尿が漏れることを尿失禁といい、尿失禁にはいろんなタイプがあります。立ち上がったり、わらったり、おなかに力を入れたとき尿が漏れだす人もいます。また、足が悪かったり、歩行が困難で、尿意を感じてもトイレに行くまでに漏れてしまう人もいます。

 

最初にいいますが、尿が漏れるというのは原因がわかれば治療することができます。例えば最近は簡単な手術も出来て、もはや以前我々が手術と思い描いていたものとはかなり違います。同じ人生ですから、もし可能なら前向きに考えませんか?

 

 

尿失禁の診断

 

まず、医師が尿のもれる方が外来に来られたとき、どんな事を質問するのか?そしてそれはどんな意味か説明しましょう。理解できれば、この質問をあなたがご心配の父さん母さんにしてみてください。

 

①     尿の回数が多くないですか?②     1回の排泄量は少なくありませんか?

③     尿が漏れそうになることはありませんか?

④     実際に尿が漏れてしまうことがありますか?

⑤     急に尿意を催してトイレに駆け込むことはありませんか?

⑥     急に尿意を催してトイレに間に合わず漏らしてしまうことはありませんか?

⑦     咳、くしゃみなどおなかに力が入った時に尿が漏れることはありませんか?

⑧     オムツは1日何回交換しますか?

⑨     下着は殆どいつもぬれていますか?

⑩     尿が漏れ始めたらとめられずに一度にたくさん出てしまいますか?

⑪     排尿はスムーズにでますか?

⑫     排尿がとぎれとぎれになることはありませんか?

⑬     外出する前に、あまり尿がたまっていないときも排尿することができますか?

⑭     尿のきれがわるく、排尿後下着がぬれてしまうことがありませんか?

 

で尿の回数の多い症状(頻尿)について伺います。で、もし尿の量が普通なら、尿の回数が多いのは、尿の1日量が多いからであるとわかります。尿の1回量が少なければ、回数が多いことがこの場合の症状であることがわかります。のような症状を、尿意切迫感といいます。そして、④⑤⑥のような尿失禁を切迫性尿失禁といいます。の尿失禁は腹圧性尿失禁といいます。このように質問で、尿失禁の分類が出来るのです。

の質問をすることで、尿失禁はどれほどなのかがわかります。のような尿失禁は、腹圧性尿失禁や切迫性尿失禁とは異なり、おしっこをしてもなお膀胱に尿が残っている為におこるもので、いわば尿がこれ以上膀胱に貯めることが出来ない為に漏れ出てくるもの(溢流性尿失禁といいます)です。のタイプは、切迫性または反射性尿失禁といいます。

尿失禁は実は尿が出にくいためにおこっている場合もあります。これを判定するのには⑪⑫⑬で排出障害があるかどうかたずねます。の質問は、神経の調節ができているかどうかを判定するものです。

 

尿失禁の種類

介護の立場から尿失禁を分類すると尿のことをいわれたら医者はこんな質問をします。介護の視点から尿失禁を分類すると大きく二つに分けることができます。

 

■機能性尿失禁

排尿の役割をする泌尿器系の臓器に問題がないのに、足が悪いとか痴呆などの理由である方

 

■その他の尿失禁

泌尿器系の臓器に問題がある方

 

その他の尿失禁の細かい医学的な分類は以下です。

 

切迫性尿失禁急に強い尿意が出現して、それとともに本人が押さえようとしても出てきてしまうタイプの尿失禁です。膀胱の不随意な収縮によって生じます。
反射性尿失禁上記の切迫性尿失禁と同じく膀胱の反射によって出現するものです。ですが、尿意がわからないようなものに用います。
腹圧性尿失禁咳、くしゃみ、歩行、運動などの腹圧がかかったときに生じます。
溢流性尿失禁尿の充満によって膀胱が膨らんだ状態です。ここにさらに腎臓から尿管を介して尿が流れてきますので、溢れるように出てきます。
全尿失禁膀胱に尿を保持することがまったくできないことです。

