インフルエンザと風邪は症状がほぼ同じであるため関係性が高く、それゆえ肺炎などの二次疾病に繋がってしまうことがあります。

 

重篤な病気の可能性を少しでも減らせるよう、インフルエンザと風邪に関する知識を深めていってください。

 

 

ウイルスによる風邪

 

インフルエンザはウイルスの感染であることは多くの人が知っていますが、単なるかぜもウイルスが病原体になっていることは、案外知らない人が多いのではないでしょうか。

 

インフルエンザは流行性感冒、ふつうのかぜは普通感冒といいますが、普通感冒であっても、その80〜90%はウイルスが原因。普通感冒のウイルスは、流行性感冒と違い、ある時期に流行的に発生するのではなく、常に空気中に存在しているものです。

 

かぜのウイルスの代表的なものは、アデノイウルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルスなど。このウイルスはさらに枝分かれし、かぜのウイルス全体では200種を超えるといわれています。ウイルス以外の普通感冒の原因は、マイコプラズマ、クラミジア、細菌などの微生物が原因になることもあります。

 

これらのかぜの原因のなかの、何が発症に関わっているのかは、ほとんど鑑別できません。どの原因であったにしても、症状はほとんど同じで、そのために「かぜ症候群」といわれます。したがって、その治療も原因に対する治療ではなく、症状に対する治療、つまり対症療法がとられます。

 

のどが痛ければ消炎剤を、鼻が出れば鼻炎の薬を、発熱には解熱剤を、というように、症状を緩和していきます。通常、アセトアミノフェン、非ステロイド系消炎剤などがよく使われ、通常のかぜ症状にあっては、抗生物質は使わないのが原則。

 

抗生物質は細菌に有効な薬で、ウイルスには効果がありません。ただし、細菌との合併症が心配される場合には、抗生物質が投与されます。

 

最近、ウイルスに効果のある抗ウイルス薬も開発されていますが、インフルエンザなどの激しい症状のときに、初期に投与すると発熱期間を短くしたり、細胞間のウイルス感染を阻止したりできますが、副作用の報告もあり、普通感冒のときに使われることは、まずありません。

 

しかし、普通感冒だからといって重症化しないというわけではありません。「かぜをこじらせる」ということはよくあり、意外と簡単に合併症を引き起こすことがあります。

 

 

知らず知らずに進行する風邪

 

かぜをこじらせる……この“こじらせる”とは、無理したり処置を誤ったりして病状を悪くすることをいいます。

 

「かぜは怠け病。多少のかぜくらいで学校を休んだり、仕事を休んだりしてはいけない」……親、先生、先輩、上司などに、そんなことをいわれた記憶はありませんか。

 

それもあってか、現実的にはたいていの人は、「かぜをひいてしまって……」といいつつ、発熱があって、よほど苦しくなければ、無理して通常どおりに生活してしまいます。それでも、自然に治ってしまうことがほとんどかもしれません。

 

しかし、たまたま運が悪く、徹夜続きの仕事があったり、受験勉強の追い込みだったり、ひどく大きなストレスに身心ともに疲れ果てていたりすると、いつもはふつうに行動していても治っていたかぜが、そのときばかりは……ということがおこります。

 

普通感冒の場合には、上気道感染です。そのため、症状はクシャミ、鼻水、鼻づまりに始まり、のどの痛み、そして発熱と続きます。

 

ウイルスが咽頭まで侵入して止まっている場合には、症状はここまで。普通感冒のほとんどはこの症状で終わります。発熱すると、37度台の熱が3〜4日続きます。なかに38度台の日があっても1日程度。それ以上高熱になることはほとんどありません。

 

ところが、3〜4日たっても熱が下がらず、逆に高くなってきたり、いったん下がった熱が1日くらいしてまた上がり、前よりも高くなったときには、もう単なる普通感冒の域ではなく、合併症を疑う必要があります。

 

咽頭で止まっていたウイルスが、気管支のなかまで侵入すると、咳が出始め、たんがからむようになります。これはウイルスが気管支で炎症をおこし、もうすでに「気管支炎」という合併症になっています。

 

この気管支炎にさらに、口中などに常にいる細菌が感染すると、二次感染の気管支炎になり、症状はさらに悪化します。そのまま放置していると、ウイルスは肺にまで侵入します。そしてウイルス性の肺炎を起こすことになります。

 

ただし、かぜのウイルスはさほど強いものではなく、通常では気管支の防御作用によって肺にまで到達することはありません。

 

問題なのは、防御作用が弱くなることにより、自然環境のなかに存在する病原菌が病原体として活動し始めることによっておこる二次性の肺炎です。

 

この原因菌には、肺炎球菌、ブドウ球菌、インフルエンザ桿菌などがあります。これらは、若い人からお年寄りまで、誰のなかにも存在していますが、お年寄りの場合には、とくに飲み込むときの咽頭反射が弱く、食べ物が気道に入りやすくなり、これらの菌もいっしょに肺に入ってしまうため、より肺炎になりやすいのです。

 

かぜの原因になっているウイルスも、肺炎をおこす細菌も、決して特殊なものではなく、常に存在しているものです。にもかかわらず、健康時には病原体としてまったく作用しません。

 

ところが、寒さや過労、睡眠不足などによって防衛力が低下すると、ウイルスや細菌の力のほうが上回り、病原体となって症状を現すことになります。

 

 

ウイルスの強さと免疫力の関係

 

普通感冒でも、あるときはひどく、またあるときは軽くすむことがあります。それはウイルスの強さというよりも、その人の防御作用である免疫力の差です。

 

免疫力が強ければ、ウイルスの毒性は弱まり、逆に免疫力が弱っていれば、ウイルスの毒性は強くなります。つまり、かぜを重症化させるか、簡単に治してしまうかは、そのときの免疫力の差ということができるでしょう。

 

たとえインフルンザウイルスのように強いものに感染したにしても、防御作用が強い場合には、症状を現さず、感染したことにすら気づかないこともあります。

 

したがって、かぜのキーポイントは免疫力。免疫力さえ十分に働いてれば、侵入してきたかぜのウイルスを簡単に退治できてしまいますし、もちろん重症化も防げます。

 

体の防衛作用、免疫力を強めるためには、十分な栄養と休養が必要です。過労を避け、バランスのよい食事を規則正しく摂取し、十分に睡眠をとりましょう。

 

また、ウイルスは低温乾燥を好みます。高い温度と湿度のところでは活発に働くことができないので、できるだけ温かくし、乾燥を防ぐことが基本です。

 

すでに免疫力が低下している人たちがいます。

 

がんの手術や治療中、治療後の人、糖尿病の人、慢性呼吸器疾患のある人の場合には、重症化しやすいので十分に注意してください。また、お年寄り、乳幼児も注意が必要です。

 

かぜが重症化しやすいハイリスクグループには、65歳以上の人、老人福祉施設、老人医療施設に入所・入院している患者・慢性疾患で治療中の人、肺や心臓の慢性疾患のある人や喘息の子どもたち、糖尿病・腎機能障害・免疫抑制剤による治療が必要な人たちどがあげられます。

 

免疫力の低下が明らかで、インフルエンザやかぜなどによる合併症が予想できる場合には、インフルエンザの予防接種もあれば、肺炎の予防ワクチンも開発されています。

 

日本ではまだ無頓着の人が多いようですが、アメリカなどでインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの接種率が50%以上にのぼっています。