喘鳴(ゼーゼー)、呼吸困難、咳、痰などの症状があれば、気管支ぜんそくかもしれません。気管支ぜんそくは急に発症することが多い病気です。

 

また、咳や喘鳴を伴う呼吸困難の発作を繰り返し、年々発症する人が増えています。死亡率においては、1950年に約16000人と推計されていますが、2014年では1550人と大きく減少しています。(厚生労働省)これは医療技術の発展、ならびに治療薬の充実によるところが大きく、今ではそれほど危険な病気ではありません。

 

しかしながら、早期発見・早期治療を行わなければ重篤化の危険性があり、また自己管理も非常に重要となってきます。そのため、気管支ぜんそくのような症状が現れた際には、少しでも早く病院へ受診するようにしてください。

 

 

気管支ぜんそくとは

 

気管支ぜんそくは、空気の通り道である気道が狭くなり、呼吸困難の発作を繰り返し起こす疾患です。呼吸をするたびにゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音を伴うのが特徴です。この呼吸音は喘鳴(ぜんめい)といわれています。

 

ぜんそく発作は多くの場合、夜中から明け方にかけて起こり、日中はおさまっています。発作以外には特に症状が現れないため、発作のないときは健康な人とまったく変わりがありません。

 

気管支ぜんそくは、気道の慢性的な炎症によって起こります。気管支に炎症が生じると、気管支の周囲をとりまいている平滑筋という筋肉がけいれんを起こし収縮し、内腔が狭くなります。同時に、気管支の粘膜にむくみが生じたり、粘膜からの分泌物がたまったりして、ますます空気の通りが悪くなり、喘鳴や呼吸困難が起こるのです。

 

気道の炎症には、血液中に含まれる好酸球、リンパ球、単球などの白血球が関わっています。なかでも好酸球は、ぜんそく発作が起こると、気管支の周辺や粘膜内を流れる血液中に増加することから、発作と炎症反応との関連性があります。

 

気管支ぜんそくでは、適切な治療を受けずにいると、しばしば発作を繰り返すようになります。さまざまな刺激に対して、気管支が敏感に反応するようになり、発作が起こりやすくなってきます。そして、次第に慢性的に症状が続く通年性ぜんそくといわれる状態に移行します。ただ、しばらく発作が治まっていても、命にかかわる重い発作を突発的に起こすこともあります。

 

気管支ぜんそくの死亡者数は減少傾向にあります。その一方で、患者数は、年々増加しています。特に若年層に多発しています。

 

■死亡者数の推移
気管支ぜんそくの死亡者数の推移

 

■発症者の年齢別における傾向
気管支ぜんそく発症者の年齢別の傾向

 

こうした若年層の発症者数が増加している背景には、学校や仕事上のストレスに加え、ぜんそくの治療に対する認識不足や自己管理の不十分さなどが考えられます。患者やその家族はもちろん、周囲の人も、病気に対する正しい知識をもつことが大切です。

 

 

気管支ぜんそくの原因と分類

 

気管支ぜんそくは、気管支に炎症を引き起こす原因によって、「アトピー型(アレルギー型)」と「非アトピー型(非アレルギー型)」、二つの型が混合している混合型に大別されます。

 

アトピー型気管支ぜんそく

アトピー型は、アレルギーの原因物質(アレルゲン)が体内に侵入することで、ぜんそく発作を起こします。体内では、侵入してきた特定のアレルゲンに対してIgE抗体がつくられます。このIgE抗体がアレルゲンと結合すると、抗原抗体反応が起こり、気管支の炎症が誘発されます。

 

乳児や小児ぜんそくの大半はアトピー型です。アトピー型小児ぜんそくの約70%は、12歳くらいまでには治ります。しかし、約30%の人は、成人になっても症状が治まらずに慢性化したり、一時的に治まっていても、再発します。

 

ぜんそくを引き起こす主はアレルゲンとしては、ハウスダスト(家の中のちりやほこり)、花粉、カビ、動物の毛やふけなどがあります。このうち、最も多いのがハウスダストで、ほこりの中に含まれるヒョウダニが害を及ぼすと考えられています。小児では、卵、大豆、牛乳、そばなどの食品がアレルゲンとなることがありますが、成人ではそれほど多くありません。

 