 

尿失禁があると思われる方は、やはり診察をうけられるのをおすすめします。治療すればほとんどが改善に向かいますが、尿失禁を隠している方が多いのが現状です。また、年齢に伴う仕方のないものと考える方も多い傾向にあります。

 

しかく、そのことで、実は辛い体験をしていますので、こころを開いて介護することが大切です。おしっこのことは、前向きに話し合うようにしてください。

 

 

病院で行う検査について

 

病院ではいろいろな検査をします。大部分の尿失禁は、問診と簡単な診察により可能です。追加として、①超音波(エコー)検査、②尿流測定、③パットテスト、④ウロダイナミックス検査、⑤膀胱、尿道造影 をすることがあります。

 

①超音波

まず器質的な病気がないか?癌や結石を検索します。膀胱に残尿が多い人では、腎臓に尿が貯まる病気(水腎症)があります。

 

②尿流測定(ウロフロメトリー) 

尿の出方も人により表現が違います。実際にコンピューターの前で排尿していただき、その流れ出る勢いを測定します。

 

③パットテスト 

小さいオシメ(パット)をしていただき、水分を摂取していただいた後、いろんな運動をお願いします。その後、パットの重さを量れば、尿失禁量がわかります。私は、この失禁量が10gを超えるような方は他の検査もします。

 

④ウロダイナミックス検査 

尿道から管(カテーテル)を挿入して検査します。このカテーテルから膀胱に生理食塩水や空気(二酸化炭素)を入れて、感じ方を試します。平均的な方は、80ml前後で始めて尿意を感じ、200ml近くまで我慢できます。脳梗塞や糖尿病で膀胱の知覚が悪くなった人はなかなか尿意がわかりません。また、最後に息んで頂きます。効することで膀胱の中の圧力をどれだけ挙げられるかテストします。排尿しながら測定する方法もあります。これは、プレッシャーフローといい、最近測定されています。

 

⑤尿道膀胱造影 

膀胱に造影剤を入れてその形を調べます。骨盤底筋群の緩んだ女性などは後ろ(膣)に落ち込んだ形になっています。排尿後もう一度写真をとって残尿を測定することもします。特に女性では、尿道の位置がわからないので、チェーンをいれて測定します。

 

 

病院での治療

 

尿失禁の治療は大きく、保存的療法と外科的療法に分けられます。保存的療法には、骨盤底筋体操や薬物治療、膀胱訓練、排尿習慣訓練などがあります。外科的療法はその名の通り、手術(簡易的なもの)によって改善を図ります。

 

保存的療法

■骨盤底筋体操  

軽い腹圧性尿失禁はこれで治ります!この体操は尿道、膣、肛門を閉める運動で、骨盤底筋をトレーニングします。肛門の括約筋を「ぎゅーっ」と閉めるイメージで行うと言いますが、実際にはなかなか難しいです。そこで、日本人がわかりやすいのは、座禅です。まず、座禅のポーズを取ってください。おしりのうしろには枕を入れてください。すると、自然と肛門をふくめた括約筋に緊張がでます。このとき、ゆっくり息を吸いながらこの筋をしめてください。肛門だけで構いません。なぜなら肛門、膣、尿道の筋は繋がっているからです。

そのあとは、ゆっくり括約筋(骨盤底筋群)を緩めながら息を吐きます。10秒間間隔で閉め緩めと書いている有名な先生もいますが、実際は大変です。一回の緊張はできるだけ長くしっかり閉めましょう。切迫性尿失禁にも有効です。筆者は長年座禅をしていますが、これは健康の秘訣です。

 

■薬物療法

切迫性尿失禁では薬物療法をします。膀胱平滑筋を緩ませる薬(抗コリン剤といいます。商品名は、ポラキス、バップフォー)を使用すると、膀胱の容量が増加し尿は漏れにくくなります。副作用としては、口渇感と便秘のひとがいます。簡単には、残尿の少ない人と考えてください。

