おなかのなかについた脂肪をCTで輪切りにしてみてみると、皮下脂肪に脂肪がついた皮下脂肪型肥満と、内臓の周りに脂肪がついた内臓脂肪型肥満との2種類あることがわかっています。

 

前者には女性が多く、後者では男性が多くなっています。そして生活習慣病と関連の深い肥満は、おなかの周りに脂肪がついたいわゆるりんご型肥満。この肥満を放置しておくと心筋梗塞を起こす危険がきわめて高くなります。

 

 

内臓脂肪型肥満を知る腹囲の基準値

 

肥満のタイプには、昔から上半身やおなかの周囲につく型とお尻や太ももにつく型に分けられ、前者は「リンゴ型肥満」、後者は「洋梨型肥満」と呼ばれてきました。このうち生活習慣病とより関係が深いのは、リンゴ型肥満。このタイプには「内臓脂肪型肥満」と「皮下脂肪型肥満」があり、もっとも生活習慣病と関係の深い肥満の型が内臓脂肪型肥満であることが明らかになっています。この内臓脂肪型肥満が、最近とくに注目されています。

 

厚生省研究班に関連する施設の検診または人間ドック受診者など広い範囲を対象として腹部CTで皮下脂肪面積を計測した結果、BMI25以上の肥満者において、密接な関係が認められました。

 

内臓周囲の脂肪の著しい蓄積は、さまざまな生活習慣病の発症と密接な関連があり、健康上、大きなマイナス要因になることは明らかで、WHOでは、欧米人の基準値を腹囲が男性94センチ、女性で80センチとしており、それを超えると健康障害のリスクが高くなり、男性102センチ、女性では88センチを超えるとそのリスクはより大きくなると報告しています。

 

日本人の場合には、日本肥満学会の報告では、男性85センチ、女性90センチとなっており、興味深いのは男女が逆転していること。これは、日本人女性の場合、内臓脂肪が一定ならば、女性のほうがウエスト周囲径が大きくなるという事実に基づくものです。

 

 

明らかに異なる肥満と肥満症

 

BMIが25以上になれば肥満です。しかしその肥満は医学的対策が必要になる肥満ではありません。BMIやそのほかの方法によって肥満と診断はできますが、それが減量治療が必要なのか、ということになれば、かならずしも対象になるわけではありません。

 

医学的に減量が必要となるような肥満を肥満症といって区別しています。肥満症になるともはや立派な病気ですから、その治療にあたっては健康保険が適用になります。 肥満が医療の対象になるためには、いくつかの条件が必要で、体重測定、体脂肪測定、腹囲測定のほかに血液検査、尿検査、心電図などの一般検査が行われ、さらにCT検査において内臓脂肪の面積を計算。100平方センチメートル以上あると内臓脂肪型肥満と判定されます。

 

判定を受けた人で、肥満に基づく合併症である糖尿病、高脂血症、高血圧症、心筋梗塞、脂肪肝、変形性関節症などをすでに発症している人、あるいは今現在は発症していなくても、将来発症する危険が高い場合(内臓脂肪型肥満)には肥満症と判定され、医療の対象になり、治療が必要になります。

 

肥満は摂取エネルギーのほうが消費エネルギーよりも多いことによって起こりますが、とくに内臓脂肪型の場合には、消費エネルギーが少ないことに強く関連しているといわれています。

 

なぜ皮下ではなく、内臓にたまるのか、については明らかではなく、遺伝によるものが多いともいわれています。内臓脂肪と病気との関係を簡単にみれば、内臓脂肪のほうが、皮下脂肪と比べると脂肪の分解と合成を活発に繰り返し、分解して大量の脂肪酸になり、肝臓で中性脂肪やコレステロールの合成を促進し、高脂血症を起こし、あるいはインスリンの結合を阻害したり、分解を抑制したりすることによります。

 

また最近では、内臓脂肪はホルモンのような物質、生理活性物質を分泌し、この分泌物がさまざまな病変とつながっているということが明らかになってきています。

 

 

肥満者は進化した遺伝子の持ち主

 

人類の歴史は飢餓の歴史というほどに400万年における飢餓を生き抜くために、人類は少ないエネルギーを倹約して使うことができるよう、進化しながらその遺伝子を書き換えてきました。飢餓を克服し、エネルギーを節約しながら、なんとか生き延びるために「倹約遺伝子」を獲得してきたのです。

 

その適応能力は飢餓の時代には不可欠であり、不可欠の能力をもつ人ほど、進化した人類であったのです。ところが、人類として進化し、優れている人ほど、飢餓から解放された環境に放り込まれると、脂肪を蓄えすぎてしまい、脂肪を内臓にため込み過ぎ、生活習慣病などによって生命の危機に追い込まれるという皮肉な結果になっています。

 

肥満関連遺伝子は現在みつかっているだけでも約30種類。この遺伝子たちは、食べたものをいかに効率よく脂肪に変えて蓄積しておけるかのサバイバル能力を規定するものであり、この遺伝子をいくつもっているかによって、どの程度の肥満になれるかの差になります。

 

したがって、超肥満の人ほど、サバイバル能力に長けた、進化した人類であり、逆にいくら食べても太れない、やせの大食いの人は、人類としては劣性であり、遅れた人類ともいえます。

 

肥満者は自己管理能力が欠如しただめ人間として、就職などにも不利な条件になっていましたが、実は、人類としては優れた種であると同時に、本人の管理能力いかんにかかわらず、遺伝子的に太ってしまうことがわかってきました。ちなみに、人間のなかには、太れる人と太れない人がいます。太れる人の割合は、欧米では5〜6割に達しますが、日本では3割程度です。

 

20世紀末、アメリカのワールドウォッチ研究所のリポートによると、地球上の肥満者が約11臆人、飢餓人口も約11臆人になったことを明らかにしています。このレポートは、飢餓との戦いに勝つために獲得してきた適応能力が飢餓を追い越し、肥満という敵になりかわる、人類史上初の事態を迎えることになったという皮肉な事態を示しています。

 

なお、近年では食生活の変化などが影響して、子供にも肥満が蔓延しています。詳しくは「子どもの生活習慣病|肥満などが起因する各種病気の症状と予防について」をお読みください。