また、薬剤が原因となって発作が起こる場合もあります。主なものにはアスピリンぜんそくとよばれるタイプがありますが、アスピリンだけでなく、非ステロイド系消炎鎮痛剤やかぜ薬などでも発作がでる可能性があります。

 

アスピリンぜんそくは、成人ぜんそく患者の約10%に起こりますが、ほかのアレルゲンが原因で起こる発作よりも重篤になりやすい傾向がみられます。アレルギー体質は、高い確率で遺伝するため、家族や親族にアレルギー性疾患をもった人がいると、ぜんそくを発症しやすいとされています。

 

非アトピー型気管支ぜんそく

非アトピー型は、アレルギー以外の原因によって発症するタイプです。自律神経のバランスや、ホルモンの分泌の乱れが原因と考えられています。非アトピー型の多くは、かぜによって起こった気道の炎症が引き金となるため、感染型ともよばれます。

 

かぜの病原体であるウイルスや細菌に感染すると、体の防御反応として体内でさまざまな化学物質が放出されます。その結果、気道が収縮したり、気管支の粘膜にむくみが生じて、内腔が狭くなります。また、気道の炎症によって粘膜が傷つき、神経が露出して気道が敏感になるため、発作を起こしやすい状態にあります。そこに発作を誘発するさまざまな刺激が加わると、ぜんそく発作が起こります。

 

発作の原因となるリスク・ファクターとしては、季節の変わり目に起こる急激な温度の変化、精神的ストレスのほか、工場の排煙や車の排気ガスなどによる大気汚染、タバコの煙、建材や殺虫剤に含まれる化学物質、食品添加物などがあります。一般に、非アトピー型は、アトピー型より重症になったり、慢性化しやすい傾向にあります。

 

 

成人の気管支ぜんそくの多くは混合型

 

小児ぜんそくのほとんどがアトピー型であるのに対して、成人の気管支ぜんそくの40〜60%はアトピー型と非アトピー型の両方の原因が関わっている混合型です。アレルギー体質をもった人が、かぜなどのウイルスに感染すると、ぜんそくを起こしやすい発作準備状態になります。そのような状態のときに、過労や睡眠不足などのちょっとしたストレスがきっかけとなって、発作が起こるのです。

 

気管支ぜんそくを発症する原因は一つではありません。体質や体力、生活環境、生活習慣、ストレスに対する適応力など、直接的、間接的な原因が複雑に重なり合って発症するといわれています。

 

 

気管支ぜんそくの症状

 

ぜんそくの発作は何の前触れもなく、ある日突然起こります。だいたいは、夜中に胸が締めつけられるような息苦しさを感じて目覚め、同時に喘鳴と呼吸困難が現れます。咳や痰を伴い、咳のために呼吸困難が一層ひどくなり、ときには意識を失うこともあります。なかには喘鳴や呼吸困難がみられず、咳ぜんそくとよばれています。また、発作時に出る痰は透明でネバネバしているため、吐き出しにくいのが特徴です。

 

1回の発作は、数時間で治まることもあれば、何日も続く場合もあります。また、季節的には、気温の変動しやすい秋に発作を起こす人が多くなります。発症が重症の場合は、激しい呼吸困難を伴い、苦しくて寝ていられなくなくなるため、上半身を起こして呼吸するようになります。この状態を起座呼吸といいます。さらに、皮膚の色が紫色に変化するチアノーゼや、冷や汗もみられます。

 

喘鳴がないのに苦しさを訴える場合を発作重積状態といい、意識障害を起こして生命に危険が及びます。発作重積状態のときには、救急車を手配したりして、一刻も早く治療を受けることが必要です。

 

 

気管支ぜんそくの検査と診断

 

気管支ぜんそくかどうかは、発作時の症状からある程度わかります。しかし、喘鳴や呼吸困難は、肺気腫や慢性気管支炎、心不全といった病気でも現れることがあります。そこで、ほかの病気と鑑別して、確定診断するためには、胸部X線撮影検査、肺機能検査、心電図検査、血液検査、気道過敏性テスト、アレルゲンテストなどさまざまな検査が必要です。

 