腹圧性尿失禁には尿道の閉鎖圧を高める作用のある薬(スピロペント、トフラニール)や、抗コリン剤を使用します。脳梗塞や糖尿病などの収縮不全膀胱の場合には、膀胱の収縮力を改善させる薬(ウブレチドやベサコリン)を処方します。今度は、残尿の多い人と考えてください。

前立腺肥大症による溢流性尿失禁には前立腺に存在する平滑筋を緩める作用を持つ薬(αブロッカーと言います。ハルナール、アビショット、フリバス、エブランチル、バソメット)が有効です。αブロッカーは、尿道の抵抗を減少させ排尿をスムーズにします。

 

■膀胱訓練

切迫性尿失禁に対して行われる膀胱の容量を増やすためのトレーニングです。私は以下のような訓練を提案しています。一時間半位の間隔なら尿が漏れることの無い人では、2時間を目標に尿を我慢します。始めはなかなか出来ませんが、根気よく継続すると、膀胱の容量が増えて、2時間は持つようになります。膀胱にカテーテルの入っている患者では、カテーテルを開閉して同じように2時間おきに排尿させることで、膀胱を刺激します。同じ意味で、自己導尿により定時に排尿させることで膀胱のトレーニングを図る事もあります。

 

■排尿習慣訓練

痴呆症のある人が朝にはちゃんと排尿をするのに、昼頃になると毎日尿失禁するようなケースがあります。このように尿失禁のパターンがあるのなら、11時ごろトイレの便座に腰掛けて排尿を誘導することをしてみます。この排尿習慣訓練は、時間割を作製して規則正しく排尿習慣を確立することです。 患者さん、家族の方などの積極的協力が必要です。

 

外科的療法

保存的療法で改善しなかった腹圧性尿失禁に対しては、外科的治療をお勧めします。手術といいますと、大変だ!と思いがちですが、尿失禁の手術は日帰りでも可能です

 

■コラーゲン注入法

内視鏡でコラーゲンを尿道粘膜の下に注入する方法です。局所麻酔なので、危険が少ないです。手術は約30分で出血もほとんどありません。終了します。平均1日の入院で済みます。手術のコツとしては、何回かかってもいいから少しずつ注入することです。なぜなら、コラーゲンが吸収されるため、再発するひともいるからです。

 

■TVT法

かつていろんな術式がありましたが、ジョンソン エンド ジョンソン社TVTテープが開発されて、この TVTが最近は全国的に積極的になされています。原理はナイロン糸や特殊なテープで膀胱の下部と尿道を支えることで、丁度ブランコのようです。腹圧がかかった時にも落ち込まないように固定されているので、尿が漏れません。

TVT手術は、おなかの一番下の骨である恥骨結節というところのすぐ上の皮膚を1cm程の2か所切ります。(傷はこれだけです)。尿道の下にあたる膣の前壁にも約2 cmの切開をおいて、専用の針を用いてテープを尿道を支えるように腹壁側に通します。1時間足らずで終了します。麻酔は施設により異なりますが、局所麻酔でできるものです。このため、手術中に咳払いをしていただいたりできる良い点があります。

 

尿失禁は積極的に治療を行うことによって、ほとんどが改善されるものです。尿失禁を呈する方の多くが、辛い気持ちや恥ずかしいという気持ちをお持ちですので、ご家族で尿失禁に悩んでいる方がいましたら、真剣にお話しを聞き、病院への受診も考慮してみてください。

 

なお、尿失禁とは反対に、尿が出ない(出にくい)排尿障害というものがあります。これは泌尿器系の病気が関わっていることが多いので、この機会にぜひ知っておいてください。詳しくは「尿(おしっこ)が出ない・少ない”排尿困難”を引き起こす病気」をお読みください。