10年先に、がんは解決されるといった記事などを目にすることがありますが、がん撲滅までにはまだ時間がかかりそうです。しかしWHO(世界保健機関)では「がんの1/3は治療できる」と発表しています。

 

がんに対する研究はかなり進んでおり、正しい知識さえ持っていれば、この怖い病気を予防したり治したりできるのです。ここに、がんの実態から原因、予防・治療法、さらに近年話題になっている告知の問題などをわかりやすくまとめました。

 

 

がんの現状

 

死因トップのがん。高齢化も相まって、今後さらに増え続けると言われています。

 

■死因No.1を独走中

1981年(昭和56年)より、がんは日本人の死因のトップになり、以後トップの座を独走しています。まさに国民病といえるでしょう。来世紀中頃まで今後も増え続けていくと推定され、現在の発生罹患数、50万人/年に対し、2020年には、70万人台/年になると予想されます。

 

■なぜがんは減らないのか

年齢とともに発がんの機会は増えます。ですから高齢者が増え続ける昨今では、がんにかかる人も多くなっていくのです。がんは高齢化社会の落し子といえます。

 

■難治がん、重複がんが増加傾向

肺・肝臓・胆嚢・膵臓にできるがんのことです。重複がんとは、一人の体で再び別のがんを併発した時のがんのことで、一つのがんを克服しても一生に何度もがんになる時代です。残念ながら、この難治がんと重複がんが現在増えています。

 

 

がんという病

 

そもそもがんとは、どういう病気なのでしょう。

 

■自然には治らない嫌な病気

一度がん細胞ができると、一方通行的に大きくなっていきます。時間の経過と共に局所リンパ節に転移し、さらに全身の臓器に転移していくのです。決して自然に治るということはありません。放っておけば宿主を倒すまで進行し続ける恐ろしい病気なのです。

 

■あらゆる臓器にできる厄介者

ほとんどの臓器で発がんする可能性があります。しかし、発がんしにくい臓器もあります。心臓にはできませんし、小腸、脾臓もできにくい臓器です。さらに、大血管や男性の精嚢もできにくい部位です。

 

■ほとんど治るがんもある

がんは3種類に分類できます。「よく治るがん」「治るようになったがん」「治りにくいがん」があります。よく治るがんには、甲状腺、睾丸、皮膚、子宮、乳房、咽喉、膀胱などのがんがあります。

 

 

がんの原因

 

食べ物とたばこが原因の大半。このふたつが、がん撲滅のポイントです。

 

■塩分の取り過ぎに注意

あまり知られていませんが、実は食べ物が、がんの原因のトップに挙げられます。日本人は胃がんが最も多いのですが、それは日本食という塩分の多い食べ物を摂るのが要因で、このことからも食べ物とがんが非常に密接な関係にあることが伺えます。

 

■やめるにこしたことはない、たばこ

がんの原因で2番目に多いのは、たばこ。たばこのタールは、ベンツピレンやニトロソアミンといった強力な発がん物質を含んでいるからです。喫煙している人は、ただちに禁煙するのが一番いいのは言うまでもありません。

 

■いわゆるがん家系は、血筋ではなく、環境の影響が大

がんは親から子へ、子から孫へといった具合に遺伝はしません。まれにがんの多い家系をみることがありますが、これは長年同じような食事を続けるなど、同一環境で生活したためと考えられます。

 

 

がんの予防(1次予防)

 

自己のライフスタイル(生活習慣)を検討することが、がん予防の第一歩

 

■バランスのとれた食事を

塩分の多い外食やインスタント食品はなるべく避けましょう。もちろん家庭料理でも、できるだけ塩分を控えるよう工夫したいものです。また1日30食品を目標にして栄養のバランスにも注意します。特に新鮮野菜によってビタミンを豊富に摂りましょう。

 

■適量ならアルコールはOK

お酒はほどほどであれば問題ありません。しかし度を越すとがんの進行を促すことがありますので注意して下さい。また焼き魚などの焦げは、極端にたくさん食べない限りそれほど神経質になることはありません。

 

■あなたの生活、リズミカルですか

睡眠は十分に。理想は8時間です。食事は1日3回、間食は避けます。またスポーツなどで適度に体を動かすことも大切です。これらは、がんというよりも、健康な体を保つうえでの基本です。

 

■がん予防の6ヶ条

[大阪府立成人病センター編]

