子どもの貧血子どもにみられる貧血の原因は、年齢によっても異なりますが、最も多いのは大人と同様、赤血球をつくる鉄が不足する鉄欠乏性貧血です。

 

①走ったり、少し動くと息切れがする、②疲れやすい様子がみえる、③顔色が悪かったり、まぶたの裏側が白っぽい、④頭痛がする、⑤食欲がない、などの症状があれば貧血かもしれません。

 

貧血といっても鉄欠乏性貧血のほかに、再生不良性貧血や溶血性貧血など、さまざまな種類があり、それぞれで治療法は異なりますので、早期に効果的に治療が行えるよう、種類の鑑別を急いでください。

 

 

貧血とは

 

ヘモグロビン濃度と赤血球数の低下

 

血液は、細胞成分である血球と液体成分である血漿とに分かれますが、血球の一つである赤血球は、からだ中の細胞や組織に酸素を送り届ける役割を果たしています。

 

貧血というのは、何らかの理由で赤血球の数が減少したり、赤血球の主成分で血液を運ぶのに欠かせないヘモグロビン(血色素)の濃度が低下する状態です。赤血球数の減少やヘモグロビン濃度の低下によって、酸素の運搬が不十分となり、からだにさまざまな症状が現れます。

 

子どもの場合、年齢によって赤血球数やヘモグロビン濃度に多少の違いはありますが、通常は、ヘモグロビン濃度が10〜11g/dl以下、赤血球数が350万/μ1以下が貧血と診断されます。

 

子どもの貧血のなかで最も多いのは、ヘモグロビンをつくるために必要な鉄分の不足が原因となって起こる鉄欠乏性貧血ですが、ときには鉄以外の栄養素の不足が原因となる貧血もみられます。ほかに、赤血球が壊れる速度が増す溶血性貧血、赤血球をつくる骨髄の機能が低下する再生不良性貧血、出血性の貧血などがあります。

 

子どもが貧血になる原因や貧血の種類は、年齢によってある程度異なってきます。例えば、新生児の場合、母親との血液型不適合のために赤血球が破壊される新生児溶血性貧血を起こすことがあります。また、生後2〜3カ月の時期までに起こる生理的貧血、それ以後に起きる鉄の摂取不足による鉄欠乏性貧血などが代表的なものです。

 

 

年齢によって起こりやすい貧血の違い

 

子どもの場合、年齢によって起こりやすい貧血に違いがあるのが特徴です。貧血で最も多い鉄欠乏性貧血は乳児期や思春期に多くなっています。

 

新生児期乳児期幼児期~学童期
よくみられる貧血
  • 新生児溶血性貧血
  • 出血性貧血
  • 感染性貧血
  • 鉄欠乏性貧血
  • 出血性貧血
  • 感染性貧血
  • 特発性再生不良性貧血
  • 鉄欠乏性貧血
  • 出血性貧血
  • 感染性貧血
稀にみられる貧血
  • 先天性溶血性貧血
  • 先天性溶血性貧血
  • 先天性溶血性貧血
  • 自己免疫性溶血性貧血
  • 白血病による貧血

 

 

貧血の種類

 

進行するまで気づきにくい

 

貧血になっていても、軽いうちはあまり自覚症状は現れません。また、徐々に進行することが多いため、本人や周囲の大人も気づかないうちにからだが順応してしまって、症状を自覚できないケースがよくみられます。

 

通常はヘモグロビン濃度が10〜8g/dl以下になると疲れやすく、食欲がなくなったりします。また、内臓の血液循環を増すために体表の血流が少なくなり、顔色、まぶたの内側や手のひら、爪の色などが蒼白になってきます。

 

さらに進行すると、走ったり階段を上がったりしたときに息切れがし、呼吸が速くなって、むくみやめまいの症状が現れます。これは酸素を運ぶヘモグロビンの量が少ないのを補おうとして、血液の循環が速まるために起こる現象です。

 

ヘモグロビン濃度が3g/dl以下になると、うっ血性心不全や昏睡を起こす場合もあります。溶血性貧血では、通常の貧血症状のほかに黄疸や脾臓の腫れが起こり、再生不良性貧血では出血傾向がみられ、感染症にかかりやすくなります。

 

 

検査と診断

 

まず血液検査を行う

 

貧血かどうかは、血液の検査を行うことでわかります。血液中の赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトリック値などをみて診断します。ヘマトリック値というのは、赤血球の体積が血液中に占める割合を表したものです。

 

子どもの場合、年齢によってそれぞれの正常値が多少異なることを考慮しなければいけません。例えば、赤血球数は血液1μl中、成人男性で410〜530万、女性で380〜480万が正常値ですが、子どもでは乳児で380万±70万、幼児で460±70万という数字になります。

 

ヘモグロビン濃度は、血液1dl中成人男性の平均が16g、女性が14gですが、生後1年の乳児で12,5g、12歳で13〜14gぐらいになります。

 