<診断の目安>

  1. 発作性の呼吸困難や喘鳴が繰り返し現れたり、夜間や早朝に咳の発作を反復する
  2. 発作が治まると狭くなった気道が元の状態に戻る
  3. 冷気やタバコの煙など、健康な人にとってはたいしたことのない刺激に気道が反応して収縮する
  4. アレルギー体質がある
  5. ほかの肺疾患がない
  6. 炎症反応の結果として血液や痰の中に白血球の一種の好酸球が増加している

 

このうち、1、2、6に該当すれば気管支ぜんそくと診断されます。また、4にあてはまればアトピー型、そうでない場合には非アトピー型であることが判明します。

 

気管支ぜんそくの診断において、特に重要となる検査は、気道閉塞の可逆性検査、気道過敏性テスト、アレルゲンテストです。気道閉塞の可逆性検査は肺の機能を調べる検査の一つで、気道の収縮が一過性のものかどうかが明らかになります。

 

検査では、まず1秒量という、1秒間に肺から吐き出させる肺活量を測定します。気管支拡張剤を吸入した後、サイド秒量を測定し、吸入前の測定値より20%以上増加していれば気道の閉塞に可逆性があると判定され、気管支ぜんそくと診断されます。

 

気道過敏性テストは、アセチルコリンやヒスタミンといった、気道を収縮させる作用のある化学物質を、薄い濃度から段階を追って吸入し、どの濃度のときに気道が一定基準以上に収縮するかを調べる検査です。気管支ぜんそくの場合は、気道が敏感に反応しやすいので、健康な人に比べて低い濃度で気道収縮が起こります。

 

アレルゲンテストは、病型やアレルゲンを突き止めるために行われるものです。ハウスダストや花粉、カビなどのアレルゲンになりやすい物質の溶液を皮膚に注射して反応をみる皮膚テストや、アレルゲンと考えられる物質を吸入して反応をみる誘発テスト、IgE抗体の量を調べるRAST(ラスト)法などがあります。症状の重症度の判定は、「日本アレルギー学会気管支喘息重症度判定委員会基準」に基づいて行われ、軽症、中等度、重症に分類されます。

 

 

気管支ぜんそくの治療

 

気管支ぜんそくの治療では、すでに現れている発作を抑えることが最優先されるため、薬による対処療法が基本となります。使用される主な薬としては、β2刺激剤やテオフィリン剤、抗コリン剤などの気管支拡張剤、副腎皮質ホルモン剤、抗アレルギー剤などがあります。気管支ぜんそくの原因や発作の重症度に応じて使い分けられます。

 

使用方法には、薬を気管支の粘膜に直接吸入させるために定量噴霧式吸入器(ネプライザー)を用いて吸入する方法と、内服があります。中等度以上の成人の気管支ぜんそくに対する薬物療法で、最も一般的に行われているのは、副腎皮質ホルモン剤の吸入療法です。

 

気管支拡張剤のβ2刺激剤は即効性があり、吸入後5分ほどで呼吸が楽になることから広く使われてきました。しかし、使いすぎると、動悸や不整脈といった循環器系の副作用がみられ、気道の過敏性をかえって悪化させることもあります。そこで、発作時に限って必要な回数だけ吸入することが勧められるようになっています。

 

その点、副腎皮質ホルモン剤の吸入薬は、何回使用しても、心臓に悪影響をあたえることはないとされています。気道の炎症を抑える効果が高く、循環器系以外の副作用が現れる頻度も高くありません。ただし、吸入薬は、薬剤を気管支や肺の奥まできちんと吸入しないとあまり効果が期待できません。

 

そこで、吸入療法を行う場合は、定量噴霧式吸入器の正しい使い方や吸入法を身につけることが大切です。スペーサーと呼ばれる吸入補助具を使用すると、気道への刺激も少なく、薬が気管支へ効率よく到達するため、いっそうの効果が期待できます。

 

抗アレルギー剤は、アトピー型や混合型の場合に処方されますが、発作を抑えるためではなく、予防薬として用いられます。インタールは、抗アレルギー剤のなかで唯一の吸入薬ですが、内服薬よりも投与効果が高く、副作用もほとんどありません。なかでも、ハウスダストやダニ、カビなどのアレルゲンによってぜんそく発作を起こしている人には効果的とされています。

 

痰が多く出る場合には、痰の粘り気を減らして排出しやすくする去痰剤が使用されます。このほか、漢方薬が使われる場合もあります。漢方薬は患者の体質や体力に合わせて処方されます。気管支ぜんそくでは、軽症や中等度のケースに適応となります。

