スポーツ選手の多くがトレーニングに一貫として呼吸法を取り入れており、これまでに行われた数々の研究の中で呼吸と健康の関係は立証されています。

 

たとえば、深い呼吸を習慣化すれば、自然体でいる時の吸気量が増え、血液中の酸素量が増えることで脳の働きが活性化する。また、深くゆっくりとした呼吸法を用いることで、心身ともにリラックスできるなど、呼吸法1つで健康的な体を作ることができます。

 

産業技術総合研究所が行った最近の研究では、海女さんの血管年齢が実年齢よりも10歳以上も若く、それは海女さんが行う独特の呼吸法が深く関係しているという結果を発表しました。どのような呼吸法が血管年齢の若返りに関係しているのか、研究内容をもとにご紹介します。

 

 

海女さん115人を対象に血管年齢を測定

 

研究者である産業技術総合研究所のチームは、千葉県南房総市白浜地区と三重県志摩・鳥羽地区に住む海女さん115人(平均年齢66歳)を対象に、また運動習慣のある一般女性33人(平均年齢64歳)、運動習慣のない一般女性50人(平均年齢66歳)を比較対象とし、それぞれの血管年齢を測定しました。

 

その結果、海女さんの血管年齢は、実年齢よりも約11年も若いことが分かったのです。なお、運動習慣のある一般女性は約8歳、運動習慣のない一般女性は約6歳若く、海女さんと比べて3歳~5歳程度の差しかなかったものの、海女さんの血管は太く、また心臓から送り出される血液量が非常に多いため、測定した血管年齢以上に、血管の状態が良いという結果が出ました。

 

 

海女さんの独特な呼吸法が血管を健康にした

 

通常、年齢とともに血管の壁は脆く、血液の流れはにぶくなります。その大きな要因となるのが運動量の低下であり、年齢とともに運動量が減少することで血管に負荷をかける時間が短くなり、血管はどんどん老化していきます。

 

定期的に血管に負荷をかけることで(有酸素運動など)、血管年齢が若くなるということはこれまでの多くの研究で実証されてきましたが、今回の研究では海女さん独特の呼吸法が血管を健康にしているということが分かったのです。

 

海女さんは、海中に潜水している間にたくさんの空気を肺に溜め(維持し)、海面に上がる際に一気に吐き出すという呼吸法を行っています。また、二酸化炭素を一気に吐き出すことで起きる失神を防ぐために、口笛を吹くように細く長く息を吐く「磯笛」と呼ばれる呼吸法を習慣的に行っています。

 

この海女さん独特の呼吸法が動脈を強く、そしてしなやかにしていると推察しており、この呼吸法を応用することで心臓や血管の病気を予防できる可能性があると結論づけています。

 

 

今後のさらなる研究に期待

 

ただし、海女さん独特の呼吸法がどのように血管年齢を若くしているのかという、詳細の仕組みについては当研究で明らかにされておらず、あくまで推察の域に過ぎません。

 

この仕組みが解明されれば、心臓や血管の病気に対する新たな予防法の開発が期待でき、リハビリテーションへの導入など医療現場で取り入れられる日が来るやもしれません。

 

 

おわりに

 

これまで数多くの研究で、呼吸と健康の関係は実証されてきましたが、未だ解明されていないことも多々あります。

 

また、脳を活性させるための呼吸法、心身ともにリラックスするための呼吸法、集中力を高めるための呼吸法、当研究のように血管年齢を若くするための呼吸法など、ひとえに呼吸といっても方法によって効果が異なります。

 

世界でも有数の豊かな国である日本では、食生活の欧米化に伴い、心臓や血管の病気の罹病者が年々増えてきており、今後のさらなる罹病者の増加は容易に想像できます。

 

海女さん独特の呼吸法と血管年齢の関係性が解明できれば、心臓や血管の病気を予防できる可能性があるということですので、今後の研究に期待したいものです。