赤ちゃんではミルクの飲みが悪くなったり、いつもより機嫌が悪く、触ると肌の体温がいつもより高く感じられるような場合に、幼児ではいつもより元気がなく、だるそうにしていたり、食欲がなくなる時や顔がすこしほてったように赤くなっている時などに熱が出ている可能性を考えます。熱があがるときに、よく頭痛を訴える子どももいます。

 

赤ちゃんの場合、体が未発達なために、少しの熱でも過度に心配してしまうものです。たしかに40℃もの高熱が続く場合には危険なこともありますが、一過性の風邪や体調不良などによる37~39℃の熱であれば、それほど心配する必要はありません。まずは熱をきちんと測った上で、赤ちゃんの表情や仕草(元気の有無)をしっかりと見定めてください。

 

 

まずはきちんと熱を測る

 

熱があるかなと思ったら、まずきちんと熱を測ることが大切です。体が暖かいと思っても、実際に測ってみるとそうでもないことがしばしばあります。病院を受診して、「昨夜は熱が出ていたのですが、測りませんでした」といわれても、受診した時には平熱だったりすると医師はちょっと困ってしまいます。きちんと、数字で熱を示すことが大切です。

 

そのためには正しい熱の測り方を知っておきましょう。一般に体温は夕方から夜にかけては少し高くなるものですし、激しく泣いたり、運動をしたあと、食事のあと、眠くなった時にも高くなります。赤ちゃんだと、少し厚着にしただけでも結構体温は上がります。できるだけ、安静時に環境・状況などをよく確認してから測りましょう。一度測っておかしいと思ったら、少ししてもう一度測りなおしてみましょう。

 

熱の測る場所はわきの下、鼓膜、口腔、肛門などがありますが、一般的にはわきの下で測ることが多いと思います。水銀計で測らせてくれる時はその方が正確ですが、子どもはなかなか長い時間じっとしてくれたりしません。ほとんどの人が電子体温計を用いているようで、これは予測式の場合は短時間で測れるので便利ですが、水銀計で測った時と少し差がでることもあります。

 

わきの下で測る時には、わきの下の汗をよく拭き取ったあと、わきの下の中央部にしっかりと体温計の水銀部分を前方から差し込み、その後、体温計がずれないように、腕をおさえて体に密着させます。

 

耳で測るタイプは、ほとんど瞬間的に測れるタイプのものもあって、予測式の電子体温計さえ測らせてくれないような子でも測れるので最近ではよく使われていますが、鼓膜の方向にきちんと向けて測られていることが意外に少なかったりします。鼓膜にセンサーが向いていなければ、正しい体温は測れません。また、鼓膜温はわきの下で測るよりもやや高く出ます。

 

何℃になったら熱?

子どもの体温は大人よりも少しやや高めです。個人差もあるので、その子のふだんの体温をよく知っておくことが大切です。一般には小児では37.5℃くらいまでは平熱と考えてよいと思われます。少なくとも、38℃以上の熱があれば病気の可能性が考えられます。

 

 

熱が出たら、すぐ病院に行くべきか

 

子どもが熱を出したら、状態の良し悪しにかかわらず、夜中でもいつでもすぐに救急病院を受診しなければいけないと思っている、あるいはそういう不安にかられているご両親は多くみられます。しかし、子どもの熱=重症という構造式は少なくとも今の日本では該当しません。

 

もちろん、子どもを心配する親心というのは今も昔も変わらないものですし、子どもが熱がでて平然としていられるわけでもないでしょうが、心配はしてもきちんと子どもを観察して状況を判断するくらいの余裕はもちたいところです。また、熱の高さと病気の重さとは必ずしも一致しません。むしろ、重症かどうかで問題になるのは全身状態です。

 

たとえ、40℃近い熱があっても元気そうにしていて、哺乳や食欲もあまり変化がなければ重症とは考えにくいですし、反対にあまり熱がなくてもぐったりしている時は重症である可能性があります。子どもが熱を出して、夜中でも救急病院を受診しなればいけない時というのは次のような時です。

