睡眠時無呼吸症候群とは睡眠中に呼吸が繰り返し停止するために酸素不足や睡眠障害で様々な障害がもたらされる病気です。医学的には中枢型、閉塞型、混合型の3つのタイプがあります。この中で患者数がとても多く、社会的に問題が大きいのは閉塞型です。

 

閉塞型睡眠時無呼吸症候群の患者は、入眠するとすぐに激しい「いびき」をかき、次の瞬間、窒息状態になって息が止まり静かになります。しばしばその間、苦しそうにもがくような動作をし、また次の瞬間「いびき」をかきます。これを睡眠中何回となく繰り返します。

 

異常に気付くのは誰でしょうか?本人が「いびき」や呼吸停止を睡眠中に意識することはないので、同じ部屋や近くの部屋で寝る人が気付くことになります。まず第一に配偶者、次にその他の家族、親しい友人などが異常に気付くことになります。

 

睡眠時無呼吸症候群は、睡眠中に上気道(鼻、咽頭、喉頭)のどこかが閉塞して息が吸えなくなる病気です。したがって、この部分の気道が狭くなりやすい条件をもたらすような異常はすべて原因になります。

 

著しい肥満は原因のトップにあげられます。たとえば、舌は上顎と下顎の硬い入れ物の中に納められています。肥満によって脂肪が沈着して、舌の組織量が増大すると、舌の後ろのいわゆる舌根部の気道が狭くなり閉塞しやすくなります。

 

また、下顎が小さい、下顎が後退している、扁桃腺やアデノイドが著しく肥大しているなどが原因になります。特に中年男性で筋力がしっかりしていて、肥満が著しい人はなりやすい傾向があります。

 

睡眠時無呼吸症候群は中年男性に圧倒的に多いのですが、女性にもみられます。特に閉経後に多くみられます。扁桃腺やアデノイドの肥大によるものなどは、しばしば学童にもみられ、授業中に頻繁に居眠りをするようになり、学校の成績が急に低下したなどが、診断のきっかけになることもあります。

 

 

睡眠時無呼吸症候群によってどんな影響がもたらされるのか?

 

閉塞型睡眠時無呼吸症候群は人体にどのような障害をもたらすのでしょうか?

 

この症候群では、激しいいびきと無呼吸を反復し、同時に呼吸が小さくなる低換気が認めら れます。これらの症状が体に、また、社会生活に大きな影響を与えます。 この症状は、毎日、何年も続くので、もたらされる障害はしばしば甚大なものになります。

 

障害の第一は、無呼吸および低換気による肺の換気不足です。換気不足は酸素供給不 足を招き、肺を流れる血液に取り込まれる酸素も不足します。結局、酸素不足の血液が肺から心臓に送られ、大動脈から全身へ配られます。最終的に、体の各部で酸素が不足し、低酸素障害が起きます。低酸素障害の主なものは、

 

(1)肺血管の攣縮→肺 高血圧、右心不全(肺性心)
(2)体血管の攣縮→高血圧症
(3)多血症(赤血 球増多)→脳梗塞
(4)心筋興奮性増加→不整脈

 

などです。

 

障害の第二は、無呼吸による睡眠の異常です。睡眠が深まると筋緊張が低下し無呼吸 になります。筋緊張を取り戻すために睡眠が浅くなると、無呼吸が解除されて再び呼吸するようになりますが、激しいいびきをかきます。

 

換気が戻ると再び睡眠が深ま り、また無呼吸になります。一晩中この繰り返しになり、その結果は、いくら長時間、寝ても深い睡眠を欠く内容の悪いものになり、不眠の状態を招きます。

 

このような睡眠内容の劣悪化は、様々な障害を起こします。何時間寝ても熟睡感がなく、早朝頭痛、頭重、全身倦怠感、日中の眠気をもたらします。

 

眠気は深刻で、知的作業能力喪失、性格の異常、インポテンツ、などを招きます。そのため、運転事故、危険作業中の事故、学業成績低下、失職、家庭内不和、離婚、など、社会生活に大きな影響を与えます。過去の例から見ると、スリーマイル島やチェルノブイリ原発事故、巨大タ ンカー Exxon Valdez号座礁・原油流出事故、スペースシャトルChallenger号爆発事故などは、いずれも眠気がもたらした不注意が原因との指摘もあります。

 

障害の第三は、激しいいびきによる周囲への悪影響です。本人はいびきを自覚するこ とはほとんどありませんが、周囲の人からいびきについての被害を訴えられます。同室ではもちろん、隣の部屋で寝ることさえも断られることになります。そのため、家庭生活、社会生活上の不都合を生じ、家族旅行、社員旅行、共同生活、入院などが事実上不可能になります。想像以上の深刻な悩み、強いストレスを招くことになります。

 

 

