病原体が消化器に感染することで起こる胃腸炎を「感染性胃腸炎」と言いますが、中でもロタウイルスによるものが多く、特に11月~3月の冬の時期に好発しています。感染性胃腸炎は激しい嘔吐や、白い下痢便といった症状が特徴的であり、一昔前には嘔吐下痢症や白色便性冬季下痢症などと呼ばれていました。

 

近年ではロタウイルスに限らず、様々なウイルス性の感染性胃腸炎が流行しており、好発年齢は2歳以下の子供に多いものの、基本的には年齢に関わらず発症します。1歳未満の赤ちゃん(乳幼児)では、嘔吐や下痢に伴い、大きな体重減少がみられることも少なくはないため、特有の症状がみられれば軽視せず、すぐに病院へ受診する必要があります。

 

 

感染性胃腸炎の原因

 

感染性胃腸炎に起因するウイルスのうち、ロタウイルスによるものが最も多く、そのほかのウイルスには腸管アデノウイルスや小型球形ウイルスなどもあります。多くは便や嘔吐物の中に存在するウイルスが手を介して口に侵入し感染し、およそ36時間~48時間程度、潜伏し続けます。

 

赤ちゃんや子供は手を口に入れて遊ぶのが好きなために、感染性胃腸炎を防ぐためにはまず、手洗いが大原則となりますが、集団生活の中で流行する傾向もみられるため、単に衛生環境を改善しただけでは完全に予防することができません。しかしながら、手洗いは絶大な予防効果を持つために、積極的に手洗いを実施する必要があります。

 

 

感染性胃腸炎の症状

 

感染性胃腸炎は、「嘔吐」と「下痢」が最も好発する症状ですが、それ以外にも「発熱」や、場合によっては「けいれい発作」を起こすこともあります。

 

■嘔吐

嘔吐は下痢よりも先に現れることが一般的であり、感染性胃腸炎の場合には急に吐き気・嘔吐をもよおすことが少なくありません。そのため、それまで元気だった赤ちゃん・子供が、急に嘔吐を繰り返すという場合には感染性胃腸炎を疑うべきです。通常は1~2日程度でおさまりますが、長引くことも多々あります。

 

■下痢

感染性胃腸炎の発症した時に下痢は、①すっぱい酸性臭がする、②ドロドロ~水様の便、③レモン色~白色、という特徴が一般的です。嘔吐は1日~2日程度でおさまるものの、下痢は1週間程度続くため、赤ちゃん・子供の場合には、長引く下痢に伴い、体重が大きく減少することも珍しくはありません。

 

■発熱

嘔吐や下痢のほか、およそ半数程度の赤ちゃん・子供に発熱がみられます。免疫力の低い乳児期ほど発熱する頻度が高くなり、多くは2~3日ほどで軽快します。

 

■けいれん

中枢神経への親和性が高いというロタウイルスの特徴により、特に乳児期には嘔吐や下痢と同時に、けいれん発作が起こることがあります。けいれん発作が起こると親は非常に心配になってしまうものですが、感染性胃腸炎の場合のけいれんは心配する必要はありません。ただし、けいれんは脳炎といった他の病気の鑑別が必要になるために、入院しなければならない場合もあります。

 

 

感染性胃腸炎の診断

 

臨床症状、年齢、季節、流行状況などから総合的に診断されます。鑑別として問題になるのが細菌性の腸炎で、必要があれば便培養などの検査を行います。ヒトに感染するロタウイルスはA、B、Cの3群ありますが、このうちA群のものは迅速診断キットがあり、短時間で診断が可能です。

 

しかし、陽性であればロタウイルスによる嘔吐下痢症といえますが、陰性であっても否定できないという面があります。また、脱水があると考えられた場合は、電解質や腎機能などの血液検査や検尿で尿ケトンなどを検査することがあります。

 

 

感染性胃腸炎の治療

 

治療の中心は経口補液による脱水の予防と補正です。嘔吐がひどく経口補液が難しい場合や、脱水が進行した場合などには点滴による輸液が必要になります。また、下痢の時には食事療法も非常に重要となります。