 

  • 全身状態が悪い(顔色が真っ青で、意識が朦朧としている、呼吸がおかしいなど全身状態に緊迫した状況があるとき)
  • 痙攣(ひきつけ)をおこして5分以上続く時
  • 3ヵ月未満の赤ちゃんの発熱(新生児期には熱だけでも重篤な感染症の可能性があり、3ヵ月未満の赤ちゃんの場合は全身状態がよくても、急いで受診した方がいいのです)
  • 腹痛、嘔吐などの随伴症状を伴い、その程度が激しい時

 

以上のような状況でなければ、夜中の発熱であれば翌朝の受診でもいいと思います。一般的に夜間の救急医療というものは病院の人手も少なくて、緊急以外の検査などが十分に行えないことも多く、一刻を争うような状況でないとかえって軽く扱われてしまうこともあります。

 

それは医療側もよくないのですが、本当の救急でなければ昼間の診療時間内に受診するのが良識と思われます。ただし、近くに小児を専門として時間外を積極的にみているような救急病院があれば、心配な時にはあまり遠慮せず受診してもいいかもしれません。

 

逆にすごく状態が悪いのに、親の都合などで診察が遅くなったりする人がいますが、それはさらに困ったものです。子どもは急変しやすいので、明らかな熱が出ていれば診療時間内にできるだけ早く受診しておきましょう。

 

 

熱が高い時には暖めない

 

熱が上がってくる時には悪寒がします。寒がって震えているような時は、厚着にしたり、毛布にくるんで暖かくしてあげます。しかし、悪寒はそんなに長く続きません。熱が上がってしまうと今度は暑がってくるようになります。その状態で暖め続けていると、熱がこもってさらに体温を高めてしまいます。

 

熱が高く暑がっている時には、薄着にしてあげることが基本です。嫌がらなければ、水枕、氷枕などをタオルに包んで、首の後ろやわきの下、足の付け根のところなどを冷やしてあげるのもいいでしょう。嫌がるようなら無理に冷やす必要はありません。また、汗をかいたら濡れタオルで体を拭いてあげて、こまめに服を着替えさせましょう。

 

 

解熱剤の使い方

 

熱があればすぐ解熱剤と考えてしまいがちですが、熱がでることは決して体にマイナスであるばかりではありません。発熱は生体反応の一種であり、たとえばウイルスが感染して熱がでるとき、体温が高くなることで免疫の力が高まり、ウイルスが増えないようにする作用があります。熱がでると心配で、できるだけ解熱剤を使ってこれを無きものにしたいというのは自然な欲求でしょうが、使う前に本当に必要かどうかをよく考えてみましょう。

 

解熱剤は一時的に熱を下げるためだけの薬であって、それで病気を治すわけではないのです。薬の効果が切れれば、再び熱が上がってきますし、熱の上がる勢いが強い時に使っても解熱効果はあまり期待できないことも多いのです。解熱剤は、熱によって子どもが苦しんでいたり、機嫌が非常に悪かったり、ぐったりして水分もとれないなど、熱による害が大きいと判断した時に使うようにします。

 

また、解熱剤を使っても熱が下がらなかったということをよく耳にします。これは先に述べたような熱の上昇期に使ったような場合もありますが、実際高熱の時に使っても平熱まで下がらないことはよくあります。しかし、1℃も体温が下がれば解熱剤の効果は十分あると考えてよいでしょう。熱が下がり方以上に本人は楽になっているものです。解熱剤は熱を下げる薬というよりも、熱による苦しみを癒す薬だと考えてもらった方がいいかもしれません。

 

4ヵ月未満の乳児では、解熱剤に過度に反応することもあり、診断の前に勝手に使用することは大変危険です。きちんと病院でみてもらった上で、医師の許可を得て使うようにしましょう。

