家庭で突然のけが人や急病人が出た時、家族やその場にいる人は、まずは医師に連絡をとったり、救急車を呼んだりすることでしょう。実際、できる限り早く医師に見せ、専門的な治療を施してもらうことは重要なことですがそれと同時に忘れてはならないのが、医師に見せるまでの間に行わなければならない応急手当です。

 

負傷や急病で病院や医院に運び込まれる人の中には、応急手当がなされなかったために命を落したり、あるいは逆に、適切な応急手当のおかげで、危ないところを助かったという人は少なくありません。まさに応急手当の良し悪しはけが人や病人にとって、運命の分かれ道ともなります。

 

では、けが人や急病人が出た時、どのような応急手当をすれば良いのでしょうか。いざという時に、あわてず適切な手当ができるよう、家庭のひとりひとりに応急手当についての必要最小限の知識を身につけていただけるよう、救急処置のポイントをご紹介します。

 

 

救急処置 7つのポイント

 

今、あなたの目の前にけが人や急病人が横たわっているとします。落ち着いて次の7つのポイントにしたがって行動しましょう。

 

医師を待っていられない緊急の処置

下記のような医師の治療をのんびり待っておれない切迫した状況にある時は迅速に適切な処置を講ずることが必要です。

  • 窒息している → その原因を取り除く。
  • 呼吸が止まっている→ 人工呼吸を行う。
  • 心臓が止まっている → 心臓マッサージ+人工呼吸
  • 出血している → 止血をする。
  • 毒物を飲み込んだ → 無理やり吐かせる。

安静と楽な姿勢

突然のけが人や急病人を目の前にすると、気持ちが動転して、けが人や急病人を揺り動かしたり、ベッドやどこかへ移動させようとしたりすることがあります。しかし、状態によっては動かすとよくないことが多いのです。下記の要領で、できるだけ楽な姿勢にして救急車や医師の到着を待つのが賢明です。

  • 顔面が紅潮している時 → 頭を高くする。
  • 顔面蒼白の時 → 頭を低くする。
  • 腹部に外傷が見られる時 → 膝を曲げ、体を起こして腹部の緊張をとる。
  • 嘔吐した時 → 窒息を防ぐため顔を横に向ける。
  • その他の場合→水平に仰向けに横たえ、むやみに動かさない。

 

けが人・病人をいたわり元気づける

できるだけ傷や出血を本人に見せない方がよいでしょう。

 

身体の状態、けがの程度を調べる

衣服は脱がせるより、はさみで切るか、縫い目から引き裂く方が良いでしょう。

 

医師に連絡、救急車を呼ぶ

通報時には、①場所をはっきり、わかりやすく伝え、②けが人や病人の状態を落ち着いて知らせる、この2つを実施してください。

 

医師や救急車の来るまでの間、保温や精神の安定に努める

救急車が来るまで最短で5分程度かかります。この時間に急変することも多く、介助者の処置によって生死が決まることもしばしばあります。何をしていいのか、ほとんどの方が分からないと思いますので、不十分な知識で実施するのではなく、とにかく負傷者の保温と精神の安定に努めてください。

 

 

傷の応急処置

 

キズの応急処置には「して良いこと」「して悪いこと」があります。場合によっては悪化させることがありますので、以下に挙げる事項をしっかり把握しておいてください。また、流血している場合には適切な方法で止血を行うことが大切です。

 

して良いこと

どんな傷にも共通することは、止血・感染防止・全身状態への注意の3つです。

  1. 出血があれば止血をする。
  2. 傷とその周囲をオキシドールか水道水で洗い流す。
  3. 傷の中はできるだけいじらず、表面の砂、木片などは静かに取り除く。異物を取り除く時は、思わぬ出血に注意して下さい。
  4. オキシドールをかけ、傷を消毒する。
  5. 消毒ガーゼを当て、包帯をして近くの病院へ。

 

これ以上のことは素人には無理ですので、しない方が無難でしょう。なお、軽度のすり傷には軟膏も良いでしょう。

 

