腸には十二指腸、小腸、大腸がありますが、「腸」といったときには、大腸を思い浮かべます。大腸以外はあまり自覚症状を現しません。

 

十二指腸では潰瘍のときに痛みますが、それ以外ではほとんど症状がなく、小腸にあってはなおさらです。大腸のトラブルはたくさんあるため、大腸について知っておきましょう。

 

 

大腸の病気は主に3つ

 

大腸の病気には、いろいろありますが、基本的には急性腸炎と慢性腸炎、そして過敏性腸症候群です。急性腸炎は、病気の診断名ではなく、腸に炎症を起こす疾患群の総称です。食中毒のような細菌性のものやアルコールの飲み過ぎのような物理化学的な刺激など、原因がいずれであっても、腸に炎症をおこし、そのために腹痛や下痢を起こす病気をまとめて急性腸炎といいます。

 

とくに処置しなくても、一過性の下痢が終わると自然に治ってしまうものもあれば、入院加療が必要なほどに重篤なものもあります。急性腸炎は、その原因によって、感染性のものから非感染性のものとに分けることができます。感染性の腸炎は、赤痢菌やコレラ菌のような法定伝染病もあれば、食中毒をおこすサルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌などもあります。

 

非感染性腸炎には、アルコール性のもの、特定のアレルゲンとなる食品の摂取、抗生物質などの薬品、などがあります。

 

原因に応じ、細菌性の場合には抗生物質を用います。ただし、下痢は有害物質を外に排除しようとする生体防御反応のひとつですから、むやみに止めるべきではなく、水分の補給を心がけ、自然に止まるのを待つことも大事です。また、抗生物質も万能ではなく、投与したためにかえって腸炎を起こしたりすることもあるため、慎重な配慮が必要。ひどい下痢の場合には、素人判断は危険。場合によっては数日入院、点滴の必要もあります。

 

下痢や腹痛の症状が急激に起こるので、腸を安静にすることが大事です。慢性腸炎も独立したひとつの病名ではなく、慢性の下痢や腹痛を主な症状とする病気の総称です。便検査、血液検査、バリウム検査、内視鏡検査を行ってもはっきりとした診断名をつかず、症状を現す病気を想定しつつ消去法で除外していきながら、何の病気も見当たらない場合に慢性腸炎と診断されます。

 

 

便秘と下痢が交互に続く場合は

 

便秘と下痢、あるいは下痢と便秘が交互にやってくるといった便通異常が特徴で、そのほか腹痛をはじめとした種々の腹部症状を訴えます。はじめのうちは、下痢と便秘が交互に現れていますが、次第にどちらかにかたよる傾向にあり、最初は一過性であったものが、次第に慢性化し、持続的に症状を現すようになります。

 

過敏性腸症候群の一つのタイプには、腹痛とともに便秘や下痢が交代でくるか、痙攣性の便秘を伴う型があります。痙攣性便秘とは腸管の緊張が高まり、便がうさぎの糞のような小さく固い塊になって出る便秘です。そうした便秘が数週間、数カ月に渡って続いた後に下痢がきますが、その下痢はゆるい便が少量出るだけで、深夜には下痢をせず、情緒的なストレス、食事によって増強したりします。

 

もう一つには、神経性下痢といわれ、食事の内容とは無関係に下痢かやわらかい便が持続的に、一定の間隔で起こってくるタイプがあります。さらにもうひとつのタイプには、腹痛とともに、便に大量の粘液が混ざる型です。下痢が続いても、栄養障害や体重減少をみないのが特徴です。

 

その腹痛の強さと部位は千差万別。一過性の痙攣性の痛みで、食事やストレスによって強くなり、排便やガスの排出によって軽減することが多いようです。(関連:10代高校生~20代の女性に多い過敏性腸症候群の症状・治療・対処

 

腸の運動機能障害なので、各種の検査によっても異常がなく、そのために医師からは心配ないといわれることが多いのですが、患者自身は不安が解消できません。そんなときには、症状をきちんとメモし、どんなときに腹痛が起こるか、下痢の状態、便秘の状態、などを要領よく医師に話すことが大事です。

 

過敏性腸症候群の場合には、症状がなくなったり、また現れたりという繰り返しが長い期間続くので、患者自身のセルフコントロールが大事で、自分なりの調整法を早く身につけることが必要です。

 

大事なことは、過敏性腸症候群と判断されても、大腸がんになるわけでもなければ、潰瘍性大腸炎のようにときとして手術が必要ということでもないことを理解し、社会生活に適応できる自信をもつことが大事です。と同時に、自分の症状に合った薬物を使用する勇気も必要。長い期間にわたるために、薬の副作用をむやみに恐れ、極端に薬を毛嫌いするために、ひどい症状に耐えるしかなく、それがかえって不安と自信喪失につながり、症状を悪化させる悪循環になります。

 

腹痛および便秘がある場合には食事に食物繊維を多く摂取するようにし、腸管の痙攣をとる抗コリン性の鎮けい剤、ブスコパン、ベルチンなどを用意します。下痢に対しては、下痢止めとしてロメラミドを用います。軽い場合には、腹部の症状と便通の異常を調整する薬だけでも大丈夫です。また、消化管機能調整剤や向精神薬、抗うつ剤の使用が必要なものも少なくありません。

 

 

早期治療が何よりも大切

 

大腸の炎症性の疾患は、日本においてはまれな病気でしたが、最近、ほかの大腸炎と同様に増加の傾向にあります。潰瘍性大腸炎は「主として粘膜を侵し、しばしばびらんや潰瘍を形成する大腸の原因不明のびらん性非特異性炎症」と定義づけられています。発症年齢は30歳以下の成人に多いのですが、子どもや50歳以上の人にもみられます。

 

症状としては、下痢を伴う血便、または粘血便が約80%の患者にみられます。ほかの症状から発病した人であってもほとんどの人に同じ症状がみられます。病変が直腸に限局している場合には、排便時の出血以外には症状はありません。

 

経過は慢性をたどり、よくなったり悪くなったりを繰り返し、大部分が直腸から始まって連続的に大腸の上まで広がっていきます。難治性で原因不明。そのため特定疾患に指定されています。とはいえ、多くの場合はよくコントロールされ、社会復帰が可能です。若年で発症するため、女性の場合には妊娠の問題がありますが、症状が多彩のため一定化はできず、主治医の指示にしたがい、ケースによって判断します。

 

一部の症例では手術が必要になりますが、一般的には治療に遅れがなければ、生命への危険はなく、予後は良好です。ただし、長期経過後にがん化することも注目されており、定期的な内視鏡検査が必要になります。