子宮内膜症とは「子宮内膜様組織が本来の正常な位置、すなわち子宮腔内面以外の組織や臓器などに、異所的に存在し増生するために生じる病態をいい、発生部位により内性子宮内膜症(子宮腺筋症)と子宮外に発生する骨盤内子宮内膜症などの外性子宮内膜症に分けることができる」と定義されています。

 

子宮内膜症は月経痛、性交痛さらに進行すると慢性骨盤痛をきたし、疼痛のために就労、就学を困難にし、日常生活を維持できなくなる場合もあります。

 

同時に不妊症の原因疾患としても注目されています。 近年、子宮内膜症の検査法、診断法が進歩改善し、さらにさまざまな治療法が開発されています。しかし、子宮内膜症は慢性進行性疾患であるために、さまざまな治療法に抵抗をしめし、いわゆる「根治」が難しい疾患です。

 

 

子宮内膜症の分類上の定義

 

子宮内膜症はその存在部位によって分類され、子宮内膜あるいはそれと類似する組織が子宮内腔以外の部位に発生、増殖する疾患です。したがって「子宮内腔以外の部位」とはいったいどの部位なのかによって分類されています。

 

内性子宮内膜症(子宮腺筋症)と外性子宮内膜症

「子宮内腔以外の部位」が子宮筋層である内性子宮内膜症と、「子宮内腔以外の部位」が子宮周囲や子宮外である外性子宮内膜症に大別されています。

 

内性子宮内膜症は子宮腺筋症とも呼ばれ、40歳代で出産回数の比較的多い女性に発生します。それに対して外性子宮内膜症は比較的若く、妊娠分娩の経験のない女性に発生します。

 

このように両者は発生機序、疫学的背景などの相違から別の病態であると考えられる傾向にあり、一般的に子宮内膜症というと「外性子宮内膜症」のことを意味します。

 

骨盤内子宮内膜症と骨盤外子宮内膜症

通常、子宮内膜症とは骨盤内臓器に発症したものを表し、骨盤外組織にみられる特殊な子宮内膜症に対しては、その発生臓器名を始めにつけることになっています。たとえば肺子宮内膜症、臍子宮内膜症などです。

 

単に子宮内膜症といえば外性子宮内膜症で、しかも骨盤内臓器に発症したものを表すのが一般的です。

 

子宮腺筋症(内性子宮内膜症)

子宮腺筋症とは、子宮内膜組織が本来存在するはずのない子宮筋層内に認められる場合に用いられる疾患名で、広義の子宮内膜症に属します。子宮腺筋症と(外性)子宮内膜症は異なった疾患と考えられるようになっています。

 

子宮腺筋症は子宮全体がびまん性に腫大しており、病変と正常筋層との境界は不鮮明で、組織学的には子宮筋層内に子宮内膜組織が証明されます。その他の骨盤内臓器に子宮内膜組織は認められず、子宮腺筋症のみが単独で認められます。

 

子宮内膜症

(外性)子宮内膜症単独症例では、卵巣に卵巣子宮内膜症とダグラス窩の子宮内膜症が認められます。卵管と卵巣は子宮内膜症のために癒着し一塊になり、可動性は制限されています。しかし、子宮は正常で子宮腺筋症は見られません。

 

一般的に子宮内膜症が認められる骨盤内組織としては卵巣、ダグラス窩・骨盤腹膜、仙骨子宮靱帯、膀胱子宮窩腹膜、卵管、結腸、直腸などです。初発部位はダグラス窩、卵巣が多いです。

 

正常ならば子宮や卵巣、卵管は内診時に容易に移動し、固定されているわけではありません。ところが、ダグラス窩などに子宮内膜症の病変があると癒着のために可動性は制限され、圧痛(圧迫したときに痛みを感じること)が認められます。

 

癒着が強度になるとダグラス窩は完全に閉鎖され、骨盤内臓器は一塊になり、臓器間の剥離は困難になり、極端な場合には臓器の識別も困難になることもあります。このように骨盤内の臓器が癒着のために一塊になった状態を「凍結骨盤」と呼んでいます。

 

 

子宮内膜症の発生部位

 

