①足の甲や下肢、まぶたにむくみがある、②尿が泡立って長く残ったり、血尿がでる、③だるい、④食欲がない、⑤尿量が少ない、⑥のどが渇きやすい、⑦扁桃炎やおでき、とびひにかかっている、などの症状があれば、腎炎またはネフローゼかもしれません。

 

どちらも薬物療法または食事療法で改善を図りますが、症状が進行すると治りが悪く、場合によっては意識がなくなるなど、深刻な状態に陥ってしまうことがあるため、早期治療で症状の悪化を防ぐことが大切です。また、再発が起こりやすいので、再発防止に向けた日頃のケアも重要となってきます。

 

 

どんな病気ですか?

 

腎炎とネフローゼは、特に子どもに多く発症する腎臓の病気です。そら豆のような形をした腎臓は、腹部の背中側に左右一対あり、大人では大きなこぶしほどのサイズですが、子どもの腎臓は生後すぐでは大人の10分の1くらい、3歳で3分の1ほどの大きさです。大人に比べてまだ働きが弱く、障害が起こると機能も急速に低下します。

 

腎臓の主な働きは、体内の老廃物を濾過して尿として排泄し、血液の成分組織を調整して、体液や血圧を安定した状態に保つことです。腎炎やネフローゼでは、この機能に障害が起こり、たんぱくや血液が尿中にもれ出し、それに伴ってさまざまな症状が現れます。

 

 

腎炎・ネフローゼの原因と症状

 

腎炎は、主に血液を濾過する糸球体に炎症が起こるために、糸球体腎炎ともよばれ、急性と慢性に分類されます。

 

溶連菌の感染が多い急性腎炎

急性腎炎は、細菌やウイルスの感染をきっかけに発症します。急性腎炎の約90%は、A群β溶血性連鎖球菌(溶連菌)による扁桃炎や咽頭炎が原因です。溶連菌などに感染すると、からだの中で抗原抗体反応が起こって免疫複合体という物質が形成されます。この物質が腎臓の糸球体に沈着することで糸球体に炎症が起こり、急激に腎機能が低下します。

細菌やウイルスの感染から7〜14日後に急に症状が現れ、倦怠感、むくみ(浮腫)、血尿やたんぱく尿、高血圧などを特徴とします。むくみは顔や手足に現れますが、ひどくなると全身に及び、胸水や腹水がたまると呼吸困難や食欲不振などの症状が起こります。

尿は血尿のためにコーラのような色になり、尿量は減少します。また高血圧に伴って、頭痛や動悸、息切れなどが起こることもあります。急性腎炎は5〜15歳の子どもに多く、3歳以下で発症することはまれです。また男子の発症は女子の約3倍です。

 

自覚症状が出にくい慢性腎炎

慢性腎炎は、ゆっくりと進行する腎炎の総称で、蛋白尿や血尿が1年以上続いている場合をいいます。急性腎炎が慢性化することは少なく、ほとんどが糸球体に組織的な変化が起こって発病します。

変化の状態や程度によっていくつかのタイプに分類されますが、日本人に多くみられる慢性腎炎は、メサンギウムという糸球体の細胞組織に、免疫抗体の一つである免疫グロブリンA(IgA)が沈着して起こるIgA腎症です。慢性腎炎は自覚症状が出にくく、検尿で偶然に血尿や蛋白尿がみつかり、精密検査で診断がつく場合がほとんどです。しかし、扁桃炎や咽頭炎にかかった3〜4日後に、赤ワインのように鮮やかな血尿が出たり、むくみが現れて気づくこともあります。

経過は自然に治るもの、血尿と蛋白尿が持続しながらもほとんど進行しないもの、徐々に進行するものなどさまざまです。腎機能の低下が進行すると、高血圧・倦怠感・食欲不振といった症状が現れます。感染症を繰り返すなどをきっかけに腎機能が低下すると、腎不全に陥る場合もあるので注意が必要です。慢性腎炎は大人がかかることの多い病気ですが、子どもには決してならない病気ではありません。