 

処方される薬としては、吐き気止めの坐薬や内服薬、下痢止めや整腸剤などがあります。下痢はひどくなければ強い下痢止めを使って止めようとするより、食事療法をきちんとすることの方が重要です。

 

 

下痢の時の食事方法

 

赤ちゃん(乳児)

母乳の場合≪下痢がひどい時≫

→母乳はそのまま続けてかまいません。授乳を短時間で切り上げて回数を多く。

≪下痢がよくなってきたら≫

→いつも通り、ほしがるだけ飲ませてください。

ミルクの場合≪下痢がひどいとき≫

→ミルクを半分に薄め、少量ずつ、回数を多く、また乳糖を含まないラクトレス、ソーヤミルク、ボンラクト等の下痢用のミルクが指示されることもあります。

≪下痢がよくなってきたら≫

→ミルクの濃さを1/2→2/3→ふつうと濃くしていきます。

離乳食 開始頃≪下痢がひどいとき≫

→母乳、薄めたミルク、下痢治療用ミルク、アクアライト・アクアサーナなどの小児用イオン飲料、お茶、野菜スープ、味噌汁の上澄み、リンゴのすりおろしなど。

≪下痢がよくなってきたら≫

→とうふ、パン粥、おかゆ、ベビーせんべい、ウエハース、にんじんかぼちゃの煮つぶし、煮込みうどん、白身魚の煮付けなど(便の様子をみながら慎重に)

 

子供(幼児)

■水分を十分に補う

  • 水分補給が一番大切です。水分を多く飲むから水っぽい便になるのではありません。下痢で水分が失われる必要があるのです。
  • 栄養のことはあまり気にしないで、食欲がないときに無理に食べさせる必要はありません。食欲があってもむしろ控えめにして腸を休ませてあげましょう。

 

■何を食べさせるかは便と相談

  • 便が水のようなときには水分を中心に(アクアライト、アクアサーナ、番茶、野菜スープ、味噌汁、おもゆ、りんごのすりおろし)
  • 便がドロドロの時にはドロドロの食べ物を(とうふ、パンがゆ、ベビーせんべい、ウエハース、バナナの裏ごし、にんじんかぼちゃの煮つぶし)
  • 便がやわらかい程度ならやわらかい食べ物を(おかゆ、うどん、白身魚の煮付け、卵、鳥ささみ、野菜煮付け)

 

お勧めできる食品避けた方がよい食品
穀類うどん、餅、白パンのトーストすし、中華めん、玄米
芋類じゃがいも、長芋、里芋さつま芋、こんにゃく
豆類豆腐、高野豆腐、みそ、きな粉、煮て裏ごしした豆類大豆、小豆、油揚げ、がんもどき
野菜類柔らかく煮た野菜

カボチャ、ニンジン、カブ、ほうれん草、大根、キャベツ、カリフラワー

繊維の多い野菜

たけのこ、ゴボウ、蓮根、ふき

強い香りを持つ野菜、キノコ類

果実類りんご、バナナ、白桃柑橘類、梨、イチジク、イチゴ、パイナップル、干した果物、スイカ
魚介類脂肪の少ない魚

タイ、カレイ、タラ、ヒラメ、はんぺん

脂肪の多い魚

イワシ、さんま、サバ、干物、貝類、つくだ煮類、かまぼこ類

卵類スクランブルエッグ、卵とじ生卵、固ゆで卵
肉類脂肪の少ない肉

鶏ささみ、ヒレ肉、子牛肉

脂肪の多い肉、肉加工品

ロース、バラ肉、ハム、ベーコン、ソーセージ

油脂類バター、マーガリンラード、天ぷら、フライ
菓子類プリン、ボーロ、ウエハース、ゼリーケーキ類、せんべい、ナッツ類
飲み物炭酸飲料、オレンジ果汁、ココア、コーヒー、紅茶、緑茶
その他海草類、漬物、塩辛