子宮内膜症は通常、内性器の表面に発症し、次第に多発性になり、浸潤性に広がり深部に及んでいくことが多い傾向にあります。以下に子宮内膜症が発症する好発部位とまれな部位を示しますが、身体のほとんどあらゆる部分での報告があります。

 

好発頻度部位
高頻度卵巣、仙骨子宮靱帯、骨盤腹膜、ダグラス窩、直腸膣中隔、広間膜
中頻度子宮膣部、膣、虫垂、尿路系、大網、皮膚(手術瘢痕、臍、外陰)、リンパ節
低頻度肺、胸膜、小腸、筋肉、骨

 

 

子宮内膜症の検査・診断

 

子宮内膜症の確定診断は、腹腔鏡検査または開腹術により骨盤腔内を直視下に観察することで行われます。確定診断が外科的侵襲を伴うために、一般の健常人を母集団にすることもできず、また無作為に診断することも出来ません。そのために発生頻度や危険因子などの疫学的背景の検討を正確に行えないのが現状です。

 

しかし、さまざまな報告を総括すると、一般女性における子宮内膜症の発生頻度は5〜10%程度と推察されます。子宮内膜症の危険因子は、「年齢」「月経量」「妊娠出産歴」などが関与し、従来の治療法の他に低容量経口避妊薬が有効のことがあります。

 

検査・診断の種類

一般的な産婦人科診療に従って、自覚症状の有無などの問診、内診、直腸診を行い、超音波検査、CT、MRIなどの画像診断法、CA125などの生化学的検査などを参考にして診断を行います。

 

また、子宮内膜症は主に骨盤内腹膜や卵巣において、特有な子宮内膜類似病変を形成することから、本症の確定診断は腹腔鏡検査あるいは開腹術により骨盤内を直視下に観察することで行われます。つまり確定診断のためには外科的処置が必要となります。

 

 

子宮内膜症の発生要因

 

このように、子宮内膜症の確定診断は外科的手法を用いるために、不特定多数を母集団とした腹腔内精査を行うことは出来ません。したがって、本症の正確な発生頻度は不明です。

 

発生要因においても不明であり、未だすべてが解明されたわけではありませんが、さまざまな報告を統括すると、「ストレス」「遺伝」「不妊」など、さまざまな要因が示されています。

 

■ストレス

子宮内膜症の発生には、エストロゲンといった女性ホルモンが深く関係しており、日常的にストレスを抱えている人は、女性ホルモンの分泌量が変化し、それに体が対応できなくなることで、子宮内膜症を発症すると考えられています。

 

■遺伝的要因

母親が子宮内膜症を有する女性の本症の発生頻度は対照に比して高く、本症の発生に遺伝的要因が関与していると疫学的解析結果が示しています。

 

■不妊症患者

子宮内膜症は不妊症の重要な原因疾患となっています。子宮内膜症は生殖年齢層に発生し、増殖、進展するために子宮内膜症患者の40%程度は不妊であるといわれています。逆に不妊症患者の多数に子宮内膜症を合併しています。

不妊症患者を母集団とした子宮内膜症の頻度は時とともに増加していますが、不妊症のルチーン検査として腹腔鏡検査が導入されたことが大きく関与しています。この増加は真の増加というよりは腹腔鏡の普及状況を示しています。

 

 

子宮内膜症の危険因子

 

子宮内膜症の確定診断は外科的処置が必要なために、また無作為に外科的処置を行うことが出来ないために、危険因子の検討も容易でないのが現状です。一つの報告では危険因子であったり、他の報告では危険因子でなかったりすることがあります。これは確定診断が容易でないことが影響しています。

 

危険因子①「年齢」

初経後、年齢とともに増加しているために年齢が危険因子の一つと示唆されます。1989年にPauersteinらによる15歳から49歳までの女性を対象とした調査によると、初経前および閉経後の女性には子宮内膜症の発生は認められませんでした。

 

また、10歳代後半から子宮内膜症は認められるようになりますが、女性ホルモンの分泌が盛んになる性成熟期に向かって増加し続け、40歳代前半がピークになります。そして、女性ホルモンの分泌が低下する40歳代後半以降は減少します。