 

たんぱくが出るネフローゼ症候群

ネフローゼ症候群は、糸球体に障害が起こり、血液中のたんぱくが尿中に多量に漏れ出すことを特徴とする症候群です。1日に3.5g以上、または体重1Kg辺り1日0.5g以上のたんぱくが出る状態が持続する場合をネフローゼ症候群の診断基準になっています。

子どもの腎臓病では急性腎炎に次いで多く、2〜3歳が発症のピークです。なかには生後3ヵ月から1年で発症する先天性のものもあります。女子の約3倍の比率で、男子に多くみられる病気です。子どものネフローゼ症候群のほとんどは、原因のよくわからない微少変化型ネフローゼ症候群とよばれるものです。

顔や下肢のむくみを特徴的な症状とし、進行すると、むくみが全身に及び、腹水や胸水がたまって食欲不振や呼吸困難が現れたり、体重の急激な増加がみられます。むくみが急速に起こっているときには、尿量が減少します。

尿にたんぱくが大量に漏れ出すと、血液中のたんぱくが減って低たんぱく血症を招きます。また、肝臓でのたんぱく合成の増進に伴って、コレステロール値が上昇します。感染に対する抵抗力も弱まり、肺炎や尿路感染症、敗血症などにかかりやすくなります。

 

 

親が気をつけたい子どもの症状

 

慢性腎炎やネフローゼの診断には、専門的な検査が必要ですが、日ごろの子どもの状態に気をつけていると、発見できることがあります。次のような症状を見逃さないようにしましょう。

 

肉眼的血尿血尿が出ても子ども自身が気づかず、話してくれないことがありますが、パンツにつく醤油のような染みは、血尿であることが多いものです。もしカゼをひいた後に染みがあれば、腎炎の可能性があります。また尿路結石や膀胱炎でも血尿がみられます。
尿の泡顔がむくんでいたり元気のないときに、尿の泡がいつまでも残っている場合は、たんぱく尿の可能性があります。尿検査が必要です。
むくみむくみは腎疾患の代表的な症状ですが、いつも一緒にいると逆に変化に気づかないことがあります。体重の不自然な増加が目安となるので、成長記録をつけるようにしましょう。
夜間飲水腎機能が著しく低下すると、尿が増えてのどが渇き、夜中に水を飲むために起きだすようになります。夜間飲水が毎日続いたり、食事中にたくさん水を飲むような場合はチェックが必要です。
頭痛・吐き気腎炎が進行して高血圧になると、頭痛や吐き気を伴うことがあります。カゼをひいてもいないのに調子が悪そうなときには血圧を測りましょう。

 

 

 

腎炎・ネフローゼの診断

 

総合的に確定診断されます。問診では症状が出た時期や経過を聞かれます。次に体温や体重・血圧・脈拍の測定、咽頭と扁桃の視診、腰部の打診、下肢のむくみをみる圧診、高血圧に伴う変化を調べる眼底検査などが行われます。

 

腎炎・ネフローゼの診断基準

 

尿検査からは、いろいろな情報が得られます。尿たんぱくが陽性なら、糸球体のたんぱくろ過機能の異常が疑われ、尿潜血反応が陽性の場合は、腎臓や尿路系の炎症による出血が考えられます。遠心分離した尿を顕微鏡で調べる尿沈渣では、尿の成分組成が詳しくわかります。

 

血液検査では、老廃物として尿中に排泄されるクレアチニンや尿素窒素の量を測定して、腎機能の障害の程度を調べます。腎機能が低下すると、血中のクレアチニンと尿素窒素の濃度が高くなります。また、血中たんぱく量やコレステロール値を調べて診断に役立てます。

 

糸球体の濾過能力を調べるクレアチニン・クリアランス検査や、尿細管の機能を調べるPSP検査も、腎機能をみるうえで重要な目安となる検査です。慢性腎炎やネフローゼ症候群が疑われる場合は、腎臓の組織の一部を採取して調べる腎生検が必要になります。