ヘマトリック値も同様に年齢が上がるにつれて、徐々に数値が高くなっていきます。このような検査から貧血と判明した場合、貧血がどのような原因で起こっているのかを調べる必要があります。

 

鉄欠乏性貧血が疑われる場合は、血液中の血清に含まれる鉄の量や、血液中に鉄をとり込む最大量の総鉄結合能などをみて、鉄分が不足しているかどうかを調べたり、血球の大きさをみる平均赤血球容積などの検査を行います。

 

また、溶血性貧血の場合は、赤血球が破壊されると、胆汁色素である間接ビリルビンや、乳酸脱水酵素(LDH)などが増えるため、それらが血液中にどの程度含まれるか数値を確かめたり、赤血球の形や壊れやすさなどをみる検査を実施して確定診断をします。

 

そのほか、消化管からの出血の有無をみるために検査したり、再生不良性貧血など骨髄の異常が原因となる病気が疑われる場合は、骨髄を採取して調べる骨髄検査が行われることがあります。

 

 

鉄欠乏性貧血

 

ピークは2歳頃までと思春期

 

鉄欠乏性貧血は、ヘモグロビン生成に不可欠な鉄が不足する為に起こる貧血で、最も多くみられます。発症のピークは生後半年ごろから2歳くらいまでと思春期以降の2回で、その間の時期は比較的安定しています。

 

年齢による鉄欠乏性貧血の特徴

■新生児期・乳児期

生まれたばかりの新生児は、成人よりも赤血球の量が多いのもですが、生後まもなく減少し始め、2〜3カ月ごろに最低値となります。これは肺呼吸に適応していく過程の生理的貧血であり、2〜3カ月以後には回復していくので心配ありません。

しかし、未熟児や低出生体重児の場合は、出生時の体重や血液量、母親から受け継ぐ体内の鉄量も少ないため、出生後の急速な体重増加に対して鉄分の量が不足しがちです。そのため、生後2ヶ月ころに鉄欠乏性の貧血を起こしやすく、これを未熟児早期貧血とよんでいます。未熟児用のミルクにはこの点を考慮して、鉄分が相当量添加してあるのが特徴です。

 

■乳幼児期

成人では造血に必要な鉄の95%を循環しているヘモグロビンから再利用するために食事から摂取しなければならない鉄は約5%です。ところが、例えば1歳の子どもでは、もともと血液量が少ないため、造血に必要な鉄の30%を食事から摂取しなければなりません。生まれたばかりの子どもは母体からある程度鉄分を受け継ぎ、体内に貯蔵していますが、生後6ヶ月ころにはその貯蔵鉄の約8割を消費しています。

母乳の鉄の吸収率は非常によく、牛乳やその他の食品の鉄の吸収率は母乳に及びません。またミルクは吸収率の低さを鉄分の添加によって補っています。そのため6ヶ月から2歳くらいまでの離乳期は、まだ普通食への移行途中であり、食べられる量が少ないため、離乳期貧血とよばれる鉄欠乏性貧血を起こしやすくなります。

 

■小児期から思春期

乳幼児期を過ぎると一般に体内の鉄の量は安定してきます。小児期に鉄欠乏性貧血がみられるときは、消化管出血などの異常が疑われます。思春期に入ると、特に女性の場合、月経による出血や性ホルモンの変化、ダイエットによる食事摂取量の不足から再び鉄欠乏性貧血を招きやすくなります。また、激しいスポーツを持続して行うと、鉄の消費が亢進してスポーツマン貧血を起こすケースもみられます。

 

治療は鉄剤の服用

治療法としては、貧血が治癒するまで、鉄剤の服用を3〜4ヶ月行います。同時に栄養バランスのよい食事をきちんととる必要があります。鉄剤の服用で数値が正常に戻った後も、鉄分を十分にとれる献立の工夫が欠かせません。乳児期と思春期は、特に鉄分に配慮した食事が大切です。

鉄分を多く摂るために

  • 赤みの肉、魚、レバーなど鉄分を効果的に摂れる食材を使いましょう。
  • 果汁や果物、じゃがいも、ピーマンなどビタミンCが多く含まれているものは、鉄分の吸収を助けます。毎食のメニューに加えてあげてください。
  • 食物繊維は、鉄分を排出してしますので、摂り過ぎないように、気をつけてあげましょう。
  • 牛乳は、鉄を吸収しにくくする作用があります。1才までは控えるようにしてください。1才を過ぎても、1日500ml以下にして、飲みすぎないようにしてあげてください。
  • 乳幼児の場合、9か月を過ぎたら、鉄分とビタミンCを加えた、フォローアップミルクを利用してみてもいいでしょう。

 

 

再生不良性貧血

 

骨髄移植が可能なら治癒率は高い

 

