下痢の原因で最も多いのはウイルス感染であり、下痢から脱水症状になることが多々あります。体調不良などによる一過性の下痢であれば心配は要りませんが、場合によっては命に関わることもあります。

 

①ぐったりしている、②唇が乾いたり目が落ちくぼんでいる、③発熱や嘔吐がある、④強い腹痛がある、⑤血便がでている、などの症状が出ていれば単なる体調不良による下痢ではなく、感染症などが起因していたり、脱水症状に陥っている場合が考えられますので、まずは水分の摂取を急ぎ、病院へ受診するようにしてください。

 

 

子どもの下痢について

 

子どもの下痢は、風邪に次いで発症率の高い病気(症状)です。小腸や大腸で水や電解質が十分に吸収されなかったり、小腸や大腸からの分泌液が増えたり、腸管の蠕動運動が高まって内容物の通過が早くなったりする腸機能の異常がある場合、下痢が引き起こされます。

 

下痢かどうかは、健康なときの便との違いが判断のポイントです。もともと乳幼児の便は軟らかいことが多く、なかには軟便を1日に7〜8回も排泄する子どももいますが、それが通常であれば下痢ではありません。しかし、普段と違って便に水分が多く、回数が増えれば下痢症と診断されます。

 

下痢は、授乳や食事に配慮するだけで治るものから、急いで入院する必要のあるものまでさまざまです。特別な治療が必要のないタイプの代表が単一症候性下痢です。下痢をしているだけで、食欲が旺盛で元気もよいのが特徴で、あやすと笑うことから「笑う下痢」ともよばれます。

 

単一症候性下痢の多くは、下痢ウイルスや体質による程度の軽い下痢と考えられています。数日すれば下痢は自然に治まります。下痢を起こした子どもの機嫌が悪く、食欲が落ちた場合は、原則的に治療が必要ですから、下痢止め薬などを服用してください。

 

特に下痢や嘔吐を繰り返すときは、脱水症状を併発している可能性があります。①尿が少ない、②口の中や唇が乾いている、③唇が青い、④目が落ちくぼんでいる、⑤脈拍が弱く息遣いが荒い、⑥皮膚に張りがない、といった症状を伴うときは、早急に医師の受診を受けましょう。

 

脱水症状がひどくなると体重が減少して、意識障害やひきつけを起こし、全身症状が悪化することがあり、生命をおびやかす危険すら出てきます。なお、下痢は単一症候性下痢を除いて、症状が続く期間によって「急性下痢症」と「慢性下痢症」に分けられます。2歳未満の子どもの全身症状を伴う下痢を「消化不良症」ともいいます。

 

≪下痢診断の目安≫

急性やや軟便、機嫌がよい単一症候性下痢
水のような便、血便、粘液が混じる、悪臭がする赤痢など
発熱、嘔吐、強い腹痛、脱水症状がある急性乳児下痢症、急性胃腸炎
何度も下痢をする
慢性体重が増加する、食欲がある機嫌がよい単一症候性下痢
湿疹ができやすい、少量の粘液が混じる、機嫌がよいアレルギー性下痢
体重が増えない食事の誤り
下痢と便秘を繰り返す過敏性腸症候群

 

 

急性下痢症の種類

 

急性下痢症には、ウイルスや細菌が腸管内に感染して下痢するタイプと、ほかの臓器の感染が原因で下痢を起こす非腸管感染タイプのほか、食物アレルギーや過食などによる非感染タイプがあります。急性下痢症のほとんどのケースは1週間以内に治癒しますが、症状が重い場合には激しい下痢が1週間や2週間と長く続く場合もあり、この場合には、感染だけでなくさまざまな原因が考えられます。

 