 

 

腎炎・ネフローゼの治療

 

入院の必要性や治療期間は病型や症状によって異なり、各種の検査結果から治療方針が決定されます。

 

食事療法が中心となる急性腎炎

発病の初期には入院して、絶対安静にし、徹底した食事療法を行います。食事療法では、塩分とたんぱく質、水分の制限が原則です。急性腎炎を根本的に治療する薬はないので、薬物療法としては対症治療を行います。発病のきっかけとなった感染症の原因菌に対する抗生物質を投与し、必要に応じて抗炎症薬や利尿薬などを使用して、腎臓への負担の軽減に努めます。

通常は、入院から約1週間で尿が出るようになり、高血圧とむくみが消失したら、徐々に食事制限や運動制限が緩和されます。1ヶ月ほどで退院でき、過程で1〜3週間安静を保った後に、通園や通学が許されます。ただし、全身状態がよくてもたんぱく尿が続く場合は、消失するまで安静を守らなければいけません。

退院後も定期的な検査が必要です。食事療法は医師と栄養士の指示に従って行いますが、食事制限は退院のころまでにはほぼなくなります。

 

急に悪化することもある慢性腎炎

治療の基本は薬物療法と食事療法です。薬物療法にはステロイド療法や免疫抑制療法などがありますが、これらの薬剤にはさまざまな副作用もあるので、定期的な診察と検査が欠かせません。

食事療法では、腎機能に合わせて塩分とたんぱく質の制限を行います。慢性腎炎では長期間の生活管理と食事療法が必要ですが、運動は医師から制限された場合を除いて、特に避ける必要はありません。

カゼなどの感染症を契機にして急激に病状が悪化する場合があるので、うがいの励行など、感染予防に細心の注意を払うことが大切です。また、扁桃炎で尿所見の悪化を繰り返す子どもには、扁桃摘出手術が勧められています。

 

 

再発が多いネフローゼ症候群

 

治療の基本は、ステロイド薬を中心とした薬物療法と食事療法ですが、安静を保ち感染を予防します。発症の初期には安静と厳重な食事制限が必要なので、入院して治療します。食事療法は水分、塩分の制限とたんぱく質の補給が基本で、腎機能に応じて摂取量が決定されます。

 

子どものネフローゼ症候群はステロイド薬によく反応し、投与開始から1〜2週間でたんぱく尿が少なくなり、尿量が増えるとむくみもとれます。たんぱく尿が出なくなれば食事制限や運動制限が徐々に緩和され、ステロイド薬が一定量に減少できたら退院できます。

 

ただし、ネフローゼ症候群は80〜90%が再発を繰り返します。再発時の症状によっては、再び入院しなければならない場合もあります。

 

カゼ、虫刺され、おできやとびひ、足の親指の巻き爪、虫歯などが再発の契機となり、特に患部が化膿するようなことがあると、高率で再発します。日ごろからこれらの予防に努め、家庭でも尿試験紙などでたんぱく尿をチェックして、早期発見を心がける必要があります。

 

ネフローゼ症候群は、長い場合は通院期間が10年以上に及ぶことがあります。しかし、子どもは大人に比べて予後がよいのが特徴で、多くは中高生ころには治癒します。保護者と医師のチームワークで、子どもの精神的なケアに気を配りながら治療を続けることが大切です。

 

 

専門医の指示をよく守ること

 

学校検尿などの普及で腎臓病が早期に発見されるようになり、適切な治療と生活指導によって、重症例は減っています。しかし、腎炎やネフローゼ症候群が悪化して慢性腎不全に陥ると、人工的に水分や塩分、老廃物などを除去する透析療法を受けながら、腎移植を待つことになります。

 

検尿で陽性反応が出たときは、医師の診察を受けましょう。治療が必要な場合は、専門医の指示をよく守って、焦らず、根気よく取り組みましょう。