対人恐怖症候群とは、他人との距離のとり方が分からず、対人関係を結ぶことに恐怖を覚える状態をいいます。

 

10〜20歳代の人に多くみられ、人間的な心のふれあいを避けること、とくに1対1の人間関係を避ける傾向にあることが大きな特徴です。

 

自分から積極的に話しかけたり、自分をさらけだすことができないため、友だちをつくることができず、異性と恋愛関係を結ぶこともできません。実は、こうした行動の裏に隠されているのは、「傷つきたくない」という心理。

 

他人の評価が気になるあまり、自分から相手に話しかけることができず、人とのコミュニケーションをとることができなくなってしまいます。

 

昨今ではインターネットの普及により、SNS間でのみのやり取りが会話の大部分を占めていることで、対面した時に上手く話せない、話すのが怖いという状況が創り出されてしまっているのです。

 

また、対人恐怖症候群の場合、仕事上では最低限の人間関係を築くことができ、決まりきった仕事をこなすことはできますが、何か突発的な問題が起こったときには融通がきかず、臨機応変な対応をとることができません。その結果、さまざまなトラブルを起こすことになりがちです。

 

 

対人恐怖症の弊害

 

対人恐怖症に関わらず、イジメやトラウマなど、いわゆる恐怖からくる精神障害は日常の生活に悪影響を及ぼします。恐怖の念が強いと、いくら精神的に強い人でも簡単に恐怖に立ち向かうことはできません。

 

その結果、恐怖から逃げ、ますます症状が悪化してしまうのです。対人恐怖症の場合には、対面して話すことに恐怖を覚えている状態のため、直接人と話すのを避け続けて、SNSでの会話時間がどんどん増え続けます。

 

そうなると、人と話す時間が減っていき、話すことだけでなく、人を見ることも近くにいることも怖くなってしまいます。

 

ただし、恐怖に立ち向かわなくても、人と接する時間を多くする、たとえば家にこもらず外に出かける、外のいる時間を長くするという方法を繰り返していけば、多くの場合、次第に改善されていきます。

 

いわゆる、“慣れ”の状況を作り出すことで、徐々にではあるものの、人と接することへの抵抗が少なくなり、自然と怖いという気持ちが消えていくのです。

 

 

対人恐怖症候群の治療例

 

対人恐怖症候群には、治療を要する場合と、とくに治療の必要がない場合があります。治療が必要となるのは、①本人が人間関係で悩んでいる場合、②仕事上でのトラブルが起こる場合、の2つです。日常生活でとくに問題がなければ治療の必要はありません。

 

精神科での具体的な治療法は、カウンセリングが中心。カウンセリングを通じて、「失敗を恐れることはない」「自分が心を開けば、相手も心を開いてくれる」ということを納得させ、人間関係に対する考え方を変えていきます。

 

また、その人の苦手な人間関係の状況を想定し、それぞれの場面に応じた対応を練習していきます。1対1のカウンセリングだけでなく、5〜6人でのグループカウンセリングを行うこともあります。治療が順調に進めば4〜5カ月ほどで大きな効果が得られます。

 

 

とにかく失敗を恐れないことが大切

 

対人恐怖症候群は、近年増えつつある心の問題です。子どもの頃からごく限られた狭い人間関係しかもたず、集団のなかで切磋琢磨する機会が少なくなったこと、テレビゲームなど室内で一人で行う遊びが中心で人間関係が希薄であったこと、パソコンなどのバーチャルな世界で過ごす時間が多くなったこと、などに起因していると考えられます。

 

このような生活環境が、対人関係をうまく結べない結果を生んでいるといえるでしょう。生身の人間とうまく関係を築いていくためには、とにかく失敗を恐れないことです。

 

メールや電話にばかり頼らず、身近な人とできるだけ直接対話することを心がけましょう。そして何より、自分の思いや考えをはっきり主張する強さをもつことが大切であることを忘れないでください。

 

 

まとめ

 

対人恐怖症は程度に大小に関わらず、現在の10代・20代の男女の20%に発症がみられる、または発症傾向がみられると推定されています。

 

インターネットやSNS上では匿名で書き込むことができることで、人の反応を気にせず、時には人の反応に対して喜びを覚えることでしょう。ゆえに、面と向かって話すことを避け、携帯やパソコンにしがみつく生活が常習化してしまっているのです。

 

日常生活で何ら問題のない程度であれば少しでも外にでかける時間を増やしていくことで改善されていきますが、日常生活で問題がある場合にはカウンセリングを受けてみるのも一つの手です。

 

ただし、お子さんや友人が対人恐怖症だという場合には、無理に治させようとしないでください。対人恐怖症をはじめ、精神病の治療は本人の強い意志が必要ですので、無理やり治させるのではなく、ゆっくりと治すよう仕向けるというように間接的に見守りながら促してください。