心疾患は、がんについで日本人の死亡原因の第2位になっていますが、推定患者数はがんの4倍にものぼり、20年前に比べると、約5倍も多くなっています。

 

死に直結するイメージが高く、たしかに危険度の高い病気ですが、正しい検査と予防、早期発見、早期治療を行えば、死への危険を回避することも不可能ではありません。心臓病は事前になんらかのサインがあることが多いので、見逃さずに早期発見、早期治療を心がけましょう。

 

 

心臓が5分休めば生活活動は終わる

 

心臓は、握りこぶしぐらいの筋肉の固まりです。その小さな臓器は、生命の発祥から死に至るまで、絶えずコトコトと動いています。人生80年とすると一生の間にざっと30億回も拍動をくり返している働きものです。

 

ちょっと休ませてあげたくもありますが、そういうわけにもいきません。心臓が動かなくなって5分もたてば、多くの場合は人生もジ・エンドとなってしまいます。

 

ところが最近、この生命活動の源泉である心臓の疾患が急増しています。現在、心臓病にかかっている人は、推定でがんの4倍にあたり、しかもその数はますます増加傾向にあります。増加している生活習慣病としての心臓病の代表は虚血性心疾患、つまり、狭心症と心筋梗塞の二つです。

 

心臓の働きは、収縮、拡張をくり返すことによって、その圧力で新鮮な血液を全身に送り出し、再び心臓に血液を集め、そしてまた送り出すということをくり返します。

 

その働きを行うために必要な酸素や栄養素は、心臓をとりまく3本の光の冠(コロナ)のような形をした冠動脈を通して血液によって運ばれてきます。

 

もしも、この冠動脈が詰まったり、塞がったり、あるいは血管の内腔が狭くなったりした場合、血液の流れが悪くなり、酸素や栄養素が十分に補給されなくなります。このように血液が流れにくくなったり、一時的にせよ流れなくなってしまうような血管の異常状態を動脈硬化といいます。

 

そして、冠動脈に動脈硬化が起こることによって、心臓の筋肉に十分な酸素や栄養が遅れなくなったときに、虚血性心疾患である狭心症や心筋梗塞が起こります。

 

 

血管が閉鎖すれば心筋梗塞、渋滞は狭心症に

 

心臓は、その大部分が心筋という筋肉で構成されています。この筋肉も全身の筋肉と同様に、稼働するためには酸素と栄養が必要です。筋肉という組織は、いわば“大飯食らい” で、ほかの組織よりもたくさんのエネルギーを必要としています。

 

ところが、エネルギー源を運ぶ血液が、血管という道筋のなかで動脈硬化という事故にあい、立ち往生しているような状態になると心筋はエネルギー不足に陥ります。

 

ちょうど、食糧や水を積んだトラックが家に着くまでに交通事故にあって一時ストップしてしまったり、片側通行によって半分くらいずつしか到着しないようなものです。当然、その食糧を待っている人は栄養不足に陥ります。めまいがするかもしれません。立っていられなくなるかもしれません。

 

それと同じ状態が心臓で起こるのが虚血性心疾患です。冠動脈の内腔が狭くなり、心臓に十分な酸素や栄養分が届かなくなったことによっておこるのが狭心症。

 

そして、内腔が詰まって酸素や栄養の供給がストップし、心筋が機能できなくなったり、一部の組織が死滅してしまうと心筋梗塞になります。

 

 

回数が増えてきた狭心症の発作は要注意

 

狭心症の主症状は、胸が締めつけられたり押さえつけられるような感覚や痛みがあり、胸が熱く感じることもあります。この発作は胸の中央部から左肩、左腕にまで及ぶことがあり、大体、10分間以内でおさまります。発作の起こり方、起こる状況によって、労作狭心症と安静狭心症の2つに分類されます。

 

労作狭心症とは、心臓に負担がかかっているときに症状が起こるもので、体を動かしたり、ストレス、緊張、興奮などが原因になります。狭心症の発作の多くはこのかたちで起こります。一方、安静狭心症は文字どおり、肉体的にも精神的にも安静にしているときに起こるものです。

 

さらに、労作狭心症の症状が落ち着いたのち、安静時にも起こるようになったり、発作の回数が増えてきたものを、不安定狭心症といいます。とくに安静狭心症と不安定狭心症は、心筋梗塞に発展する危険性が高いため、十分な注意が必要です。

 

 

心筋梗塞が起きたらすぐに病院へ

 

冠動脈は全部で3本ありますが、そのうちの1本でも閉塞されてしまうと、心筋細胞の一部が死滅し、心筋梗塞になる可能性があります。

 

心筋梗塞の前段階として、狭心症を起こしていることが多いのですが、狭心症から移行して心筋梗塞に至る場合には、ほとんどの人がすでに医師の管理下にあるため、手当てが早く、むしろ死亡率は低くなります。問題になるのは、何の前ぶれもなく心筋梗塞になる例です。

 

前駆症状として、胸の真ん中あたりに締めつけられるような痛みがあったり、左肩や左腕の内側が痛んだりします。ただし、本人はそれが心臓の痛みであることには気づかないことが多々あります。

 

発作は、狭心症よりも激しく、胸のあたりに激痛が走り、それが数10分から数時間続きます。あまりの苦痛に死に至るのでは……という恐怖心と、心機能の急激な低下により、冷や汗や吐き気、失禁、意識低下などのショック状態に陥ることも多くみられます。

 

心筋梗塞の発作が起きてからなんの手当てもしないと、数時間以内に約半数が死亡しますので、発作が起きたら、一刻も早く病院へ運び、即、治療を受けなくてはなりません。

 

最近は冠動脈を広げるさまざまな技術が発達し、治療は時間との戦いといえます。発作後、数時間内に適切な治療を受けることが肝心です。