≪下痢を起こす主なウイルスと細菌≫

病原体多発年齢下痢の症状下痢の期間ほかの随伴症状
ロタウイルス6ヶ月から2歳水様、多量2〜8日嘔吐、発熱、脱水
アデノウイルス乳幼児水様、多量10〜14日嘔吐、発熱、脱水
ノーウォークウイルス5〜6歳以上水様12〜48時間嘔吐、発熱、脱水
アルモネラ菌各年齢特に乳幼児初期は水様、その後粘液・血液混入3〜7日嘔吐、吐き気、腹痛発熱、全身倦怠
赤痢菌各年齢特に乳幼児初期は水様、血便1〜2週間発熱、腹痛、嘔吐
カンピロバクター菌各年齢特に年長児以降水様、膿粘液、ときに血便1週間発熱、嘔吐、全身倦怠、腹部疝痛、筋肉痛
腸炎ビブリオ各年齢水様、ときに血便2〜3日吐き気、嘔吐、腹痛、発熱
腸侵入性大腸菌各年齢初期は水様、その後粘液・血液混入症例による腹部疝痛
腸管出血性大腸菌各年齢特に乳幼児以降初期は水様、その後鮮血便数日〜2週間腹部疝痛、微熱

 

ウイルス感染性下痢症

乳幼児の急性の下痢で最も多いのがウイルスが腸管に感染して起こるウイルス感染性下痢症です。原因となるウイルスで代表的なのがロタウイルスで、乳幼児の重い下痢の原因の80%近くを占めています。ロタウイルス下痢症は酸臭を伴う米のとき汁のような白い便が大量に出てくるのが特徴で、白色便性下痢症とも呼ばれます。また、多くのケースで脱水症の兆候がみられます。腸粘膜からの出血はほとんどありません。

 

発熱しますが、通常1〜2日で治ります。腹痛はありますが、軽度です。そのほか、主に2歳以下の乳幼児が感染する腸管アデノウイルス、3カ月から6歳児に多いカリシウイルス、5〜6歳時に多いノーウォークウイルス、エンテロウイルスなどが起因ウイルスとしてあげられます。

 

ウイルス感染性下痢症は、エンテロウイルスによる感染以外は、寒い季節に経口感染や飛沫感染で集団発生することが多く、冬季乳児下痢症ともよばれます。ウイルス感染性下痢症はほとんどの場合、水様便で、発病初期に嘔吐を伴います。強い嘔吐は半日ぐらいで治まり、吐く回数も減少します。

 

細菌性下痢症

胃腸炎を起こす細菌に感染して起こる下痢を、細菌性下痢症といいます。その代表が赤痢菌やコレラ菌による感染です。最近では衛生環境の改善や抗生物質の開発、子どもの栄養状態がよくなったことなどにより、細菌性下痢症の発生頻度は低くなりました。しかし、細菌に汚染された飲食物摂取が原因で、幼稚園や学校などでの集団発生が毎年起きています。

 

近年になって、O−157のような重い合併症を伴う消化管感染や、激しい下痢を伴う食中毒の大規模化が問題になっています。また、動物の腸管内などで生息しているサルモネラ菌のような病原性細菌が、ペットから感染する例も増えています。

 

細菌性下痢症には二つのタイプがあります。一つは、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌、エルシニア菌、腸細胞侵入性大腸菌、カンピロバクター菌、赤痢菌などの細菌が直接腸粘膜に浸潤する型です。このタイプは、発熱と血便が特徴で、大腸が侵されると便に粘液が混入します。もう一つは、菌がつくるエンテロキシンという毒素が腸粘膜に作用する型で、黄色ブドウ球菌やO-157などの腸管出血性大腸菌、毒素原性大腸菌、コレラ菌などが代表的な起因菌です。毒素産出型の場合は急激に激しい下痢が起こり、多くは強い腹痛と腹部の膨らみを伴います。

 

エルシニア菌の感染による下痢症は涼しい季節に発生しますが、ほかの細菌性下痢症は春から夏にかけて集中的に発病します。ブドウ球菌による食中毒では嘔吐を伴います。O-157感染症のように、細菌性下痢症は重症化すると命に関わる病気が多いので、急いで病院に連れていきましょう。

 

