乳がんの症状には、「しこり」や「乳房の皮膚変化」、「異常分泌液」などがあり、これらは一般の方でも触知・視認できるため、ある程度、ご自身で自己検診することができます。

 

もちろん、これだけでは乳がんかどうかを確実に知ることはできません。

 

しかしながら、ご自身で触知・視認すれば、病院へ受診する良い機会になります。「しこり」や「乳房の皮膚変化」、「異常分泌液」などの症状が現れたという方は、後述する自己検診を行い、その上で病院へ受診し検査を受けてください。

 

 

乳がんについて

 

現在、日本において乳癌の発生率は急激な上昇傾向にあり、女性の癌の中でも最も増加しているもののひとつです。女性の癌の死亡率でみると2015年の時点で「大腸がん」が最も多く、次いで「肺がん」、「胃がん」、「膵臓がん」となっており、「乳がん」は5位に位置しています。

 

女性のがん(乳がんなど)の死亡者数

 

罹患数(発症した人数)で言うと、「乳がん」が最も多く、「全国モニタリング集計2012 罹患数・率報告」によれば、乳がんの罹患者数は73,997人にものぼっています。

 

乳がんと聞くと、すぐ死を連想されるかも知れませんが、乳がんは手術や化学内分泌療法などによる治療が、他のがんに比べて効きやすい傾向にあるため、早期発見・早期治療を行えば、多くの場合完治するものです。

 

しかしながら、上図から分かるように、乳がんを発症した方のおよそ1/3は亡くなられていますので、侮ってはいけません。ただし、上述のように早期発見・早期治療を行うことで、約90%の方は完治するため、特有の症状(後述)がある場合には、少しでも早く婦人科へ受診することをおすすめいたします。

 

ちなみに、乳がんの代表的な症状に「しこり」があり、自己検診(後述)でもある程度、知ることができますが、「しこり」があるからと言って、必ずしも乳がんであるとは限りません。しこりがある場合の80%程度は良性のものです。

 

乳がんの危険因子

乳がんを含め、がんの多くが発症しやすい人、いわゆる危険因子が存在します。以下にその危険因子を示します。

 

乳がんの危険因子(リスクファクター)

 

 

乳がんの特徴(症状)

 

乳がん(悪性の腫瘍)が5mm~1cmくらいの大きさになると、自分で触っても気がつくほどの「しこり」になります。ただし、上述のように「しこり」があるからといって、すべてが乳がんというわけではありません。

 

また、乳がんの症状には、「しこり」の他に、「乳房のへこみ」「乳房のひきつれ」や「異常分泌液」など、さまざまな症状が現れます。

 

■乳房がへこむなどの皮膚の変化

乳がんが乳房の皮膚の近くまで達するようになると、えくぼのような「くぼみ」や「ひき つれ」、「乳房のへこみ」などが見られるようになります。また、表面の皮膚が赤くはれる こともあります。

 

■乳頭からの分泌物

乳頭から分泌物が出ることがあります。まれに血液の混じった「分泌物」が出ることもあります。ただし、分泌物が出るからといって、すべてが乳がんというわけではありません。

乳頭から出る分泌液に関しては、「乳首・乳頭から分泌液(透明・白色や血液)がでる原因と病気の種類」で詳しく説明しています。

 

乳がんを患っているにもかかわらず、「自分には縁のない病気だ」などと思いこんだり、「乳がんにかかってたら怖い」という理由で検査に行くのを拒んだりして、そのまま放置していると、「転移」の危険性があるため、早期発見・早期治療が不可欠です。

 

放置していると転移の危険がある

乳がんは早期に発見され、適切な治療がなされれば、約90%が治癒します。ところが、初期症状のない場合が多いことや検診率が低いことから放置されやすいというのが現状です。

 

乳がんを放置しておくと、がん細胞が増殖して脇の下のリンパ節に転移し、血液やリンパの流れに乗って、「骨」や「肺」、「肝臓」や「脳」などの臓器に転移してしまいます。これを「遠隔転移」といいます。また、このような状態を「進行乳がん」といいます。

 

遠隔転移は、それがたとえ1つの臓器に転移しただけであっても、「乳がん」がすでに全身に広がったことになります。この場合、その部分だけを摘出しても他の場所に再発してしまうため、手術は行われません。

 

乳がん(悪性腫瘍)が乳房を超えて、離れた場所に転移してしまった場合には、完治するのは困難であるため、適切な治療を行いながら(現在では、放射線治療や薬物療法、ホルモン治療などが行われている)がん細胞と共存し、できるだけQOL(人生の質)を維持していく生涯を送ることになります。

 

また、乳がんは、手術をしてがん細胞を摘出したとしても、5年から10年後に再発する可能性があります。これを「再発乳がん」といい、手術後に適切な治療を行って再発を防止する必要があります。乳がんは、早期に発見され、適切な治療がなされれば、約90%が治癒する一方で、毎年1万人超の日本人女性が亡くなっているというのも事実です。

