乳房のトラブルは女性にとって非常に多いものです。たとえば、急に痛みが出たり、張りが強くなったり、はたまたしこりが出来たりします。多くの女性が経験することなので、あまり心配しすぎる必要はありませんが、病気の可能性もあるため、心配であれば病院で診てもらうことをお勧めします。

 

痛みや張り、しこりのほかに「乳房が赤く腫れている場合」には、炎症性の疾患の可能性があり、積極的な治療が必要になりますので、早急に病院へ受診しましょう。(⇒乳房(おっぱい)が赤く腫れる場合に該当する病気について

 

 

乳房に痛みや張りがある場合

 

乳房に痛みや張りがある場合には、「通常時」、「出産・妊娠時」、「成長時」の3つの時期に分かれ、多くは女性ホルモンが影響しています。このような時期に関連したホルモンによる生理的なものだけでなく、乳腺炎をはじめとした病気が影響している場合もあります。

 

<通常時>

これといった兆候がなく、日常生活において急に乳房が痛くなった、張りが出てきた場合はこれにあたります。大きな要因として考えられるのが女性ホルモンとの関係です。女性ホルモンの分泌量というのは一定ではなく、精神状態や健康状態で変わってきます。乳房に張りや痛みが生じる場合、女性ホルモンの働きが強くなっていることが多く、ブラをつけるだけで痛みが生じることも多々あります。

急に痛みが生じた、あるいは周期的に痛みが生じる場合には、女性ホルモンとの関係性が強いため、個人差はありますが1週間ほど様子を見てみましょう。また、生理が周期的に来ているかどうか確認しましょう。生理周期が正しいのにも関わらず、痛みが1か月以上続く場合には女性ホルモンによるものではなく、その他の病気の疑いがあるため、病院で診察を受けた方が良いでしょう。

 

<出産時・妊娠時>

多くの場合、女性は出産した後には乳房に張りや痛みが生じます。これは生まれてきた赤ちゃんに母乳をあげるための生体メカニズムであり普通のことです。母乳をあげた後に痛みが和らぐという場合には心配はありません。しかしながら、常に痛みが生じるという場合には、何かしらの病気に罹っている可能性も否定は出来ないため、心配であれば一度診察を受けてみましょう。

 

<成長時(思春期)>

思春期、つまり中学生や高校生に多いのが成長時におこる乳房の張りと痛みです。女性は男性に比べて成長度が急激であることが多く、それに従い乳房の成長が急激に早くなり、女性ホルモンが一気に活発的になります。

女性ホルモンの分泌量が一気に多くなると、乳房に張りと痛みが生じてくるので、これは普通のことです。成長に伴い1か月や2か月と長く続く場合がありますが、身長が伸びた、体重が増えたなど、成長しているなと感じる場合には、何も心配する必要はありません。

 

関連する病気

乳房に張りや痛みがあっても、乳房皮膚の異常やしこりがない場合には、女性ホルモンの関係性が非常に高いため、基本的には心配する必要はありません。ちょっとの振動で痛みが出る場合も同様に心配はありません。

ただし、ホルモンによるものではなく、病気が関連している場合もありますので、長く続く場合には一度、婦人科へ受診されることをおすすめします。

 

■急性化膿性乳腺炎

急性化膿性乳腺炎(きゅうせいかのうせいにゅうせんえん)とは、乳頭にできた傷口や乳管口から細菌が入り込み、感染を起こすことで発症する乳房疾患で、全体的または部分的に赤く腫れ(熱を持つ)、しこり、激しい痛みが伴います。

乳腺が炎症を起こし化膿している状態なので、まずは痛みを和らげるために熱をもった部分を中心に冷やしてください。主に抗生剤を使用して治療を行いますが、抗生剤が効かない場合や膿瘍が形成されている場合には切開して排膿を行います。

 

■急性うっ滞性乳腺炎

急性うっ滞性乳腺炎とは、母乳が乳管内に溜まることで炎症を起こす乳房疾患で、授乳期に起こりえます(初産の女性に多い)。化膿しているわけではないので、痛みや腫れ、しこり、熱感などの症状は、急性化膿性乳腺炎ほどひどくはありません。

急性うっ滞性乳腺炎は、授乳期の乳汁分泌量が乳児の吸飲量より多いことが原因なので、搾乳すれば症状が収まります。痛くて搾乳が難しい場合には、無理をせずに痛みを緩和させるために冷やし、痛みが和らいだ時にマッサージをしながら搾乳してみましょう。それでも難しい場合には、婦人科へ受診してください。

 

■乳腺症

30~40代の女性に多くみられる病気で、乳房に大小さまざまな固いしこりが数多くでき、しこりの境界がはっきりしていないのが特徴です。しこり以外には、乳房の痛みや張り、乳頭からの分泌液、時にはリンパ腺が腫れることもあります。原因の多くはホルモンバランスの乱れ(エストロゲンの過剰分泌)によるもので、ホルモン剤や漢方薬などを用いて治療を行います。(⇒乳房(おっぱい)が硬く張って痛みが伴う「乳腺症」について

 