して悪いこと

手当てのつもりでしたことが、かえって逆効果となることもあります。以下の事は避けるようにした方がよいでしょう。

  1. 傷の上にキャベツ、ヨモギの葉、タバコなどをつけたりするのは細菌感染の危険があるので避けて下さい。
  2. 傷口に直接ちり紙や脱脂綿を当てたりするのもよくありません。
  3. 新しい傷に軟膏を擦り込むと、縫合してもつかないことがあります。
  4. 特殊な傷以外は、安易にヨーチンは用いない。

 

局所の圧迫–血を止める

止血は、①止血部にガーゼなどの清潔な布を当て、強く圧迫する、②出血部を高く持ち上げる、③脈どころを指で抑える、④止血剤でしばる、の4つのポイントを抑えておきましょう。

 

 

打撲・捻挫・骨折の応急処置

 

手足の軽い打撲であれば冷却すれば良いものの、頭や胸といった急所は軽い打撲でも様々な点において注意しなければいけません。また、骨折時には症状の悪化(折れた骨の移動)を避けるためにも、固定してあげることが非常に大切です。(関連:赤ちゃん・子供が転ぶ・落ちる|転倒・転落の注意点と対処法

 

頭の打撲

軽そうに見えて重く、重そうに見えて軽いのが頭の打撲。何より油断大敵です。病院で精密検査を受けた方が安心です。

  1. 頭を打った場合には、なるべく動かさないで観察し、担架などで早く病院に送る。
  2. 意識がないときには、窒息させないよう注意することが大切です。
  3. 口の中の食べ物や入れ歯などは取り除いて下さい。
  4. 耳、鼻、口から出血している場合は、頭蓋底骨折の恐れがあります。
  5. 血液、嘔吐による窒息を避けるため、口の中には常に注意を怠らないようにしてください。

 

胸の打撲

胸を強く打った後、激しい痛みやせき、血痰、呼吸困難などが出れば、肺や肋膜の損傷の恐れがありますので、一刻も早く病院へ収容する事が必要です。

  1. 談話を禁じ、病人を励ます。
  2. 冷湿布をする。
  3. 窒息に注意する。
  4. 外傷で肺に孔があき、空気が出入りしている時はガーゼで強く圧迫する。
  5. 上半身を高くし、ふとん等にもたれさせて運ぶ。

 

骨折

  • 骨折しているかどうかは、次のような症状で大体の判断ができます。
  • 痛みが激しく、ちょっと触れても飛び上がる。
  • まわりが出血ではれている。
  • 手足が動かせない。
  • さわると骨がくずれているのが分かる事がある。
  • 骨折端がすれてコツコツ音がすることがある。
  • 完全な骨折では、変形したり、くぼんだり、大腿骨骨折では片方の足が短くなったりする。

 

■副え木固定の方法

副え木には、厚紙、板、雑誌、毛布、定規、棒切れなどいろいろなものが使えます。まわりを見まわして使えそうなものを見つけて下さい。副え木は骨折部の上下の関節を含めて固定し、包帯はゆるからずきつからず、副え木が動かない程度にするのがコツです。傷があれば、傷の応急手当をしてから固定すること。

 

 

やけどの応急処置

 

「やけどにアロエ」は一昔前の話。今日では「氷水で冷やして何も塗らずに病院へ」が常識です。

  1. ただちに冷水(できれば氷水)で冷やす。または、水道水をしばらく流して冷却する。
  2. 消毒ガーゼ、タオル、シーツなど清潔な布で包む。
  3. 外科医へ。

 

氷水は(1)汚物を洗い流す(2)冷えるので痛みを和らげる(3)水泡になるのを防ぐ、という一石二鳥の効果があります。やけどは、広さがポイントです。一般に、体表面積の30%以上は重症とされています。

 

 

痙攣の応急処置

 

痙攣にはいろいろな原因が考えられますが、原因がなんであれ、けいれんを起こした時は以下のポイントに留意してください。(関連:赤ちゃんの痙攣・ひきつけ(手足が固まる)の病気と対処法