 

 

自分で行う乳がん検診

 

乳がんの顕著な症状が「しこり」や「乳房の皮膚変化」であり、これは一般の方でも触知することができます。順番は特にありませんが、基本的に以下に示す「ステップ①」、「ステップ②」、「ステップ③」の手順で検診すれば効率的に行えます。

 

■ステップ①

鏡の前で上肢を自然の位置から少しずつ上にあげて、おっぱいのひきつれや皮膚のえくぼ症状の有無を確認します。

 

■ステップ②

乳首(乳頭)部やその周囲が赤く湿潤性となっていないかどうか確認します。また、おっぱいを圧迫することによって乳首より分泌物(乳頭分泌物)が出ないか否か確認します。

 

■ステップ③

座った姿勢で反対側の手指のはらでそれぞれのおっぱい全体を触って「しこり」の存在を確認します。

 

ステップ①~③の具体的な手順

下図(出典:輝山会記念病院)のように自己検診してみましょう。

 

自分で行う乳がんの検査・検診

 

■鏡に映して視診

鏡で乳房の外観を観察します。左右差がないかよくみます。両腕を上げ下げし、上半身を左右にひねったり、腕を上げたまま前かがみになるなど、いろいろな姿勢をとってみます。

皮膚に小さなえくぼのようなくぼみがないか、皮膚のへこみがないか、乳頭が陥没していないか、乳頭が左右どちらかに向いていないかなどを観察します。

 

■乳頭の観察

乳頭と乳輪部に湿疹やただれ、びらんなどがないか注意深く観察します。乳頭に血性の分泌物やその他の異常分泌物が出ていないかも観察します。

次いで乳頭を親指と人差し指ではさみ、乳頭部を下に押しながら指に力を入れ、乳頭から以上分泌物が出ないかをみます。乳房全体を手のひらで圧迫して、乳頭から異常分泌物が出ないかも観察します。

 

■座ってする触診

①検査する側の腕を下げ脇の下につけたまま、反対側の手で乳房をまんべんなく触ります。指全体を寝かせ、指の腹側で円を描くように触ります。指先を立てず、つままず、ゆっくりていねいに触るのがコツです。

②次に下げた腕を頭の方に上げて、胸を張った姿勢でもう一度まんべんなく触ります。入浴時は石鹸を泡立て、それ以外はベビーパウダーをつけると滑りがよくなり、調べやすくなります。

 

■仰向けになって触診

座ってする触診にプラスして、肋骨を平行に指を動かします。入浴時には座ってする触診がよく、それ以外の時には横になってする方がしやすいでしょう。①まず、腕を下げて触ります。②次に、腕を頭の方に伸ばして調べます。

 

 

病院で行う乳がん検査

 

病院で行う検査には、がんの疑いがあるかどうかを調べる「1次検査」と、そこで疑いがあった場合にがんか否かを確定する「2次検査」があります。職場や地域の検診で受ける検査は、この1次検査を指します。

 

現在受けられる1次検査の方法としては、「視触診」「超音波検査」「マンモグラフィ」の3つがあり、視触診だけでは腫瘍が良性か悪性か、また腫瘍なのかというのが分からないため、映像化して鑑別を行います。

 

■視触診

視触診とは、文字通り直接手でしこりを触診する方法で、最も広く行われている検査方法です。ただし、この方法は医師の経験と技術にかかっているため、これだけでは限界があります。

 

■超音波検査

その次にポピュラーなのは、超音波診断装置を利用した検査方法です。 この検査のメリットは、痛みがなく、放射線を浴びないため妊婦さんも検査できる点ですが、乳房用の超音波診断装置を備えた施設で受けることが望ましく、どこでもできるわけではありません。

超音波を乳房に当てて、その反射波をとらえて画像化します。放射線を浴びないので、繰り返し検査が可能です。マンモグラフィと補完的な意味があります。超音波検査ではごく小さい初期のがんは見つかりにくく、それを発見するために有効なのがマンモグラフィです。

 

■マンモグラフィ

マンモグラフィとは、乳房用のX線装置で、手で触れてもわからない小さな乳がんも映し出すことができ、早期がん発見に最も適した検査方法と言えるでしょう。乳腺の豊富な30歳以下の若い人では、しこりの発見がむずかしくなります。

 

■組織生検

2次検査では、がんの疑いがある部分の組織を採取して調べる「生検」が行われます。これで、良性か悪性かの最終判断がなされます。

 

乳頭から異常分泌がある場合

乳頭から異常分泌がある場合には、他の疾患が関与しているケースが多々あるため、「視触診」・「マンモグラフィー」・「超音波」→「分泌液の潜血反応」→「分泌液の細胞診」→「分泌液中CEA測定」→「乳管造影・乳管内視鏡」、という順で主に検査を行います。

 