閉塞型睡眠時無呼吸症候群の診断と治療について

 

睡眠時無呼吸症候群の適切な治療を進めるためには、睡眠時無呼吸症候群であることを確認し、低換気と無呼吸の程度を調べ、無呼吸が閉塞型・中枢型・混合型のどれかを判定し、重症度を正確に調べることが必要不可欠です。

 

診断法にはいろいろありますが、夜間に睡眠ポリグラフィーを行なうのが基本です。睡眠ポリグラフィーとは、自然に近い睡眠の下に、睡眠の深さ(脳波)、いびき音、口と鼻を流れる息の大小、有無、胸と腹の呼吸運動、動脈の血液に含まれる酸素の量(酸素飽和度)、心電図、その他多数の項目を一晩中連続して記録し、その結果を解析して診断するものです。

 

睡眠ポリグラフ検査を実施するには、経験のある臨床検査技師、その他の医療スタッフがそろっており、検査機器が完備した検査入院施設が必要となります。日本はこの点では大変遅れており、全国でも数えるほどの施設しかありません。

 

治療法にもいろいろありますが、中等度以上の閉塞型睡眠時無呼吸症候群では、経鼻陽圧換気療法という治療法が世界的に行なわれ、とても良い効果が得られています。これは簡単な人工呼吸器のような機械から出る気流を、マスクを通して鼻の中へ送り、気道の閉塞を防ぐものです。乱暴な方法のように思われますが、実際にはいびきがなくなり、熟睡感が得られ、驚くほど目覚めが快適になるケースが多くみられます。装置も持ち運び可能で、音も静かなものが作られています。

 

肥満がある場合は、減量により明らかに無呼吸が減ります。しかし、減量に一時的に成功しても、長期間維持することは容易ではありません。いつか体重を減らそうと願いつつもそのまま放置し、定期チェックも受けなくなるケースがよくあります。2年、3年と放置すれば、合併する生活習慣病(高血圧、糖尿病、冠動脈疾患、脳血管障害など)が増悪し、死亡率が高くなります。

 

アデノイドや扁桃肥大などの外科的に修正できる上気道狭窄は、耳鼻咽喉科的な手術療法を行なう適応があります。ただし、一時改善しても再発することがあるので、半年から1年以上経過を見て効果を確認する必要があります。

 

また、歯科装具による治療法もあります。これは、下顎をわずかに前方へずらした位置に固定する、総入れ歯を上下あわせたような形をしているマウスピースをくわえる方法です。舌が前方へ引っ張られて気道が開くために効果が現れます。有効率は約60%ですが、手軽な方法なので捨てがたい治療法といえます。

 

 

睡眠時無呼吸症候群についてのまとめ

 

睡眠時無呼吸症候群の大部分は、いびきをかくタイプの閉塞型睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の患者さんですOSASの有病率は成人男性の4%、女性の2%という高率とされています。また、体型の関係から日本人は欧米人より多いといわれています。

 

睡眠中の無呼吸が平均して1時間に20回以上の人は、治療を受けずにいると8年後には37%死亡するという報告もあります。死因の多くは心筋梗塞や脳血管障害です。またOSASはいわゆる生活習慣病(冠状動脈疾患、脳卒中、高血圧、糖尿病など)を招く基礎になることが様々な面から明かされつつあります。

 

さらに、深い睡眠が妨げられるために日中傾眠、知的活動能力の低下が起きるため、居眠りによる交通事故、労働災害、学童の成績低下、行動異常、失職など、日常生活および社会生活上に深刻な障害が生じます。

 

死因の多くは心筋梗塞や脳血管障害です。またOSASはいわゆる生活習慣病(冠状動脈疾患、脳卒中、高血圧、糖尿病など)を招く基礎になることが様々な面から明かされつつあります。

 

さらに、深い睡眠が妨げられるために日中傾眠、知的活動能力の低下が起きるため、居眠りによる交通事故、労働災害、学童の成績低下、行動異常、失職など、日常生活および社会生活上に深刻な障害が生じます。

 

OSASの診断には終夜睡眠ポリグラフィーを必要とします。我が国では、これを実施できる施設が全く不足しています。医師を含めて医療関係者のOSASに対する認識が低いことも否めません。原因の一つとして、健康保険により支払われる検査料が低すぎることが、その根底にあります。

 

現在、診断と治療を一日も早く受けるべきOSASの症例が多数、潜在しているはずです。米国では睡眠ポリグラフィーを行なう施設が300カ所以上、ドイツにも100カ所あるそうです。我が国には本格的な施設はまだ数カ所あるだけです。

 

治療については、経鼻陽圧換気療法(nCPAP)がもっと広く応用されるべきです。この装置は小型の人工呼吸器の一種です。在宅でリースによる使用に対して健康保険で報酬が支払われますがこれも額が低く普及にブレーキとなっています。