血球のもとになる骨髄幹細胞が何らかの理由で減少したり、機能が低下することによって起こりますが、子どもの再生不良性貧血は比較的まれです。

 

先天性と後天性のものがあり、最も多いのが後天性の特発性再生不良性貧血で、全体の80%を占めます。また、肝炎にかかった後、あるいは薬物などが原因で起こる二次性のものもあり、再生不良性貧血の10%程度になります。

 

特発性再生不良性貧血

特発性再生不良性貧血の原因は、骨髄の造血幹細胞の障害や免疫異常、ウイルスの関与などが考えられていますが、はっきりとわかっていません。通常の貧血症状に加え、血小板の数も減っているので血が止まりにくく、ささいな原因での出血がみられます。

 

同時に、白血球の数も減っているため、感染症にかかりやすくなり、発熱などをよく起こします。症状の程度によって予後や治療法も変わってきますが、ごく軽症であれば、特に治療をしないで経過をみる場合もあります。

 

治療法としては、副腎皮質ステロイド剤やそのほかの強力な免疫抑制剤による治療が行われたり、たんぱく同化ホルモン剤などが用いられます。しかし、治療効果が洗われるまでに2〜3ヶ月かかり、その間、多くのケースで輸血が必要となります。重症の場合は、HLA(ヒト組織適合性抗原)が一致する骨髄提供者がいれば、骨髄移植が最も有効な治療法です。

 

子どもは特に成功率が高く、移植後の生存率は90%以上と報告されています。たとえHLA適合の確率が大きい、きょうだいや家族に骨髄を提供できる人がいなくても、骨髄バンクでHLAが適合する提供者がみつかり移植すれば、子どもの場合には治療効果が高いと報告されています。

 

 

溶血性貧血

 

黄疸、脾臓の腫れがみられる

 

赤血球の平均寿命は120日で、寿命がきた赤血球は壊され、骨髄でつくられる新しい赤血球と入れ替わっていきます。何らかの原因で赤血球の寿命が異常に短くなり、骨髄での生産が間に合わずに起こる貧血を溶血性貧血といいます。

 

溶血性貧血には多くの種類があり、先天性と後天性に大きく分けられます。子どもの溶血性貧血は多くはありませんが、新生児に特有のものもあります。

 

■新生児溶血性貧血

母子間に血液型の不適合がある場合、母親の血液に抗体ができていると、生後1〜2週のうちに溶血が起こることがあり、重症の黄疸で発見されます。頻度はまれで、検査法、治療法の発達により、重症化するケースはほとんどなくなりました。

 

■遺伝性球状赤血球症

先天性溶血性貧血のなかで最も多いのが遺伝性球状赤血球症です。赤血球の形が、正常な円盤型ではなく球状になり、脾臓で壊れやすい特徴があります。遺伝性ですが、近親者に同じ病気がみられない例も多くあります。

症状としては、貧血症状のほかに黄疸が出たり、脾臓が腫れたりします。また、10歳以上になると胆石を合併しやすくなります。先天性といっても、年齢が低いうちは新生時期に強い黄疸がみられる程度であまり症状が目立たず、年齢が高くなってから症状が顕著に現れて気がつくケースもあります。

治療は、赤血球を壊す脾臓を摘出しますが、年齢が低いうちに行うと抵抗力が弱くなるため、一般には6歳過ぎに手術をします。

 

■自己免疫性溶血性貧血

後天性溶血性貧血の代表的なものですが、まれな病気です。自分の赤血球に対して抗体ができてしまう自己免疫疾患の一つで、急性と慢性があります。急性では貧血、黄疸のほかに発熱や腹痛、出血などがみられ、慢性の場合はゆっくりした経過をたどります。子どもに多いのは急性です。治療は副腎皮質ホルモン剤を使ったり、脾臓で赤血球が壊れやすければ、脾臓を摘出します。

 

 

その他の貧血

 

出血性、二次性貧血など

 

子どもの貧血にはこのほか、出産の祭の出血や消化器潰瘍による出血性の貧血、原因となる疾患がもとにあって起こる二次性貧血などがあります。

 

二次性貧血には、急性感染症や腎疾患などに合併する貧血があり、子どもは急性感染でもすぐに貧血症状が現れます。二次性貧血はいずれも基礎疾患を治療することが大切です。また、小児の白血病は急性型がほとんどで、貧血が初期症状としてみられることがあります。

 

発熱や関節痛といった症状を伴うことも多く、肝臓、脾臓が腫れます。これまであげた貧血とは全く異なり、抗がん剤による治療が必要です。

 

 

早期治療のために急いで鑑別を

 

子どもの貧血で最も多いのは鉄欠乏性貧血です。ただし、貧血にも色々な原因があり、年齢ごとに起こりやすい貧血も違ってきます。また、検査の正常値も年齢によって異なるなど、大人と違う点も数多くみられます。適切な治療を受けるには、正しい原因の鑑別が何よりも重要です。