 

つまり、10代や20代といった若い女性の発症率は低く、反して30代(特に後半)や40代(特に後半)の発症率が高いということになります。

 

危険因子②「月経」

子宮内膜を含む月経血が膣内に流出するのは当然ですが、その一部は子宮腔内から卵管を経て腹腔内に流出することがあります。腹腔内に流出した月経血に含まれる子宮内膜が腹腔内に移植するという説が子宮内膜症の発生機序として考えられています。

 

したがって、月経血の量が危険因子と推察されます。つまり初経年齢が低く、月経周期日数が短く、月経持続期間が長いことが子宮内膜症の危険因子になります。逆に希発月経例ではリスクが低いとされています。

 

危険因子③「妊娠・出産歴」

子宮内膜症は不妊女性や未婚女性に多いことが知られています。また、妊娠、出産、授乳によって子宮内膜症が軽快、消退することがあります。また同時に、子宮内膜症の発症も遅らせるとの報告もあります。したがって、妊娠、出産回数が無い、あるいは少ないことが子宮内膜症の危険因子とも考えられます。

 

危険因子④「遺伝的素因」

子宮内膜症患者の姉妹、あるいは母親に比較的高率に子宮内膜症が認められるとの報告もあり、子宮内膜症の発生に遺伝的素因が関与していることが示唆されます。

 

危険因子⑤「その他」

■人種・社会的経済的条件

以前は子宮内膜症は白人に多く、黒人に少ないとされ、東洋人にも多いと考えられた時代もありましたが、現在では否定されています。同時に子宮内膜症は、社会的・経済的条件の高い女性に多いと報告された頃もありましたが、現在では全ての社会的地位、経済状態の人に子宮内膜症はみられます。

 

■カフェイン、アルコールの摂取

カフェイン、アルコールを多量に摂取する生活習慣があると子宮内膜症の発症が多いとの報告がありましたが、現在では再検討の必要があると考えられるようになりました。

 

■運動

運動と子宮内膜症の発生は負の相関があるとの報告もあります。すなわち、ハードな運動がエストロゲンレベルを低下させ、それが子宮内膜症の進展や維持を抑制させるからだと説明されています。したがって、エストロゲンレベルに影響を及ぼさない運動は子宮内膜症とは関係が無いとされています。

 

■体型

体型の違いによって子宮内膜症の発生が異なるのではないかとの検討がなされましたが、現在ではあらゆる体型の人に子宮内膜症は起こると考えられています。

 

 

子宮内膜症治療に使われる避妊薬について

 

低容量経口避妊薬は一般的に受精卵の着床を抑制する目的で、子宮内膜の肥厚を抑制し、月経血量が減少します。その結果、月経血が卵管を経由して腹腔内に流出する可能性が少なくなるために子宮内膜症に有効と説明されています。

 

多くの病院では、子宮内膜症の長期的なコントロールのために、エストロゲン(卵胞ホルモン)用量の低い経口避妊薬を処方しています。

 

低容量のエストロゲン/高い黄体ホルモン活性をもつ経口避妊薬を使用することにより、子宮内膜組織への刺激を減少させ、排卵を抑制することにより、子宮内膜症の重症度は軽減され、軽快している状態が保たれるのです

 

低容量のエストロゲン/高い黄体ホルモン活性をもつ経口避妊薬とは、具体的には「1相性ピル」です。経口避妊薬の服用によって、子宮内膜症の代表的な自覚症状である月経困難症は軽快しますが、経口避妊薬が子宮内膜症そのものに対して治療ないし予防効果があるか否かは、現在でも明らかになっていません。

 

しかし、「経口避妊薬を使用する女性」は避妊目的で経口避妊薬を使用するために、不妊症の女性は含まれている可能性は少ないです。

 

不妊症女性は子宮内膜症を合併している可能性が高く、「経口避妊薬を使用する女性」には最初から子宮内膜症を合併している可能性の高い女性(不妊症女性)は最初から除外されていることになります。そのために「経口避妊薬を使用する女性」に子宮内膜症が少ないにすぎないと言う意見もあります。