■筋肉痛・神経痛

乳房の奥には、大胸筋という大きな筋肉が存在し、大胸筋の痛みを乳房の痛みと感じる場合もあります。また、肋間神経という胸周辺にある肋骨に沿って通っている肋間の神経が損傷し痛みを発している場合にも、乳房の痛みを感じることもあります。

直近で何かしらの運動をした人は、胸周辺の筋肉痛や神経痛の可能性がありますので、安静にすることが先決です。筋肉痛なら冷やすのも有効ですが、神経痛に対しては冷やすと悪化する可能性がありますので、冷やさずに安静にしておいてください。

 

■肋軟骨炎

乳房表面ではなく内側(奥)に痛みを感じる場合には、肋軟骨炎の可能性があります。肋軟骨炎とは、胸骨と肋骨の関節に生じる炎症で、深呼吸した時や咳・くしゃみをした時、胸の骨を押した時などに強い痛みを感じます。

動くことで悪化しますので、まずは安静にするよう心がけてください。その上で、イブプロフェン(ブルフェン、アスピリン)またはナプロキセン(ナイキサン)などの非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を服用し、改善を図ります。

 

 

乳房にしこりがある場合

 

乳房にしこりがあると乳がんなどの病気が関連していると不安に感じる方が多くいらっしゃいますが、乳房のしこりもホルモンの影響を強く受けています。ただし、病気が関連している場合もありますので、早期発見のために婦人科へ受診してください。

 

ホルモンの影響

乳房は主に乳腺と脂肪組織で構成されており、また乳腺は15~20の乳腺葉の集まりから成っており、女性ホルモンの影響によって肥大化することがあります。

乳腺の肥大化は妊婦さんや出産後の女性に多いものの、未産女性でもホルモンの影響によって乳腺が肥大化する場合が多くあります。また、成長の著しい10代女性もホルモンの影響によって乳腺が肥大化する場合があります。

 

関連する病気

乳房にしこりが生じる病気には、乳腺炎や乳腺症、乳腺のう胞、乳腺線維腺腫、乳腺葉状腫瘍、乳がんなどがあり、病気の種類によってしこりの形状が異なります。

 

■乳腺炎

上述のように、乳腺炎は産後授乳期に起こることが多い病気で、母乳を運ぶ管(乳腺)が詰まることで起こる場合(急性うっ滞乳腺炎)と、乳頭などから細菌が入り込み炎症を起こす(化膿性乳腺炎)ことで発症します。急性うっ滞乳腺症、化膿性乳腺炎ともに痛みのあるしこりが形成され、発熱や悪寒をきたすことがあり、化膿性乳腺炎は激しい痛みをきたします。

 

■乳腺症

30~40代の女性に多くみられる病気で、乳房に大小さまざまな固いしこりが数多くでき、しこりの境界がはっきりしていないのが特徴です。しこり以外には、乳房の痛みや張り、乳頭からの分泌液、時にはリンパ腺が腫れることもあります。原因の多くはホルモンバランスの乱れ(エストロゲンの過剰分泌)によるもので、ホルモン剤や漢方薬などを用いて治療を行います。

 

■乳腺のう胞

10代~20代の若い女性に多くみられる病気で、硬くて平たいしこりが特徴です。また、表面はスベスベしていてよく動きます。乳腺のう胞の主な原因は、ホルモンの影響によるところが大きく、乳房の繊維成分と乳腺の増殖によって起こります。

しこりの感触が乳がんと似ているため、心配する方が多くいますが、良性の腫瘍であり、基本的には時間の経過によって小さくなっていきます。しかしながら、大きさが1cm以上ある場合には腫瘍を摘出することが推奨されています。ただし、腫瘍は簡単に取り出すことができ、キズも目立たず、入院の必要もありません。

 

■乳腺線維腺腫

乳腺線維腺腫は年齢問わず発症する病気で、柔らかく弾力のあるしこりが特徴です。また、多くは痛みが伴いません。原因は未だ解明されていないものの、卵巣ホルモンが何らかの発症原因になっていると考えられています。

しこりが小さい場合には経過観察で問題はありませんが、明らかに美容上に問題があるほど大きい場合は、切除することが推奨されています。切除を行う場合でもキズが目立たなく入院の必要はないため、積極的に切除手術を行うことをお勧めします。

 

■乳腺葉状腫瘍

30代以上の女性に多く見られ、硬くてスベスベした楕円形のしこりが特徴です。乳腺線維腺腫とよく似た症状があるものの、2~3か月の間に急速に大きくなるのが特徴的。8割方は良性の腫瘍ですが、悪性の場合もあるため注意が必要です。悪性の場合、放置し続けると転移を繰り返し、場合によっては命に関わることもあるため、早急な摘出手術が必要となります。

 

■乳がん

乳房にしこりがあり、さらに乳頭に湿疹やただれ、分泌液が出る場合、さらに乳房皮膚に発疹やただれ等がある場合には乳がんの可能性が考えられます。乳がんは乳房の外側上部(脇の下)にしか出来ないと思っている方が多いのですが、実は外側下部や乳輪部、内側上部、内側下部と場所は様々です。

女性にとって非常に怖い乳がんですが、早期発見・早期治療することでほとんどが完治するため、乳房にしこりや痛み、分泌液など、疑わしい症状が出た場合には婦人科に受診してください。