 

根本的に治療する原因療法

発作に対する薬物療法のほかに、体質を改善して根本的に気管支ぜんそくを治す目的で原因療法が行われることもあります。原因療法には、特異的減感作療法(免疫療法)と非特異的変調療法がありますが、治療効果についてはまだ確立されていない面もあります。

 

■特異的減感作療法

特異的減感作療法は、ぜんそくを起こすアレルゲンが明らかな場合に行われます。発作を誘発しない程度の量のアレルゲンエキスを注射し、徐々に増量していくことで、アレルゲンに対する免疫力をつけようとする方法です。副作用はたいてい注射から30分以内に起こりますが、たまに数時間後に現れる場合もあります。治療を受けた日に注射した部位がかゆくなったり、ぜんそくの症状を招いたときには、必ず主治医に連絡することが必要です。

 

■減感作療法

減感作療法は、発作が現れていないときに、体質を改善し、気管支の過敏性を低下させることを目的として行われます。主な非特異的変調療法としては、金チオリンゴ酸ナトリウムなどの金の製剤を注射したり内服する方法があります。また、副作用として、アナフィラキシー・ショックといわれる激しい発作症状が起こってもすぐに医師が対応できるように、注射後15〜20分は病院内にとどまることが原則です。

 

 

自己管理と定期的な受診が大切

 

ぜんそくの治療は長い期間を要し、通院して行うケースがほとんどです。受診時には無症状のことがおおいため、自己管理が重要になります。発作の予防や発作時の適切な処置について自己管理をするために、最近は、ぜんそく日誌の記入とピークフローの測定を指導する医者が増えてきました。

 

ぜんそく日誌

ぜんそく日誌は、症状の重症度、日常生活の状態、治療の内容などを点数化して記入する日誌です。ぜんそく日誌をつけることで、季節、時間、天候、治療内容、日常生活と症状の関連性を患者本人が客観的に把握できます。また、医者にとっても、症状の経過や薬の効果をはじめ、患者がふだんどのようにしてぜんそくをコントロールしているかわかるため、治療を行ううえで参考になります。

 

ピークフロー

ピークフローは、ピークフローメーターという器具を使って、家庭で簡単にできる肺機能検査です。ピークフロー値からは1秒量という肺活量の推定が可能なので、継続して行えば、気道狭窄の過程や症状の変動状態などを知ることができます。朝と夕方、薬を吸入したり内服する前に測定し、ぜんそく日誌に結果を記録します。ピークフロー測定値を活用した、ゾーンシステムという自己管理法もあります。これは重症化を予防したり、気管支ぜんそくによる死の危険を回避するのに役立ちます。

 

ゾーンシステムでは、ピークフローの自己最良値を基準として、80〜100%の値をグリーンゾーン、50〜80%の値をイエローゾーン、50%未満の値をレッドゾーンとします。グリーンゾーンは、ぜんそくがコントロールされていることを示し、そのまま同じ治療を続けます。イエローゾーンは注意が必要で、レッドゾーンであれば、かなり重症化した状態といえます。したがって、ピークフロー値がイエローゾーンやレッドゾーンになった場合は、受診する必要があります。

 

ぜんそくは、薬物療法でコントロールしていても、季節や環境体調の変化によって急激に悪化する可能性があります。症状が現れていないからといって、自己管理を怠らず、定期的に医療機関を受診するようにしましょう。

 

 

アレルゲンを除去して過労を避ける

 

気管支ぜんそくの発作を予防したり、症状を悪化させないようにするには、気道を刺激する物質やアレルゲンに、できるだけ接触しないのが大切です。ハウスダストやダニを除去するために、こまめに掃除して、部屋の中を清潔に保つようにしましょう。蚊取り線香や香水、化粧品、殺虫剤、衣類の防虫剤などのニオイも発作の誘因となることがあるので、なるべく使用を避けるか、近づかないようにします。

 

なお、化合物などによるニオイが発作の誘因となることがある一方、精神安定法の一つとしてニオイ(アロマテラピー)を用いた緩和法もあります。重度の気管支喘息には効果を示しませんが、軽度であれば効果がみられる場合が多々ありますので、日常に取り入れてみてはいかがでしょうか。