 

1、バランスのとれた多様な食生活を

○1日3食を規則正しく
○1日30品目を目標に
○脂肪はひかえめに
○新鮮野菜は豊富に(ビタミンを補給する)
○繊維質を多くとって便通をよくしよう
○かびの生えたものは食べない
○熱いものはさましてから

 

2、塩からい食品は控え目に

○食塩は1日10g以下
○食品表示に気を付けよう
○調理の工夫で減塩を

 

3、たばこを吸わない

○吸っている人はすぐにやめよう
○青少年には非喫煙の教育を

 

4、アルコールは少量を楽しく

○日本酒なら1日1合、ビールなら1本まで、ウイスキーならシングル3杯以下
○週2日は「休肝日」を

 

5、スリムでリズミカルな日常生活を

○腹8分目を習慣に
○夜食、間食は肥満のもと
○睡眠は十分に
○適度にスポーツ
○体をいつも清潔に
○日光に当たりすぎないように

 

6 、年に1度はがん検診を受けよう

○早期発見、早期治療

 

 

がんの予防(2次予防)

 

早期に発見すれば、がんはほぼ100%治るものなのです。

 

■ここ半世紀のがんに対する最大の発見は、早期発見・早期治療

初期のがん、つまり早期がんは、大きいものでもせいぜい1円硬貨程度で、この段階で発見し治療を行えばほぼ100%治すことができます。臓器に手術を施す場合も、部分的に摘出しますので、臓器の機能を残すことができます。

 

■診断技術を飛躍的に進歩させたハイテク

従来のがん診断はレントゲンなどによる間接法が主流でしたが、現在ではファイバースコープによって直接内視し、医師も患者もテレビ画面に映した病像を見ることができます。しかもファイバースコープは組織切片を採取することもできますので、がんの悪性度を速やかに知ることができます。また、CT,MRIというハイテク機器により、がんの拡がり、深さ、血管との関係、転移の有無などが正確に把握できるようになりました。

 

 

がんの治療

 

平均すると4割の人のがんは治る。あきらめないで。

 

■治療の基本は手術

代表的な治療法は、手術、薬による化学治療、放射線治療の3つ。ケースによってこのうちどれかを選んだり、あるいは複数の方法を組合わせて治療が行われます。しかし基本となるのは、悪い部分を切って取り除くという手術による治療です。

 

■がんはどこまで治るのか

がんが治ったかどうかを判定するには、治療5年後に生存しているかどうかを目安とすることができます(5年相対生存率)。この5年相対生存率はがんの種類によって異なりますが、平均すると39%(大阪府がん登録資料)。つまりガン患者の4割の人は治るのです。早期がんは90%、中期がんは50%、進行がんは10%が治ります。従って早期診断、早期治療が基本となります。

 

 

告知とケア

 

支え見守れる家族や友人の存在が重要になってきます。さらにケースワーカー、ソーシャルワーカー、ボランティア、宗教家など多くの人による受け皿づくりも大切です。従来は「がんの治療」でよかったのですが告知後は「がんを持った人間の治療」に変わります。

 

「人間の治療」とは、がん病人を全人的にかかえこんだ治療となります。がん医療における大きな進歩といえます。

 

■家で死ぬということ

ホーム・ケア(家庭での看護)が根づきにくい日本ではほとんどの人が病院での死亡を希望します。家族も本人が苦しむのを見るのは嫌だという人が多いようです。今、家で死ぬということは最高の贅沢になっているのです。

病院では「緩和ケア」が指導され、そのテクニックを病人・家人が習得します。そのテクニックをもって「ホーム・ケア」に移るのです。「緩和ケア」と「ホーム・ケア」とは深く連携したものです。「ホーム・ケア」には、「ホーム・ドクター」そして「訪問看護婦」の指導によって「人間の治療」が行われるのです。

 

■死に至るその瞬間まで人は成長する

余命が限られたがん患者を持つ家族にしろ医療人にしろ、死は人生の最高のレベルに達する瞬間であると信じてケアにあたりたいものです。そう信じてはじめて、本人が残された時間を真に充実して過せるよう助けたり励ましたりすることができるのではないでしょうか。

人は死に至るまで成長し、死は人生における完結である。そして死をケアする人も共に成長するのだと信じたいものです。これがターミナル・ケアの基本倫理といえます。