  1. 患者がけがをしないように静かに横たわらせる。
  2. 衣服をゆるめて楽にしてやる。
  3. 子どものヒキツケには浣腸もよい。
  4. 顔は横向けにし、口の中にたまった唾液等を吸い込まないようガーゼで外へみちびきだす。
  5. 熱がある時は、頭を冷やしましょう。
  6. 強くおさえたり、冷たい手で触ったり、無理に抱いたり、ゆすったりすると、かえって悪い結果となることがあるので注意して下さい。

 

 

 異物の誤飲の応急処置

 

気管につまる異物にはアメ玉、ガム、ゴム風船、豆、玩具、鉛筆のキャップ、餅などが比較的多く、お年寄りや子どもの場合は特に注意が必要です。(⇒子どもの誤飲|タバコ・洗剤・化粧品・薬品など、誤飲時の対処

 

気管の異物

  1. 子どもはすぐ逆さに抱いて、のどの奥に指を1、2本入れてつまみ出すか、指で舌根部を刺激して吐かせる。
  2. 手のひらで背中の真ん中を平手で4〜5回力強く叩く。
  3. 背後から抱きすくめるように腕をまわし、片方の手の握りこぶしをみぞおちに置き、その手の手首をもう一方の手で握り、両腕をひきしぼるように抱く。
  4. 大きな物をつめた時は、直ちに病院へ運ぶことです。

 

薬物の誤飲

幼児小児は親の不注意から手近かの薬物や毒物、タバコなどを飲んでしまう例があります。その処置としては、早く吐かせることが第一です。必ず医師の診察を受ける。飲んだ薬物が何であるかの確認が大切なので、現物を持参することです。また飲んだものの種類と量も大事ですが、体内に残っている量を知るために、吐いた量も医師は治療の参考にします。吐かせたものは容器にとって持参して下さい。

 

 

目の応急処置

 

目のトラブルは多いものです。また、体の中でも粘膜が薄く衝撃に弱い部分であるため、軽度な場合でも時として大きな病気に発展することもあります。それゆえ、適切に処置した後、すぐに病院に行くことが非常に大切です。

 

目の打撲や創傷

眼球に予想外の損傷(穿孔や出血)を受けていることがあるので、目は静かに閉じたまま、清潔な水で冷湿布をして、眼科医の診断を受けて下さい。

 

目に異物がはいったとき

①結膜異物

しろ眼やまぶたの裏に入った異物は、自然に涙が多く出て、流し出されるものですが、もし異物が涙と共に外へ出ない時は、洗面器に清潔な水を張り、それに顔をつけ、5〜6回まばたきしてみるのも一つの方法です。それでも除去できない時は眼科医に任せましょう。

 

②角膜異物

くろ眼にささっている異物は、素人では除去することが困難で、無理に取ろうとすると不必要なキズを作ったり、細菌を感染させたりします。

 

③異物(液体など)混入

酸性液、アルカリ性液の他、石灰、セメント、天瓜粉などが入ったときは、すぐに大量の清水で5〜6分かけて十分に洗い流してから、眼科医に見せましょう。

 

コンタクトレンズによる障害

長時間の使い過ぎや装用したままの睡眠によって起こる角膜(くろ眼)の部分の障害で、激痛を伴います。温湿布でも冷湿布でも、どちらも治療の意味がありますので、少しでも痛みを緩和するようにして眼科医を訪れて下さい。

 

 

まとめ

 

この程度なら大丈夫だろう!と鷹をくくっていては、場合によっては重症化し後遺症が残ることもあります。特に子供や高齢者は注意が必要で、今は大丈夫でも急変を起こすことがしばしばあります。

 

救急車の費用が高い、病院に連れて行くのが面倒など、”言い訳”は色々あるでしょうが、お金より気分より「命」が大切です。最低限できることを実施して、早急に病院に行くようにし、緊急の際には迷わず救急車を呼んでください。