 

 

熱がでる病気

 

熱がでる病気には多種多様のものがありますが、小児期で圧倒的に多いものはやはり風邪などのウイルスや細菌による感染症です。ウイルスの種類によってはやや発熱期間が長いものもありますが、一般的な風邪のウイルスだと熱は3日程度で収まります。

 

最初に風邪だろうと言われていても、熱が4日以上続いていたり、咳などの随伴症状が悪化していたり、状態がすぐれない時にはたとえ薬が残っていても念のため早めに病院を再受診するようにしましょう。その際、病院を転々とするのは賢明ではありません。

 

風邪のウイルスは数百種類以上あるといわれており、その中で「はしか」やヘルパンギーナなどのように症状からウイルスを推測できるものはわずかにしかありません。初期には風邪と見極めがつかなくても、経過とともに病態がはっきりしてくることもあります。当初の診たてと様子が違ってくれば医師にはもう一度軌道修正して考え直すだけの柔軟性はいつでも持ち合わせていますので、何度も受診すると嫌がれるのではないかなんて考えないで、あるいは最初の診断は違っていたからと思わないで、最初の病院を受診した方がいいと思います。

 

最初の病院では初期の病状の所見などの情報を持っていますが、病院をかえるとその時点から新しく診療をやりなおさなければいけなくなります。また、熱が高いとどうしても熱に気がとられがちですが、熱以外の症状も診断や経過を知る上で重要です。

 

熱がでたら脳がやられる?

高い熱がでると、ボーッとしていたり、ときには一時的に訳の分からないことをしゃべりだしたりして、このまま頭が変になってしまうのではないかという不安にかられてしまいます。しかし、人間がウイルスなどに対抗して自分で出せる熱はどんなに高くても40℃をようやく超えるくらいの熱であり、それくらいの熱が単独で、脳に障害を引き起こすことはありません。

 

もしどこかで熱が出て脳に後遺症を引き起こしたような子どもの話を聞いたとすれば、それは脳炎などのように脳に直接ウイルスなどが侵入して障害を引き起こしたか、あるいは熱射病などのように外から強制的に暖めたような場合などで、決して通常の熱が原因ではなかったはずです。

 

 

熱性けいれんについて

 

乳幼児の脳は未熟なため、急激な体温の上昇に伴ってけいれんを起こすことがあります。統計的には子どもの5%前後が熱性けいれんを起こしたことがあるとされていて、それほど珍しいことではありません。両親など家族が子どもの頃おこしたことがあれば、熱性けいれんを起こす可能性が高くなります。好発年齢は1〜2歳ですが、生後6ヵ月から6歳くらいまでは熱性けいれんをおこす可能性があります。

 

過半数の子どもでは熱性けいれんは生涯に1回しかけいれんをおこしません。約3分の1の子が再発しますがそれも年齢とともにやがておこさなくなります。熱性けいれんの形は左右対称性の強直性間代性(全身がつっぱった後,手足をガクガクふるわせる)発作であることが多く、ほとんどの場合5分以内でおさまり、その場合にはけいれんが原因で後遺症などをおこすこすことはありません。

 

熱が出てけいれんが起きた時に熱性けいれんと区別しなければいけないものとして、髄膜炎や脳炎など脳の周囲に感染がみられるような病気や、てんかん発作(熱性けいれんはてんかんではありません)などです。臨床症状(発作の形や随伴症状)や診察所見からこれらの病気が疑われた時には髄液検査や脳波などの検査が必要になります。

 

けいれんが実際に起こったときには

  1. あわてない,落ち着くこと
  2. 衣服をゆるくし,特に首周りをゆるくします
  3. 仰臥位にして頭を横に向け,頭部をそり気味にします.歯を食いしばっていても口の中に物を入れてはいけません
  4. 体温を測り,けいれんの持続時間,様子をよく観察します
  5. 口から薬や飲み物を与えてはいけません
  6. 元に戻るまでは必ずそばにいるようにします