非腸管感染性下痢症

上気道炎や中耳炎、尿路感染症などの病気が腸にまで影響して、下痢を合併させることがあり、非腸管感染性下痢症とよばれます。下痢とともに、発熱、鼻汁、くしゃみなどを伴います。

 

非感染性下痢症

消化吸収能力を超えた離乳食などの摂取、腸の回転異常症など数多くの原因があります。また、抗生物質の服用も軽い下痢の原因になります。抗生物質の種類によっては赤い便が出て、血便と区別が必要な場合があります。食物に対するアレルギー(食物過敏性腸炎)も下痢を引き起こす場合があり、その便の中には好酸球というアレルギー反応を起こす白血球の一種がみつかります。(⇒子どものアレルギー性腸炎|食べ物による食後の嘔吐・下痢・腹痛

 

 

慢性下痢症の種類

 

一般に、急性下痢症に対する治療を2週間以上続けても、下痢が治らない場合を慢性下痢症といいます。下痢が続いている状態のほか、治ったかと思うと再発するケースもあります。乳児期に起こり、はっきりとした原因もなく下痢が続き、成長発達にも異常がない下痢は体質によるものとされ、乳児下痢症とよばれます。この場合は治療や授乳・食事の制限は不要です。

 

慢性下痢症には軽いものと重い場合があります。重い慢性下痢症は、栄養状態が極度に悪化して生命まで危険が及びます。生後1歳以内、特に3ヶ月以内に起こった原因のわからない重い慢性下痢症を難治性下痢症とよびます。何らかの原因で、消化されない腸の内容物が刺激となって感染を繰り返したり、栄養障害のため腸を含めた全身症状が悪化して、ますます腸の状態も悪くなるという悪循環に陥ります。慢性下痢症は病状によって次のように分類されます。

 

腸炎後症候群

慢性下痢の原因として最もよくみられます。ウイルス感染性下痢で小腸粘膜が侵されると、母乳や牛乳などに含まれる乳糖という糖分を分解する乳糖分解酵素(ラクターゼ)が不足しがちです。多くはすぐに治りますが、分解されない乳糖の刺激で、下痢や嘔吐を繰り返す場合は乳糖不耐症とよびます。

 

また、傷ついた小腸の粘膜から、食物抗原が大量に取り込まれて食物アレルギーが起こることがあります。通常であればアレルギーを起こさない小さな分子に消化されたものが腸から吸収されますが、腸に傷がついているために不消化の大きい分子のまま吸収されるために食物アレルギーが起こるとされています。その結果、下痢症状が現れることがあるのです。

 

食物アレルギー

胃腸炎とは無関係に、食べ物に対してアレルギー反応を起こして、下痢や嘔吐が生じる場合があります。主な食べ物として卵や牛乳、大豆があげられます。(⇒子供の食物アレルギー

 

過敏性腸症候群

ストレスによって胃腸を支配する自律神経などに異常をきたして、大腸の蠕動運動が高まり、そのために腹痛や下痢が起こる場合を過敏性腸症候群といいます。なお近年、過敏性腸症候群は10代~20代の女性に増えている病気で、多くはストレスが強く関与しています。子どもの場合、心身ともに未発達ですので、大人よりもストレスを受けやすいものです。そのため、過敏性腸症候群と診断されたら、家庭環境を変え、遊ぶ時間を増やしたりと、積極的にストレスを受けにくい環境を整えるとともに、ストレスの緩和に努める必要があります。

 

 

さいごに

 

下痢は子どもによくみられる症状です。それだけに軽く考えがちですが、なかには脱水症状を起こし、重篤化するケースもあります。心配のない下痢なのか、治療を受けたほうがよい下痢なのか見極めが大切です。子どもの機嫌がよいか、食欲があるかなどを観察しましょう。

 

乳児の場合は、便のついたおむつを病医院に持っていくと診断に役立ちます。下痢をするとおしりが不潔になったり、ただれやすくなります。おむつや下着が汚れていないか注意し、必要ならば交換します。排便後はおしりをお湯で洗い、よく乾かすなどのケアも大切です。