頭痛は日常ありふれた症状ですが、だからといって決してあなどってはいけません。頭痛には、危険はなくとも治りにくい“慢性疾患”のものから、生命の危険に関わる重大なものまで存在し、その実態は様々です。

 

危険な頭痛では、一刻も早く病院へ急がねば、命の危険さえも脅かされることになりかねません。頭痛が起こるメカニズムや危険な頭痛の見分け方を事前に知って、いざというときに備えましょう。

 

 

頭痛はなぜ起こる?

 

頭が痛い……痛みの程度の差こそあれ、たいていの人が体験しているトラブルです。でも「頭が痛い」とは、いったいどういうことなのでしょうか。

 

私たちは、頭が痛い、というと脳の痛い部分に何か障害が起きているように考えがち。しかし、意外にも脳は脳自体の痛みを感じる神経をもっていないのです。

 

ということは頭の痛みというトラブルは、即、脳の異常というわけではありません。実は「頭が痛い」という感覚は、頭蓋骨周辺や脳血管周囲などの神経が何らかの原因で刺激されたことによって起こります。

 

その原因は千差万別。首の筋肉が緊張して「頭が痛い」と感じることもあれば、こめかみの筋肉が緊張して頭痛が起きることも。

 

中には、くも膜下出血や脳腫瘍など、脳の異常が近くの神経を刺激することで頭痛のサインを出しているという恐いケースもあります。

 

ですから、しつこい頭痛が長く続くならば、何よりも大切なのは、病院で正確な診断を受けること。「心配のない頭痛」なのか、「生命に関わる重大な頭痛」なのか、医師の正確な判断をあおぎましょう。

 

慢性の頭痛もちの人が「いつものこと」と軽く考えて大事に至ってしまうという恐いケースもありますから、素人判断は危険です。しかし、全体の数からいうと危険な頭痛は数少なく、ほとんどは「慢性頭痛」と呼ばれる心配のないものです。

 

 

生命に関わる重大な頭痛

 

今まで経験したことのない強い頭痛、いつもと違う頭痛の場合は、ためらわず脳神経外科などの専門医を訪ねてください。一刻を争うケースもあります。

 

主なものは以下の通りです。

 

くも膜下出血

脳を覆う「くも膜」の内側で脳動脈瘤などが破裂して出血するもの。生命に危険が及ぶ恐い病気です。出血の仕方によって症状の現れ方や程度が違いますが、はじめて経験するような激しい頭痛や嘔吐がみられ、ときに意識を失います。発作後一刻も早く救急車で脳神経外科へ運ばなければなりません。

 

脳出血、脳梗塞

脳血管が破れたり、詰まったりすることにより、突然、強い頭痛が起こり、吐き気や嘔吐を伴います。一般に脳梗塞では強い頭痛が起こるのはまれです。意識障害のあることもあります。一刻も早く救急車で脳神経外科へ運ばなくてはなりません。

 

脳腫瘍

頭痛が毎日続き、しだいに悪化していくのが特徴。頭を振ったりいきんだりすると頭痛が始まり、悪心や嘔吐、けいれんを伴うこともあります。腫瘍そのものは良性のものと悪性のものもあります。脳神経外科での手術治療が一般的です。

 

その他

高血圧性脳症、ウイルス感染による髄膜炎や脳炎、頭のケガが原因の頭痛、緑内障などがあります。

 

 

心配のない頭痛の主なもの

 

片頭痛や緊張型頭痛に代表される慢性頭痛は、しつこいものではあっても生命に別状はありません。主なものは以下の通りです。

 

片頭痛

頭の片側だけ痛むものが多く、一部のケースでは頭痛が起きる前に「目がチカチカする」という症状(閃輝暗点)があります。なんらかの理由で頭蓋骨の内外の血管が拡張し、周囲の神経を刺激することで頭痛が起こると考えられています。

炎天下での外出、チョコレートを食べることなど、人によって誘因となるものもさまざま。女性に多く、遺伝が関係しているとも考えられています。血管を収縮させる薬を投与する治療法が有効です。

 

緊張型頭痛

鈍痛や、頭に重いものをかぶったような圧迫感があります。痛みは後頭部や頭部全体などです。筋肉の収縮があるタイプと、収縮のないタイプの2つに分けられます。

前者は頭蓋骨周辺の筋肉が異常収縮し、痛み物質が生じて神経が刺激されることによって起こり、後者は原因不明ですが脳の痛みを感じるメカニズムに問題があると考えられています。

年齢や性別に関係なく、まんべんなく起こりますが、日本人に多いことで有名です。薬は筋肉の緊張をほぐす筋弛緩剤、鎮痛剤などが有効です。

 

群発頭痛

あらゆる頭痛のうちで、もっとも激しい痛みのひとつ。左右どちらか決まった側が痛みます。ある一定期間(およそ一カ月)のうちは毎日のように頭痛がおき、それを過ぎるとまったく起きなくなるのが特徴です。痛みは30分から2時間くらい続き、同時に痛い側の目からは涙、鼻からは鼻水が出たり、鼻づまりが起こったりすることもあります。

首から脳に行く動脈が広がることが原因ではないかといわれていますが、詳しいことはまだわかっていません。男性に多いのが特徴で、患者の7、8割は男性。群発頭痛そのものを治すことはできませんが、酸素吸入法により頭痛発作を止めることは可能。

最近はスマトリプタンという薬を注射します。あらかじめ「エルゴタミン」という血管を収縮させる作用のある薬を服用し、発作をおさえることもあります。

 

心困性の頭痛

単なるストレスで起こるものもありますが、うつ病や神経症などに伴った頭痛で、原因が複雑にからみあっている場合には、精神神経科や心療内科に受診する必要があります。

 

その他

かぜや二日酔いなどが原因の頭痛があります。また、緊張型頭痛と片頭痛の混合型もあり、ほとんどの場合に心理的な要素がからんできます。最近では鎮痛剤の乱用が原因でおこる頭痛も増加しています。

 

 

慢性頭痛に悩んだら頭痛外来、神経内科へ

 

頭痛に悩む人の多くは、最初にかかった医療機関での検査や問診の結果、「心配のない慢性頭痛」と診断され、鎮痛剤をもらって終わり……ということが多いよう。

 

ところが、患者自身はしつこい頭痛に悩んでおり、なかには何十年も続いている人もいます。そうなると、何とかしようとして、ついついドクターショッピングを始めがちです。

 

治療者側からみても、頭痛に関係する病気は脳神経外科、神経内科、内科、整形外科、眼科、耳鼻咽喉科、精神科など、実に多くの診療科にわたっていますから、実際の治療科の選択はむずかしいのです。

 

こうした頭痛に悩む患者の相談窓口として頭痛外来や神経内科が設置されている病院もあります。

 

頭痛外来では、頭痛による苦痛や不都合を少しでも取り除くため、簡単なカウンセリングや生活指導、投薬などを行って患者の苦痛を減らし、QOL (生活の質)を高めるよう働きかけます。

 

慢性のしつこい頭痛は100%コントロールするのは無理ですが、50~60%なら十分可能です。また、患者のなかには「くも膜下出血ではないか」「脳腫瘍では」と重大な病気を想定して、それをまた“頭痛のタネ”にしていることもあるといいます。

 

こうしたケースのなかには、医者が時間をかけて患者の話を聞いてやることだけで治ってしまうことがあります。

 

しかし、背景にうつ病やノイローゼがあり、やや問題が込み入っているときには精神神経科を、器質的なものが疑われる場合には脳神経外科などの専門医を紹介されることになります。