 

緊急に病院を受診する目安

  • 発作が10分以上続く
  • 短い間隔で繰り返し意識が戻らない
  • 身体の一部の発作,または全身性であるが体の一部の動きが特に強い。
  • 1歳未満での初回発作
  • 発熱と発作に加え,他の神経症状を伴う時(意識障害が続く,麻痺など)

 

2回目以降のけいれんで、熱があってけいれんの時間が短く、その後の意識もしっかりしているようであれば、あわてて病院につれていく必要はありません。夜中であれば、翌朝の受診でも構いません。

 

熱性けいれんの再発率

初回の熱性けいれんを経験した患児が再発する率は25〜50%(平均30%台)、3回以上の反復発作は全体の9%です。再発の時期は初回発作後1年以内が大多数(約70%)を占め、2年以内におこすものが90%に達します。また、再発する可能性が高くなる要注意因子としては ①1歳未満の発症であること、②両親または片親が熱性けいれんをおこしたことのあるもの、が挙げられ、いずれも再発率は約50%に達します。

 

熱性けいれんのてんかん

また「てんかん」という病気は熱などとは無関係にけいれん発作を来たす病気ですが、ときにその初発症状が熱性けいれんであることもあります。熱性けいれん患者がてんかんを発症する確率は5〜7才までに2〜3%、10才までに4.5%、25才までに7%です。

 

てんかんを発症する可能性が高くなる要注意因子としては、①熱性けいれん発症前の明らかな神経学的異常もしくは発達遅滞があった場合、②発作が非典型的であった(部分発作、持続が15〜20分以上、24時間以内の繰り返しのいずれか)場合、③両親・兄弟姉妹にてんかん患者がいる場合で、熱性けいれん患者が7才までにてんかんを発症する確率は上記因子がない場合1%、1因子のみ陽性の場合2%、2〜3因子陽性の場合10%です。

 

痙攣を起こした段階で神経学的異常、発達障害を認めなければ、その後に粗大な神経学的異常を来すことはほとんどありません。兄弟での熱性けいれん発症の危険率は、両親ともに熱性けいれんを起こしたことがあれば40〜80%、片親だけの場合20〜30%、両親ともになければ約20%です。

 

熱性けいれんの対応

熱性けいれんは時間も短く,回数も少ないことからほとんどが治療を必要としません。予防に当たっては発熱の機会を少なくする目的で、身体の清潔、慢性感染巣の除去、周囲の感染源との接触を避けることなどが大切です。

 

何度も繰り返すような子どもでは、発熱時にけいれん予防の坐薬を用いることでけいれんを予防できます。しかし、多くは一回しか起こさないので、けいれんを起こした子みんな予防が必要なわけではありません。抗けいれん剤による治療が考慮されるのは、けいれん発作が長く続いたことのあるときと,何度も再発する場合などです。

 

予防方法としては、抗けいれん剤の座薬(ダイアップ)を熱が出始めた初期(37.5℃が目安)に入れ、熱が続く場合は8時間後にもう一度入れます。それで2日間は血中濃度が維持されます。情況判断で、3回目投与を行っても構いませんが、3回目は初回投与から24時間経過後とします。ただし、100%予防できるわけではなく、副作用など(一過性に軽度のふらつき、興奮、嗜眠など)のマイナス面もあります。治療期間は通常2年間もしくは4〜5歳までを目標とします。

 

ダイアップ座薬でも予防できず、再発を繰り返すような場合には抗けいれん剤を持続的に内服することもありますが、その適応は限られています。発熱時に解熱剤を使用することによる熱性けいれん再発予防効果は認められていません。解熱剤は高熱による患児の苦痛の緩和のために必要な場合もありますが、乱用は慎むべきで、解熱剤の使用は必要最小限に止めるべきです。ジアゼパム投与後に解熱薬坐剤を使用する時は30分以上間隔をあけましょう。