

alternaria
※⑤

 

ススカビともいわれ、トマト、ナス、キュウリなどの野菜の病害菌としてよく知られています。スス斑病を引き起こしたり、トマトの葉を一夜にして溶かしてしまったり、みかんの葉を黒くしたりします。浴室のシャワーカーテンやビニールクロスに着くカビもこのタイプ。アレルギーの原因物質にもなり、アメリカではもっとも嫌われ者のカビです。

 

 

食器にとりつくカビを絶つ!

 

カビは好気性菌で、酸素がないと繁殖できません。また栄養となるものに寄生しないと生活できません。そこで、鉄やアルミニウム、ガラス、プラスチックなど、一見、栄養のなさそうなものでも、その表面にちょっとした汚れがついていると、それを足がかりにして生育します。

 

カビの一生は胞子に始まります。そこから菌糸ができて、順次、肉眼でも見えるようになります。やがて臭気やねばりを発生させてとり着いたものを劣化させてしまいます。

 

お餅やパンのカビは、カビた部分だけをこそげ落とせば食べても大丈夫と考える人もいるようですが、決して大丈夫ではありません。目で見える部分だけ取り除いても、食品全体を汚染しています。なかには発がん性のあるカビもあり、毒素が食品中に拡散している恐れもあるので、カビさせてしまった食品は、もったいないけれど捨ててしまいましょう。

 

部屋のなかのあらゆるところに生息しているカビが卓上の食品を直撃すると考えてください。たとえば、食パンなどを卓上に出しておくと、それだけでも空気中のカビに汚染されます。したがって、卓上には食べる分だけの食品を出し、残さないようにします。

 

空気中のカビを全部なくすことはできないので、清潔にしてカビの胞子を減らすように心がけましょう。空気中にカビの胞子が浮遊しないよう、掃除する時にも細心の注意が必要です。

 

 

住まいに生えるカビを絶つ!

 

住まいのなかでカビの生えている場所をみつけたら、アルコールやカビ取り剤で滅菌後、いったん空拭きし、その紙はビニール袋などに入れて密封。それから掃除機をかけます。いきなり掃除機をかけると排気口からカビの胞子をまき散らすことになり、その胞子は食品などさまざまなものに付着することになります。

 

料理をするときに発生する水蒸気や瞬間湯沸器の使用は室内の湿度を高め、カビが発生する原因になります。また、都市ガスの燃焼時に出る水蒸気も湿気の発生源になります。

 

冷蔵庫のなかもカビの温床です。冷蔵庫に入れておけば大丈夫という過信は禁物。多くのカビは10℃以下でも元気に生息するので、冷蔵庫内は常の注意していないと、隅のほうに残っている食品に青カビや黒カビが繁殖していることが多々あります。冷蔵庫内は、夏には1週間に1回、掃除をしましょう。

 

キッチン用の漂白剤入りの洗剤(キッチンハイターのような塩素系液体か、キッチンブライトのような酸素系粉末)などで拭き掃除します。面倒ならば、月に1~2回、エタノールスプレーをかけながら、全体をぬれタオルで拭き取ります。冷蔵庫を開けたとき、変な臭いがするときには、カビの臭いと思ってください。脱臭剤を入れて一時しのぎせずに、まず掃除して清潔にしてください。

 

※画像出典:

WIKIPEDIA、②INFECTIONNET、③EnviroFry、④WIKIPEDIA、⑤Mold Remediation in Jupiter FL