乳首より異常分泌のある場合もしこりがある場合と同様に視触診、マンモグラフィー、超音波を行い、しこりがないかどうか主観的かつ客観的に判断します。

 

異常分泌のある場合、大事なことはその分泌液の中に血が混じっていれば(潜血反応陽性)要注意でその後、分泌液の細胞を顕微鏡で見たり、分泌液中の腫瘍マーカー(CEA)を測定したり、最終的には分泌してくる乳首から細い管を刺してそこからレントゲンで造影したりします。

 

 

乳がんの治療

 

がんの初期治療としては、手術、放射線療法、化学療法(抗がん剤療法)、ホルモン療法の4種類の治療法があり、症状の進み具合や個々の患者さんの持つ因子に応じて、それぞれを組み合わせて治療していきます。

 

手術の方法や手術後の治療は、しこりの大きさや広がり具合、しこりができている場所、進行度によって異なります。乳房をすべて取り除いてしまう手術(乳房切除術)だけでなく、乳房を残す手術(乳房温存術)もあるので、医師とよく話し合って決めることが大切です。

 

手術後には、やはり患者さんそれぞれのもつ予後因子に応じて、化学療法やホルモン療法、放射線照射などの補助療法(アジュバント療法)が行われることもあります。

 

外科療法

乳がん組織と、周辺の正常な組織を手術で切り取る治療方法を外科療法と言います。早く発見するほど、切除部分が小さくて済み、手術後の痛みも少なく済みます。

 

乳がんの手術方法には、乳房全体を取り除く「乳房切除術」と、しこりを含む乳腺の一部だけを切除する「乳房温存術」の2つに大きく分けることができますが、それぞれの手術法には、腋窩リンパ節を取り除く範囲などによって、さらにいくつかの種類に分類されます。

 

放射線療法

がん細胞に対して放射線を照射し死滅させ、病巣を小さくする治療方法が放射線療法です。正常な組織にも放射線がかかり死滅することがあるため、副作用が発現することが多々あります。

 

乳房温存術後には、転移した乳がん細胞による再発を予防するため、残した乳房には通常は放射線照射が行われますが、乳房切除術を行った場合でも、リンパ節転移が多数発見されれば、鎖骨上窩などにも照射されることがあります。一般的に、放射線照射は手術後2〜3週目から始めて、約3〜4週間行います。

 

放射線の影響により、皮膚が日焼けしたように赤くなったり、色素沈着、脱色、乳房が硬くなるなど乳房周辺の変化が起こることがあり、他にも疲労感、嘔気、嘔吐、腕のむくみ、下痢、発熱など体全体における副作用がみられることもあります。

 

ホルモン療法

乳がんは、比較的早い時期に全身へ広がっている場合が多く、手術や放射線療法などの局所的な治療だけでは、これらをすべて取り除くことが難しいのが現状です。

 

ホルモン療法とは、乳がんの原因の1つであるエストロゲンをコントロールする治療法であり、効果は化学療法よりマイルドですが、副作用が少ないため、早期の乳がんに対して積極的に実施されています。

 

術後長期間(2〜5年間)継続することで再発を予防する効果も期待でき、抗がん剤と併用したり、いくつかのホルモン療法剤を組み合わせて使用されることもあります。

 

がん細胞が全身に広がっている可能性が考えられる場合には、がん細胞の発育を抑えて、転移による再発を予防するために、主に化学療法とホルモン療法が行われます。患者さんの状態、がん細胞の性質などを多角的に考慮して、いずれかの治療または両者の併用療法が行われます。

 

また、術後長期間(2〜5年間)継続することで再発を予防する効果が期待でき、抗がん剤と併用したり、いくつかのホルモン療法剤を組み合わせて使用されることもあります。

 

化学療法

抗がん剤を内服または静脈注射する治療法を化学療法と言います。抗がん剤を用いる化学療法は、腋窩リンパ節転移などがあり、再発する危険性が高いと判断される患者さんのうち、内分泌療法であまり効果を期待できないER陰性の人が主に適応となります。

 

6カ月〜1年間にわたって経口剤を服用する長期投与、複数の薬を組み合わせて点滴注射する多剤併用療法など、化学療法の種類はさまざまあり、放射線治療同様に正常な細胞にもダメージを与えるため、脱毛や吐き気、血球の異常などさまざまな副作用が出ます。

 

しかしながら、最も効果が出やすいのが化学療法であるため、患者さんの状態などを考慮して、早期治療に向けて積極的に実施されています。

 

 

さいごに

 

乳がんの検診は自分でも簡単に行うことができますが、触診は主観的なものであり、経験が少ない(特に他の方のおっぱいと比較できない皆様)方にとっては少々難しいものです。

 

しこりを触れられた方は乳がんの可能性がありますので、早く乳腺専門医あるいは外科を受診してください。また、しこりが小さい場合(触知できない)場合もありますので、これまでに一度も病院にて検診していないという方も、まずは一度検診に行き、その後も定期的に検診するようにしてください。